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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // カラオケ・パーティ

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「すげー。バッチリじゃん」
「…これは、確かに凄いかも」
「マスターも甘いよなぁ。海斗の我侭を聞いてやるなんて」
「あら。マスターもノリノリだったみたいよ?」
「うわぁ…モニター、すごい大きいですね〜」

 イノセンス本部、二階に完成したカラオケルーム。
 海斗の要望(というか我侭)で作られたもので、
 部屋にある必要道具は、全てマスターの魔法で構成されている。
 一体何人 入るんだ…というほどに広いカラオケルーム。
 その出来栄えに海斗はもちろん、他のトップエージェント達も大満足の御様子。

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 (………?)
 本部に来てみたものの、がらんどう。
 静まり返っている。一体、何事か?
 首を傾げてテクテクと歩くミリーシャ。
 そういえば……こういう映画、あったような気がする……。
 不安な気持ちで歩く中、ふと聞こえてくる音楽のようなもの。
 二階奥から、重低音と共に響いてくるそれに、
 ミリーシャは更に首を傾げて階段を上った。
 階段を上りきると同時に、ヒョコッと死角から現れた梨乃。
 さすがに、ちょっとビックリ。
 ビクッと肩を揺らしたミリーシャ。
 そんなミリーシャに、梨乃はニコリと微笑んで言う。
「みんな、カラオケしてますよ」
「カラオケ……?」
「うん。こっち、こっち」
 手を引かれ、連れて行かれるカラオケルーム。
 つい先ほど完成したばかりだという。
 中に入れば、テーブルの上に乗っかって、海斗と浩太が熱唱している。
 倒せーだとか、悪を滅せーだとか、スペシャルキャノンーだとか。
 とても気持ち良さそうに歌っているが、何だかサッパリ。
 梨乃の説明によると、二人が歌っているのは、
 ロボットアニメの主題歌らしい。
 千華から受け取ったレモンスカッシュを手に、
 ちょこんと座って首を傾げているミリーシャ。
 アニメやら特撮やら……海斗と浩太が歌うのは、そればかり。
 そっち方面に激しく疎いミリーシャは、ついていけない。
 まぁ、楽しそうだし。 それは何よりなんだけれど。
 お前ら歌い過ぎだ、と苦笑してマイクを奪った藤二。
 すぐさま開始される、藤二のショータイム。
 藤二が歌うのは、甘ったるいラブソングばかり。
 これはこれで、くどいというか何というか。
 しかも、マイクの持ち方が変。
 かっこつけてるのだろうけれど、変だ。
 (……持ちにくそう)
 歌本をパラパラとめくりつつ、心の中でツッこみを入れるミリーシャ。
 確かに、持ちにくそうな上に歌いにくそうだ。
 藤二は完全に自分に酔っている御様子。
 ミリーシャをジッと見つめて歌ったりもするが、
 残念ながら、まったくもって、その眼差しに気付いていない。
 手応えのなさにガックリしつつ、交替。
 お次は梨乃のステージ。
 曲が始まると同時に、ミリーシャは目を丸くした。
 何て激しいパンク。選曲もさることながら、歌っている時の梨乃が……別人だ。
 髪を振り乱して、熱唱シャウトしまくっている。
 ものすごい変貌ぶりに、キョトンとしてしまうミリーシャ。
 驚くミリーシャを見つつ、海斗はケラケラと笑う。
 何でも、梨乃はマイクを持つと性格が変わるタイプらしい。
 普段、物静かなだけに、ギャップが凄い……。
 それぞれが自慢の歌声を披露する中、
 ミリーシャが一番関心を抱き、聞き入ったのは千華の歌。
 何を言ってるのか、さっぱり理解らない。異国の民謡らしい。
 すごい……綺麗な歌……歌っているのは、何語なのかな……?
 千華が歌っている最中だけは、ミリーシャは真剣な表情。
 何て言ってるのか、はっきりとは理解らないけれど、
 耳じゃなくて心で聴くと、何となく理解るような気がするから不思議。
 聞き入っているミリーシャの肩を叩き、海斗が催促する。
「はい、次はミリーの番だぞー」
「あ……うん……」
 我に返り、リモコンを操作して曲をインプットするミリーシャ。
 選曲は、例によってロシアの歌謡曲@メドレー。
「お。十八番でキタね」
「わー」
 微笑み、拍手でミリーシャをステージに送る藤二と梨乃。
 マイクを手に、テクテクとステージに向かうミリーシャ。
 何だか、いざとなると恥ずかしいような。 変な気持ち……。
 さぁ、スタート……。ミリーシャのショータイム。
 ポーリュシカ・ポーレで、掴みはオッケィ。
 どこから出してるのか、と耳を疑うような美声。
 その場に居合わせたメンバーが、一斉に鳥肌と身震い。
 透き通るような美声は、聞き入ってしまう魅力満載だ。
 そのまま、流れるように……お次は、モスクワ郊外の夕べ。
 哀愁漂う曲。目を伏せると、綺麗な景色が浮かんでくるような。
 何て不思議で、繊細な曲だろう。
 お次は、可愛らしく。ポップス編曲の蒼いプラトーク。
 軽快なリズムと、切ないメロディのマッチが凄まじい。
 クルクルと回り、ステップを交えながら歌うミリーシャは、尋常じゃない可愛さだ。
 気のせいか? 蒼いプラトークを持って舞っているように見えるのは……?
 で……シメは、カチューシャ。
 これもまた、軽快なリズム。
 歌いだして早々に、海斗がケラケラ笑って言った。
「母さんチョップ!って言わなかった? 今」
 言ってない。 空耳です。 確かに、そう聞こえるのがまた面白いところだけど。
 ついでに、もう一曲。 おまけで、Go Westを。ロシア語で。
 バンドサウンドっぽくアレンジされているものを選曲した為、
 原曲のしっとりとした雰囲気というか、悲壮感のようなものはなく。
 むしろ壮大で、色んな意味で大きさを感じる曲。
 どこかで聞いたことがあるような……? と首を傾げるメンバー。
 地味に、色んなところで流れてるから、耳にしてるかもしれない。
 特に、スポーツ好きな海斗と浩太なら、一度は耳にしているだろう。
 全曲歌い終えて、ペコリと頭を下げるミリーシャ。
 すっかり聞き入ってしまった。
 我に返ったメンバーは、拍手喝采。
 何というか、ミリーシャの歌は、商品として成立するものだと思う。
 金を払わなくて良いのか? と疑問を抱かせてしまうほど。
 それほどに、ミリーシャのパフォーマンス能力は素晴らしい。
 さすが、人気サーカスの団員、といったところだ。

 日が暮れて、空に月が灯っても。
 尚も続く、カラオケ・パーティ。
 歌い疲れて、バタリと眠っている者もいるけれど、何て楽しい夜だろう。
 こんなに楽しいと思えたのは、久しぶりかもしれない。
 時間の経過が、あっという間。
 そろそろ帰らなきゃ。 そうは思うけれど止まらない。
 アンコールに応えて、数え切れないほどの歌を披露する中、ミリーシャは実感する。 
 私は、歌うことが大好きなのだと。

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 ■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

 6814 / ミリーシャ・ゾルレグスキー / ♀ / 17歳 / サーカスの団員・元特殊工作員
 NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
 NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
 NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / INNOCENCE:エージェント
 NPC / 青沢・千華 (あおさわ・ちか) / ♀ / 29歳 / INNOCENCE:エージェント
 NPC / 黄田・浩太 (おうだ・こうた) / ♂ / 17歳 / INNOCENCE:エージェント

 シナリオ参加、ありがとうございます。
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 2008.06.19 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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