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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // ノイシュの羽根

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 OPENING

 DEAR = INNOCENCE
 CHARGE = \200000
 OPTION = ※
 ORDER = ROCK.FREEM
 DEGREE = class "B"
 REQUEST =
 <聖なる鳥、ノイシュの羽根の入手>
 依頼人は調剤士。万病に効くという、
 聖なる白い鳥、ノイシュの羽根を採取してきて欲しいとのこと。
 ノイシュの生息地は、聖なる山『フランテ』
 ※依頼人は、もう一つ同様の依頼を提出している。
 二つを遂行した場合、オプション報酬は+\200000

 DEGREE CLASS=
 CRAZY SS-S-A-B-C-D EASY

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「ん〜……寒いね」
「で、ですね……」
 異界にある聖なる山『フランテ』にやって来た蓮と梨乃。
 常に猛吹雪な、この山。
 登山目的ではない。お仕事です。
 この山に棲む、聖なる鳥『ノイシュ』
 その羽根を採取するべく、二人は登山。
 何でも、ノイシュの羽根は、万病に効くらしい。
 万能薬として、重宝するのだそうで。
 初めて聞いたんですが……と苦笑した蓮。
 失礼ですよ、と隣で、蓮の背中をパシンと叩いた梨乃。
 かくいう梨乃も、聞いたことがなかった。
 けれど依頼人は、マスターの友人でもある有名な調合師。
 私達が知らないだけで、そういうものなんですよ、きっと。
 そう思ったが故に、梨乃は失礼だと判断した。
 だが実際、この依頼人はちょっと変わり者だった。
「だろうね、そんな気がするだけだから」
 依頼人は、笑いながらそう言ったのだ。
 要するに、依頼人の予想であり、独断と偏見。
 何となく、癒せそう。
 そう思ったが故の依頼だった。
 まぁ確かに、ノイシュは別名『聖なる鳥』
 吹雪に紛れる、真白な姿は、神々しいと聞く。
 そんな鳥の羽根だ。
 癒しの効果があっても不思議ではない。
 ……実際、どうなのかは、まったくもって不明だけれど。
「う〜。寒い寒い」
「れ、蓮さん……う、動き難いです」
「俺、駄目なんだよ。寒いの」
「わかりますけど……ち、ちょっと……お、重いですよぉぉ……」
 梨乃にペタリと寄り添ったり、そのまま のしかかったり。
 果てには、温めてよと微笑みギュッと抱きついたり。
 登山中も、蓮は相変わらず。
 寒いのが苦手、というのも、おそらく嘘なのだろう。
 まぁ、重いだの何だの、文句を言いつつも梨乃は笑顔だ。
 いいんじゃないですか。仲良しですね。
 任務中だってことは……どうなんだろう。
 ちゃんと、理解してるのかな?

