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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // ゼイジュの羽根

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 OPENING

 DEAR = INNOCENCE
 CHARGE = \200000
 OPTION = ※
 ORDER = ROCK.FREEM
 DEGREE = class "B"
 REQUEST =
 <邪なる鳥、ゼイジュの羽根の入手>
 依頼人は調剤士。万病に効くという、
 邪なる黒い鳥、ゼイジュの羽根を採取してきて欲しいとのこと。
 ゼイジュの生息地は、邪なる山『グロンツ』
 ※依頼人は、もう一つ同様の依頼を提出している。
 二つを遂行した場合、オプション報酬は+\200000

 DEGREE CLASS=
 CRAZY SS-S-A-B-C-D EASY

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「うわ。真っ暗だね」
「ですね……」
「足元、気をつけてね」
「はい」
「ん? 抱っこして行こうか?」
「い、いいです」
 ノイシュの羽根を採取した後、蓮と梨乃は、そのまま次の任務へ。
 依頼人は同一人物。依頼内容も、似たようなもの。
 けれど、次は聖なる鳥ではなく、邪なる鳥の羽根を採取せねばならない。
 邪なる鳥、ゼイジュ。 漆黒の巨鳥。
 こちらは、魔物憑依していないそうだ。
 けれど、ゼイジュは元々、攻撃的な鳥。
 まぁ、邪なる鳥……とか言われてるくらいだしね。
 けど、そういうのに限って実は温厚だったりするんだよね、実際。
 噂みたいなものが先行浸透しちゃっててさ。
 実は、すっごい大人しかったりしてね。
 そうだったら、楽なんだけどなぁ。
「きゃー!!」
「………(まぁ、そう上手くはいかないよね)」
 ゼイジュが棲む、邪なる山『グロンツ』に踏み入って早々のことだ。
 真っ黒な巨鳥が、物凄いスピードで降下してきた。
 ノイシュのときと、展開・パターンは一緒。
 けれど、鋭さが違う。 何のって、攻撃の。
 これは、マズイね。
 梨乃の手を引き、ひとまず退避。
 大樹の陰に身を潜めて、作戦会議。
 グルグルと空を旋回しているゼイジュ。
 やたらと下を気にしている。
 俺達を、探しているんだろう。
「き、凶暴すぎませんか」
 額に汗を滲ませて、動揺している梨乃。
 確かに、聞いていた話よりも酷い有様だ。
 やっぱり、梨乃ちゃんも、そう思う?
 だよね。 結局、憑依されてるんだと思うんだよ、あれ。
 まぁ、ノイシュとゼイジュは対なる存在ってことだからさ。
 片方だけに憑依するわけないよね。
 どうせなら、両方とも自分のものにしたいって思うもの。
 普通の、強欲で醜い魔物ならね。
 多分、これは推測なんだけど、
 ノイシュに憑いてた魔物と、同一だと思うんだ。
 放っている邪気が、すごく似ているから。
 少し性質を変えたのは、カモフラージュなんだろうね。
 ま、無駄なんだけどさ。 俺からしてみれば。
 見上げて確認するゼイジュの姿。
 ご丁寧に、今回は更に厄介な能力も得ているようだ。
 旋回しながら、ゼイジュは口から黒い炎を吐いている。
 そこらじゅうで、漆黒に燃え上がる木々。
 面倒くさいなぁ、あれ。
 遠距離魔法も使えますよ、ってことでしょ。要するに。
 それにしても、かなり暴れてるな。
 さっき突進してきたことで、気付いてるからだろうね。
 また、俺達が相手だってことで。
 慌てているように見えなくもないけど。さて……。
「火には水。だよね」
「はい」
「とりあえず、炎担当を任せても良い?」
「わかりました」
「本体は、俺が叩くよ。あ、抑えてね」
「はい」
 手短な作戦会議。けれど、それで十分。
 二人の意思疎通は、言葉以外でも成立するから。
 ヒョコッと木の陰から姿を見せ、煽るようにヒラヒラと手を振る蓮。
 気付いたゼイジュは、炎を吐きながら降下してくる。
 飛んでくる炎の始末は、梨乃の役目。
 放たれる清き水は、漆黒の炎を沈めて掻き消す。
 で、蓮は、というと。
