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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // マディカの書

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OPENING

マディカの書。
そう呼ばれる古書。
漆黒の紙に、銀のインクで連ねた想い。
マディカの書。
そう呼ばれる古書。
著者不明。魔物が書いたのではないかという噂もある。
とにかく謎だらけな書物だが、
この書には、魔法に関する秘術が書かれているという。
その情報を得たイノセンス・マスターは、エージェントに命じた。
秘術記されし、マディカの入手を。

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「もしかすると…組織全体の力を底上げできるかもしれんのじゃ」
神妙な面持ちで、魔猫シャトゥの喉を撫でつつ言うマスター。
呼びつけられて、マスタールームに来た蓮と梨乃。
マディカの書というアイテムを入手してきて欲しい。
直々に、二人へ願い・令を託す。
組織の為になるならば、と梨乃は頷き即了解。
蓮は隣で腕を組み、相方がやる気満々なので…と苦笑する。
マディカの書は、とある遺跡の奥深くに眠っているらしい。
秘術記されし魔書を入手すること。
遺跡の奥深くで眠る魔書を入手すること。
ぶっちゃけ、これは禁忌だ。
奪い去ったことがバレてしまえば、問題になる。
なかなかクレイジーな願いですねと苦笑する蓮。
マスターは目を伏せ、淡く微笑んで返す。
許されるべき禁忌もあるじゃろう?と。
「何だかんだで、マスターもブッ飛んでるよね」
「ふふ。そうですね」
「てっきり断ると思ったよ。キミのことだから、そんなの駄目です!とかね」
「マスターは、標ですから」
「従順だねぇ」
「止めてください。犬みたいじゃないですか」
「間違ってはいないと思うんだけどね」
「…軽くショックです」
「あはは。冗談だよ」

*

「へぇ。立派だね」
「…何だか、神々しいですね」
マディカの書が眠るという遺跡。
湖の傍にある、その遺跡は、何とも神秘的。
木漏れ日に照らされて輝く銀色の石柱には、古代文字のようなものが刻まれている。
残念ながら、何と書いてあるのかは理解らない。
ありとあらゆる古書を漁るように読んでいる梨乃にも理解らないのだからお手上げだ。
まぁ、雰囲気からして、立ち入るなとか…その辺りなんだろうけれど。
銀の鎖を跨いで、遺跡へと踏み入る二人。
何だか…妙にドキドキする。
当然か、これから禁忌をおかそうとしているのだから。
遺跡内部は薄暗く、足元がボンヤリと照らされているだけ。
魔物の気配はないけれど、警戒して進まねばならない。
触れてはならない禁書…ってことは、そう易々と入手できないよね。
遺跡の奥深くに眠らせた上、手に入れさせないように…色々仕掛けてあるんだろうな。
手を繋ぎ歩く蓮と梨乃。
手を繋ぐ必要、ありますか?と苦笑して梨乃は尋ねたが、
蓮は、転んだら痛いからね?と、手を繋ぐのは当然とばかりに微笑んだ。
二人の前には、出現させた鎌鼬。
どこまでも続く長く細い通路。
天井は頭スレスレ。
魔物の気配がないのは幸いだね。
こんな狭いところで戦り合うのは、不利だし。
テクテクと進む中、その途中、ピタッと鎌鼬が立ち止まる。
放つ警告に足を止めれば。
ボボボッボッ―
「きゃあ!?」
「お〜」
「ビ、ビックリした……」
壁から、無数の針が飛び出した。
あのまま進んでいたら、サックリと串刺しになっていただろう。
やっぱり、仕掛けてあったか。まだまだ、たくさんあるんだろうなぁ。
飛び出た針を風で切り裂き落として苦笑する蓮。
その予感は的中。
遺跡内には、ありとあらゆる仕掛けが施されている。
どこからともなく飛んでくる矢や、動き襲ってくる石像、
眩い光の目晦まし、床からブシュッと噴出す煙…などなど。
けれど、随所に施された仕掛けを鎌鼬が逸早く察知し警告してくれる為、
二人は難なく進んでいくことができる。頼もしい存在だ、鎌鼬。
けれど中には、察知できないハイクオリティな仕掛けもある。
「!」
踏んだ床の感触が、微妙に柔らかい。違和感…。
咄嗟に手を離し、トンッと梨乃を後ろに押しやる蓮。
次の瞬間、カパリと口を開ける床。
ドサァッ―
落下した蓮は、はぁ…と溜息を落とし、
泥まみれになった服をパンパン叩きつつ苦笑する。
「…いやぁ。ハイクオリティな落とし穴ですねぇ」
「だ、大丈夫ですか。蓮さん」

