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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // ヘヴン・ファイター 2nd

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 OPENING

「おっ!おかえりー!」
「ただいま〜」
「どーよ? どーよ?」
「ふっふっふ」
「おおおおおおおおお!」
「さっそく……行く?」
「とーぜんっ!!」
 朝早くから出かけていた浩太の帰りを、セントラルホールで待っていた海斗。
 どうだった? と聞けば、浩太は鞄から、とあるアイテムを取り出して見せた。
 不敵に笑って、浩太が鞄から出したもの。
 それは、ゲームソフト『ヘヴン・ファイター -2nd- 』
 超人気格闘ゲーム、ヘヴン・ファイターの最新作である。
 予約していたにも関わらず、朝から並んでソフトをGETした浩太。
 それほどまでに、浩太はヘヴンシリーズのファンなのだ。
 仲良く肩を組み、地下ラボへと向かう浩太と海斗。
 プレイするからには、最高の環境下で。
 ゲーマーとして、当然の行いであります。

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「あ〜……っと、ちょっと。 そんなに引っ張らなくても」
「…………(すごい、チカラ……)」
 グイグイと海斗と浩太に引っ張られている明日菜とミリーシャ。
 引っ張られているというよりは、もはや引きずられているかのような。
 二人の手を引く海斗と浩太は、やたらと目を輝かせている。
 やれやれ。まるっきり子供ね。肩を竦めて笑う明日菜。
 二人がキラキラしている理由。 それは、浩太の手にある。
 ヘヴン・ファイター・セカンド。超人気格闘ゲームだ。
 入手してきて早々、二人は対戦することに。
 ゲームで対戦する際、二人は決まって地下ラボに降りる。
 巨大なモニターで、エキサイティングなバトルを展開。
 自室の小さなテレビじゃ、折角の美麗グラフィックも台無しだ。……らしい。
 地下ラボへ降りようとした矢先、揃って任務から戻ってきた明日菜とミリーシャに遭遇。
 彼女らにとっては『見つかってしまった』的な展開だ。
 そんなこんなで、二人は強制連行。
 鼻息の荒い海斗と浩太に連れられて、地下ラボへと降りていく。

 珍しく、ソロで任務を遂行中の藤二。数日前から、地下ラボに主はいない。
 ラボに入って、すぐさま理解し、はぁ……と溜息を落として笑う明日菜。
 激しく汚いラボ。藤二は女にはダラしないけれど、几帳面な男だ。
 部屋を散らかすだとか、散らかしたまま出かけるだとか、そういうことは絶対にしない。
 テーブルの上には、お菓子の空き箱がドッサリ。
 モニター前には、空のペットボトルがズラリ。
 一目瞭然だ。藤二がいないのをいいことに、海斗と浩太は、ここを遊び場にしている。
 (見たことない、お菓子……)
 お菓子の空き箱を手に取り、首を傾げるミリーシャ。
 手に取ったのは、リューン・アンド・デローナというお菓子の空き箱。
 ネットでしか販売していない、レアなお菓子だ。
 見たことがないのも、当然と言える。
 箱に描かれたイメージを見て、コクリと唾を飲むミリーシャ。
 クリームキャラメルのお菓子らしい。キャラメルは、ミリーシャの大好物だ。
 いいな、私も食べたかったな。そんな表情で、箱をテーブルに戻したミリーシャ。
 って、こら。 ミリーちゃん。どうしてテーブルに戻しちゃうの。
 違うでしょ。ゴミはゴミ箱に。でしょ? まったくもう……。
 ゴミ袋を手に、散らかったラボを歩き回って掃除しだす明日菜。
 海斗と浩太は、ワックワクしながらゲームをセット。
 何が始まるのかな……? ミリーシャは、ちょこんと座ってみた。
 ほんとにもー。どうして男の子って、こんなに散らかすのが上手なのかしら。
 多分、一日二日で、ここまで散らかしたんでしょ?
 うわっ。何これ、まだ中身入ってるじゃない。汚いなぁ、もう。
 呆れつつ掃除する中、突如、爆音が響き渡った。
『ヘヴーンファイター!!セカァァァンド!!』
 ビックゥと肩を揺らした明日菜とミリーシャ。
 見やれば、モニターにゲームのタイトルロゴが表示されている。
「うほー! やっべー! コーフンしてきた!」
「とりあえずノーマル対戦でいいよね?」
「おー! バッチコーイ!」
 コントローラーを手に、並んで胡坐をかいて座り、大騒ぎしている海斗と浩太。
 二人の楽しそうな姿に、うっかり興味を抱いてしまったミリーシャ。
 (…………?)
 よくわからないけれど、二人とも、すっごく楽しそう。
 海斗と浩太の後ろに、ちょこんと座って、ミリーシャはモニターを見やる。
 爆音の中、開始されるバトル。
 勇ましい『FIGHT!』の声を合図に、海斗と浩太は自慢のワザを披露する。
 モニターの中、対峙した二人が、色んなワザを出し合って戦っている。
 めまぐるしいバトル展開。すっかりミリーシャは夢中になっている。
 海斗と浩太の腕前は、ほぼ互角。どちらも一歩も引かない。
 たかがゲームの対戦だというのに、白熱し過ぎだ。
 二人とも、ちゃっかり『イイ汗』をかいている。
「はー。楽しー! ミリー。お前もやってみ?」
 コントローラーを差し出して笑う海斗。
 受け取ったミリーシャは、うーん? と首を傾げている。
 チラチラと二人の手元は見ていたけれど、よくわからない。
 ミリーシャ・ゾルレグスキー、十七歳。格闘ゲーム、初体験。

