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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // ごしゅじんさま

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OPENING

「ち、千華さん…もう脱いでも良いですか?」
「駄目よ〜」
「えぇぇぇ…」
「ん?あ、帰ってきたみたいね。ほら、行って来なさい」
「ちょ、こ、この格好でですか?」
「うん。もちろん」
ニッコリと微笑む千華。
梨乃は今…とっても可愛らしいメイド服を着ている。
試着してみてとしつこく言われて、やむなく着てあげたのだが。
加えて、千華は、そのまま行って来いと言う。
どこへ?…仕事から戻ってきたエージェントの所へ。

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はー。疲れた。さすがに、あそこまでシツこいと参るね。
コキコキと首を鳴らしつつ、エントランスからセントラルホールへ踏み入る蓮。
どうやら、デートの帰りらしい。
あくまでも、蓮は軽〜い感じで、
まさにガールフレンドという感じで接していたのだが、
女性が、付き合ってくれとしつこく、せがんできたのだ。
しかも、結婚を前提にとか言い出す始末。
そんなの、面倒くさいったらありゃしない。
しつこくせがむ女性を、なだめつつ、なだめつつ…蓮は逃亡してきた。
エスケープってやつだ。
何を言っても通用しない、電波なコは、さすがに疲れる。
何かやたらと疲れたな…一眠りしようか。ふぁぁ…。
欠伸しつつ階段を上る蓮。
階段を上りきったとき、蓮の目が一瞬で覚めた。
「うわ。…梨乃ちゃん?」
「………」
そこには、メイド服を身に纏った梨乃がいたのだ。
黒いフリフリのメイド服。アクセントの紅。
いつもはサッパリしたゴムで髪を束ねているけれど、
今日は、可愛らしいリボンで束ねている。
俯き、もじもじと恥ずかしそうな梨乃。
梨乃は、チラチラと蓮を見上げつつ、小さな声で言った。
「お、おかえりなさいませ。ごしゅじんさま…」
「あっははははっ!」
咄嗟に、ギュッと梨乃を抱きしめる蓮。
「梨乃ちゃん、可愛い」
「うぅぅぅ…千華さんがですね、あのですね」
蓮の胸元で、もごもご喋る梨乃。
話を聞けば、これは千華の粋な計らい…じゃなくて、悪戯らしい。
ほほぅ。千華さんも、なかなか話のわかる人だなぁ。
んー…可愛い。うん、マジで。
っていうか、細いよね。今更だけど。
でも、不健康な感じじゃないんだよな。
あるべきところは、ぽてっとしてて。
ジーッと梨乃を観察する蓮。
梨乃は、恥ずかしくてたまらないのか、ちょこんと、しゃがみこんでしまった。
「はは。それにしても、嬉しいな」
「な、何がですか?」
「梨乃ちゃんに、ごしゅじんさま、なんて呼ばれるとねぇ」
「だ、だから、これは…」
「これからは、そうやって出迎えしてくれる?」
「えぇぇぇ…?」
うぅ…と俯き、勘弁してください…と蹲る梨乃。
蓮はクスクス笑い、そんな梨乃の腕を引き立ち上がらせると、
ヒョィッと、お姫様抱っこで自室へ梨乃を、お持ち帰り。
「れ、蓮さん?あ、あのぅ、ちょ…は、離して下さいぃぃぃ」

