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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // IO2共同任務2

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OPENING

IO2との共同任務、野犬討伐。
共同任務なだけに、報酬は高額だ。
たかが野犬と侮るなかれ。
奴等は魔物に魅入られた愚かな獣。
併せて、その"数"にも注意せねばならないだろう。
「よっしゃー。行きますかー!」
「…大声出さないでよ」
気合十分な海斗に呆れて警告を飛ばす梨乃。
二人の変わらぬ遣り取りに、ディテクターは煙草を踏み消して苦笑した。
薄暗い山の中…野犬討伐、開始。

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山に入ってから、ずっと歌を歌っている海斗。
魔銃を指先でクルクルと回しながら、先頭を行く。
「ゴー!ゴー!ラスタマ〜ン♪」
「………」
「悪を蹴散らせ!ラスタマ〜ン♪」
「………」
「勇ま〜しき〜その瞳〜に〜♪」
「…うるさい」
「宿る炎っ!イェーァ♪」
「うるさいっつってんだろぉがぁぁぁ…」
「むががががが」
海斗の口をギュゥゥと摘んで叱るディテクター。
何度目だろうか。この遣り取りを見るのは。
二人の後ろを行く麻吉良と梨乃は、顔を見合わせて苦笑。
まぁ、元気なのは良いのだけれど。
今は、任務中なわけでして。
しかも、野犬の一斉討伐ということで、
わざわざ深夜に山に入っているわけでして。
寝込みを襲おうとしてるのに、そんなに大声で歌っちゃ駄目なわけです。
ディテクターさん…ものすごい勢いで眉間にシワ寄せてるわね。
そろそろ、ぷっつんするんじゃないかしら。
海斗くんもねぇ…叱られたら、言うこと聞けば良いのに。
反発して、もっと大きな声で歌ったりするんだもの。
神経逆撫でされっぱなしよね、あれじゃあ。
前方でギャースカ言い合う二人を見つつクスクス笑う麻吉良。
緊張感がなさすぎるのは問題かもしれないけれど、賑やかなのは好き。
いざとなればね。海斗くんも、しっかり働くコだから。安心っていうのもあるかな。
「ちょっと寒いですね」
ブルリと肩を震わせて言う梨乃。
暖かくなったとはいえ、夜の山は冷え込む。
麻吉良は、持ってきた上着を梨乃に羽織らせた。
「あっ。ありがとうございます」
「ふふ。用意周到でしょ?」
「さすが、って感じです」
クスクス笑う梨乃に、ほんわか癒され。
淡く微笑みつつ、懐から地図を取り出す。
依頼人から受け取った、山の地図。
地図には、数箇所、バツ印がついている。
あちこちに点在しているそれは、野犬被害の現場。
必ずしも、この場所で襲われるという確証はないけれど、
注意するに越したことはない、と依頼人が持たせてくれたもの。
以前の共同任務で突発的な行動を取り、迷惑をかけてしまったことに負い目を感じているが故に、
今宵の麻吉良は、誰よりもヤル気満々。
大事には至らなかったけれど、一歩間違えば大惨事になっていた。
今回は、そんなことにならないよう、気を引き締めていかないと。
汚名返上しなくちゃね。あのままじゃ、スッキリしないもの。私が。
「そろそろか?」
振り返り、地図を見やる麻吉良に尋ねるディテクター。
地図を確認して、コクリと頷く麻吉良。
もうすぐ、第一被害地点。
何が起きても、すぐに対応できるようにしておかねば。
うん、と頷き愛刀の柄に手を置く麻吉良。それと、ほぼ同時のことだった。
「あっ!!」
海斗が、突然叫ぶ。
デカい声を出すな!と海斗の背中に蹴りを入れるディテクター。
どうしたの?何か、忘れ物?尋ねようとする前に、気付く。
苦笑している海斗の足元に、黒い尻尾が…。
暗闇の中、ギラリと光る不気味な蒼い瞳。
「…!」
一行は、咄嗟に駆け出した。
『ウ〜〜〜ワウワウワウワウ!!』
「きゃーーーーー」
「おまっ…っとに、馬鹿っ!」
「事故だろーーーー!?」
尻尾を踏んづけて追いかけられるという、何ともお約束な展開。
一行は全力疾走で、山の頂へ向かって走る。
怒りを露わにし、吠える野犬。
その声に応じるかのようにして、四方八方から仲間が集まってくる。
チラリと振り返れば、そこには野犬の群れ。
黒い波のようなそれは、酷く不気味だ。
依頼人から聞いてはいたものの、こうして目の当たりにすると…。
(多い。多すぎだわ、これは)
でも、大丈夫。きっと、イケるはず…。
山に入る前、決定した作戦を実行できれば…!
作戦の要である梨乃に一声かけようとした矢先。
「きゃ!?」
ドサッ―
木の枝に躓き、梨乃が転ぶ。
「梨乃!」
慌てて引き返そうと急ブレーキを踏む海斗。
「駄目!」
麻吉良はバッと腕を伸ばし、海斗を制止させる。
ここでキミが戻ってしまったら、作戦は台無し。
大丈夫。梨乃ちゃんは、私が。
キミは、集中して待っててくれれば良いの。
ちゃんと "借りて" 待っててね。
グッと踏み込み、凄まじい跳躍。
魔人と化した麻吉良の身体能力は、卓越している。
野犬の群れに飲み込まれる一歩手前、
麻吉良は梨乃を抱きかかえ、その場で高くジャンプ。
滞空時間、四秒間。
一、二、三で大きく息を吸い込んで。
四で咆哮、魔人の猛り。
「ガァァァァァッ!!」
『!!』
その声に、怯む野犬たち。
その隙を突いて、梨乃は水の魔法を空から浴びせる。
覆い被さる、柔らかく清き蒼い水。
身体を振って、飛沫を飛ばす暇も与えない。
次いで、麻吉良の白氷息(はくひょうそく)
山全域に降りかかる、凍てつく冷気の息で、絶対零度。
水を浴びていた野犬たちは、瞬時に凍りついた。
とどめは、男性陣。
「やなんだよなー。お前の銃。かっこわりーんだもん」
「お前には勿体無い武器だっつぅの」
「…ふん。えらそーにッ!」
同時に銃を構える海斗とディテクター。
海斗の魔銃は炎。氷を溶かしてしまいかねない。
故に、作戦決定時の約束。
ディテクターから借りた一般銃を扱う。
身動きのとれない野犬は、動かぬ的。
二人は、次々と野犬を仕留めていく。
ヒットする度、ガラスの割れるような音。
山に響く、木霊の歌。

