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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // 擬似ウェディング

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OPENING

デザイナーとしての腕も確かな千華。
とあるショップから、ウェディングクローズの製作依頼。
女性用はドレス、男性用はタキシード。
どちらも純白で、所々にトライバル風の黒い模様。
斬新かつオシャレな完成作に、千華もご満悦だ。
「ん。良い感じ。後は…最終チェックね」
仕上がった衣装を見つつ、むぅ…と考える千華。
最終チェックは、いつも、自身で纏ってみて行う。
男性用の衣服の場合は、藤二に試着を頼む。
今回は…どうしようか。
せっかくだし、誰かに着てもらおうかな?
可愛らしいカップルにでも…。

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「あ。かおりん、見つけたっ」
「へっ…」
ガシッと腕を掴まれてキョトンとする香織。
腕を掴む千華は、満面の笑み…。香織は首を傾げて尋ねる。
「どうしたんですか?」
「探してたのよ、あなたを」
「私を…ですか」
「うん。ちょっと、来てくれる?」
「あ、はい。あの…どこへ…って、あの…」
グイグイと手を引っ張られて連れて行かれる香織。
強制連行…に近い。というか、それ以外の何物でもない。
引っ張られるがまま、首を傾げっぱなしの香織。
連れて来られたのは、千華の部屋。
部屋に入って早々、目に飛び込んでくる真っ白なドレス。
(ウェディング…ドレス…?)
「はい、じゃあ、服脱いでくれるかしら」
「え?」
「はい〜。モタモタしな〜いの。待たせてるからね」
「え?あの、待たせてるって…きゃ、あ、あの…ちょっ…」
ベリベリと服を剥がされる香織。
抵抗する隙を与えず、サクサクと着替えさせていく千華。
途中、香織は何度も言った。
自分には、似合わないですから…とか、
どうせ着せるなら、他の人のほうが…とか。
俯き、遠慮がちに訴えるものの、千華は聞く耳持たず。
どんどん着飾られて…完成していく花嫁。
鏡に映る、花嫁姿に照れて更に深く俯いてしまう香織。
何て綺麗なドレス。
汚れなき、純白のドレス。
モジ…っとする度、ふわふわと揺れる甘いシルエット。
髪も高い位置で結って…白い花のバレッタを。
アクセサリーは控えめに…小振りなホワイトパールのネックレスを首へ。
仕上げに、と吹き付ける香水はシトラスの香り…。
ふわふわのヴェールを被せて…完成。
「よし。完璧ね。うん、可愛いわぁ。似合う」
「そ、そうでしょうか…」
未だに鏡を直視できない香織。
どう考えても、似合っているとは思えない。
こんな華やかなドレスを纏っているなんて…違和感が拭えない。
「じゃあ、行きましょうか」
「え?どこに…あ、あの…」
またもや、手を引かれて連れて行かれる香織。
千華さんって、こんなに強引だったかな…。
何だか、すごく嬉しそう…楽しそう…?
どこへ、連れて行くつもりなんだろう。
あ、そういえば…さっき、待たせてるからって言ってた。
待たせてる…って、誰をかな?
その人のところへ、行くのかな…?
そんなことを考えつつ、千華に手を引かれる香織。
連れて来られたのは、本部の中庭。
色とりどりの花が咲き誇るそこで、
"待たせていた"人物とバチッと目が合う。
(うわぁ…)
鏡に映る自分よりも直視できない。
できるはずもない…。
待っていたのは、ディテクターだった。
白いタキシードにフロックコートを纏ったディテクターは、普段と全然違う。
何ていうか…大人って感じがして…。
戸惑いを隠せない香織の背中を押し、中庭にある噴水前へ押しやる千華。
噴水そばにあるベンチには、藤二が座って…微笑んでいる。
「っはは。可愛い花嫁さんだこと」
煙草を踏み消し、よっ、と立ち上がる藤二。
藤二は、じゃあ始めましょうかと言ってニコッと笑った。
「あ、あの…始めるって何を…」
俯いたまま尋ねる香織。
すると藤二と千華は、声を合わせて言った。
「「結婚式」」