*

ぱふっ、とベッドに梨乃を座らせ、淡く微笑む蓮。
梨乃は、慌てて部屋から出ようと試みる。
身の危険を察知したのだろうか。
かなり動揺しているようで、ドアノブを掴み、グイグイと引いている。
個室の扉は、押して開けるんですよ、梨乃さん?
「ぷ…」
梨乃の動揺っぷりに、思わず吹きだしてしまう蓮。
ツカツカと近寄ってくる蓮に、梨乃は身構えた。
「うわ。ちょっと勘弁してよ。梨乃ちゃんのパンチ、重いんだから」
クスクス笑って、扉に手をあてる蓮。
蓮の両腕に挟まれるような体勢で、梨乃はキュッと目を閉じ、小さな声で言った。
「蓮さん、あの…」
「うん?」
「し、心臓が…」
「うん。心臓が?」
「あの…」
「なぁに?ちゃんと言ってくれないと、わからないよ」
「うぅぅ…」
本当に、心臓が爆発しそうな勢いだ。
真っ赤な梨乃を見やり、蓮は笑って…カチャリと鍵を閉めた。
ギョッとする梨乃。蓮は、くっくくくくく…と肩を震わせて笑い、
「冗談だよ」
そう言って、扉から両腕を離した。

ソファに並んで座る蓮と梨乃。
蓮は左腕で梨乃の肩を抱いている。右手はキュッと繋いで。
静かな部屋、二人はその体勢のまま、言葉を交わす。
「それで…どうしたんですか?」
「んー?面倒くさくって、逃げてきちゃった」
「…そ、そうなんですか」
女性に付き合ってくれとせがまれて、
大変だったんだよ〜と梨乃に話した蓮。
逃げてきた、という蓮の発言に、ほっとしている梨乃。
相変わらず、色んな女の子とデートしている。
それは、もはや蓮の生き様のようなものだから、
どうやったって、止めることは出来ない。
誰が止めろと言っても、絶対に聞き入れないだろう。
しばらく構っていなかったガールフレンド達から、
最近立て続けに誘われていた為、
ここ数日、蓮は本部に顔を出していなかった。
とはいえ、ほんの二、三日なんだけど…。
それでも、梨乃は寂しいなと思っていた。
美味しく焼けたクッキーを持ってきても、
おすすめの本を持ってきても、蓮は部屋にいなかったから。
決して口にはしないけれど、梨乃は今、幸せだ。嬉しい。
こんな格好をしているのは恥ずかしいけど…。
話したいこと、たくさんあるんだ。
夕食まで、ずっと。お話していたいな。
そう思う梨乃。だが、パタリと蓮の発言が止まった。
「蓮さん?」
質問しても、返事が返ってこない。
顔を上げチラリと見やると…。
(あ…)
蓮は、眠っていた。
よほど疲れていたのだろう。
一瞬で、深い眠りに落ちた蓮。
くぅくぅ…と寝息を立てる蓮を見つつ、梨乃はクスクス笑う。
子供みたいな寝顔。可愛い…。
起こさないように…と梨乃は、蓮の胸に頭をコテン。
目を瞑り、蓮の寝息を聞いていたら…だんだん自分も眠くなってきて。
いつしか、梨乃も眠ってしまった。

時刻、十八時。夕食の時間だ。
だが、いつまでたっても、蓮と梨乃が食堂に来ない。
何かあったのか?と心配になって、蓮の部屋に来た藤二。
「蓮〜?晩飯………っと?」
扉を開け、飛び込んできた光景。
ソファで、手を繋いで眠っている蓮と梨乃。
何だってまた、梨乃は…妙な格好してるんだ?とは思うものの、
何だか…絵になる光景だ。
そうだな、例えるなら…。
許されぬ恋に悩む、主人とメイドの安息の時…とか、そんな感じか?
くっく…と笑いつつ、カシャリと携帯で写真を撮る藤二。
起きてきたら、二人に見せてやろう。
んー。良く撮れてるな。絵画のようだ。さすが、俺。
ふっふっふと笑いつつ、パタンと静かに扉を閉める藤二。
ご主人さまとメイドは眠る。夜空に月が灯るまで。

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

7433 / 白月・蓮 (しらつき・れん) / ♂ / 21歳 / 退魔師
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / INNOCENCE:エージェント

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度様です〜! ゝ(▽`*ゝ)(ノ*´▽)ノ
楽しかったです。毎度毎度、ごちそうさまです。ふっふふ…(笑)
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ!

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2008.05.21 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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