「はっ!」
 前方に突き出す掌。
 生まれ、放たれる風の塊は、衝撃波の類。
 ドンッと、それを浴びたゼイジュは、空高く吹っ飛んだ。
 即死するんじゃなかろうか、と不安になる攻撃だが、
 この能力は、護身の一つ。 殺傷能力はゼロだ。
 標的を突き放したり、動きを止めたり。
 そのような用途でしか、活用できない。
 だが、それでも十分。
 ゼイジュのように、猪突猛進なタイプは、何度も歯向かってくる。
 躍起になって襲い掛かるほど、自身の体力が奪われていくことに気付かない。
 何度も何度も襲い掛かる。 けれど、何度も何度も吹き飛ばされる。
 自慢の炎も、いとも容易く掻き消されてしまう。
 圧倒的に不利な状況。 追い詰められている状況。
 その焦りが、冷静さを一層欠いてしまう。
 狂ったように歯向かうことを繰り返すうち、動きの鈍るゼイジュ。
 あれだけ突風と衝撃波をくらって尚、歯向かってくるのは流石だけれど。
 残念なことに、体力にも限界がある。
 よし……。 そろそろ、いいかな。
 不敵に笑み、鎌鼬を出現させた蓮。
 大きく振りかぶって、空高く投げやる鎌鼬。
 鎌鼬には、秘密兵器を持たせてある。
 空高く舞い上がり、ゼイジュの背中にペタンと乗っかった鎌鼬。
 背中で、ちょこまかと動く鎌鼬に苛立ち、身を捩るゼイジュ。
 翻弄するように各所を回り、やがて。
 鎌鼬は、ゼイジュの頭にペタリと貼り付けた。
 貼り付けたのは……縛符。
 蓮が持参した秘密兵器だ。
 貼り付ければ、一瞬で動きを封じることが出来る。
 どんな強敵でも、呪縛を解くには、一時間は掛かるだろう。
 動きを封じられ、ヒュルル……と落下していくゼイジュ。
 真っ黒な木々の枝を折りつつ、地に叩きつけられる体。
 歩み寄ってくる蓮と梨乃の姿に、もがこうとするものの自由がきかない。
「すごい威力ですね」
「でしょ? 自慢の逸品ですから」
 クスクス笑いつつ、懐から別の符を取り出す蓮。
 聖なる風を封じ込めた、その符を重ねて貼り付ければ、魔物は即効で昇天。
 煙となって消えていく魔物。
 さて、あとは採取するのみだね。
 じゃあ、ちょっと失礼して……。
 ぷつん、と一枚、ゼイジュの羽根を採取する蓮。
 ゼイジュは不愉快そうな顔をしているが、抵抗する様子はない。
 ほら、やっぱりね。 そういうもんなんだよ。
 凶暴だとか何とか、そういうことを言われてる奴に限って温厚なの。
 クスッと笑い、梨乃に指示してゼイジュに治癒魔法をかけ回復してやり。
 その後は、頭に貼り付けた符を剥がして、逃がしてやって……終了。
「お疲れさま」
「お疲れ様です」

 *

 仲良く、手を繋いで山を降りていく蓮と梨乃。
 ノイシュの羽根と、ゼイジュの羽根。
 見事、二つの羽根を採取した二人。
 依頼人は、大いに喜び、二人に感謝を述べた。
 必要なのは、ほんの少しだからと、
 報酬と一緒に、羽根も二つ、そのままゲット。
 用途は不明だけど、まぁ、せっかくだし貰っておこう。
 いつか、役に立つかもしれないしね。
 こういう、ついでにゲットした的なものが、
 意外と貴重なアイテムだったりするからねぇ。
 馬鹿に出来ないもんですよ。
「はー。お腹空いたね。何か食べて帰ろうか。報酬で」
「そうですね」
「何食べたい?」
「ん〜……。 パスタ、とか?」
「あぁ、いいね。 じゃ、行こうか」

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 ■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

 7433 / 白月・蓮 (しらつき・れん) / ♂ / 21歳 / 退魔師
 NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント

 シナリオ参加、ありがとうございます。
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 2008.06.19 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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