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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // ディテクター観察

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OPENING

「暇だー。暇で死ぬー」
三日前に大きな仕事を終えてから、
美味しい仕事が入ってこなくて、退屈に悩んでいる海斗。
ベッドの上で、でんぐり返しをしてみたり、
漫画をパラパラめくってみたり、玩具で遊んでみたり…。
色々とやってはみるものの、やっぱり退屈。
「うー………。………。…!!」
ベッドに寝そべっていた海斗の目が、パッと開いた。
「ディテクター観察しよ。暇だから」
何を思いついたのかと思えば…。
ディテクター観察をすることに決めたらしい。
カメラやらメモやら色々と準備しだす海斗。
…観察日記でもつけるのだろうか。

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あら、海斗くん。…随分御機嫌ね。全身からワクワクが溢れてる感じ?
何か色々と荷物持ってるわね…どこか、お出かけするのかしら。
雰囲気から察するに、お仕事…ではなさそうねぇ。
こんにちは、どこ行くの?と微笑み尋ねたシュライン。
満面の笑みで返した海斗の言葉に、シュラインは、はい?と微笑んだ。
ディテクターを観察しに行くというのだ。
何の為に?と尋ねれば、即答で「暇潰し」
キラキラと輝いている目は、何も聞き入れない状態を意味している。
はぁ…。暇潰しに観察って。酷いわ。
探偵さんは、玩具じゃないのよ…?
って言っても、聞かないんだろうなぁ。
すっごく生き生きしてるもの…。
仕方ない、私も付き合おう。
付き合うっていうか、付き添いっていうか、監視?
探偵さんの顔に泥を塗るような結果物が出てしまったら、没収しなきゃね。
彼の名誉に関わることだもの!って、さすがにこれは大袈裟だけれど。

(13:30 コケた)

「あいつって、めっちゃ姿勢悪いよなー」
「んー。まぁ、そうね。猫背ね」
「オヤジ臭さを増徴させてる気がするんだよねー」
「………(そうかしら)」
物陰に隠れて観察する二人。
IO2本部から出てきたディテクターは、どことなくお疲れ気味だ。
会議…だったのかしら。いつもああよね、会議の後は。
何か、上から色々とチクチク言われるらしいし…お疲れ様です。
ふあ〜と欠伸をしつつ、どこかへと歩いていくディテクター。
ボーッとしていたからなのか、疲れているからなのか。
方向転換した直後、ディテクターは石につまずいてベシャッとコケた。
「あっ」
「わ!馬鹿っ!」
ガバッとシュラインの口を塞いで苦笑する海斗。
見つかるだろーがー!と小声で叱られた。
シュラインは、苦笑しつつゴメンナサイと謝り、ディテクターをチラッ。
かなり派手にコケた。すぐさま立ち上がり、キョロキョロと辺りを伺っている。
(誰にも見られてないな…よし。はぁ、びっくりした…)
何食わぬ顔で、スタスタと格好つけて歩きだすディテクター。
石につまいずいて転ぶなんて…よっぽど疲れてるのかしら。
そこまでドジじゃないものね、探偵さんは。…大丈夫かなぁ。
シュラインの不安を他所に、海斗はご満悦。
見て見てーと見せてきたデジカメには、決定的瞬間の一部始終。
つまずき、転んで、地に伏せて、しばらく動かず…。
連写で撮られた一部始終は、何とも惨めで滑稽な。
「海斗くん、それ、消しなさい」
「やだ」
「…もぉ」

(14:40 ネギ)

テクテクと歩き、ディテクターが向かっているのは、とあるスーパー。
あっ、ここ曲がったら、あのお店だわ。よし…。
ポチポチと携帯を弄り、ディテクターへメールを飛ばすシュライン。
何て送ったの?とカメラを構えつつ海斗が尋ねる。
「ネギ。あそこね、ネギが新鮮で…美味しいのよ」
「…ぷ」
シュラインから仰せつかったとおり、スーパーでネギを手に取るディテクター。
サングラスにジャケットの怪しい男がネギを持ってスーパーを徘徊する。
その姿に、海斗は笑いを堪えようと必死になっている。
すれ違う客が、皆ギョッとして一歩退くのも、また笑いに拍車をかける。
買い物を終えて、ネギが飛び出た袋を持ち出てきたディテクター。
「ぶぶぶぶぶぶぶ…も、もう駄目。死ぬ」
海斗は地面で笑い転げる。そこまで笑わなくても…って、あ。
煙草をポイ捨てしたディテクター。
シュラインは、もぅ!と頬を膨らませてササッと吸殻を回収。
駄目よ、ポイ捨ては。マナーでしょ、マナー。
携帯灰皿買ってあげたのに…持ち歩いてないのかしら。
帰ったら、お説教しなきゃね。

(16:20 逆ナンパ)

