コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム 神聖都学園>


五つの封印石〜第二話〜


☆オープニング

「あの学校、まだ強い気配が残ってましたね♪」
 リースは夜道を歩きながら、漆黒と白銀の毛をなで、つぶやいた。
 夜風が彼女の銀の髪をなで、去っていく。月の光が異様に強く、夜の暗闇も照らされ、閑散とした住宅街が良く見渡せる夜だった。
「ん〜……。学園にいるのはあと四つ。夜に闇雲に探すのも面倒ですし〜」
 リースは考え込むように唇に指を当てた。それから、いい案を思いついたというように手をぽんっと打つ。漆黒と白銀はそんなリースの様子を無垢な双眸でみつめているだけだった。
 彼女はそんな漆黒と白銀に対して、にっこりと微笑みかけると、夜道を楽しげに歩き出した。



「転校生を紹介します」
 リースの傍らにいる黒縁めがねの教師が言った。リースはクラス中の視線を一身に集めながら、人懐っこい笑顔で微笑んだ。
「リース・アルムといいます。よろしくお願いします」
 おっとりとしたお嬢様風のリースに対して、生徒が抱く感情はさまざまだっただろう。その大半の感情が興味という名で塗りつぶされる。だが、リースの興味は生徒たちにはない。柔和な笑みを浮かべながらも、思うのは封印されていた化け物たちのことだった。
「席は、一番後ろだ。島野」
「はい」
 短髪の少女が手を上げた。
「島野の隣だ」
「はい」
 リースは短髪の少女を目印にして自分の席につく。
「かわいいマスコットだね」
 島野、と呼ばれた少女がそういってリースのポケットからはみ出しているマスコットを指した。リースはマスコットを見て笑んだ。
「ふふ、私のかわいい子達ですからね〜」
 島野はただリースがそのマスコットを気に入っているだけだと思ったようだったが、その黒い犬と白い犬のマスコットは漆黒と白銀だった。かわいいリースのお友達。
「気に入ってるんだね。よろしく、リースちゃん?」
「はい、よろしくおねがいしますね〜島野さん」


 休み時間になると、恒例の転校生に対する質問攻撃が始まったが、リースはそれを軽々とかわすと、廊下へ出た。
 十字架のペンダントで化け物を探すためだった。学校にまじめに勉強をしに来ているわけではないのだ。
「でも、一回でもいいから、女子コーセーというのをやってみたかったんですよね〜♪」
 つぶやいてマスコットとなった漆黒と白銀に笑顔を向ける。二匹はリースの言葉にあきれたように揺れたが、リースは気にせず歩き出した。
 歩きながらリースは首にかけてある十字架のペンダントを時折眺める。
 しかし、ペンダントに反応はない。もうそろそろ休み時間も終わるというときに、リースは中庭に出た。
 すると、化け物の気配が強くなったのか、ペンダントが青く淡く光りだした。
 リースはそれを見て、満足げな微笑をその美しい顔に浮かべた。
「夜が楽しみです〜♪」
 リースはチャイムの音とともに、授業を受けるため歩き出した。



 大きな満月を背負い、シスター服を身に着けたリースが夜の道を歩いていた。
 彼女を挟むように漆黒と白銀がそばを歩く。
 向かうは神聖都学園の中庭だった。
 学園内に忍び込むと、昼間行った中庭に降り立つ。夜に包まれた中庭はそれだけで不気味だ。
「こんばんは〜」
 リースが声をかけるが反応はない。
 静寂のみがその場を支配する。リースはニコニコ笑いながら、もう一度声をかける。
「はやく出てきてくださーい。ばれてないとでも思ってるんですかぁ?」
「ごめんなさいね、なめていたわ、お嬢ちゃん」
 その言葉とともに空中が光る。赤い光の中から現われたのは妖艶な美女だった。リースが愛らしい少女であるとするなら、まったく対照的といえるだろう。リースは現われた美女をみつめ、うれしそうに微笑んだ。
「あなたも、青龍さんと同じ、封印されていた人ですね〜?」
「ええ。そうよ」
 美女はそういうと、真っ赤な唇を上に上げた。
「私は朱雀」
 言った瞬間に彼女の背に赤い翼が生えた。美しいその翼は夜の闇の中でかすかに光を放っているようだった。
「こんなお嬢ちゃんに捕まった青龍は間抜けね。でも、私は青龍のようにはいかないわ」
 朱雀は翼を大きく広げ、リースに攻撃を仕掛けた。彼女が放った羽が炎となってリースに襲い掛かる。
 リースはそんな炎を笑顔で眺めながら、十字架の中から青龍の力を出した。
「火は嫌いです〜♪」
 青龍の力は水。
 水は朱雀の炎を打ち消していく。すべての炎を打ち消してから、リースは柔和な笑みを崩さず口を開いた。
「漆黒!」
 呼ばれた漆黒はリースに何も言われなくてもわかっているようで、すばやく朱雀に飛び掛る。朱雀は漆黒の攻撃をひらりとかわすと、飛び上がり、リースに向かって降下しながら先ほどのものとは比べ物にならないほど大きな炎の玉を翼で作り出した。
「お嬢ちゃん、ごめんなさいね」
 大きな炎の玉は、リースに向かって一直線に落ちていく。リースはその炎を見て、叫んだ。

「白銀!」

 呼ばれた白銀はリースの周りにバリアを張る。また、リースも白銀のバリアとともに青龍の力を発動させた。二つの大きな力が重なりあい、火花が散った。
 二つの力は競り合う。どちらが勝ってもおかしくない状況。
 そんな状況下にありながらも、リースはバリアの中で微笑んだ。その笑みを見て、朱雀が怪訝な表情を作り出す。
「朱雀さん、後ろががら空きですよ〜」
 油断していた朱雀の後ろから、漆黒が彼女の首筋目掛けて飛びついたのだ。
「きゃぁぁぁぁ」
 朱雀の絶叫が闇夜に響き渡る。
 その瞬間、朱雀の炎と白銀のバリアの力の拮抗の末、あたりに光が満ち溢れた。

 目が開けていられないほどの光。

 しばらくその光はその場にとどまっていた。
 やっとのことで光が収まりそこから姿を現したのは、無傷のリースと白銀、それに漆黒と漆黒が咥えて離さなかった朱雀だった。朱雀は気絶しているのかぐったりとしてピクリとも動かない。
「私の勝ちですね〜、朱雀さん」
 リースはそういって十字架のペンダントを朱雀に近づける。すると、朱雀の体が赤い光となってペンダントの中に吸い込まれていった。
 それを見て、リースは息を吐いた。自分の手を見つめると、握り締める。火は、苦手だったのだ。
 リースを慰めるようにして両側に来た漆黒と白銀に気づくと、またいつものようににっこり微笑んだ。
「お疲れ様でした〜♪でも、もう少しで本性が出るところでした〜。危ない危ない」
 リースはそういいながら、まん丸な満月を見つめ、帰路についた。

END

□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【7495/ リース・アルム / 女性 / 16歳 / 始末屋 】

□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□

リース・アルム様

朱雀は強かったのですが、つめが甘かったようです。
いかがでしたでしょうか。
今後ともよろしくお願いいたします。