 頂上付近に差し掛かった途端、蓮の表情が変わる。
 パッと梨乃から離れ、神妙な面持ちで空を見上げ。
 頂上付近、旋回するノイシュの姿を捉えた蓮の目は、真剣そのものだ。
 相変わらず、切り替えがお上手なことで。
 吹雪に目を細めつつ、梨乃も見上げてノイシュの姿を確認。
 依頼人から聞いていたとおりだ。
 ノイシュの動きは、明らかにおかしい。
 とても、聖なる鳥とは思えない。
 落ち着きなく、バサバサと飛び回る様に、
 神々しさなんて、微塵も感じ取れない。
 なるほど、ね。
 あの動きは、ないよね。確かに。
 魔物の憑依……っぽいかなぁ。
 でも、そうだとしたら、かなりヤバいよね。
 仮にも、聖なる鳥でしょ。
 それを、あそこまでイカれさせてるとなると……かなり強敵だよね。
 先ずは、引っぺがすことから、かな。
 うーん。どうしたもんかな。
 腕を組み、むぅと思案する蓮。
 そんな蓮の横顔を見つつ、梨乃は言葉と指示を待つ。
 自分でも色々と考えてみたけれど、
 どうすべきか、最良な方法が思い付かない。
 何でもかんでも蓮に頼るのは失礼なことだとは思う。
 けれど、いつしか、そのスタイルが定着した。
 何度も二人で任務をこなすうちに。
 蓮の指示は的確で、それに従えば迅速に遂行できる。
 パートナーとして、行動を共にしてきたが故の信頼。
 だが、大人しく思案させてくれるほど甘くはない。
 吹雪の音に混じって聞こえていた、翼音が、ふっと消えた。
 異変に気付き、見上げて危機。
「やばっ」
「きゃあ!」
 咄嗟に梨乃を突き飛ばした蓮。
 梨乃は、ぼふっと雪の上に尻餅をついた。
 二人が離れた瞬間、それまで立っていたところに、ノイシュが突っ込んできた。
 長い嘴が、雪に突き刺さっている……。
 急降下で一突き、あと少し反応が遅れていれば、串刺しになっていただろう。
 バサリと翼を揺らし、再び空へ昇っていくノイシュ。
 先程と同じように、グルグルと空を旋回している。
「………」
 また、急降下してくるのだろうか。
 警戒を解かぬまま、空を見上げる蓮。
 だが、ノイシュが降下してくる様子はない。
 うーん? 様子見してる、のかな?
 にしては、妙だよね。
 かなり凶暴化してるみたいだし……。
 隙なんて、与えてこないと思うんだけどな。
 あ、もしかして。
「きゃ?」
「ちょっと実験」
 グィッと梨乃を抱き寄せて微笑む蓮。
 すると、旋回していたノイシュがギロリとこちらを睨みつけた。
 旋回を停止すると同時に、もの凄い勢いで降下してくるノイシュ。
「あっはは!」
「きゃー!?」
 梨乃を雪の上に放り、自身は身を捩ってクルリと一回転。
 攻撃を避けた蓮は、再び空に舞い上がっていくノイシュを見上げて笑う。
 なるほどね。 そういうこと。 イチャついてるのが不快ってか。
 何、憑いてる魔物は、恋人にフられただとか、そういう過去持ちなのかい?
 クスクス笑いつつ、梨乃に指示する蓮。
 梨乃は、慌てて立ち上がり、その指示に従う。
 腰元から抜いた魔銃を構えて、引き金にかけた指を躍らせる。
「しっかり狙ってね」
「は、はいっ」
 凶暴化しているとはいえ、ノイシュは聖なる鳥。
 信仰している民族も多い。
 故に、殺してしまおうものなら、最悪、牢獄行き。
 それは勘弁。というわけで、梨乃には魔力を極力抑えてもらって……。
 抑えて、抑えて……。 しっかり、狙って……。
 ドッ―
 放たれた水が、ブワリと空に昇る。
 全身に水を浴びたノイシュは、旋回を停止し、こちらを睨みつけた。
 うんうん。オッケイ。 ばっちり、濡れたね。
 水も滴る何とやら。 ……性別、わかんないけど。
 クスクス笑いつつ、宙に紋章を描く蓮。
 それは、風の系譜。
 主の意のままに。踊る風。
 降下するノイシュを、強風に煽られて激しさを増した吹雪が襲う。 
 やがて、凍り付いていく、その優美な姿。
「す、凄い……」
 同時に張った風壁の中、梨乃は、ただただ目を丸くして驚いていた。
 ボソリと雪の上に落下したノイシュに歩み寄り、確認するのは、目。
 蓮と梨乃を見やるノイシュの瞳は、とても澄んだ蒼色をしている。
 吹雪に見舞われる最中、憑いていた魔物は抜け出たらしい。
 抜けた魔物が、何処へ行ったのか。 それは、まぁ、気になるところだけど。
 とりあえず、今回の任務は、これにて終了。
 大人しくなったノイシュに張り付いた氷を剥がしてやり、
 ぷつんと一枚、羽根を採取。
 抵抗することなく羽根を取らせてくれたノイシュに感謝を述べて。
 二人は、聖なる山を後にする。
「……っくしゅ!」
「あらら。大丈夫かい?」
「だいじょぶです」
「抱っこしてあげようか」
「え? い、いいです」
「まぁ、そう言わずに。あったかいよ? ほら」
「…………」
 ニコリと微笑み両手を広げる蓮。
 帰りもまた、甘ったるい雰囲気で。
 そんな二人を見やるノイシュ。
 もう、鋭い眼差しではなく、優しい瞳で。

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 ■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

 7433 / 白月・蓮 (しらつき・れん) / ♂ / 21歳 / 退魔師
 NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント

 シナリオ参加、ありがとうございます。
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 2008.06.19 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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