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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // 初任務

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OPENING

「うへぇ。ガルカスの討伐かぁ…キツいんじゃねぇか?」
渡された依頼書を見つつ、頭を掻いて笑う海斗。
梨乃も依頼書を覗き込み、神妙な面持ちだ。
不安がる二人を見つつ、マスターはファッファと笑い言う。
「何の。このくらい余裕じゃろうて」
「そーかなぁ」
「寧ろ、余裕じゃないと困るわい」
「んー。まぁ、そーだけどな」
笑いながら依頼書を懐にしまうと、海斗は時計を確認。
そして梨乃と顔を見合わせ頷き、マスタールームを後にする。

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昨晩、海斗と梨乃から告知された初任務の内容。
記念すべき初任務は、魔獣:ガルカスの討伐。
闇あるところにガルカスあり、と言われているだけに、
標的:ガルカスは洞窟の奥深くに潜んでいる。
梅雨時である今。ガルカスが凶暴化する、厄介な時期だ。
討伐は、的を射ている内容といえよう。
初任務の告知を受けて、凰華は事前に自室のパソコンで色々と調査。
その結果、ガルカスの弱点は炎であることが判明。
私は炎の魔術も一通り扱えるが、さほど威力はない。
効果が期待できて且つ、威力にも自信があるといえば…光の魔術くらいか。
一番誇れるのは氷の魔術なのだが、
残念なことに、ガルカスは水・氷への耐性が高い。
ノーダメージということはないだろうけれど、致命傷を負わせることは難しいだろう。
まぁ、初任務ということで海斗と梨乃も同行するし、
海斗に至っては炎属性魔法のエキスパートだ。
彼に、あれこれ的確に指示・援護を頼めば、討伐は容易いだろう。
一人先に、ガルカスが潜む洞窟へ来ていた凰華。
周りは、枯れ朽ちた木々ばかり。
不気味な雰囲気の中、空に向けて魔銃の試し撃ちを繰り返す。
それにしても、魔力を銃弾に模して放つとは…実に面白い武器だな。
これは…一般人が引き金を引いたら、どうなるのだろう。
何事も起こらず、玩具のような扱いになるのだろうか。
いやしかし、人は皆、その身に潜在能力を宿していると聞く。
引き金を引くことで、それが開花する…ということも、あるのではないだろうか。
もしもそうだとしたら…ますます興味深い代物だな。
魔銃を見やって、うーむ…と考え込んでいると、
ようやく海斗と梨乃が現場に到着して合流。
定めた時刻から、五分オーバーしている。
「遅刻だな」
凰華が目を伏せ言うと、梨乃は海斗の頭をぺしっと叩いて謝る。
「すみません。こいつが爆睡してて」
「ふぁぁ…しゃーねーだろ。新作ゲームで徹夜続きだったんだよ〜…」
「もぉ。馬鹿っ」
欠伸しながら、ん〜っと伸びる海斗と、そんな海斗を叱る梨乃。
相変わらずだな…凰華は目を伏せたまま、淡く微笑んだ。

