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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // リビング・デッド

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OPENING

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DEAR = INNOCENCE
CHARGE = \1350000
OPTION = NONE
ORDER = RENY.KURASAWA

REQUEST =
自宅付近を徘徊しているモンスターの討伐要請。
モンスターはリビング・デッド(ゾンビ)
特に危害を加えてくるわけではないのだが、
子供達が怯えてしまい困っている。

***

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子供達が怯えるのも理解るし、依頼人が不安に思うのも当然。
徘徊しているだけで、とくに危害を加えてくるわけではないようだけど…。
それでも、不安になるのも当然よね。相手は魔物なんだもの。
それに…死者が蘇っている…ということも危険視。
蘇らせた人物とかが存在するのかとか、
もしもそういう存在がいるのなら、何の為に。
それとも、この世に何らかの未練があって蘇ったのなら、
その未練が何なのか…その辺りを把握して…。
そして、安らかに。眠らせてあげたいな、と思うの。ね、千華さん…?
依頼人の元へ向かう道中、何とも切なげな表情のシュライン。
千華は淡く微笑み、そうね、とシュラインの心に同意するかのように頷く。

「徘徊ルートは…毎晩、同じですね。この林をグルグルと…」
「そうですか…」
地図を広げ、自宅付近にある林を指でグルッと示しながら伝える依頼人。
問題の魔物は、毎夜、依頼人宅の周りにある林を徘徊する。
出現したのは三日前から。その間、攻撃の類は一切なし。
ただ延々と、ズルズルと体を這わせて、徘徊するだけ。
魔物はリビング・デッド。亡骸の痛々しい姿。
遠く、窓から撮ったものだが、写真もありますと依頼人は見せた。
受け取った写真に写っている魔物は、何とも不気味だ。
溶けている…というか何というか。下半身が、ほとんどない状態。
その為、歩くことができずに這うことしか叶わないのだろう。
情報や依頼内容の確認、報酬の手配処理など、
依頼人とひととおりの交渉を済ませ、
シュラインと千華は、出された紅茶を飲み干し、林へと向かう。
依頼人の傍で不安そうにしている子供達の頭を優しく撫でて…。

*

魔物が出現する時刻は、二十三時。
あと三十分ほどの猶予がある、ということで、
シュラインと千華は、林に聖水を撒き、魔物の進行ルートを限定。
とりあえず、屋敷から離して…それから、ゆっくりと討伐・供養しましょ。
一つ、気になることがあるのよね。魔物の動き…。
この林をグルグルと回っているだけ…ってことは、
この林に何か思い出とかがあるのかもしれない。
もしくは、生前、ここで何かを落としたとか。
思い出と落し物、その両方を探している可能性もあるわ。
もしもそうなら、それを見つけてあげなくちゃ…。
「シューちゃん」
林の中を探索している中、千華がとあるものを発見する。
駆け寄って見やれば、それは…小さな鍵。
何の鍵かはわからないけれど…とりあえず、保管しておきましょ。
シュラインは、持ってきたガラスケースに小さな鍵をしまう。
それと同時に、時刻が二十三時に。
シュラインと千華は、サッと茂みに身を潜めて…魔物の出現を待つ。

依頼人に見せてもらった写真からは把握できなかったけれど。
(そんな……)
出現した魔物、リビング・デッドはシュラインの顔なじみだった。
何度か商品を見せてもらったことのある、露店の商人。
いつしかパッタリと姿を消してしまい、
どうしたんだろう…と心配していたのだけれど。
(そっか…亡くなってたのね)
しゅん…と切なげな表情を浮かべるシュライン。
そんなシュラインの頭を撫でて、千華は言う。
「眠らせて、あげましょ」
「うん。そうね…」
スッと立ち上がり、魔物の元へ。
魔物は、本当にただ、徘徊しているだけ。
近寄っても、こんなに至近距離にいても、一切攻撃してこない。
ズルズルと体を這わせて、聖水を避けつつ…進んでいくだけ。
魔物の後姿に溜息を落とすシュライン。
と、そのとき。魔物の手に、小さな箱が握られていることに気付く。
あの箱は…見たことがある。
そう、露店でお話していたときに、彼の傍にいつもあった箱。
それ、なぁに?と聞いても、教えてはくれなかった。
ただ、宝物だよ、としか。覚えてる。あの箱は、確か…。
タッと駆け寄り、魔物が持つ箱を確認するシュライン。
やはり、箱は封じられている。必要なのは…鍵だ。
いそいそと懐からケースを取り出し、先程見つけた小さな鍵を取り出すシュライン。
すると、鍵を見た魔物がピタリと動きを止める。
探していたのね、この鍵を。ずっと…。
淡く微笑み、魔物に鍵を渡すシュライン。
すると魔物は、モゾモゾと動き、箱の封を鍵で解いた。
カパリと開く箱の蓋。同時に、辺りに吹きすさぶ風。
箱の中には、写真がたくさん…。
辺りに舞う写真は、どれも笑顔の写真。
自分と話し、笑顔になる、客の写真。
その中には、シュラインの笑顔もあった。
キュッと唇を噛み、千華の肩を叩くシュライン。
俯いたままのシュラインに頷き、千華は光を放つ。
包み込まれて、光の中。
魔物は、暖かい光に包まれて、ゆっくりと消えていく。

*

残ったのは、小さな箱だけ。
魔物と一緒に、写真は全て消えた。
しゃがみ、箱を拾い上げてシュラインは淡く微笑む。
その笑顔と一緒に…逝きたかったのね。
気付かなかったよ、写真を撮られていたこと。
ねぇ、私…変な顔で写ってないかな?
ちゃんと、笑ってるかな?
俯き、小さな箱をキュッと胸に抱くシュライン。
頬を伝う涙。千華は、シュラインの頭を撫でて空を見上げる。
綺麗な星空。満天の星々。どうか、安らかに。

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / INNOCENCE:エージェント

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! おいでませ、毎度様です^^
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ…^^

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2008.05.25 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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