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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // カラオケ・パーティ

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OPENING

「すげー。バッチリじゃん」
「…これは、確かに凄いかも」
「マスターも甘いよなぁ。海斗の我侭を聞いてやるなんて」
「あら。マスターもノリノリだったみたいよ?」
「うわぁ…モニター、すごい大きいですね〜」

イノセンス本部、二階に完成したカラオケルーム。
海斗の要望(というか我侭)で作られたもので、
部屋にある必要道具は、全てマスターの魔法で構成されている。
一体何人 入るんだ…というほどに広いカラオケルーム。
その出来栄えに海斗はもちろん、他のトップエージェント達も大満足の御様子。

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『遅刻だぞー!ねーちゃーん!』
「ぅわ…」
マイクで叫んだ海斗、ビクリと肩を揺らした麻吉良。
自室で音楽鑑賞していたところへ、突然ルームコール(※)
※本部内にいるエージェントが連絡を取り合う手段。
突然のことだったから、かなり驚いて…。
電話を取ってみれば、それは海斗からのお呼び出し。
二階のカラオケルームにいるから、来て〜と言われて了解し、
向かってはみたものの、部屋を出た瞬間に、あれ?
カラオケルームなんて…あったっけ?
そう疑問を抱くのは当然のこと。
このカラオケルームは、つい先程完成したばかり。
しかも、海斗がマスターに、こっそりと御願いしていたらしく、
作られていたことすら知られていなかった。
カラオケルームには、見慣れた顔がズラリ。
大きなソファに座り、揃って歌本を見つめている。
海斗はテーブルの上に片足を乗せて、ノリノリ真っ最中。
歌っているのは…よくわからないけれど。
歌詞と、モニターに表示されている映像を見る限りでは特撮もののようで。
『GO!GO!薙ぎ払え〜!GO!GO!正義のビ〜ムぅ〜!』
気持ちよさそうに歌っている海斗に微笑み、ストンと腰を下ろす麻吉良。
正義のヒーローが、ビームを出すの?
何だか、怪物みたいなヒーローねぇ?
滑稽な歌ではあるが、海斗の歌唱力は、かなりのものだ。
歌い慣れている感じも…。歌詞を見ないで歌ってるし。
楽しそうな海斗につられるようにして、手拍子で微笑む麻吉良。
そんな麻吉良の膝上に、ぽすっと歌本を置いて…藤二が立ち上がる。
「お前、歌いすぎだろ。変われ変われ、変わりなさい」
『うぉあー!何すんだ、お前ぇぇぇぇ!!』
強制演奏ストップにキーキーと文句を言う海斗。
海斗を押しのけて…藤二の出番。
選曲は、甘いバラード。
映像も、恋愛ドラマの抜粋総集編のような感じ…。
『キミに…この愛を、どう伝えれば良いのか…』
上手いか下手かでいえば、藤二もかなり上手い。
けれど、マイクの持ち方が独特すぎる。
どこぞの少年アイドルか、という持ち方…。
しかも、藤二はジッと麻吉良を見つめつつ歌っている。
この愛の歌を、キミに捧ぐ…とか、そんな雰囲気がビシビシと。
はっきりと申し上げますと…気持ち悪いです、何だか…。
苦笑している麻吉良。
パラパラと歌本をめくっていけば、
次々と仲間達が歌声を披露していく。
千華は、異国の民謡をチョイス。
かなりオシャレで、ムーディな曲だけれど…。
残念なことに、何を喋っているのか理解らない。
どこの国の言葉だろう。聞いたことのない言葉。
でもまぁ、何を言ってるのか理解できなくても、伝わる。
千華も、かなり上手だ。伝えるのが上手という点では、一番なのではなかろうか。
そして梨乃。さすがに驚いた。
梨乃が選曲したのは、ラウド。
海斗も好きだという、そのバンドの曲は熱いシャウトが多い。
歌えるのかな…?と気にかけて、その三秒後。驚愕。
マイクを手に取った瞬間、梨乃にラウドの神が光臨した。
身体にビリビリと走る重低音の中、熱く歌い上げる梨乃。
目を伏せ、魂を注ぐ梨乃の姿は、もはや別人だった。
驚いていたのは麻吉良だけで、他のメンバーは至って普通。
どうやら、梨乃がマイクを持つと豹変するということは理解済みだったようだ。
さて…ただ一人、歌おうとしないやつがいる。浩太。
歌本をパラパラとめくってはいるものの、リモコンを手には取らない。
「歌わないの?」
尋ねると、浩太は困り笑顔を返した。
だが、この状況で歌わないということが許されるわけもなく。
浩太は、海斗に引っ張られて、ささやかなステージの上へ。
俯き、モジモジしていた浩太だが、
逃げ切れないことを悟って(空気を読んだとも言う)リモコンを操作。
選曲は、アニメソング。
今、大人気のアニメ『にゃ。』のテーマソングだ。
にゃ。は、ヲタクをターゲットにした王道アニメで、
猫耳少女が、あらゆる事件を解決するアニメ。
キメ台詞は『尻尾で、かいけちゅ!』※かいけちゅ=解決
萌え推理アニメとして、人気を博している。
誰もが知っている、超人気アニメ。
そのテーマソングは、意外と難しい。
音程がとりにくく、難易度が高いことでも有名だ。
結果、浩太はボロボロ。
というよりも、難しい以前の問題で。
浩太は、果てしなく音痴だった。
どうして、そこで上がるのか。
どうして、そこで下がるのか。
どうして、そこで走るのか。
どうして、そこでファルセット…?
浩太の歌は、聞くに堪えない。
ケラケラと笑うメンバー。
浩太の音痴を理解った上でステージに上げた。
何とも悪質な意地悪である。
うぅ〜…と顔を真っ赤に染めて、必死に歌う浩太。
だが、我慢の限界。
麻吉良に我慢の限界が訪れる。
「貸してっ!お手本を見せてあげる!」
ステージに乱入し、浩太からマイクを奪う麻吉良。
奪った直後、始まるAメロ。
歌いだしをミスることが多い、この曲。
だが、麻吉良は、すんなりと声を乗せた。
『にゃ。にゃ。にゃんて♪ 素敵なメロディ♪ 揺れる尻尾にトキメキ覚えちゃダメ♪ダメ♪』
まくしたてるように…ラップのようなAメロ。
かと思いきや、Bメロは、ゆったりとハーフで。
サビは8ビートで軽快に、可愛らしいノイズ混じりのギターソロ後は転調して…。
玩具箱を引っくり返したかのような、滅茶苦茶な構成。
なのにも関わらず、かなり完成度の高いアニメソング。
作曲者は、天才かと思われる…って、そんなことよりも。
メンバーは、呆然唖然。
聴くのが初めてでも十分に理解る。
麻吉良の歌は、ありえないほどの上手さ。
歌詞を、まったく見ずに満面の笑みで歌う。
歌うだけじゃなく、ダンスまで…。
"完成" している、その姿に、メンバーは言葉を失った。
本部内に響く、麻吉良の歌声。

