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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


ワラワラ動画(SR)


 ワラワラ動画とは一体なんぞや?
 某企業が運営する動画投稿コミュニティの一つであるが、画期的なのは視聴者達が投稿された動画にリアルタイムでコメントを付けられる事だ。面白いシーンで“ちょwwwおまwwwwKYwwwwww”、悲しいシーンで“うわあああああああ”、変態なシーンで“変態という名の紳s(ry”、ソニック生きろなシーンで“ソニック生きろ”等、それぞれ自由にコメントが出来る。
 何より革命的なのは、過去や未来に存在する自分以外のユーザーとリアルタイムで感動を共有出来る事である、と、評する者も居るこのサービスは、現在、500万人を超えるユーザーを獲得し、最早ブームを超えて、ネットユーザーにとってのデフォルトへと成り代わる趣がある。まぁ、その為にはまだ乗り越えねばならない障害や問題が積み重なっているっぽが、ともかく、
 ゴーストネットOFFにもこの新しい波は確実に来ている訳で。
 で、魔法以上に愉快で不思議でオカルトな事が好きな娘が、これを利用しないはずが無い訳で――
「という訳で、ワラワラにゴーストネットOFF名義で投稿する動画撮ってきてよ☆ あと、お勧めの不思議動画もあったら教えてねー☆」
 自分のHPの更新はせんでええのか、と突っ込むのはやめといた。(動画が切欠で来場者数増えるかもしれないし


◇◆◇

 ワーラワラ動画♪
 ワランゴが、午前、二時くらいを、お伝えします。
 プッ――プッ――プッ――ッポー――

「んしょ、よいしょ、よいこらしょ」
 掛け声である。
「んしょ、よいしょ、よいこらしょ」
 掛け声なのである。
「んしょ、よいしょ、よいこらしょ」
 掛け声、というのは気合をいれる際の発声、元々は他者とタイミングを同調させる為のものであるが、場合によれば単独で行われても差し支えない。であるからして、
「んしょ、んしょ、……よいこらしょ!」
 彼女の行動にそれが伴う事にはつっこみどころは無かった、ツッコミ動画というタグをつけられる事はないのである、まぁもしこの有様を動画にして投稿したとして、その際つけられるタグはこんな所だろうか。
 “こいつ、動くぞ”と。
「はふぅ〜、登頂完了でぇす」
 そりゃ人間だったら動いても仕方ないさ、画だって株だって動くんだから、そんな事は当たり前、だが、
 もしもそれが10cmしかないちっちゃなちっちゃな人形ともなれば話は別で、であるからして、
 ねんどっぽいふぃぎゅあの様なサイズの小人さんが――
 ――足元からよいこら昇り誰かさんの頭上に仁王立ちしてたなら
「ただいまよりぃ、ゴーストネットOFF企画、ワラワラ動画投稿大会を始めるでぇす!」
 そう宣言したならば、拍手がぱちぱちと送られて、なんだか偉くなった気分で小人はますますふんぞり返った。
 さて、この小人さんの名前は露樹八重、諦め気味に彼女の舞台を提供してるのはご存知雫、そして一人拍手を送ってるのは久良木アゲハ、である。
「なんて面白そうな企画! これで私もワラ動デビューですね! ていうかしました!」
 とアゲハが叩いてた手を組んで申せば、
「ふっふーん、今回用意した動画で、世のアレ好きはもうメロメロでぇす」
 と八重も小さな体から自信気に語り、
「動画投稿してから一週間放置しておいてたのよね☆ 一体どんなコメがついてるか楽しみ☆」
 と主催者も笑顔で語って。
 女三人、ニコニ……ワラワラして話を咲かせていた、ネットカフェというと不健康な場所というイメージがつくが、少なくともこの三人の周囲は、まるでハイキングのように晴れやかだった。
 ただし、この周囲から僅か3メートル外れると――
「絶望した!」
 突風のように、
 いきなり、急に、響いた声。三人の談笑が一時停止のボタンが押されたように途絶え、全員振り向き何事か、という顔になったのだが、
「愛の無いネット社会に絶望したぁ!」
 ああ、なんだ、
 何時もの事か、と。
「……あのう、なんか風宮兄さん、へこんでいますけど」
「あーあれはね、だって」
 アゲハの問いを、雫は一言でまとめた。
「風宮だから☆」
 いやそんな一言でまとめないでくださいよ雫さん俺凄く打ちひしがれているんです幽霊電車に乗った男君を見習ってネットを彷徨ってついに運命の人と出会ったと思って告白したのにmuriって全角ボタンすら押されずに断られてあところで八重さん俺と付き合ってくれませんか?
「嫌でぇす」
 風宮駿は、つまり、そういう男なのである。彼が度々放つ四つんばいになる落ちこみポーズは、新体操で高得点がつけられそうなくらい、隙がなく、美しい。


