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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // ライバル記念日

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OPENING

イノセンスとIO2。
双方が、互いをライバルだと認めたのは、いつからか。
時に競い、時に馴れ合い。重ねてきた時間は途方もなく。
出来うることなら、この先も。この良き関係が続きますように。

「っとによー。何してんの、あいつ」
「忙しいんじゃない?」
「違うね。どーせ寝坊とか、そんな感じだよ」
「そうかなぁ…」
「絶対そーだって。あーもー。早く来いやー。冷めるじゃねーかよー」
フォークとナイフを手に、待ちわびる海斗。
彼が待っているのは、IO2エージェントの…ディテクター。
今日は、特別な日。一年に一度の、特別な日。
毎年五月の第三日曜日は、
イノセンスとIO2の面々が一同に揃い、
ちょっとしたパーティを実施する。
双方が互いにライバルだと認め、
握手を交わした、特別な日。
このパーティも、何度目だろうか。
「おせー!マジおせー!腹減って死ぬー!」

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「あらぁ?シューちゃん…可愛い〜」
「そ、そう?変じゃない?」
「すっごく似合ってるわ」
「ふふ。ありがとう」
ライバル記念パーティ。
何だか妙な名前のパーティだけれど…素敵なパーティでもあるのよね。
INNOCENCEとIO2が、互いを認め合った日。
双方に協力してる身としては、複雑なところもあるけど…。
何だかんだで仲良しなのよね。ふふふ。
おめかしして、会場にやって来たシュライン。
会場では、双方エージェントが仲良くお酒を飲んだり、
他愛ない話で盛り上がったり、笑顔がたくさん。
ちょっと、やらなきゃならないことがあるから後で合流すると言っていたディテクターとレイレイ。
シュラインは、一足先に会場で二人の到着を待つ。
「うまー!」
「…あーぁ」
我慢しきれずに料理に手を出してしまった海斗。
隣で皿やカップを並べている梨乃は呆れ顔。
海斗が手をつけてしまったことが発端となり、
他エージェントたちも、こぞって料理を口に運ぶ。
ディテクターとレイレイが到着するまで待とうって言ったのに…。
もはや、こうなってしまっては手遅れ。
梨乃は、はふぅ…と溜息を落として紅茶で一息。
「ふふ、美味しそうねぇ」
二人の向かいに座り、テーブルに頬杖をついて笑うシュライン。
「わぁ。シュラインさん…可愛いですね」
「ありがとう」
「おふ、シュライン!これ美味ひぞー!」
フォークにブッさしたウィンナーを突き出して笑う海斗。
シュラインはクスクス笑って、うんうんと頷く。
まるっきり子供よねぇ…本当、可愛いわぁ。裏表がなくて。
ガツガツと料理を口に運ぶ海斗と、それに呆れる梨乃。
少し離れた場所では、藤二がナンパを楽しんでいて、
浩太、マスター、千華の三人は他愛ない話に笑っていて。
何だろうなぁ、これ。平和…って感じ。
まぁ、普段はどちらもマジメにお仕事してるんだけどねぇ。
楽しむべきところでは、おもいっきり。羽目を外してナンボ。
気分転換を上手にしないと、やっていけないものね。
盛り上がる会場と、溢れる笑顔に微笑みつつ、ワインを一口…。
と、そこで。耳に聞きなれた足音が。
シュラインはカタン、と席を立ち、いそいそと浩太の元へ。
つんつん、と背中を突けば、キョトンと振り返る浩太。
迎えに行こ?と首を傾げれば、浩太は「はい」と微笑み返す。