*

(まずいなぁ…つい、ノッちゃった…)
カラオケパーティを終えて、夕食まで自室で待機している麻吉良。
我慢できなくなったからって、マイクを奪うとか…どんだけ失礼なの、私ってば。
しかも、ノリノリになっちゃって、
キャラクターソングも制覇しちゃったし…。
皆、ボーゼンとしてたなぁ。
そりゃあ、そうだよね。私が、ああいう…。
コツコツ―
「ねーちゃーん。入るぞー」
「!!!!!」
扉を叩く音と海斗の声に、驚き飛びのく麻吉良。
「ちょ、ちょっと待って!ちょ…!!!!」
慌てて、待ってくれと伝えるも無駄で。
海斗はガチャリと扉を開けてしまった。
海斗だけじゃなく、梨乃や藤二、千華、浩太も一緒だ。
ゾロゾロと揃って、彼等が麻吉良の部屋に押しかけてきた理由は一つ。
どうして、あのアニメ限定で上手なのか。それだけ。
あまりにも上手なものだから、
メンバーは楽しくなってしまい、次々とリクエストした。
これ歌ってみて、あれ歌ってみて、と。
けれど、期待はずれ。
別の曲を歌わせると、麻吉良は浩太並の音痴を披露した。
けれど曲を入れ替えて『にゃ。』関連の曲を歌わせると…天才的。
一体、どういうわけなのか。メンバーは、それを尋ねにきた…のだが。
「うぉ……」
「あっはっはっはっ!」
麻吉良の部屋に飛び込んだメンバーは、すぐに理解する。
どうして、あのアニメ限定で上手なのか。
その理由は、麻吉良の部屋を見回せば一目瞭然だ。
壁に貼られたポスター、棚に並ぶ、三体のぬいぐるみ(※三体セット限定販売)、
床に散らばっているCD、数え切れないほどの関連雑誌。
それらは全て、猫耳少女『にゃ。』のグッズだった。
「ファン…だったんですね」
クスクス笑って、核心をついた浩太。
誰にも知られたくない、秘密だったのに。
隠れファンだったのに…バレてしまった。
「うぅ……」
猫のクッションに顔を埋めて照れる麻吉良。
彼女の頭にはピョコンと耳が。お尻にも、尻尾が。
恥ずかしさと困惑により、魔人の証が飛び出てしまった麻吉良も…猫耳少女?

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

7390 / 黒崎・麻吉良 (くろさき・まきら) / ♀ / 26歳 / 死人
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 青沢・千華 (あおさわ・ちか) / ♀ / 29歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 黄田・浩太 (おうだ・こうた) / ♂ / 17歳 / INNOCENCE:エージェント

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! おいでませ、毎度様です^^
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ…^^

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2008.06.02 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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