様々な仕掛けを掻い潜り、ようやく到達する最奥の間。
何か、儀式を行っていたかのような痕跡が残る。
最奥の間に到着した二人は、全身ボロボロだ。
終盤ともなると仕掛けも必死。ハイクオリティ尽くし。
無傷で到達するのは、先ず無理だろう。
普通なら到達する前に息絶えているところ。
二人が到達できたのも、ハイクオリティと言える。
「これ…ですよね」
「だね。どう考えても」
「すご〜く嫌な視線を感じるんですけど…」
「だねぇ…」
クククと苦笑する蓮。
最奥の間、その中心部にある祭壇。
そこに、マディカの書は奉られていた。
手に取ることは容易い。野ざらしで置いてあるのだから。
けれど…梨乃が言ったように、二人は全身に嫌な視線を浴びている。
間の四隅にある石像が、ジーーーッとこちらを見やっているのだ。
どんなに馬鹿でも察知できる。
書に触れたら、何が起こるか。
「どうしようもないよね」
苦笑し、ヒョィッと書を手に取る蓮。
その瞬間、ガシャンガシャンと石像が一斉に動く。
来た来た…と身構える蓮と梨乃。
だがしかし、石像は襲ってこなかった。
祭壇を囲うように立っただけ。
「ん?」
「…こ、これだけですかね?」
「いや〜…それは、ないでしょ。さすがに…」
最後の仕掛けが、これだけなはずがない。
警戒を解かずに身構えている二人。
と、そこへ…何やら妙な音が。
底から生じてくるような…唸り声のような…。
次第に大きくなっていく、その音は、崩落へのカウントダウン。
「まずいね。急ごう」
「わっ!?」
鎌鼬を肩に乗せ、梨乃を抱きかかえ、全力疾走。
こんなときの為の身体活性。
使うべきところでは、如何なく。
一行が外へ脱出したと同時に、遺跡はズズン…と崩落した。
これだけ派手な音をブチかましたのだ。
騒ぎを聞きつけて、各所から人が集まってくるだろう。
逃げるが勝ち。蓮は梨乃を抱きかかえたまま、逃亡。

*

「うむ。見事じゃ。…しかし、大丈夫か?」
苦笑してマスターが見やる先には、ソファでグッタリしている蓮。
頭痛に眉を寄せつつも、蓮はヒラヒラと手を振って大丈夫、と笑う。
ちと、無茶させてしまったかのぅ。
だがまぁ、こうしてキッチリと入手してきたんじゃ。流石じゃな。
微笑み、ハラリと書をめくるマスター。
一ページ目に掲載されている、不思議な紋章。
マスターが、それに触れると……。
「お〜…凄いね」
「綺麗…」
書から、七色の粒が四方八方へ飛び散る。
飛び散った粒は、空中で弾けて、更に細かい粒になる。
最終的に、霧のように細かくなった七色の粒。
本部全域に漂う七色の粒は、呼吸によってエージェントの体内へ。
黙っていても、溢れてくるような魔力。
掌から垂れ流れる魔力に、蓮と梨乃は顔を見合わせ微笑んだ。
エージェント全員の魔力の底上げ。
マディカの書がもたらす、大いなる成長。
だが、それだけではなかった。
マスターが持つ書から、にゅるりと飛び出す黒い靄。
出現した無数の靄は、フワフワと空中に留まる。
目を凝らして見やれば、靄の中には別世界。
どうやら、新たなる異世界への扉が開いてしまったようで。
「職場が…増えたのぅ」
パタン、と書を閉じて苦笑するマスター。
蓮と梨乃は揃ってクスクス笑う。
「「商売繁盛、ですね」」

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

7433 / 白月・蓮 (しらつき・れん) / ♂ / 21歳 / 退魔師
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / イノセンス・マスター / ♂ / ??歳 / INNOCENCE:マスター(ボス)

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! おいでませ、毎度様です^^
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ…^^

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2008.05.28 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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