◇◆◇

 waratarou
 ID:1009
 入会状態:一般
 入会時期:無印
 年齢:None
 性別:None
 職業:None
 容姿:None
 性格:None

◇◆◇


「ほえ? この項目はなんでぇすかアゲハしゃん?」
「あ、設定してなかったんですね。いわゆるプロフ欄で、動画見るだけだったら余り意味ないですけど、動画を公開するんだったら設定しておいた方がよかったもので」
「わわわ、今すぐやるでぇす!」
 あ、いや、もう動画を投稿して一週間経ったんだから、泥縄なような気もしたが、ちっちゃな体をめいっぱい使ってキーボードをてしてしする姿は、鼻血が出そうなくらい可愛らしいのでOKにしておいた。思わずふにゃあとなるアゲハ。
「……しかしこの項目、出身地は設定しなくていいんですかね、後趣味の欄とかもありませんし雫さん、結婚してください」
「うーん、ワラワラ動画に登録してる人ってどういう訳かほとんど東京住まいみたいだし、趣味も怪談がデフォルトってワラワラ生放送でアンケート出たらしいよお断りだ☆」
 3メートル先で風宮駿はくずおれた。


◇◆◇

 yaeyae_ni_site_yannyo
 ID:1009
 入会状態:一般
 入会時期:無印
 年齢:910歳
 性別:女性
 職業:時計屋兼マスコット
 容姿:10cmの見た目幼児、黒いローブ着用
 性格:こまっしゃくれ

◇◆◇


「わぁ、かわいい」
 八重が雫と共同で撮影してきたという動画を開いてのアゲハの第一声は、まず、それであった。席に座っていたのなら、速攻で“かわいすぎるwww”とコメントしていた事であろう。マウスの横では八重が、さっきのように仁王立ちでえっへんとふんぞりかえってる。
 彼女が投稿した動画のテーマはズバリ、ぬこであった。
 ぬこ、それはワラワラ動画でも一大ジャンルとなっている柔らかくてモフモフでにゃあと鳴く動物さんの事。中でも、愛くるしい猫達がバケツにおさまってる様子が投稿され、写真集として出版される程に人気が出た事は記憶に新しい。
 老若男女誰に対しても一撃必殺の威力を持つその愛くるしさは、とがった爪やザリザリの舌よりもよっぽど凶器かもしれない。しかし敢えて言おう、殺されて本望と。
 萌え死ぬ、というフレーズは、何も二次元だけの専売特許ではないのである。全くあの寝むりこける姿ときたら、ナイフよりもずっと深く胸に入り込み、ぬこ同士が寄り添うようにじゃれあう様子など、ハンマーよりもがつんと頭蓋を叩く。ああ、ぬこ、愛しいぬこよ、
「ああ、かわいい……」
「おお!? アゲハしゃんがすっかりぬこの魅力にメロメロでぇすよ! やりましたでぇす雫しゃん!」
 いえーいと撮影協力者とハイタッチ決めようと思ったが体のサイズが合わず、なので雫は人差し指の腹を向けた。いえーいとそこにタッチする八重。うっうー。
 さて、それ程までにアゲハが骨抜きにされ、思わずalt+jの改行コマンドを使い、ぬこのAAをこしらえてコメントしそうになる程の、ぬこ動画とは如何なるものやと言うと、
 単純な話、視点が八重からなのである。
「きゃあ、猫が」「ぬこでぇす」「ぬこが鼻を擦りつけて来た、かわいい」
 猫が顔を摺り寄せる、普通ならばそのシーンただの人間が撮影したのであれば、だいたい上からの構図になるであろう、しかし、
 身長10cmの八重が小型カメラを自慢の怪力で担いで撮影すれば、これはまた貴重な構図となる。しかも、カメラは固定されてる訳じゃない。八重が走ればカメラも走る、八重がぬこの背に乗ればカメラもぬこの背に乗る。
 最初の内はただぬこの可憐さにまったりしていたワラワラユーザも、後半になるにつてその事に気付き始める。“一体どうやって撮影してるんだ!?”とか、“ちょっと待て今踏まれなかったか”と、撮影方法への疑問が占拠し始める。が、
「わあ、これはっ」
 ――動画オフ機能