*

「ねーちゃん、だいじょぶか?」
ぺしぺしと麻吉良の頬を叩いて確認する海斗。
任務を終えた一行は、依頼人が運転するトラックで本部へと戻る。
「大丈夫。ありがと」
微笑みかえすものの、麻吉良の額にはジワリと汗が浮かぶ。
水の魔法を凝固させた水晶をあてがって治癒してはいるものの、
つらそうな麻吉良の表情を、梨乃は不安気な表情で見守っている。
魔人化によるリバウンドは、いつまでたっても慣れず、キツい。
けれど、何ともいいがたい、この清々しい気分。
汚名は、返上できただろうか。
皆の目には、どう映っているのだろうか。
じっと海斗を見つめる麻吉良。
その眼差しに、訴える想いを感じ取った海斗は笑う。
「文句なしの大活躍でしょ!ねーちゃん、かっけーよっ」
具合が悪いのを理解っているくせに、麻吉良の胸元に飛び込む海斗。
甘えん坊な猫のようにピタッとくっ付いた海斗の頭を撫で、麻吉良は微笑む。
仲良しな二人を見やり、ディテクターは苦笑した。
「…シスコン」
「お前に言われたくねーよ!」

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

7390 / 黒崎・麻吉良 (くろさき・まきら) / ♀ / 26歳 / 死人
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / ディテクター(草間・武彦) / ♂ / 30歳 / IO2:エージェント(草間興信所の所長)

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! おいでませ、毎度様です^^ 任務、ご苦労様です。
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ…^^

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2008.06.02 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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