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INNOCENCE // 指輪を探して下さい
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OPENING
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DEAR = INNOCENCE
CHARGE = \100000
OPTION = NONE
ORDER = YUMI.SAKURA
DEGREE = class "C"
REQUEST =
<指輪を探して下さい>
森の中で、大切な指輪を失くしてしまいました。
一緒に探してくれる方、いましたら御願いします。
※依頼人はモンスター(危険性はない)
DEGREE CLASS=
CRYZY SS-S-A-B-C-D EASY
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心から好いて愛した人なのね。
こうして、亡くなってからも探し続けているんだもの。
森の中、なくした指輪を探しつつシュラインは依頼人を見やる。
由美、という名の依頼人は、既にこの世を去っている。
とても可愛らしい女性だ、年齢は…十八、九あたりだろうか。
必死に指輪を探す由美。シュラインは千華に御願いし、
森をポポッと光で照らしてもらっている。
キラリと光る反射がないか…目を凝らして…。
懐中電灯を手に、茂みを漁りキョロキョロしつつ、シュラインは由美に尋ねた。
「その恋人さんは…今、どうしてるの?」
「えと…元気に、お仕事してると思います」
「そう…。ねぇ、その恋人って…」
もしかして…と思い、尋ねてみようとしたとき。
由美は、恋人の写真を取り出して見せてくれた。
写っているのは、何とも見覚えのある…眼鏡の男だ。
わぁ、やっぱり。この森で落としたっていうから、
もしかして…とは思っていたんだけど。
ほんと…幅広いわね、藤二くんって。
世間が狭いんじゃないのよ、これは。
藤二くんが広すぎるのよ、ね。
藤二のガールフレンドだった由美。
それなりに楽しく親しくお付き合いしていたのだが、
ある日、由美は不慮の事故で、この世を去った。
一時期、藤二がえらくヘコんでいた時期があったと言う千華。
そういうことだったのか、と理解に至る。
由美は、この森で盗賊に襲われて命を落とした。
藤二とよくデートした、この森。
由美は、一人でも、この森に足を運んだという。
おそらく、盗賊に襲われたときだと思うが、
貰った指輪が指から外れ、そのまま、どこかへと…。
以降、由美は一人、この森をウロウロして指輪を探していた。
けれど、一向に見つけることができない。
やむなく、協力者を募った由美。
IO2に依頼しようかとも思ったが、
この森はイノセンスの庭だ。
イノセンスに所属している者に頼んだほうが効率は良いだろう。
けれど…万が一、藤二が依頼を請けてしまったら。
指輪をなくしたままだということがバレてしまったら。
申し訳なくて、合わせる顔がない。
そう思った由美はタイミングを計り、
藤二が外出した、その瞬間に依頼を提出した。
藤二は昨日から、泊り込みで、とある任務にあたっている。
戻ってくるのは今日の夕方。できれば…それまでに見つけたい。
探索を開始して、一時間半が経過。
シュラインは、どの辺りで襲われたのか、
いつも歩いていた彼女のルートなどを確認しつつ探索。
光の反射が妙な箇所を見つける度、千華は駆け寄ってみる。
だが、見つからない。小さな指輪は、見つからない。
あまりの難航ぶりに、由美は涙目だ。
既に、陽も落ちかけている。
焦る由美につられて、シュラインと千華も必死に探索。
おかしいわね、ここまで探しても見つからないなんて。
亡くなってから、ずっと探しているみたいだし…。
もしかすると、森の動物達が見つけて、
どこかに隠しちゃってるのかもしれないわ。
そうだとしたら…怪しいのは木にあいた小さな穴だとか、
そうそう、こういう複雑に絡まった木の根の間だとか………。
「あっ!!」
木の根の間に手を突っ込んだシュラインは、
コツンと指先にあたった指輪を取り出す。
可愛らしい、桃色の宝石がついた指輪。
指輪の裏には、由美への愛の言葉が刻まれている。
「ありがとうございます……!」
指輪を受け取り、嬉しそうに微笑む由美。
見つからなかったら、どうしようかと思ってたの。
大切な指輪なんだもの。
藤二さんから、はじめてもらった誕生日プレゼント。
来年は、もっと綺麗な指輪をあげるって言ってくれた。
でも、それは叶うことはなくて。
叶えたいとも思わなくて。
いいの。私は…この指輪さえ、あれば。
あなたの想いが、確かに詰まった、この指輪さえ、あれば。
他には何もいらない。他には、何もいらないの。
ゆっくりと、白い砂になって消えていく由美。
良かった…見つかって。良かったね。
シュラインは淡く微笑み、
自身の薬指に光る指輪をキュッと胸に抱いた。
*
「あぁ〜。疲れた。さすがに眠いわ…」
ふぁぁ…と欠伸をしつつ、仕事から戻ってきた藤二。
宿泊先が山小屋だった為、ロクな設備がなかったのだろう。
藤二の髪はモサッとしている。うっすらと無精ひげも…。
セントラルホールで千華と会話しつつ藤二を待っていたシュライン。
シュラインは、タタッと藤二に駆け寄り、微笑んで伝える。
「藤二くん、ありがとうって…」
「あぁ、うん。もう、聞いたよ」
淡く微笑み、目を伏せて返す藤二。
そうですか、それは失礼しました、と笑うシュライン。
のそのそと地下ラボへ降りていく藤二の背中を見つつ、
シュラインと千華はクスクス笑う。
そうね、後で…美味しいケーキでも持っていってあげましょうか。
悲しい心と涙を癒す、とっておきの甘いケーキを。
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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■
0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
NPC / 青沢・千華 (あおさわ・ちか) / ♀ / 29歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / INNOCENCE:エージェント
■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■
こんにちは! 毎度様です (o・∀・o)
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ。
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2008.05.25 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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