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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // ノイシュの羽根

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 OPENING

 DEAR = INNOCENCE
 CHARGE = \200000
 OPTION = ※
 ORDER = ROCK.FREEM
 DEGREE = class "B"
 REQUEST =
 <聖なる鳥、ノイシュの羽根の入手>
 依頼人は調剤士。万病に効くという、
 聖なる白い鳥、ノイシュの羽根を採取してきて欲しいとのこと。
 ノイシュの生息地は、聖なる山『フランテ』
 ※依頼人は、もう一つ同様の依頼を提出している。
 二つを遂行した場合、オプション報酬は+\200000

 DEGREE CLASS=
 CRAZY SS-S-A-B-C-D EASY

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 吹雪が吹きすさぶ雪山を二人、並んで登る。
 吐く息は真っ白。自分の息で視界が遮られる。
「寒くないか。大丈夫か?」
「だいじょぶです……」
 道中、凍夜は梨乃を気遣いっぱなしだ。
 ジャケットを三着も羽織らせている為、梨乃はモコモコしている。
 返って動きにくそうで、体力の消費が激しそうだが……。
 凍夜の気遣いを無下にすることは出来ない。
 そもそも、その気遣いが嬉しいから、有難く頂戴する。
 例え、歩きにくくとも。
 地図を確認しながら、ひたすら頂を目指す。
 今回、二人が請け負った任務は、
 この山に棲む、聖なる鳥『ノイシュ』の羽根を採取すること。
 依頼人いわく、万能薬の材料として使えるらしい。
 まぁ、聞いたことのない話だ。
 信憑性は怪しいところ。
 だが、依頼人である調合師は、マスターの友人でもある。
 故に、疑う余地は……あまり、ない。
 それにしても、凄い吹雪だな。
 本当に、こんなところにいるのか?
 はぁ、と息を吐いて見上げる空。
 すると、空に鳥らしき姿が確認できた。
 グルグルと、同じところを旋回している。
 しかも、物凄いスピードで。
 聖なる鳥の動きにしては、品がなさ過ぎる。
 やはり、依頼人の言っていたとおり……魔物に憑依されているみたいだな。
 掌に闇の力を灯し、空を舞うノイシュを見据える凍夜。
「さて、始末するか」
 ポツリと呟いた凍夜に、梨乃はギョッとした。
「と、凍夜さんっ。 始末しちゃ駄目です」
「……冗談だよ」
 クックッと苦笑し、梨乃の頭に手を乗せる凍夜。
 ちゃんと聞いていたから、把握してるよ。
 こいつは、聖なる鳥。
 神として崇められたりもしている存在。
 故に、殺してしまうと罰せられる。だろ?
 冗談にしては、顔が本気でしたよ……と苦笑する梨乃。
 元々端整な顔立ちだから、いつでも本気に見えてしまうかもしれない。
 それは、凍夜の悩みの一つでもある。
 大して気にも留めていない悩みなのだが。
 まぁ、それは置いといて。今は、関係ないし。
「序盤は、サポートに徹する。任せたぞ」
「は、はいっ」
 ぼんやりと黒い影を掌に纏わせて、真剣な表情で告げた凍夜。
 様子見、というわけでもないけれど。
 銃撃で、ある程度のダメージを与えたら、後は、俺に任せてくれて良い。
 ちょっとキツいかもしれないが……まぁ、やむをえない。
「じゃ、いくぞ」
「はいっ」
 顔を見合わせ、互いに頷き。同時に駆け出す。別方向へ。
 梨乃は魔銃で、ノイシュの翼を狙い撃ち。
 それをサポートするように、凍夜が闇の波動で動きを抑制する。
 手加減しつつも本気で、これが実に難しい。
 ちょっと気を抜こうものなら、あっという間に返り討ち。
 けれど、全力で向かってしまっては、命を奪いかねない。
 ギリギリの遣り取り。
 淡々と進行しているかのように見えつつ、緊張感溢れるバトル。
 繰り返す内、ノイシュの動きが次第に鈍くなっていく。
 濡れて、自由の利かなくなった翼を必死に揺らすものの、ひどく不安定だ。
 そろそろ……いいか。
 梨乃をチラリと見やってアイコンタクト。
 頷き、一旦発砲を止める梨乃。
 一瞬の静寂。そこで、凍夜が闇の膜にて捕縛を試みる。
 ブワリと、巨鳥を丸ごと包み込む漆黒。
 抜け出そうと足掻けば足掻くほど、
 閉じ込められていく、蟻地獄のような闇の中。
 完全に自由を奪われたノイシュは、そのままズルズルと落下。
 雪の上に落下したノイシュに駆け寄り、手早く羽根を採取。
 これで、目的は達成された。
 任務は、ひとまず完了だ。
 だが、これで、じゃあサヨナラというのは、あんまりだろう。
 ことのついでに、清めの儀式も執り行ってしまおう。
 包み込む闇の力を増幅させ、縛り上げる。
 絞り出されるように、姿を現す魔物。
 ノイシュに憑いていた魔物は、悪魔の類だった。
 何だ……低級悪魔か。
 随分と、大それた真似をするもんだな。
 まぁ、俺に見つけられたのがウンのつきだ。
 在るべき場所へ帰れ。
 おいおい。居心地の良い場所へ戻してやるんだ。
 そんな不愉快そうな顔するなよ。
 感謝するべきところだぞ?
 クッと笑い、出現した魔物を血剣で一突き。
 不気味な灰色の液体を吐き出して、消滅していく魔物。
 
 憑いていた魔物が消え、すっかり大人しくなったノイシュ。
 聖なる鳥に、闇の魔法は、やはり相当キツかったようだ。
 ノイシュは、ぐったりと伏せている。
 やむをえなかったとはいえ、可哀相なことをしたな。
 すまない。
 目を伏せ、ノイシュの頭を撫でやる凍夜。
 梨乃は、優しさに満ちた凍夜の横顔に微笑みつつ、
 魔力を全開にして、ノイシュに治癒魔法をかける。
 瞬時に癒える傷。 ノイシュは、深々と頭を下げた。
 それはまるで、ありがとうと言ってるかのようだった。
 ふぅ……。 完了、だな。
「お疲れ」
「お疲れ様です」
 労いの言葉を掛け合う二人。
 凍夜の手には、真っ白な美しい羽根。
 ノイシュの羽根、採取完了。これにて、任務完了。
 それにしても……近頃、多いな。
 悪魔が憑依してるパターンが。
 ったく。 あいつは何をやってんだ。
 下々の面倒くらい、きちんと見やがれ。
 ……まぁ、奴等も仕事だからな。
 それを討伐する俺が契約者だというのも……また珍妙な話か。
「っくしゅ!」
「あぁ、大丈夫か?」
「は、はい」
 鼻を真っ赤にして微笑む梨乃。
 凍夜は、そんな梨乃の鼻を撫でてやり、
 用は済んだ、風邪を引いてしまうから、早く戻ろう。
 そう言って、梨乃の手を引き、歩き出す。
 吹雪が吹きすさぶ聖なる山を、二人で降りる。
 その道中、凍夜が終始、神妙な面持ちだったことを、梨乃は見逃さなかった。

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 ■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

 7403 / 黒城・凍夜 (こくじょう・とうや) / ♂ / 23歳 / 何でも屋・契約者・暗黒魔術師
 NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント

 シナリオ参加、ありがとうございます。
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 2008.06.20 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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