|
INNOCENCE // ゼイジュの羽根
------------------------------------------------------
OPENING
DEAR = INNOCENCE
CHARGE = \200000
OPTION = ※
ORDER = ROCK.FREEM
DEGREE = class "B"
REQUEST =
<邪なる鳥、ゼイジュの羽根の入手>
依頼人は調剤士。万病に効くという、
邪なる黒い鳥、ゼイジュの羽根を採取してきて欲しいとのこと。
ゼイジュの生息地は、邪なる山『グロンツ』
※依頼人は、もう一つ同様の依頼を提出している。
二つを遂行した場合、オプション報酬は+\200000
DEGREE CLASS=
CRAZY SS-S-A-B-C-D EASY
------------------------------------------------------
聖なる山にてノイシュの羽根を採取して、そのまま別任務へ。
お次は、邪なる山へ踏み入って、邪鳥ゼイジュの羽根を採取せねばならない。
依頼人は同一人物。 対なる二匹の羽根が必要とのことで。
うわぁ……それにしても、真っ暗ね。
全然、辺りを把握できないわ。
まぁ、無問題なんだけど。
シュラインと千華は、タシの背中の上。
暗闇の中でも、彼に任せれば移動は容易い。
振り落とされぬようにと、がしっとしがみ付く二人。
念のため、事前に千華にお願いし、防護魔法を纏わせて貰っている。
不意打ちされても、とりあえずは安心ね。
まぁ、連続攻撃とかされちゃうと危険なんだけども……。
山を登り、山頂付近にさしかかったときだった。
シュラインの耳が、不気味な羽音を捉える。
咄嗟にタシの背中をポンと叩いて、止まるよう指示する。
空を見上げれば、そこには、物凄いスピードで旋回している灰色の巨鳥。
元々、邪なる鳥って言われてるくらいだから、それなりに凶暴なんだとは思うのね。
でも、あぁ……やっぱり。 同じパターンね。
この嫌な感覚。 間違いないわ。
ゼイジュにも、魔物が憑いちゃってる。
まぁ、想定はしてたかな。
だって、対なる鳥でしょ?
どちらか一方だけに憑くなんて、おかしいもの。
出来うることなら、二匹纏めて乗っ取りたいと思うのが普通よね。
魔物って、本当、欲張りよねぇ。
さて、どうしたものかしら。
木の陰に隠れ、ひっそりと作戦会議。
「闇……ってことは、光が弱点だったりするかしら」
「うーん。そうかもしれないわね」
任務に赴く前、書庫で資料漁りをした。
けれど、見つけることが出来たのはノイシュに関する文献だけ。
ゼイジュに関するものは、見つけることが出来なかった。
故に、ゼイジュの弱点や生態については不明のままだ。
普通に考えればね、弱点だと思うのよ。 光が。
でもなぁ、彼も一応、神として崇められている存在でしょ。
そうなると、あやしいところなのよね。
あからさまな弱点を、克服しないわけないもの。
まぁ、わからないけれど。 とりあえず、やってみましょ。
実際どうなのか、一度試せばハッキリするしね。
ポン、と千華の背中を叩いて、よろしくと微笑むシュライン。
それに応じ、千華は探りを入れるように発砲。
放たれる白い光が、闇を照らす。
辺りが一瞬、明るくなったと同時に、シュラインは確認した。
それまで、猛スピードで旋回していたのに、減速……。
減速は、見るからに明らかなもの。
それに加えて、フラフラと、動きがぎこちなくなっているようにも見えた。
ふむ? やっぱり、弱点っぽいわね。
とはいえ、ダメージは与えられていないみたい。
でも、ハッキリしたわ。
完全克服は出来ていない。
故に、光を浴びてしまうと、一時的に自由を奪われてしまう。
通常の鳥と、逆なのね、きっと。
常に闇の中で生活しているから、明るいところでこそ鳥目になってしまうんだわ。
よし。 それなら、話は早いわね。
「千華さん。どんどん撃っちゃって」
「了解」
シュラインの指示どおり、空へ向けて何度も発砲する千華。
一つの光が消えると同時に、違う場所で、また光が灯る。
白い光に包まれて、ゼイジュは身動きが取れない。
応戦しようと、黒い炎を吐き出してはくるものの、
見えていないが故に、見当違いの方向へ飛んでいくばかり。
加えて、ゼイジュに憑いている魔物が闇属性だということもあり。
光に炙り出され、ポンとゼイジュから抜け出した。
「そのまま、やっちゃって」
「はいはい」
姿を見せた魔物の始末を千華に任せ、シュラインは駆け出す。
ぐったりと、地に伏せているゼイジュの元へ。
うわぁ。 迫力あるなぁ。
邪鳥、か。 うん、まさに、そんな感じね。
ごめんね、とペコリと一礼し、羽根を一枚採取。
弱っているゼイジュは抵抗することなく、採取させてくれた。
魔物の浄化を終えて、合流した千華。
二人は、不安気な表情でゼイジュを見やる。
治癒魔法をかけたものの、ぐったりしたままだ。
かなり衰弱してるみたいね。
このまま絶命とかしちゃったら……どうしよう。
何とか回復させてやれないものかと、翼を撫でてみたり、声を掛けたり。
その思いに応えるかのように、ゆっくりと翼を揺らすゼイジュ。
大丈夫だから、さっさと帰れ。
冷たい瞳が、そう告げているかのような気がした。
心配ではあるけれど、邪魔だというのなら退かざるをえない。
大丈夫かな。 去りつつも、何度も振り返るシュライン。
まさか、人間に救われることになろうとは。
情けない限りだ。 邪鳥として、みっともなかろう。
そんな目で見るな。 心配には及ばない。
私は邪鳥。 これしきのことで、くたばりはせぬ。
不快なのだ。 憐れみの目で見られることが。
人間なんぞに心配されるほど、ヤワじゃないさ。
大きな翼を揺らし、高く高く舞い上がるゼイジュ。
邪鳥としてのプライドを誇示。
結果として、それはシュラインを安心させる行為となった。
*
「シューちゃん? 何してるの?」
「ん。ちょっと、調べ事をね」
「疲れてるでしょうに。 何も今日じゃなくても……」
「ん〜。 気になって眠れそうもないから、良いのよ」
「そう……? 無理しないでね」
「ありがとう」
任務を終え、本部に戻ってきて早々、書庫に篭ったシュライン。
様々な文献を漁り、確かめるのは先々の為。
神鳥が、いとも容易く憑依されてしまったことにしても。
最近、異界では妙な事例が多い。
咲くはずのない魔法の花が、各所で発見されていたり。
そういわれてみれば、魔物の数も増えているような気がする。
何か、大きな事件の前触れだとか……そんな気もするのよね。
気にし過ぎかもしれないけど、どうも引っかかるの。
結局、何も掴めないかもしれないけど、納得するまで調べたい。
少しでも、先々の為になれば。 そう思うから。
書庫で一人、文献を漁るシュライン。
落とす、真剣な眼差し。
その隣、テーブルの上には二枚の羽根。
依頼人から追加報酬として受け取ったもの。
それらが淡く輝き揺れる度、シュラインの不安は募っていった。
------------------------------------------------------
■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■
0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
NPC / 青沢・千華 (あおさわ・ちか) / ♀ / 29歳 / INNOCENCE:エージェント
シナリオ参加、ありがとうございます。
-----------------------------------------------------
2008.06.21 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
-----------------------------------------------------
|
|
|