 ちょwww何この楽園www
       ぬこどんだけ!   三毛は俺の嫁
  おもちかえりいいいいいいいい
   うわああ塗れたい! ぬこの海に塗れたい!
一億匹と二千匹居るんじゃね!?
                   ぬこ達かわいいよぬこ達
        水色自重www

「ふふ、これこそぉ」
 露木八重、誇らしげに、
「ぬこユーザの皆様もなかなかお目にかかれない! ぬこの夜の集会でぇす!」
 何処かにある空き地で三日月の下、何十匹もの猫達が、輪を作ったり土管の上で寝たりにゃあにゃあ歌うように鳴く様は、もう和むしかなかった。アゲハの端正な顔も、まるで大福のように緩んでいる。
「八重ちゃん、これ、この動画凄いですよ! 再生も凄く多いですし、ゴーストネットOFFの宣伝にも」
「えっへん! でぇす!」
 嬉々とするアゲハと八重、であったが、
 そこではぁと、大きなため息が一つ。……雫ちゃん?
「どうしたんですか、すっごく良い動画じゃないですか?」
「このままで終わったら良かったんだけどねー」
「?」
 はてな、と疑問符を頭の上に浮かべたアゲハだったが、不意、
 動画が終盤あたり、おまけと出て、あれ何このコメント? “総員退避!”?
 ――あれ猫の集会で何か野菜もってツインテのカツラ被った八重さんが
『だっだっらーべりばりぼんびりーどりっひふんばらばん!』
「!?」
『のんのんのんおいーるよりおいるおいるつなつなたんべんよん!』
「……」
 説明しよう、
 八重は、凄い、
 音痴。(ジャイアニズム)
「動画の締めにしたんでぇすけど、なぜか評判悪いんでぇすよあたしの《oiltuna》、聞いてくれたぬこさん達もおやすみしちゃうくらい、ヒーリングボイスなんでぇすけどねぇ」
 気絶や気絶、これ気絶。
 流れるコメントも気付けばredに染まっていた。その悲鳴はbigに叫んでいた。そして呆然としながら動画を見終わった後、最初は見落としていたタグに気付いた。
 “何故歌ったシリーズ”、と。


◇◆◇

 age_age_ha
 ID:3806
 入会状態:一般
 入会時期:無印
 年齢:16歳
 性別:女性
 職業:高校生
 容姿:アルビノ体質、髪は銀、瞳は赤、私服のセンスは個性的
 性格:お人好し

◇◆◇


 ゴーストネットOFFに、奇妙な人物が現れた!
「じゃーん!」
「……何してるでぇすかアゲハしゃん」
 正体は、アゲハであった。けど小さな手で思わずそうつっこまずには居られなかった程格好が奇異というか、いや、普段の私服も他人よりちょいとセンスがズレてるけど、ともかく、
 メイド服はいいだろう、それも秋葉原の喫茶で見かけるような媚びた物ではなく、英国から空輸してきたような伝統が漂うクラシカルな物となれば、尚更に。
 黒いウィッグを髪につけてるのもいい、銀髪が目立つ事を普段から苦手とする彼女、素性バレを防止する要素は、動画投稿の際徹底した方が良い。だが、
 いくら顔バレ防ぐ為だからって、
「それは無かった気がするんでぇすが……」
「え、そうですか?」
 今の言葉が、アゲハの表情を伴って言われたのなら、キュンと来るほど可愛いだろうに、残念ながらアゲハは被り物をしている。
 中華街に売ってある大きい人の仮面を。
 ……詳細を説明するのは難しいが、あれである。人の頭の数倍の大きさで、やたら丸く、肌は白くて垂れ目で笑い、んで、髪は団子みたいなのがつるつるてんの頭にリボンみたいについてるという、あの仮面なのである。
 クラシカルなメイド服、中華街の仮面、合体!
 これなんてクリーチャー?
「一体その姿でどんな動画を……」
「んー、取り合えず見てみようよ……」
 正直余り期待せずにアゲハのマイリストにある動画をクリック、この格好でまっまっまいうー、と、腰振りダンスでもするのかと思った、が、
「おお!?」
「こ、これは☆」
 最初に注目したのは再生数、なんとまぁ、八重のぬこ動画を越えている。
 次に見たのは動画本編、うわ、わ、わ、「うわあ!?」