 キャラクターセレクトで、ミリーシャが選択したのは、女性格闘家の『ナチ』
 迷うことなくナチを選択したミリーシャに、海斗と浩太は笑う。
「決断が早いですね」
「ナチかー。すばやさ重視のキャラだなー。何でナチなの?」
「うちのサーカス団で、見たことあるような衣装だから……」
 なるほど。そういう理由か。ふむ、確かに、そう言われてみれば似ているような気もする。
 対戦相手である浩太が、バトルステージやBGMを選んでいる間、
 ミリーシャは、鞭を揺らしてクスクス笑っているナチを見て感想を漏らす。
「特に猛獣使いのコに……似てる気がする……」
「猛獣使いー? それってミリーじゃねーの?」
「ううん……。私は違うよ……?」
「何だ。そーなのか。ずっと猛獣使いだと思ってた」
 海斗の勘違いがサッパリと晴れると同時に、バトルスタート。
 格闘ゲームをプレイしたことがないミリーシャが相手ということで、手加減する浩太。
 浩太の持ちキャラであるセオンは、まだ、あどけなさの残る少年剣士だ。
 ちょこまかと動き回って翻弄し、ここぞというところで攻撃。
「…………」
 プレイしつつ覚えていく操作方法。
 けれど、どうも苦手だ。うまく操作出来ない。
 必死にあれこれボタンを押してはみるものの、攻撃は見当違いの方向へ。
 クスクスと笑いつつ「ごめんね」と謝り、必殺技を放ってトドメをさした浩太。
 ……初体験なんだから、勝たせてあげればいいのに。意地悪な男だ。
 (負けちゃった……)
 よくわからないうちに敗北してしまった。
 微妙に悔しそうな顔をしているミリーシャ。
 そこへ、掃除を終えた明日菜が近寄り、隣に腰を下ろした。
「どれどれ。仇討ちしてあげましょ」
 ニコリと笑って、ミリーシャからコントローラーを奪う明日菜。
 やったことあんの? という海斗の問いに、明日菜は「ないよ」と即答した。
 ま、やったことはなくても、問題ないのよ〜。あたしの場合はね。
 掃除しながら、チェックしてたから。全部、把握してるわよ。ふふふ。
 明日菜が選択したキャラクターは、亜人の『ブローフォ』
 一撃必殺な技が多いけれど、巨体ゆえに扱いにくい。
 初プレイで選択するのは、間違いといえるキャラクターだ。
「何で、そいつなんですか」
 クスクス笑いながら、小刻みに技を出していく浩太。
 明日菜はフフンと鼻で笑うと、素晴らしい手捌きを披露した。
 次々と放たれる大技。一瞬の隙も与えない、猛攻だ。
「ちょっ!? えぇぇっ!?」
 攻撃を避けることに必死になってしまう浩太。
 合間に反撃! と技を繰り出してはみるものの、まるでヒットしない。
 全ての動きを先読みされているかのようだ。
 いや、実際、先読みされている。
 キャラクターの動きや、技を放つ際のタイムラグ。
 ちょっとした動きの合間に生じる、どうにもならない隙。
 ながら観察だったのにも関わらず、明日菜の理解力は異常だ。
 ゲーセンでは、いつも連戦連勝な浩太だが、まるで歯が立たない。
 ちょこまか動き回る様が、酷く無様にも見えてくる。

