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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // 潜入捜査

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OPENING

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DEAR = INNOCENCE
CHARGE = \3500000
OPTION = NONE
ORDER = SEIJI.KASUGA
DEGREE = class "S"
REQUEST =
<マフィア "G-0" の構成員ファイルの入手>
異界各所で悪事を働いているマフィア "G-0" (ジーゼロ)
その本部へ潜入し、構成員のデータが記された、
極秘ファイルを入手してきて欲しいとの依頼。
マフィアを叩く必要はない。
依頼人は、マフィアマニアの物好き。
かなり危険を伴うので、ソロ遂行は禁止。

***

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「……………」
ちーん…と、情けない音が響き渡るかのような状況。
凍夜は無言のまま、ジッと二人を見つめる。
黒スーツを着用した海斗と梨乃…。
マフィア本部への潜入捜査ということで、変装を。
だがしかし、これは…ギャグ以外のなにものでもない。
黒いサングラスをかけて、フッフッと笑っている海斗。
「なー。似合うー?似合うー?かっこいいー?」
クルクル回って、御機嫌だ。御機嫌…なのは結構だが。
どこぞの、しょぼいチンピラか、お前は。
いや、違うな。マフィアごっこをしてるガキとか…その辺りか。
どこから見ても…マフィアには見えない。
そして梨乃。似合ってはいる。それなりに。
普段の格好と比べると、かなりギャップがあって新鮮だ。
でも、梨乃も海斗と同じ…まるでマフィアには見えない。
意気込み・気合はかなりのようで、真剣な面持ちだが…。
それが逆に滑稽だ。何て可愛らしいマフィアか…。
「なぁ…俺、一人で行った方が良いんじゃないか?」
二人に不安を覚えまくりの凍夜はポツリと呟く。
だが海斗と梨乃は、口を揃えて言った。
「「ソロ禁止!って書いてあるだろ(じゃないですか)」」
「…そうだな」
はぁ…と大きな溜息を落とす凍夜。
仕事に文句をいうつもりはないけれど。
さすがに、これは…どうかと思う。
難易度が高い仕事ということで、
凍夜は、この仕事をマスターから直々に請けた。
ソロ遂行は厳禁だから、誰か適当な奴を見繕って連れて行くように、
そう言われたから、同行者を探したのだが…。
本部には、こともあろうに海斗と梨乃しか残っていなかった。
選択の余地なし…。やむなく二人に事情を説明し同行を求めて、
着替えさせたのだが…何とも頼りないエセマフィアが二人生まれただけだ。
どうなることやら…楽しそうな海斗の背中を見つつ、凍夜はゲンナリした。

*

マフィア本部―
映画のような光景が、そこには広がっていた。
行きかうマフィア達は、皆、さも当然かのように"獲物"を携帯している。
あのクスリがどうしただとか、あれの始末はどうするだとか、
そこらじゅうで飛び交っている、物騒な話。
潜入する前に、ザッックリと釘を刺した為、
海斗も梨乃も(特に海斗)、怪しまれるような行動はとっていない。
だが、それはあくまでも、今のところ…な話だ。
先程から、海斗がソワソワしている。
初めて見るものに、好奇心を抑えようと必死になっているのだろう。
頼むから、おとなしくしててくれ…。
まるで父親のような心境だ。
だが、どんなに釘を刺しても暴れてしまうのが子供というもの。
海斗は我慢しきれなくなって、とある壷に触れてしまう。
見るからに高価そうな代物だ。
何だか、よくわからないサインのようなものが入っているけれど…。
大切に扱われているものなのだろう。
ぺたりと壷に触れるだけならまだしも、壷を持ち上げてしまう海斗。
「…馬鹿っ」
慌てて元に戻せ、と言おうとするが、遅かった。
ガシャン―
落とした。何故、どうして、ここでそれを落とせるのか。
お前には、トラブル神でもついているのか。そう思わせる。
まずい…そう思い、凍夜は二人を抱えるようにして駆け出し、
扉が開いたままだった部屋に、ひとまず忍び込んだ。
「お前…何やってんだ…」
低い声で怒りを露わにする凍夜。
ご、ごめんなさい…と謝る海斗。
梨乃も、つられて怯えている。
面倒なことになりそうだが、退却するわけにもいかない。
まだ、目的の極秘ファイルを入手できていないのだから。
だがしかし、この状況…探しにくくなったのは明らかだ。
壷が割れたことで、外はワーワーと騒がしい。
誰だコラァ!出てこいやァ!などとドスのきいた声が飛び交っている。
取り繕っても良いのだが…何せ相手が多すぎる。
奴等を一斉に相手するとなると、ちょっと…面倒だ。
そう思った凍夜は、ヒョコッと顔を出し、廊下を見やった。
ふと、一人のマフィアと目が合う。
どこからどう見ても怪しい…マフィアは懐からナイフを取り出しつつ、
凍夜たちがいる部屋へと近付いてきた。
(よし…)
フゥ、と息を吐き海斗と梨乃に命令する凍夜。
絶対に騒ぐな、そこから動くな、というか一言も喋るな。
迫力ある凍夜の命令に「はい…」と頷きざるをえない二人。

