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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


モダン・デ・セリナ

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OPENING

(へぇ…随分と、オシャレなカフェだな…)
雑誌を眺めつつ感心している武彦。
武彦が見やっているのは、トーキョーウォッチャー。
都内のイベントスポットやら何やらがビッシリと掲載されている雑誌。
こんな雑誌を、武彦が自ら買ってくるわけがない。
零が買って来たもので、テーブルの上に置きっぱなしになっていたのを、
武彦は手に取って、眺めている…というわけだ。
武彦が見やっているのは、
三日前にオープンした、オシャレなカフェのページ。
モノトーン基調で纏められた店内は、
何だかモダンで、とてもオシャレな感じ。
ふと、武彦は時計を見やった。
時刻は18時。
零は、友達と遊んでいるそうで、帰りが少し遅くなると言っていたし。
せっかくだし…誘って、このカフェに行ってみようか。
武彦はチラリと階段を見やった。

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トントンと階段を降りてくるシュライン。
読書をしていて、うっかり夢中になってしまった。
リビングでソファに座り、こちらを見やっている武彦。
「ごめんね、すぐ支度するから」
ごめん、と謝り夕食支度を手早く済ませようとキッチンに入っていく。
と、そこで武彦の、お誘いが。
「シュライン、ここ、行ってみないか」
「…え?」
振り返って見やれば、武彦はとある雑誌のページを広げて見せている。
テテテ…と歩み寄って見やれば、そこにはオシャレな喫茶店が。
「わぁ、素敵ね」
「零も遅くなるって言ってたしよ。たまには外食しよう」
「ふふ。うん、わかった。待ってて。準備してくるから」
「おぅ」
ニコニコ笑顔で、着替えと化粧を済ませるシュライン。
武彦さんと二人きりで外食。うん、久しぶり。楽しみだわ…。
さっき見た写真から察するに、おしゃれなお店なのよね。かなり。
せっかくだし…ちょっと、オシャレしていっちゃおうかな。ふふ。
黒いタイトスカートに白いブラウス、
胸元にシルバーのネックレス。
で、指にはもちろん…武彦さんに貰った指輪を。
支度を済ませて二階から降りてきたシュライン。
玄関で待っていた武彦は、お、綺麗だなと素直に褒めた。
ありがとう、と微笑み、武彦の腕に、わきゃっと絡みつき…。
二人は、喫茶『モダン・デ・セリナ』へ。

*

「地下にあったなんて、ちょっと意外だったわね」
「店を探して迷うとか…久しぶりだよな、実際」
クスクス笑いつつ向かい合って座る二人。
喫茶店は、地下にひっそりとあった。
けれど、雑誌で紹介されたからだろうか、店内は賑わっている。
名前のとおり、モダンな感じの店内。
ビビットカラーのテーブルや壁、
飾られている時計やポスターも、店のオシャレな雰囲気に一役買っている。
「メニュー…多いわね」
「だな。つか、全部に"セリナ"が付くんだな」
「セリナ…って何かしら。あっ」
メニューの隅に、店名の由来が書かれている。
セリナ。それは、遠い異国で女神をしめす言葉。
伝承によると、セリナという女神は、
人間の男性に恋してしまい、父である神の怒りを買い、
天空から、地上へと堕とされてしまったのだそうだ。
けれど、セリナは地上に堕ちたことを喜んだ。
愛した男と、一緒にいられる…ということで。
愛に生き、愛に死した女神、セリナ。
どうか皆さんも、彼女のように、
焦がれ焦がされる恋ができますように。
店名には、そんな店主の願いが込められている…らしい。
「ふふ。素敵ね」
「ロマンチストだな、店長」
クスクス笑いあいつつ頭を寄せて一緒にメニューを見やる二人。
初来店ということで、ここは素直に…。
二人は、店の一番の人気メニューである『セリナ・サンド』と、
サラダ、スープ、エスプレッソをオーダー。

「美味い…」
「うん。美味しいっ…」
口に運ぶ料理は、どれも美味。
さりげない…素朴な味なんだけど、妙に舌に残る。
でも、決して不快なものではなくて、むしろ心地良い感じ。
取り分けた料理を少しずつ摘んで、他愛ない話に笑う。
二人きりの、久しぶりのデート。
可愛らしいランプの明かりを挟んで見つめ合えば。
何だか、くすぐったくて、また二人でクスクス笑い合って。
エスプレッソも武彦さん好みだったみたい。
もちろん、私も好きよ、この味。
何度かおかわりを御願いして…。
時間が、ゆるやかに過ぎていく。
いつもの賑やかな感じ良いけれど、
たまには、こんな夕食も…素敵よね。

*

食事を終えてカフェを出て帰路に付くものの。
カフェで過ごした時間が、あまりにも心地良く素敵だったから。
このまま帰るの、何だか勿体ない。
だから、ちょっと寄り道遠回り。
藤を見ていかない?と言うシュラインに、
武彦は「いいよ」と淡く微笑みハンドルをきった。
車内から見上げる藤の華。
月明りに照らされて…綺麗…。
聞こえるのは僅かな風の音だけ。
静かな車内、シュラインはふっ…と上目遣いで武彦を見やる。
ん…?と微笑み首を傾げる武彦。
「ううん。何でもない…」
シュラインは淡く微笑み、
サイドブレーキに置かれている武彦の指の節をそっと撫でた。
求めているものが何なのか。すぐに理解る。
武彦はクスクス笑い、踊るシュラインの指を捕まえ、キュッと握る。
繋いだ手に、感じる…確かな幸せ。

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
NPC / 草間・武彦 (くさま・たけひこ) / ♂ / 30歳 / 草間興信所所長、探偵

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度さまです ('∀'*)ノ
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ。

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2008.05.24 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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