*

「玩具っぽくて申し訳ないんだけど。擬似、っつぅことで勘弁な」
ガラスケースに入った綺麗な指輪を二人に渡しつつ言う藤二。
おそらく、魔法で構成されたものなのだろう。
飾られている宝石が、七色に輝いている。
指輪を渋々受け取り、溜息まじりに笑うディテクター。
たまたま本部近くを通りかかったら、これだもんな…。
何となぁく、嫌な予感はしたんだよ。
ものっすごい笑顔で近寄ってくるもんだから…。
怪しいなとは思いつつも着いて行ったのは、悟ったからだろうか。
何を言っても、連れて行かれることに変わりはないのだ、と。
「じゃあ…指輪の交換を、どうぞ」
ニコッと微笑み、香織とディテクターの背中をポポン、と叩く藤二。
戸惑ったままの香織。
ディテクターは、クスクス笑って耳元で囁いた。
「諦めろ。もう、こうなったら何言っても無駄だ。こいつらは」
「え、あ、あの…は、はい」
「うん。じゃ、手…借りるよ」
(うわ…)
取られた左手、薬指にはめられる虹色の指輪。
ドキドキ高鳴る鼓動。
本当の結婚式ではないけれど…緊張するに決まってる。
だって、相手が。相手が…ディテクターさんなんだもの。
ぎこちなく、ディテクターの指にも、指輪をはめかえす香織。
触れているところから、何もかもがバレてしまうんじゃないだろうか。
爆発しそうなくらいの鼓動だとか、熱い身体だとか、全部、全部…。
恥ずかしさからキュッと目を瞑る香織。
そこへ、千華は追い討ちをかける。
「じゃあ、次は誓いのキスね」
「えっ!?」
咄嗟にバッと目を見開いて顔を上げる香織。
見やる藤二と千華は、ふっふっふ…と不敵な笑みを浮かべている。
これもまた、諦めねばならない展開を示唆している。
キスって…人が見てる前でするなんて…はしたなくないですか。
っていうか、そんなの恥ずかしくて…耐えられないよ。
頬を赤く染め、う…と俯く香織。
そんな香織の肩をキュッと掴むディテクター。
ビクリと揺れる肩に、苦笑。
ディテクターは「まさか、こんな形ですることになるとはな」と呟き、
少し身を屈めて、いとも容易く。香織の唇に軽く触れる。
ほんの三秒間。されど、三秒間。
永遠にも感じられる一瞬。
唇に確かに残る感触に、香織はフラッとよろめいた。
それをディテクターが支えると同時に、藤二と千華が拍手を送る。
「おめでとう」 そう、お祝いの言葉を添えて。

二人の擬似結婚式をハッと思いついた千華は、
藤二に相談して、迅速に決行へとこぎつけた。
実際に、式を目の当たりにして完成度を確かめようとしたのが目的。
偽の式ではあれど、千華は出来栄えに満足な御様子。
途中で撮った写真を見やりつつ、
ああだこうだと笑いながら出来栄えについて盛り上がっている藤二と千華。
楽しそうな二人を見やりつつ、ディテクターは、やれやれ…と肩を竦めた。
隣に座っている香織は、俯いたまま。
聞いてみたいこと、あるんだけど…どうしよう。
似合ってますか?これ、変じゃないですか?
ただ、それだけなんだけれど…香織は照れて尋ねることが出来ない。
俯いたままの香織の横顔に、何を思っているかを悟るディテクター。
ディテクターは、ポンと香織の頭に手を乗せ、目を伏せて小さな声で呟く。
「似合ってるよ。可愛い」
「あっ…ありがとう、ございます…」

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

7440 / 月宮・香織 (つきみや・かおり) / ♀ / 18歳 / お手伝い(草間興信所贔屓)
NPC / ディテクター(草間・武彦) / ♂ / 30歳 / IO2:エージェント(草間興信所の所長)
NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 青沢・千華 (あおさわ・ちか) / ♀ / 29歳 / INNOCENCE:エージェント

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! おいでませ、毎度様です^^
是非また、御参加下さいませ…^^

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2008.06.02 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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