 見事に散った。敗北した浩太は、ズーンとヘコんでいる。
 その姿を見て、アッハッハッと満足そうに笑う明日菜。
 けれどさすがに、ちょっとやり過ぎたかも。可哀相なことしちゃったかな。
 苦笑しつつ、体育座りの浩太を慰める明日菜。
 そんな二人を他所に、次は俺達ねーと対戦を開始するミリーシャと海斗。
 キャラクター選択画面で、すぐさま海斗が選択したのは『ガルカ』というキャラクター。
 作品自体の主人公でもある剣士で、海斗は、このキャラクターしか使わない。持ちキャラだ。
 (次は、違うのにしようかな……)
 十字キーを操作して、キャラクターを選別していくミリーシャ。
 何の変哲もない選別状態だったのだが、五秒後、画面に異変が起こる。
 ガルルルル……と、どこかで聞いたことのある鳴き声が響いたかと思いきや、
 ポンッ、と突然、謎のキャラクターが選択画面に出現したのだ。
 カウボーイのような格好をした獣人。こいつは、隠しキャラの『ゴルボ』だ。
 何の気なしに十字キーを操作していたミリーシャだが、
 ちゃっかりと隠しコマンドを入力してしまっていたらしい。
「ゴルボ! キターーーー!!」
「嘘ぉっ!?」
「んっ? 何、何事?」
 興奮を抑えきれない様子の海斗と浩太。
 何が何やらわからない明日菜は、二人の興奮っぷりにクスクスと笑っている。
 
 *

 ガンスリンガー『ゴルボ』の強さは、まさに隠しキャラと言わんばかりに異常だ。
 未だに、操作方法を把握しきれていないミリーシャでも、海斗や浩太と、良い勝負ができるほど。
 バトルを観戦しつつ、例によってデータ収集した明日菜は、
 私も、そのキャラクターを使ってみたいなぁと微笑んだ。
「ばっ! 駄目! 駄目だ! 明日菜とゴルボのコンビネーションは危険すぎる!」
「最強無敵になっちゃいますよ〜〜……」
 地下ラボで四人。繰り広げる、熱き白熱バトル。
 結果、明日菜の一人勝ちな展開となったけれど、それはヘヴン・ファイトでの話。
 棚にあった、パズルゲームを取り出して、ミリーシャは言った。
「次は、これで勝負したいの……」
 目が『マジ』だ。揃って、嫌な予感を覚えた三人。
 案の定、パズルゲームはミリーシャの独壇場。
 明日菜ですら太刀打ちできないというツワモノっぷりだ。
 何度も何度も繰り返す対戦。とっかえひっかえ、色んなゲームで対戦。
 時間を忘れて、みんなでゲーム。
 いつしかムキになっている自分に気付き、それが可笑しくて笑ったり。
 ギャースカ騒ぎながらバトルしているメンバーを見つつ、明日菜は淡く笑う。
 うん、まぁ、たまには。 こういうのも良いかもね……?

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 ■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

 6814 / ミリーシャ・ゾルレグスキー / ♀ / 17歳 / サーカスの団員・元特殊工作員
 2922 / 隠岐・明日菜 (おき・あすな) / ♀ / 26歳 / 何でも屋
 NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
 NPC / 黄田・浩太 (おうだ・こうた) / ♂ / 17歳 / INNOCENCE:エージェント

 シナリオ参加、ありがとうございます^^
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 2008.06.26 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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