 タグ一覧
 衝撃映像 完全に実写 CG涙目 神編集 中の人 ガンアクション 野生のメイド 

 ――ふざけてるようにしか見えないあのいでたちをした彼女が
 両の手に銃を携えてる姿をくるりと回りながら撮影するシーンから始まる――
 映像が切り替わる、場所は、都会の街並み、長い階段をばっさり捉えていてそしてその手すりを、
 スケートボードに乗って滑り落ちてくるアゲハinクリーチャー。
 高速で下ってくるボーダー、向かってくる、こっちへ、ぶつかる! そう視聴者が息を飲んだ瞬間、その場で彼女は跳ね上がり頭上を越えた。太陽を背景に宙へ舞うメイド、そこでスケードボードを蹴り上げ、着地と同時にそいつを受け取る。
 BGM、激しい洋楽、まくしたてるようなライムの中で、ボードをフレームアウトさせ、踊るように身をひるがえしはじめるアゲハ、バレェのように回って、体を斜めにしながら、アスファルトへ自殺するかのように頭を投げ込む、
 大きな頭が接触すると同時、彼女の細いはずの両腕はバネのように機能し、飛び込んだ勢いをその侭立ち上がる力へ転嫁、重力の法則に従い置き去りにされる被り物、現れる黒い髪を見て、流れる、可憐、や、美しい、という文字、
 彼女はそのままあとずさり、ヒールキック、仮面を蹴り上げ再び装着しそし

 ワーラワラ動画♪
 ワランゴが、午前四時くらいなのと、ソニックさんごめんなさいとお伝えします。
 プッ――プッ―

「うわぁ、時報うぜぇでぇ」「ちょっと待ってくれよ!?」
「何でぇすか風宮しゃん、今いい所なんでぇすよ?」
「いや聞き逃せない、聞き逃せないですから! なんか今俺時報にすら振られてなかった!? さっきまで全然こっちの話題に関わってなかったのに!?」
「もう黙ってくださいでぇす、ワラワラ市場のCMも終わりましたでぇすし」
「な、なんか扱いが、酷い! あんまり触れてもらってないというか俺と付き合ってください!」
無理ええとどこからだっけああそうそうそしてそこで切り替わる場面、今度は公園、遠巻きから奇異なるアゲハを見てざわめくギャラリーの姿も確認出来る、が、
 後ろの滑り台から流されてきたスケートボードに、音もなくふわりと乗ったかと思うと、
 そのままブランコへと向かい、そのフレームを、登って見せれば、
 ざわめきは一瞬で消え、ブランコの頂点で捻りを加えたエアトリックを魅せれば、
 地鳴りのような歓声が起こり、着地した瞬間満足そうに親指をたてる――刹那、
 アゲハに左右から投げられた空き缶、
 だがそれも予定調和か、
 二つの空き缶に、二つのエアガン、
 交差した腕引く引き金、
 二発の銃弾、
 空き缶というゴミが、感嘆を呼ぶ銃弾の得物へと昇華する。
 絶妙な角度を撃たれた缶は真上へ跳ね上がり、二発、三発と、追加され、
 ――ジャックポット
 最後にはくるくると回りながら、空き缶という躯は、彼女の足元に堕ちた。
 BGMが、終わる、
 歓声が支配する、
 動画の中も、
 その外も。
 埋め尽くされる賞賛の中、再生は、終わる。
 終わる。