「盛り上がってるなぁ。よし、酒っ」
「お腹ペコペコです…」
合流して早々、酒を寄こせ〜と笑顔のディテクターと、
美味しそうな料理を前に、いそいそと皿とフォークを準備するレイレイ。
すきっ腹にいきなりお酒を放り込んだら、酔い回るの早いわよ?
って言っても聞かないわよね。ま、倒れたら介抱してあげるから。
クスクス笑いつつも、酌してお酒を渡すシュライン。
よっぽど、お腹が空いていたのだろう。
レイレイは、パクパクと料理を口に運ぶ。
頬についたソースを拭いてあげつつ、微笑むシュライン。
離れたテーブルにいる海斗が、ギャーギャーと何かを叫んでいる。
耳を貸せば…それはディテクターに対する文句。
「遅いんだよ、お前ー!遅刻の罰金払え!」
叫んではいるものの、海斗は笑顔だ。
ディテクターは「黙って食えや〜!」と叫び返して笑う。
「あやつは、本当…いつでもやかましいのぅ」
ディテクターと乾杯しつつ苦笑するマスター。
「あいつが元気じゃなかったら、気色悪いわ」
ワインを飲みつつ、ディテクターは苦笑を返す。
フルメンバー。集結した会場は、更に盛り上がり。
ディテクターの隣にちょこんと座って、シュラインは会話を楽しむ。
こんな時じゃないと聞けないようなことは、どんどん突っ込んでいかなきゃ。
記念日の握手だとか、私達が知らない双方の思い出だとか。
お酒が入ってる所為かな、マスターもちょっと口が軽いみたい。
そんなことまで白状しちゃっていいの?
後で、後悔するんじゃないの?
意外な事実が聞けたりなんかもして…。

(ふぅ。ちょっと飲みすぎたかな。足元が…)
化粧室から戻ってきたシュライン。
雰囲気って怖いわよねぇ。
あんまり飲みすぎちゃダメって理解ってはいるんだけど、
飲まれちゃったりして…明日、二日酔いかなぁ、これは。
大盛り上がりの会場は、人でごった返し。はぐれてしまうと厄介。
えぇと…探偵さんたちのテーブルは、どこだったかしら…。
酔っている所為もあり、足元ふらふら。
加えて、この人混み。目的に到達するのは一苦労。
ふらふらと歩いて、あてずっぽう。
気付いたときには、彷徨い迷子。
(わぁ…すごい光景ねぇ)
シュラインが迷い込んでしまったのは、藤二の舞台。
双方の女性エージェントに取り囲まれて、幸せそうな藤二。
さりげなく腰にタッチしたり、耳に口付けたり。何とも巧みな。
いつか、刺されるんじゃないかしら、本当に。
幸せそうな藤二を見やりつつ苦笑するシュライン。
ぽーっと、ハーレム状態の藤二を眺めていると、
ディテクターがシュラインを発見して駆け寄ってくる。
「何してんだ、お前は」
「ん?あぁ、ごめんね。ちょっと呆気に…」
「私も舞台に上がりたいわぁ…とか思ってたんじゃねぇだろうな」
「やぁだ。思うわけないでしょ」
「だよな。わかってるけどさ」
「ん〜。でも、わかんないわよ〜? ほったらかしにしてたら、危ないかもよぉ?」
「シャレになんねぇこと言ってんじゃねぇよ。ほれ、戻るぞ」
手を引き歩き出すディテクター。微妙に早い足取り。
シュラインは彼の背中に淡く微笑む。
そんなこと、あるわけないでしょ?
ほったらかしにされたって、そんなことにはならないわ。絶対にね。

夜通しパーティ、笑みの舞。
夜空で月が歌っても、終わることなく続く宴。
月が疲れて眠っても、終わることなく続く宴。
笑顔溢れる、記念日祝い。
来年もこうして、微笑み合えますように。
ううん、来年だけじゃなくて…ずっと、ずっと。
毎年こうして、微笑み合えますように。
もちろん…隣に、あなたがいること前提で。

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 青沢・千華 (あおさわ・ちか) / ♀ / 29歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 黄田・浩太 (おうだ・こうた) / ♂ / 17歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / イノセンス・マスター / ♂ / ??歳 / INNOCENCE:マスター(ボス)
NPC / ディテクター(草間・武彦) / ♂ / 30歳 / IO2:エージェント(草間興信所の所長)
NPC / レイレイ(草間・零) / ♀ / ??歳 / IO2:エージェント (草間興信所の探偵見習い・武彦の妹)

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! おいでませ、毎度様です。
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ…^^

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2008.05.29 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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