「てめぇら…どっから入りやがったァ?」
ジリジリと近付いてくるマフィア。
凍夜は、海斗と梨乃に背中を向けて、
二人の前に壁を作るかのようにして立ち、マフィアに言い放つ。
「潜入された後に、それを聞いてどうするんだ?」
「……ふっ」
減らず口を…と鼻で笑うマフィア。
凍夜は一歩踏み出し、マフィアに質問を飛ばす。
「構成員ファイルは、どこにある?」
「はァ…?てめぇら…そんなもん手に入れて、どうするつもりだ」
「仕事でな」
「…ははァ。てめぇら…ZEB(ゼブ※G-0のライバルマフィア)の回しモンか」
「残念ながら違うな」
互いに歩み寄って、至近距離で向かい合う凍夜とマフィア。
しばし睨みあったあと、マフィアはチャッとナイフを構える。
その瞬間、伏せていた目をスッと開き…。
ドンッ―
凍夜はマフィアを壁に叩きつけるようにして詰め寄る。
「質問に答えろ。ファイルは、どこだ?」
冷たい眼差しで見下ろされ、マフィアはハッと気付く。
そうだ、こいつ…どこかで見たことがあると思ったんだ。
半年くらい前か…ウチに匹敵するマフィア "BAG" が、突如壊滅したのは。
元BAGの構成員である男に、聞いていたんだ。
銀色の髪に、紅眼、その男は、
夜空に月が灯ると同時に、どこからともなく現れて。
あっという間に、その場にいた仲間を始末していった、と。
生き長らえた、僅かなBAGの残党は、
男を "銀の魔" と呼ぶんだ、と。
聞いていた情報と、目の前の凍夜。
重なるところが多すぎる。
マフィアはナイフを懐に戻すと、
引きつった苦笑を浮かべて尋ねた。
「目的は…ファイルだけ…なんだな?」
「あぁ」
「…そうか。こっちだ」
すんなりと、極秘ファイルが眠る倉庫へ案内するマフィア。
倉庫でファイルを探す凍夜たちに、マフィアは何度も尋ねた。
ウチを壊滅させにきたわけじゃないんだな?と。
何とも情けない姿だ。いっそ、ことのついでに一掃してしまおうか。
こいつらは、悪事を働くことしかしないのだから。
とは思うものの…今回の仕事は、あくまでもファイルの入手。
それ以上のことをやってしまえば、責任を問われてしまう。
「あっ。ありましたっ!」
ファイルを見つけ、凍夜に見せる梨乃。
確かに目的のファイルだと確認した凍夜は、
ファイルでトン、と肩を叩いて淡く微笑んだ。
「じゃあな、後始末…よろしく」
海斗と梨乃を連れ、窓から外へ…脱出する凍夜。
倉庫に一人取り残されたマフィアは、
はは…と苦笑を浮かべ、腰元から銃を抜くと、
引き金を引いて、自らの命を絶った。
組織の機密情報を、怯えた挙句、外に出してしまったのだ。
彼の命は、どのみち、残り僅かだった。

銃声の音に振り返りつつ、海斗と梨乃は苦笑する。
そして二人は、同時に心に刻む。
凍夜を怒らせるような真似は…絶対にしないこと、と。

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

7403 / 黒城・凍夜 (こくじょう・とうや) / ♂ / 23歳 / 何でも屋・契約者・暗黒魔術師
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! おいでませ、毎度様です^^
以前参加して頂いたシナリオ 『アイドル護衛(前後編)』と、
微妙にリンクさせております。気付いてもらえていたら嬉しいです。
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ…^^

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2008.05.23 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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