*

洞窟へ入る前に、使い魔の鳥を放って内部構造を把握。
標的:ガルカスが潜んでいるであろう最奥の空間を目指して、最短ルートを進む。
洞窟に入って早々、指先にポッと炎を灯した海斗。
視界良好になると同時に、そこらじゅうを飛んでいた羽虫も焦げて消滅していく。
「便利だな。その能力」
「あはは。あんま、好きじゃないんだけどね。こーいう使い方」
「…何故だ?」
「地味だから〜」
「…そうか」
まぁ、概ね理解ってはいたけれど。
根っからの目立ちたがり屋なのだな、キミは。
うん、天真爛漫なのは良いことだ。周りの者を元気にするだろうしな。
けれど、あまり無鉄砲だと逆効果だと思う。迷惑をかけてしまうから。
…まぁ、梨乃との遣り取りを見ていれば、キミが問題児の類であることは悟れるけれど。
道を照らす海斗を先頭に、並んで洞窟を進む三人。
この任務における報酬や、依頼人の確認などをしつつ歩いて十五分。
一行は、特に何の問題もなく、最奥へと辿り着いた。
内部構造を把握していたからこそなのかもしれないが…。
凰華は、妙な違和感を拭えずにいた。
「一匹かー。これなら、余裕かもしんないね」
影に隠れつつ、様子を窺って不敵に笑った海斗。
海斗が言ったとおり、最奥の空間に確認できる標的は一匹のみ。
周りを窺っても…他には見当たらない。
確かに、これなら余裕だと思う。
チャッと愛剣を鞘から抜いて構える凰華。
彼女の、その所作を合図と捉え、海斗と梨乃も腰元から魔銃を抜いた。
誰がカウントしたわけでもないけれど、三秒後、一斉に駆け出す。
突如現れた一行に、不気味な鳴き声で威嚇するガルカス。
だが、その威嚇に目もくれず耳もかさず、凰華は踏み込み一太刀。
両前足を同時に斬りつけられたガルカスは、
激しくのたうちまわって、一際不気味な声で鳴いた。
「うはー。かっけーな。いいよなー剣士って」
凰華の華麗な剣技に感心している海斗。
そんな海斗を、剣を構えた凰華が叱る。
「何、ボサッとしてる!」
その言葉にハッとして、魔銃を構えて狙う海斗。
「怒られちゃった」
ハハッと笑う海斗の隣で魔銃を構える梨乃は、やれやれと肩を竦める。
凰華の斬撃に加え、離れた位置から海斗と梨乃の銃撃。
ガルカスの巨体が、ズズン…と音を立てて地に伏せるまで、さほど時間はかからなかった。
「早っ!お疲れー!」
討伐・遂行の所要時間の短さに笑って、労いの言葉を飛ばした海斗。
ふぅ、と息を吐いて、剣を鞘に戻そうとした瞬間。
凰華の目が、ギラリと鋭く光る。
物凄いスピードで駆け寄ってくる凰華。
剣を構えたまま向かってくる、その様は迫力満点。
「ち、ちょ…何、どしたのっ」
「凰華さん…?」
微妙に慌てる海斗とキョトンとしている梨乃。
二人の間に割って入り、踊る凰華。
凰華の剣舞は、二人の背後に迫っていたガルカスを真っ二つに斬り裂いた。
両断された巨体が、僅かな時間差で地を揺らす。
振り返って苦笑する海斗。梨乃は再び魔銃を構えて、すぐさま警戒。
やはり、おかしいと思ったんだ。
いくら最短ルートを進んだからといって、
ここに到達するまでに、何もなかったのは、どう考えてもおかしい。
すんなりと、最奥まで辿り着かせるのは、こいつらの作戦に他ならないのだろう。
行き場を失った状態の中、一斉に詰め掛けて襲い掛かると。そういうことだな。
魔物のくせに、なかなか頭が良いではないか。
ふん、と鼻で笑い、海斗と梨乃の手を引いて駆け出す凰華。
あのまま最奥で黙っていては、袋のねずみだ。
さすがに、まとめてかかってこられては、少し面倒。
そう判断した凰華は、一目散に洞窟の入口を目指す。
途中、道を塞いで襲い掛かってくるガルカスは、一刀両断。
だが、アリの巣のように入り組んだ洞窟だ。
各所から侵入者を始末しようと、ガルカスが、こぞって追ってくる。
振り返れば、気持ち悪いほどの数のガルカス。
「うへー!どーすんの、これ!」
そうは言うものの、海斗は楽しそうだ。
この状況で笑っていられるとは…大したものだ。
逆に、梨乃は慌てているようだな。目が泳いでいる。まぁ、それが普通だろう。
二人を連れて、洞窟の外へと脱出した凰華。
少々手荒で申し訳ないが、許せ。
ポィポィッと、二人を投げやる。
「痛ぇっ!」
「ひゃ?!」
二人がズシャッと地に転がると同時に、パンと両手を合わせて目を伏せる。
どんどん近付いてくる、無数の激しい足音。
闇の中に浮かぶ、ギラギラと輝くガルカスの不気味な目を捉える感覚。
ふっと目を開き、合わせた両手を離して前方へ。
闇に向けて、魔物への鎮魂歌を。
凰華の両手から放たれる、眩い光は高位魔術『閃』
キャノンのようにドッと放たれた光は、洞窟もろともガルカスを木っ端微塵に。
光が治まり、辺りに闇と静寂が戻って、凰華は両腕を下ろし、ふぅと息を吐く。
最初から、こうして殲滅したほうが早かったかもしれぬな。
いや、でも、標的の数は不明だったわけだし…うーむ。
顎に手を当てて、もっと完璧に迅速に遂行できたのではなかろうかと思案している凰華。
その後ろで、ポカンと呆けていた海斗と梨乃だが、
しばらくして二人は顔を見合わせて、微笑み頷いた。
凰華をスカウトしたこと、それが間違いではなかったと確信して。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■

4634 / 天城・凰華(あまぎ・おうか) / ♀ / 20歳 / 退魔・魔術師
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント

■■■■■ ONE TALK ■■■■■■

こんにちは! 毎度さまです('∀'*)ノ
ゲームノベル”INNOCENCE”への参加・発注ありがとうございます。
是非。また、ご参加下さいませ!初任務、お疲れ様でした^^

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2008.06.04 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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