「……あ、あの」
 おずおずと、アゲハ、
「どうでした、でしょうか?」
 とりあえず奇妙な仮面を外して、画面を食い入るようにみつめていた二人に、問いかけるアゲハ。流れるコメント自体は好意的な物が多かった気もするのだが、コメントもせず見ていた二人の反応は「凄いですねアゲハさんあのお付き合いを」「あ、ご、ごめんなさい。それでどう」気になって。
 八重が、振り向いた。雫が、振り向いた。二人は、無表情だった。
 しかし無言のサムズアップ。
「……あ、良かったぁ」
 心底ほっとしたのか胸を撫で下ろすアゲハ、その横でカクカクにくずおれている風宮駿HNはソニック。
「いやー、本当の本当に凄かったでぇす」
「だよねー! これでゴーストネットOFFの人気は急上昇って感じ☆」
「あ、ありがとうございます!」
「これは早速コメントに応え、続編を作るべきでぇすよ!」
「うんうん☆ 私も協力するから!」
「ありがとうございます! 警察に追われたかいがありました!」
 ……、
「ほえ?」
「け、警察?」
「あ、はい、その、撮影した直後騒ぎ聞きつけたお巡りさんが来て、慌ててみんなと逃げ出したんですけど、あ、これオフレコで」
「バカー!」「でぇす!」「え、ええ!?」
 二人、というよりは一人と一匹に、急に怒られるアゲハ、
「ワラワラ動画にそんな犯罪動画載せちゃ駄目だよ!」
「そうでぇす! 怖い削除番頭が来て、永久にアカウントが停止でぇす!」
「え、で、でも、スケートボードも禁止してない場所ですし、あの、そういう許可とってなかったのはまずかったかもしれませんけど、ゲリラじゃないと」
「まぁ、線引きが難しい問題かもしれないでぇすが……」
「これは迂闊に続編出せないねぇ……」
 はぁと溜息をつきながら、まだ問題になってない内に、さり気なくゴーストネットOFFのタグを消しておく雫であった。


◇◆◇

 sonick
 ID:2980
 入会状態:一般
 入会時期:無印
 年齢:振られる23歳
 性別:振られる男性
 職業:記憶喪失のソニックライダー振られる
 容姿:見た目はけして悪くないのに悉く振られる
 性格:お人好し振られる

◇◆◇


●【(´・ω・`)負け犬達の溜まり場スレ_| ̄|○】

375 投稿者:ソニック 投稿日:200x/x/x 4:58
 ……という訳で、日付変わってから既に四人、いや
時報を含めると五人に振られたよorz
 一体何が悪いんだろう……

376 投稿者:1枚2枚……774枚足りない! 投稿日:200x/x/x 4:59
 かける
 言葉が
 みつからない

377 投稿者:1枚2枚……774枚足りない! 投稿日:200x/x/x 5:00
 というか夜中に何やってるんですかあんた達
 まぁネットカフェっぽいといえばぽいけど

378 投稿者:1枚2枚……774枚足りない! 投稿日:200x/x/x 5:01
 そういやソニックに負けない失恋神がいるらしいね。
 藁堂に連続失恋動画うpされてた。

379 投稿者:ソニック 投稿日:200x/x/x 5:02
 藁堂? ワラワラ動画の事?


……ちょうど彼女達が、3メートル向こうで盛り上がってる所以である。巡り合わせとは面白いものだなと思いながら、夜中というより既に朝の五時、メールアドレスとパスワードを入れてログインし、教えてもらったURLへアクセスして、と。
「しかし俺よりモテない人って」
 どんな人なんだろうな、と、期待していいのか悪いのか、複雑な心境でローディングを待ち、そして、
 始まった動画は――
怪盗の事件で玉砕した男、ソニックライダッ!
「ちょ!?」
 交番に記憶を尋ねに来て玉砕した男、ソニックライダッ!
「え、いや、ちょっと!?」
 ぶつかった相手に玉砕した男、ソニックライダッ!
「ちょ――」

 再び交番で玉砕した男、ソニックライダッ!
 魔女に惚れて玉砕までいかなった男、ソニックライダッ!
 お正月でぬか喜びだった男、ソニックライダッ!
 お見合いで女史を口説こうとして肩を負傷した男、ソニックライダッ!
 公園で殴られた男、ソニックライダッ!
 編集長に瞬殺された男、ソニックライダッ!
 教師に振られた男、ソニックライダッ!
 アンティークショップの主人にカードで破れ恋も破れた男、ソニックライダッ!
 義理の妹に手を出そうとした男、ソニックライダッ!
 カンペで断られた男、ソニックライダッ!
 指ばってんで断られた男、ソニックライダッ!
 振られた相手に慰められた男、ソニックライダッ!
 指ばってん再びな男、ソニックライダッ!
 クイズ形式で断られた男、ソニックライダッ!
 両腕ばってんで振られた男、ソニックライダッ!
 涙雨を和傘が受け止める事はなかった男、ソニックライダッ!
 柑橘系に振られた男、ソニックライダッ!
 ソニックキック敗れる!!
 電車でなんか色々ひどかった男、ソニックライダッ!
 くずおれる前に本に埋もれた男、ソニックライダッ!
 本に振られた男、ソニックライダッ!
 女神にけして微笑まれる事はない男、ソニックライダッ!
 姉ショタなんか嫌いな男、ソニックライダッ!
 だから女神にはけして微笑まれない男、ソニックライダッ!
 ナマモノに愚痴る男、ソニックライダッ!
 義兄に叩かれてもへこまない男、ソニックライダッ!
 居候先の人に蹴られた男、ソニックライダッ!