買い物袋を持ったまま、カフェへと入っていったディテクター。
…何か、主婦みたいな動きをするわねぇ。クスクス笑うシュライン。
食べさせておげば大人しいだろうと、
シュラインは海斗にオレンジジュースとサンドイッチを買い与えた。
少し離れた席で、コーヒーを飲みつつ、こっそり観察。
はぁ…何やってるんだろう、私。
海斗くん…そろそろ飽きてくれないかしら。
もしゃもしゃとサンドイッチを食べている海斗を見やり頬杖で苦笑。
無理ね。まだ飽きそうにないわ…。ふぅ…。
溜息を落とし、チラリと見やって。ギョッとするシュライン。
ディテクターに歩み寄り、声を掛けている女性がいるではないか。
何を喋っているのか…耳を澄まして聞き耳を立てれば。
「すみませぇん。ここ、良いですか?」
「…席、空いてるだろ。いくらでも」
「ふふ。お喋りしたいな〜って。察して下さいよ〜」
「…ネギだぞ」
「はい?」
「ネギ飛び出た袋を持つ男…微妙じゃないか?」
「いいじゃないですか。家庭的で♪」
「…あっそぅ」
興味なさげに、適当に返してあしらってはいるけれど。気が気じゃない。
シュラインは、そわそわもぞもぞ、落ち着きなく動く。
「小動物みてーだぞ。シュライン」
「…海斗くんには言われたくないなぁ、それ」

(17:50 野良犬)

逆ナンパを突っ返し、カフェから出たディテクターは、
買い物袋を下げつつ、レイレイに電話。
今どこにいるんだ?という言葉から、ブラコン度合いが窺える。
彼氏が出来てから、やたらと連絡を入れるようになった。
ここまでくると、兄というより、もはや父親だ。
「タイトル、ネギブラコン」
「あははっ。何それ」
カシャカシャと写真を撮る海斗の隣で、シュラインは笑う。
どうやら、レイレイは自宅で夕飯の支度をしているらしい。
確認せずとも、そういう時間帯だと理解っているだろうに。
安心したのか、携帯を閉じて満足そうに笑うディテクター。
このまま、興信所へ戻る。彼のルートから察するシュライン。
「海斗くん。もういいでしょ。お開きにしましょ」
「え〜。駄目、もーちょいネタを…」
「もぉ。玩具じゃないんだから」
駄々を捏ねる海斗を叱っていた矢先。
「ワゥッ!」
犬の声が。うん?と見やれば…ディテクターが犬に追いかけられている。
首輪をしていない。野良犬だろうか。
どうやら、犬の尻尾を踏んづけて…という古典的な展開のようだ。
「キターーー!!」
まってましたぁ!とばかりにノリノリで写真を撮る海斗。
ディテクターは、ただ必死に逃げるだけで、犬に危害は加えない。
優しいなぁ、探偵さん……。
買い物袋を抱きかかえて逃げまどうディテクターの背中に、
シュラインは愛と哀愁を感じた。

*

「大収穫だっ」
カメラに収めた写真に大満足の海斗。
うん…嬉しそうなところ申し訳ないんだけれど。
ごめんねぇ、放置するわけにはいかないのですよ。
ニコッと微笑みデジカメを取り上げて、データを消去したシュライン。
「うあーーーー!!ひでぇーーー!!」
せっかくの収穫がパーになったことに悲鳴をあげる海斗。
その声で、ようやくディテクターは気付く。自分が尾行されていたことに。
「…おい。何してんだ、お前ら」
ヒョコッと茂みを覗き込んで言うディテクター。
犬に追いかけられて噛み付かれて、挙句の果てに、また石につまずいて転んで。
ディテクターは、ボロボロである。
「あー!ほらぁぁぁ。シュラインが騒ぐからバレたじゃねーかよー」
お門違いなクレームをつける海斗。
シュラインは、ギャースカわめく海斗を放置し、ディテクターにズィッと詰め寄る。
おかしいじゃない?いくら海斗くんが上手だからって、
邪念まじり(っていうか邪念だけ)の尾行に今の今まで気付かなかったことにしても、
やたらと石につまずいて転んだことにしても。
ディテクターの額に触れて、不安気な表情のシュライン。
ん〜…熱はないみたいだけど…。
「具合、悪いんじゃないの?大丈夫…?」
見上げて、心配そうに尋ねるシュライン。
ちょっと微妙に頭が痛いっていうのはあるけれど。
今、それはどうでもいい。尋ねてるのは、俺ですよ。
質問に答えなさい。
「何、してんだ?って聞いてるんですが?」
「にゅ…」
シュラインの口をキュッと摘んで問い詰めるディテクター。
違うの、違うの、海斗くんがね、海斗くんがね…。
必死に弁解するシュライン。ディテクターは、はいはい…と苦笑している。
二人の後ろをテクテクついて行く海斗は、しょんぼり。
せっかくの収穫が…ネットで公開しようと思ってたのに。

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / ディテクター(草間・武彦) / ♂ / 30歳 / IO2:エージェント(草間興信所の所長)

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度様です! ヽ(´▽`)/
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ!

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2008.05.28 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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