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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // 興味ないから

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OPENING

「ねぇ、ちょっとくらいイイでしょ?」
「だーかーらー。嫌だ、っつってんの」
「ちょっとだけ。ね、ちょっとだけだから…ね?」
「しつけー」
「んもぅ、いいから。行きましょうよ」
「ぬぁっ。何だよ、ちょ、離せ。離せよー!」

美人さんに拉致された海斗。
彼女は、最近イノセンスに所属したばかりの新エージェント。
名前はナナ。年齢は23歳。ちょっとキツめの美人。
ナナは、海斗に一目惚れしてしまったらしく、しつこく言い寄っていた。
言い寄られるたびに、興味ナイから、と適当にあしらってきた海斗。
けれど、ナナはめげずに。
今日、強行手段をとった。
ズルズルと引きずられていく海斗。
一体、どこへ行くのか…?

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「おま…直球すぎるだろ」
「わかりやすくてイイでしょ?」
「…はー」
「ね、ほら。入って…?」
「やだ」
「どうして?」
「だからー。何回も言ってるだろ。俺、あんたにキョーミないから」
連れて来られたのは、部屋の前。
可愛らしいドアノブがついた、ここはナナの自室だ。
海斗が "直球" だと言ったのも頷ける。
中で仲良く、お喋りしましょ?とか、
紅茶でも飲みながら、一緒に音楽鑑賞でもしましょう?とか、
そういうことではない、そういう御話ではない。
艶っぽいナナの眼差しを見れば、一目瞭然である。
本当はね、こんなの、あたしらしくないのよ。
一目惚れなんて…ありえないって思ってたんだから。
何かの間違い、そう思ったわ。
でもね、すぐに気付いたの。
これは、正真正銘の一目惚れだ、って。
だって仕方ないじゃない?
あなたを見かけるたび、ドキドキしちゃって、
あなたの声を聞くたび、ドキドキしちゃって。
紛れもなく、惹かれてる。
そう認めたからこそ、あなたが欲しいの。
全部、あたしのモノにしたいの。
だからこうして、誘ってるのよ。
ねぇ、応えて?あたしの想い、受け止めてよ。
ペタッと海斗に抱きつくナナ。
「あ〜〜〜〜も〜〜〜しつけ〜〜〜」
だが海斗はトキメく様子もなく、うざったそうな顔。
パッと見、ナナは凄く綺麗だ。間違いなく美人の類。
ちょっと強引で、自分勝手なところはあるけれど、
それでも十分に魅力的な女性といえる。
けれど、海斗はソソられない。
どんなに艶ある眼差しで見つめられても、
ペタッと可愛らしく引っ付いてこられても、
まったくもって、欲情しない。
ここで、わかった良いよ、一回だけね。そう言うのは簡単だ。
例えが悪すぎるかもしれないが、藤二なら間違いなく、そうするだろう。
男として、据え膳食わぬは何とやら。
それに乗っかってしまうのは実に容易い。
けれど、そうしようとも思わない。
後々、面倒なことになりそうだから…だとか、そういうことでもなくて。
ただ単に、そういう交わりに意味がないと思うから。
想い合ってこその交わり。そう思うから。
くっついて離れないナナに、げんなりしている海斗。
と、そのとき…お風呂から上がってきた麻吉良を発見する。
良い時間を満喫したのだろう、麻吉良は何とも満ち足りた表情。幸せそうだ。
「ねーちゃーん!」
「あっ、ちょっとぉっ」
力任せにナナを引っぺがし、駆け寄る海斗。
いつもよりも勢いのある海斗に、麻吉良はキョトン。
「どしたの?そんなに血相変えて…」
ササッと麻吉良の背中に隠れる海斗。
「あいつ、何とかしてー。もーやだ、俺」
ピッと指差す、その先には…新入りエージェント。
人を指差しちゃダメでしょ、と叱ろうとも思ったが…。
何だか、面倒なことになってるようで。
ナナの目を見て "どういうことか" をボンヤリと理解した麻吉良は溜息。
「じゃ、よろしく!俺、逃げるね!」
ダダッと逃走していった海斗。
…私に、どうしろと。
残された麻吉良とナナは、顔を見合わせて何故かペコリとお辞儀しあった。

