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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // 擬似ウェディング

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OPENING

デザイナーとしての腕も確かな千華。
とあるショップから、ウェディングクローズの製作依頼。
女性用はドレス、男性用はタキシード。
どちらも純白で、所々にトライバル風の黒い模様。
斬新かつオシャレな完成作に、千華もご満悦だ。
「ん。良い感じ。後は…最終チェックね」
仕上がった衣装を見つつ、むぅ…と考える千華。
最終チェックは、いつも、自身で纏ってみて行う。
男性用の衣服の場合は、藤二に試着を頼む。
今回は…どうしようか。
せっかくだし、誰かに着てもらおうかな?
可愛らしいカップルにでも…。

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嬉しい。うん、嬉しいよ。嬉しいけど…でもでも。
恥ずかしそうに俯くシュライン。
そんなシュラインに微笑みつつ、千華は着付けを。
仕事で製作したウェディング・クローズ。
その試着を、千華はシュラインに頼んだ。
千華が作った服を試着することに抵抗がなく、
彼女のセンスが好みと重なることから、
シュラインは御願いに即答で、いいよと返事をした。
けれどまさか、ウェディングドレスを着ることになるとは思ってなくて。
千華が作ったドレスは、純白のマーメイドスタイル。
所々に刺繍された桃色の華が、更にドレスを華やかに彩る。
鏡の前、千華の手によって、花嫁へと変貌していく自分。
恥ずかしくて照れくさくて…じっと見ていられない。
「はい、完成。…可愛いわぁ。シューちゃん」
「そ、そうかな?大丈夫?変じゃない?」
「うん。びっくりするくらいピッタリね」
「そ、そうかな…?」
チラチラと遠慮がちに見やる鏡。
映る花嫁の頬は、ほんのりと紅く染まっている。
恥ずかしいけど…うん、やっぱり千華さんのセンス、素敵だな。
自分で言うのも何だけど…いつもより…綺麗に見えるような。
なんて…何言ってるのかしら、私。
ウェディングドレスを着たことで、微妙にテンションがおかしくなっている。
くすぐったい感覚にモジモジしつつ、照れ笑いするシュライン。
そのシュラインの頭に、千華はヴェールを乗せる。
「わぁ……」
どこから見ても、立派な花嫁だ。
こんな…感じなんだ。不思議な感じ…。
ヴェールに遮られて、朧になる視界にうっとり。
素敵だなぁ…と純白の抱擁に酔いしれているシュライン。
そんなシュラインの手を引き、千華は歩き出した。
「え、あら?千華さん?何、どこ……」
戸惑うシュラインに、千華はクスクス笑う。
秘密、と言われてしまえば返す言葉はない。
千華が連れて行くのは、本部の中庭。
そこでは、ひっそりと…準備が進められていた。

色とりどりの花が咲き乱れる中庭。
その中心に、シュラインは見慣れた背中を見つける。
トン、と千華に背中を押されて、ゆっくりと歩めば。
振り返る、愛しい人。
白いタキシードに、フロックコートを纏った…花婿。
「…やられたな」
頭を掻き、苦笑するディテクター。
シュラインは俯き、小さな声で呟く。
「そ、そうですね…」
思わず敬語になってしまったのは、高鳴る鼓動の仕業。
花婿姿の彼は、素敵すぎて…直視なんて出来ない。
「では…始めるとするかのぅ」
ポンッと二人の前に出現したマスター。
マスターは、手に聖書のようなものを持ち…牧師のような格好をしている。
戸惑う二人の目に映るのは、ニコニコと微笑み拍手を送る千華と藤二。
シュラインとディテクターが結ばれたことを知った二人の、粋なはからい。
桃色の花びらが舞う中、挙式を。

*

心臓がっ…心臓がバクバク。
嬉しいのよ、うん。こうして式を挙げることができるなんて。
思ってなかったし、っていうか挙げたいなって思ってたし。
でも、でもね。いざ…となると、動揺しちゃって、もう。
うぅぅぅ〜…と困った眼差しで千華を見やるシュライン。
どうすればいいの、というシュラインの眼差し。
「…動揺してるわね」
「まぁ、サプライズだからな」
クスクス笑う千華と藤二。
二人はニッコリと微笑むだけで、助けてなんてくれない。
や、違うの。助けて欲しいっていうのとは少し違うの。
ただね、ただ…こうして向かい合ってるだけで倒れちゃいそうで。
ちらっとディテクターを上目遣いで見上げる。
「…こうなったら、もう。ありがたく祝福されちまおう」
笑って、シュラインの頭にぱふっと手を乗せ言うディテクター。
その言葉に、ゆるやかに解かれていく戸惑いと緊張。
シュラインは、小さく…コクリと頷く。

誓いの言葉。
永遠に、愛することを誓いますか?
いつだって想っていることだけど。
改めて、こうして口にすると…照れくさいね。
マスターが用意してくれた魔法の指輪を交換…。
取られた手、震える指先。
わぁ、どうして…どうしてこんなにドキドキしちゃうの。
抑えようと思っても、抑えられない。
キューッと目を瞑って、真っ赤に染まるシュライン。
ディテクターはクスクス笑い、指輪を薬指にはめて、指先に口付ける。
アドリブっ…そんな王子的なアドリブ…やぁめぇてぇ……。
何度もフラッと倒れてしまいそうになりつつ、進む挙式。
誓いのキスは、もはや拷問に近い。
ディテクターも緊張しているのだろう。
ヴェールを上げる手が、微妙に震えている。
晴れる視界と裏腹に、緊張はピーク。
伏せたままの睫さえも、微かに震えて。
湯気が出てるんじゃないかって思うくらいに顔が熱い。
シュラインの緊張は、自然とディテクターに伝染。
「お前…ちょっと…赤過ぎだろ、顔……」
「ご、ごめんなさい……」
ひー…と俯き、謝るシュライン。
式を見守っている千華と藤二は、拍手でさりげない催促。
その催促に苦笑し、ディテクターはシュラインの顎を上げる。
重なる唇、誓いの口付け。
マスターが鳴らす、魔法の鐘の音に酔いしれて。

*

「シュラインちゃん、可愛いなぁ。攫いたいくらい」
「…勘弁しろよ。お前が言うと笑えねぇ」
「映画みたいな展開よね。それって」
「だ〜から…勘弁してくれ、って」
式が終わり中庭で、幸せの余韻に浸る。
夢のような時間…目を伏せれば、鮮明に。
(は、恥ずかしい……)
思い返して、また頬を染めるシュライン。
そこへ、マスターがスッと差し出す。
「どうじゃ。よく撮れとるじゃろぅ?」
差し出されたのは、記念写真。
並んで映る、純白の二人。
「ありがとう…ございます…」
お礼を述べると同時に、ポロポロと零れる涙。
溢れて零れてしまう幸せの証。
「きゃー。泣かないでぇ、シューちゃんっ」
「女の子を泣かせちゃ駄目でしょ〜。マスター」
「わ、わしか?わしが泣かせたのか?」

幸せだよ。もう、何も…何もいらない。
あなたがいれば、他には何も。
愛しい人の腕に身を委ねて、酔いしれる。
零れる涙は、そのままに。

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
NPC / ディテクター(草間・武彦) / ♂ / 30歳 / IO2:エージェント(草間興信所の所長)
NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 青沢・千華 (あおさわ・ちか) / ♀ / 29歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / イノセンス・マスター / ♂ / ??歳 / INNOCENCE:マスター(ボス)

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! おいでませ、毎度様です^^
是非また、御参加下さいませ…^^

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2008.05.29 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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