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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // ゼイジュの羽根

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 OPENING

 DEAR = INNOCENCE
 CHARGE = \200000
 OPTION = ※
 ORDER = ROCK.FREEM
 DEGREE = class "B"
 REQUEST =
 <邪なる鳥、ゼイジュの羽根の入手>
 依頼人は調剤士。万病に効くという、
 邪なる黒い鳥、ゼイジュの羽根を採取してきて欲しいとのこと。
 ゼイジュの生息地は、邪なる山『グロンツ』
 ※依頼人は、もう一つ同様の依頼を提出している。
 二つを遂行した場合、オプション報酬は+\200000

 DEGREE CLASS=
 CRAZY SS-S-A-B-C-D EASY

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 聖なる山にてノイシュの羽根を採取して、そのまま別任務へ。
 お次は、邪なる山へ踏み入って、邪鳥ゼイジュの羽根を採取せねばならない。
 依頼人は同一人物。 対なる二匹の羽根が必要とのことで。
 うわぁ……それにしても、真っ暗ね。
 全然、辺りを把握できないわ。
 まぁ、無問題なんだけど。
 シュラインと千華は、タシの背中の上。
 暗闇の中でも、彼に任せれば移動は容易い。
 振り落とされぬようにと、がしっとしがみ付く二人。
 念のため、事前に千華にお願いし、防護魔法を纏わせて貰っている。
 不意打ちされても、とりあえずは安心ね。
 まぁ、連続攻撃とかされちゃうと危険なんだけども……。
 山を登り、山頂付近にさしかかったときだった。
 シュラインの耳が、不気味な羽音を捉える。
 咄嗟にタシの背中をポンと叩いて、止まるよう指示する。
 空を見上げれば、そこには、物凄いスピードで旋回している灰色の巨鳥。
 元々、邪なる鳥って言われてるくらいだから、それなりに凶暴なんだとは思うのね。
 でも、あぁ……やっぱり。 同じパターンね。
 この嫌な感覚。 間違いないわ。
 ゼイジュにも、魔物が憑いちゃってる。
 まぁ、想定はしてたかな。
 だって、対なる鳥でしょ?
 どちらか一方だけに憑くなんて、おかしいもの。
 出来うることなら、二匹纏めて乗っ取りたいと思うのが普通よね。
 魔物って、本当、欲張りよねぇ。
 さて、どうしたものかしら。
 木の陰に隠れ、ひっそりと作戦会議。
「闇……ってことは、光が弱点だったりするかしら」
「うーん。そうかもしれないわね」
 任務に赴く前、書庫で資料漁りをした。
 けれど、見つけることが出来たのはノイシュに関する文献だけ。
 ゼイジュに関するものは、見つけることが出来なかった。
 故に、ゼイジュの弱点や生態については不明のままだ。
 普通に考えればね、弱点だと思うのよ。 光が。
 でもなぁ、彼も一応、神として崇められている存在でしょ。
 そうなると、あやしいところなのよね。
 あからさまな弱点を、克服しないわけないもの。
 まぁ、わからないけれど。 とりあえず、やってみましょ。
 実際どうなのか、一度試せばハッキリするしね。
 ポン、と千華の背中を叩いて、よろしくと微笑むシュライン。
 それに応じ、千華は探りを入れるように発砲。
 放たれる白い光が、闇を照らす。
 辺りが一瞬、明るくなったと同時に、シュラインは確認した。
 それまで、猛スピードで旋回していたのに、減速……。
 減速は、見るからに明らかなもの。
 それに加えて、フラフラと、動きがぎこちなくなっているようにも見えた。
 ふむ? やっぱり、弱点っぽいわね。
 とはいえ、ダメージは与えられていないみたい。
 でも、ハッキリしたわ。
 完全克服は出来ていない。
 故に、光を浴びてしまうと、一時的に自由を奪われてしまう。
 通常の鳥と、逆なのね、きっと。
 常に闇の中で生活しているから、明るいところでこそ鳥目になってしまうんだわ。
 よし。 それなら、話は早いわね。
「千華さん。どんどん撃っちゃって」
「了解」
 シュラインの指示どおり、空へ向けて何度も発砲する千華。
 一つの光が消えると同時に、違う場所で、また光が灯る。
 白い光に包まれて、ゼイジュは身動きが取れない。
 応戦しようと、黒い炎を吐き出してはくるものの、
 見えていないが故に、見当違いの方向へ飛んでいくばかり。
 加えて、ゼイジュに憑いている魔物が闇属性だということもあり。
 光に炙り出され、ポンとゼイジュから抜け出した。
「そのまま、やっちゃって」
「はいはい」
 姿を見せた魔物の始末を千華に任せ、シュラインは駆け出す。
 ぐったりと、地に伏せているゼイジュの元へ。
 うわぁ。 迫力あるなぁ。
 邪鳥、か。 うん、まさに、そんな感じね。
 ごめんね、とペコリと一礼し、羽根を一枚採取。
 弱っているゼイジュは抵抗することなく、採取させてくれた。
 魔物の浄化を終えて、合流した千華。
 二人は、不安気な表情でゼイジュを見やる。
 治癒魔法をかけたものの、ぐったりしたままだ。
 かなり衰弱してるみたいね。
 このまま絶命とかしちゃったら……どうしよう。
 何とか回復させてやれないものかと、翼を撫でてみたり、声を掛けたり。
 その思いに応えるかのように、ゆっくりと翼を揺らすゼイジュ。
 大丈夫だから、さっさと帰れ。
 冷たい瞳が、そう告げているかのような気がした。
 心配ではあるけれど、邪魔だというのなら退かざるをえない。
 大丈夫かな。 去りつつも、何度も振り返るシュライン。
 まさか、人間に救われることになろうとは。
 情けない限りだ。 邪鳥として、みっともなかろう。
 そんな目で見るな。 心配には及ばない。
 私は邪鳥。 これしきのことで、くたばりはせぬ。
 不快なのだ。 憐れみの目で見られることが。
 人間なんぞに心配されるほど、ヤワじゃないさ。
 大きな翼を揺らし、高く高く舞い上がるゼイジュ。
 邪鳥としてのプライドを誇示。
 結果として、それはシュラインを安心させる行為となった。

 *

「シューちゃん? 何してるの?」
「ん。ちょっと、調べ事をね」
「疲れてるでしょうに。 何も今日じゃなくても……」
「ん〜。 気になって眠れそうもないから、良いのよ」
「そう……? 無理しないでね」
「ありがとう」
 任務を終え、本部に戻ってきて早々、書庫に篭ったシュライン。
 様々な文献を漁り、確かめるのは先々の為。
 神鳥が、いとも容易く憑依されてしまったことにしても。
 最近、異界では妙な事例が多い。
 咲くはずのない魔法の花が、各所で発見されていたり。
 そういわれてみれば、魔物の数も増えているような気がする。
 何か、大きな事件の前触れだとか……そんな気もするのよね。
 気にし過ぎかもしれないけど、どうも引っかかるの。
 結局、何も掴めないかもしれないけど、納得するまで調べたい。
 少しでも、先々の為になれば。 そう思うから。
 書庫で一人、文献を漁るシュライン。
 落とす、真剣な眼差し。
 その隣、テーブルの上には二枚の羽根。
 依頼人から追加報酬として受け取ったもの。
 それらが淡く輝き揺れる度、シュラインの不安は募っていった。

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 0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
 NPC / 青沢・千華 (あおさわ・ちか) / ♀ / 29歳 / INNOCENCE:エージェント

 シナリオ参加、ありがとうございます。
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 2008.06.21 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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