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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // IO2共同任務2

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OPENING

IO2との共同任務、野犬討伐。
共同任務なだけに、報酬は高額だ。
たかが野犬と侮るなかれ。
奴等は魔物に魅入られた愚かな獣。
併せて、その"数"にも注意せねばならないだろう。
「よっしゃー。行きますかー!」
「…大声出さないでよ」
気合十分な海斗に呆れて警告を飛ばす梨乃。
二人の変わらぬ遣り取りに、ディテクターは煙草を踏み消して苦笑した。
薄暗い山の中…野犬討伐、開始。

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カチャカチャと音を立てる、大きなバッグ。
ちらりと見やり、ディテクターは尋ねた。
「…何入ってんだ、それ」
「ん?ふふ。秘密兵器」
「…ほほぅ?」
目を伏せ、苦笑するディテクター。
まぁ、お前のやることに失敗だとか、そういうものはないよ。
どんな兵器なんだか、さっぱり、検討もつかねぇけど。
お前が、そうやって自信あり気に笑うときってのは、
本当に、秘密兵器的なものだったりするんだよな。
どんな威力なのやら。楽しみにしとくよ。
微笑みつつ、煙草を踏み消し歩くディテクター。
ディテクターが捨てた吸殻を、さっと拾って携帯灰皿へ落とす。
ごく自然な動作。慣れた動作。
そこに、まったくもう…と呆れたりもしない。
イケないことだっていう認識はあるけれど、
それを、ついやってしまうのなら、私がフォローすれば良いだけ。
いつからか、そう思うようになったから。
…でも、山中で煙草のポイ捨ては危ないわよねぇ。
山火事とか…考えただけで身震いしちゃうわ。
まぁ、今日は梨乃ちゃんも一緒だし。
その心配は、なさそうよね。でもなぁ…。
前方を歩き、ディテクターと口喧嘩している海斗を見やって不安気なシュライン。
海斗くんイコール炎でしょ…。大丈夫かなぁ。
大暴れしちゃったら、もうどうしようもないわよねぇ。
山に入る前から探偵さんといがみ合ってて御機嫌斜めっぽいし…。
カッとなられちゃあ、お終いよね。
抑えていかなくちゃ。フォローばっかりだなぁ、私。
クスクス笑って、海斗とディテクターの後をついていくシュライン。
シュラインの隣には、空を見上げつつ歩いている梨乃。
四人は、今まさに、お仕事真っ最中。
共同任務ということで、野犬の一斉討伐を遂行する。
昼間はどこかに隠れているらしく、発見が困難ということで、
一行は、真夜中…現場である山に踏み入った。
空には月が灯り、星がキラキラと瞬いている。
緑葉の香り、初夏の夜の香り。
ただ四人で山を散策しているだけだとしたら、かなり素敵な光景なんだけれど。
目的は、あくまでも野犬の討伐。気を引き締めていかなくちゃね。

ポツポツと姿を見せるようになった野犬。
一匹、二匹なら討伐は容易い。
スナイパー三人が引き金を引けば、あっという間に始末される。
シュラインが援護する必要もない。
けれど、それは少数の場合。
任務内容は、野犬の"群れ"の討伐。
そのうち、群れでワッと襲い掛かってくるはず。
既に仲間が数匹やられているんだもの。
そろそろ、一斉に牙を向いてきても良い頃よね。
ちまちまと野犬を討伐していく一行。
その情報は、一早く野犬のコロニーへと伝わっていく。
仲間が、次々と討たれている。
それを放置できるはずもない。
悪性の魔法生物である討伐対象の野犬は、異常なまでに仲間意識が強い。
加えて、非常に単細胞だ。
奇襲を試みたりすることなく、真っ向から牙を向く。
ある意味、無謀とも取れるスタイルだが、
群れを成す彼等だからこその突進スタイル。
一斉に襲い掛かってくる野犬の群れは、圧巻だ。
「来た…。来るわ」
無数の足音を耳に捉え、キッと前方を見据えるシュライン。
野犬の群れは、宣戦布告とばかりに一斉に立ち止まり、
シュラインたちを威嚇するかのように、月に吠えた。
「きたきたー!そーこなくっちゃねー!っしゃー!」
「あっ。馬鹿!おま……!」
鬱憤晴らし…だろうか。
一人で駆け出し、群れへと突進していった海斗。
地を蹴り、跳躍。上から、一網打尽にしてやろうとした。
のだが…跳躍を、素早く後悔した海斗。
自分を見上げる野犬の群れの口には、うっすらと紫色の炎が灯っている。
(やべぇ)
咆哮と共に、一斉に紫炎を放つ野犬の群れ。
海斗は魔銃の発砲反動を利用し、空でグンと身を引いた。
「やべー!やべーよ!何あれっ!」
「バカヤロウ…」
海斗が戻ってくると同時に、ダッと駆け出し逃走する一行。
引くつもりはないけれど、あのままボーッと突っ立っていては、
紫炎に焼け焦がされて、あっという間に、あの世逝き。
かと言って、退避している暇もない。
遠距離攻撃の類だから、どんなに離れても無駄だろうし。
何とかしなきゃ。よぅし…いよいよ、秘密兵器の出番ね。
鞄に手を掛け、うんと頷いたシュライン。
その頷きと同時に、一人、仲間が視界から消える。
「きゃあ!」
木の枝に躓き、転んでしまった梨乃。
すぐ後ろには野犬の群れ。
すぐさま立ち上がったものの、それでも遅い。
「梨乃ちゃん!」
咄嗟にタシ・エクを出現させたシュライン。二匹に同時指示。
エクは梨乃の回収に、タシには光を放ちつつ、海斗とディテクターを背に乗せて離れるように。
眩い光に加えて、放つ超音波。
足取りがおぼついたところで、梨乃を回収したエクが戻ってくる。
擦れ違いざまにエクの頭をポン、と撫でて。
怯んだままの野犬の群れへ、放て秘密兵器。

シュラインが放った秘密兵器。
それは、以前、蓮に貰ったベベラの香水(黄)を含ませたコットン入りのカプセル。
野犬に当たって、次々と開いていくカプセルから放たれる甘い香り。
黄色のベベラ香水は、甘えん坊になる効果を持っている。
魔法生物とはいえ、匂いに敏感な獣。
香水の香りを嗅いでしまった野犬は、一瞬で腑抜けてしまう。
猫のように、仲間内でじゃれあう野犬たち。
完全に動きを止めた。やるなら、今しかない。
そう言われなくとも、海斗たちは承知していた。
シュラインが身を屈めると同時に、一斉射撃。
自分の上を飛び交う、炎と水と銃弾。
容赦なく放たれたそれらに、野犬は次々と討たれていく。
すぐに近寄っては、香水の効果を浴びてしまって面倒なことになるからと、
少し時間を空けて、静まり返った野犬の群れへ近付いていく。
ポンポンと音を立てて、順番に消えていく野犬たちは、
皆、とても幸せそうな顔をしていた。
「すげーなー」
「すごいアイテムを持ってますね…」
「確かに、秘密兵器だな」
口々に賞賛を述べる三人。
シュラインはニコッと微笑み、後ろで手を組んで言った。
「終わりっ。さ、報告しに…戻りましょ」

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / ディテクター(草間・武彦) / ♂ / 30歳 / IO2:エージェント(草間興信所の所長)

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! おいでませ、毎度様です。
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ…^^

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2008.06.11 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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