*

レストランの隅にある、小さなバー。
とりあえず、聞きましょうか…と麻吉良はナナを誘った。
揃ってチェリーカクテルをオーダーし、並んで座る女二人。
何とも妙な組み合わせだ。どう喋れば良いのか、わからない。
よろしくと言われても、何をどうすれば良いのやら…。
コクリとカクテルを飲み、チラッと見やる麻吉良。
隣でカクテルを飲んでいる新入りエージェントは…色っぽい。
ナナさん…だっけ。たしか一週間くらい前に入ってきた子よね。
藤二さんが、騒いでたっけ。
すっげぇ美人が入ってきた!って。
うん…確かに、綺麗な人よね。艶っぽいっていうか。
一つ一つの所作が、どれも女性…って感じで。
ちょっとだけ羨ましくもあるかな。
そういう雰囲気って、努力とかでどうにかできるものじゃないもの。
一種の、才能だと思うのよ。私はね。
「…麻吉良さん、でしたっけ」
「あ、はい」
声を掛けられ、ハッとする麻吉良。
ナナは、じーーーっと麻吉良を見つめる。
見つめられているというよりは、観察されてるというか。
何だか…妙な視線だ。チクチクと刺さる。
何か?と尋ねると、ナナは淡く微笑んで言った。
「協力、して欲しいんですけれど」
「…協力?」
「そう。あたしと海斗が結ばれるように」
「………」
「あなた、随分と慕われてるみたいだし。強力な助っ人になると思うのよね」
「………」
「あたしね、海斗の笑顔とか…」
一方的な会話。協力してね、の次はノロけ。
自分が、海斗のどこに惹かれているか、どれほど愛しているか。
聞いてもいないのに、ナナは好き勝手に喋り続ける。
隣で、カクテルを飲む麻吉良。
聞いてはいる。聞いてはいるのだけれど。
どうも…気分がよろしくない。
別に、海斗に彼女が出来るのは良い。
出来たら出来たで、祝福してあげようと思う。
けれど…ナナのやりかたが気に入らない。
先程の様子から見ても、かなり一方的っぽいし、
相手のことを考えていない言動ばかりな気がする。その挙句…。
「ナナさん」
ポツリと呟く麻吉良。
ノロけを遮断され、ちょっと不愉快そうなナナ。
麻吉良は、鋭い眼差しでナナを見やって尋ねた。
「私を、利用するつもりですか?」
「な……」
諭すような、冷たく鋭い眼差し。ナナは怯む。
利用だなんて、そんな人聞きの悪い。
私はただ、海斗に慕われている、あなたならきっと…って思っただけで。
その考え、その想いこそが利用に他ならないこと、ナナは気付いていない。
不愉快そうにしているナナを見やり、ふぅ…と息を吐く麻吉良。
別にね、燃え上がるのは良いの。
そのくらい人を愛せるって素敵なことだから。
でもね、ちょっとだけ相手のことも考えて。
独りよがりな恋愛ほど、見苦しいものはないわ。
本人は一生懸命なんだろうけれど、
そういうのって、端から見てると痛々しいものなの。
恋愛は、相思相愛。
互いに想い合って、はじめて成り立つものなの。
今、あなたは、そうありたいと思って努力してるんだと思う。
あちこちで積極的にアプローチしてるって噂も聞くし。
だからね、ううん、だからこそ。もっとフェアに頑張ってみて欲しいと思うの。
私が協力して、海斗くんが、あなたのことを好きになったとしても。
それは、一時的に私が巧く躍らせただけ。
あなたは、いつか後悔するわ。
そして、不安で堪らなくなるの。
この人は、本当に私のことを愛してくれてるんだろうか、って。
互いに強く惹かれあって結ばれた二人にはね、そういう悩みは生まれないの。
不思議だけれど、不安になったりしないものなのよ。
後悔して欲しくないから。だからこそ。
「自分の力で、振り向かせてみなさい」
ポン、とナナの肩に手を乗せ言って、席を立つ麻吉良。
独りよがりな恋はしないで。自分勝手にならないで。
相手のことを考えて、その上でアプローチして。
…口では簡単に言えるけれど。実際、難しいのよね、これ。
どこからどこまでが許容範囲なのか、そういうルールがないんだもの。
自分でルールを作って、その上で自由に遊べるような人…例えば藤二さんとか、
ああいう人のことを、恋愛上手っていうんだと思うのよね。
藤二さんだったら、何てアドバイスしたのかな。
突拍子もないこと…言ったりするのかしら。
私では、思いつかないようなこととか…。
去り行く麻吉良の背中を見やりつつ、カウンターに突っ伏すナナ。
あたしも、馬鹿じゃない。
言いたいことは、理解るのよ。
でもね、どうすれば良いか…わかんないんだもの。
気持ちばかりが、どんどん大きくなっていって、歯止めが利かないの。
どうしようかな。どうすれば良いのかな。
どうすれば、あなたを振り向かせられるのかな。
「…はぁ」
甘いカクテルで、甘い溜息。
ナナの恋愛は、果たして成就するのか?

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

7390 / 黒崎・麻吉良 (くろさき・まきら) / ♀ / 26歳 / 死人
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / ナナ・ハヤミ / ♀ / 23歳 / INNOCENCE:新入りエージェント

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! おいでませ、毎度様です^^
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ…^^

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2008.06.02 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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