「コレ俺じゃん!」
 同一人物も居るが、だいたい30回振られている事になる。漏れはあるかもしれないが勘弁願いたいのである。時報はもうすぐ午前6時をお伝えしそうである。
 とにもかくにも風宮駿、いやさ、ソニックは呆然とした。まさか自分がこんな風に晒し者にされているだなんて、って笑われてるよりも同情コメントの方が多いよ! それはそれで嫌だよ!

 orzorzorz orz orz  orz
   orz  orz orzorzorz
      orzrz orz orz  orz
   orzorzorz      orz
          orz          orz

「なんだよこの弾幕!」
 タグの方もさんざんであった、“ソニック生きろ”はほぼデフォルトだし“108回目でも報われない”とかあるは、“失恋神動画”がワラワラ百科事典に登録されてるは。
 一体何故こんな事に、と頭を抱える、頭を抱えながら、タグ検索で他の動画もチェックしてみる。
 324件。「多いよ!」
 アニメヒロインに振られるソニック。「二次元にも居場所無いの!?」
 ソニックでヒッヒッヒモテー。「曲明るいのにコメントが暗いよ!」
 一兆年と二千秒たっても。「愛されないーって弾幕が濃いよ!」
 ふられつくちて。「もうなんなんだよ!」
 発狂しそうになる程の衝撃を受けて、風宮駿は逃げるように視聴を打ち切った。ブラウザ閉じるだけでいいのにわざわざログアウトしてまでである。気持ちは解らなくもない、
「……一体、誰がこんな動画を投稿したんだか」
 片手で顔を覆いながら、非ログイン画面でも確認出来る、動画への作者のコメントをチェックする――
 ゴーストネットOFF。
「雫ちゃんかよ!」
 3メートル先では三人が、ワラワラ動画でしっかり自分の動画をチェックしていた。激しくうなだれる風宮駿。
「いやでも、一番再生が多いでぇすし」
「そ、そうですよ、大人気で……良い事かどうか解らないですけど」
 アゲハが肩を叩き、八重が頭の上に乗って、この非モテの神を慰める。嗚呼、
「結婚して下さい」
「「ごめんなさい」」
 この様は早速雫の手によりアップロードされた。(ランキングにも載った


◇◆◇


 翌日、午後一時。
「呪いのワラワラ動画、でぇすか?」
「うんそうなの、この動画なんだけどねー☆」
「……綺麗な女性が、こっちみつめてますね」
「そうなのそうなの! ここからが本番でね、草間曰く、この動画にドキがムネムネとかこの娘は俺の嫁とかコメントしたら、その瞬間動画に引きずり込まれて、現実世界に戻れないらしいよ☆」
「ひい!? 怖いでぇす!」
「そ、そんな動画再生していても大丈夫なんですか?」
「女性は狙わないらしいから。で、この動画をなんとかするのが草間からの依頼だけどー」
「そんな、どうやって……ん?」
「風宮しゃん?」
 ソニック、着席、カチャカチャ、コメント、

 俺と結婚してください

 ……再生バーの読み込み停止。動かない、F5、ブラウザの戻る。

 この動画は、アップロード者によって削除されました。

「計画通り☆」
「うわーひでぇです」「な、なんというか」
 笛の音が軽やかに響き渡る中、風宮駿のくずおれた姿は、何処までも美しい。





◇◆ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ◆◇
1009/ 露樹・八重/女/910/時計屋主人兼マスコット 
 2980/風宮・駿/男/23/記憶喪失中 ソニックライダー(?)
 3806/久良木・アゲハ/女/16/高校生

◇◆ ライター通信 ◆◇
































左下「付き合うとかありえん(藁)」ソニック「○| ̄|_」