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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // ルナシネマ

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 OPENING

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 ルナシネマ OPEN
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 2008年6月2日
 いよいよオープン!
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 オープン記念イベント
 6月2日から10日まで
 チケットオール半額!
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 イベント期間:上映作品
 S−MILE2
 モーターサイクロンG
 超獣戦隊ヴォルヴァー
 マジカル・リリナ 他
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 へぇ、オープンしたんだ。結構時間、かかったよね。
 随分と前からテレビだとかラジオだとか、あちこちで宣伝してたから、気になってたんだ。
 ふむふむ、おっ……S−MILE2……。
 あれ、続編出たんだ。まぁ、不憫なラストだったしね。
 ファンの要望に応じて、だとか、そんなところなのかな。
 あの主人公、幸せになれたのかな。 うーん。これは気になるね。
 本部、レストランで軽食を取りつつ、新聞を見やっている蓮。
 デカデカと表示されている広告は、巨大映画館のオープンを知らせるものだ。
 ルナシネマ。その映画館は、とても立派で美しい。
 掲載されている写真を見ても、その美しさは十分に理解できる。
 新聞に釘付けな蓮を見つけ、トコトコと歩み寄って来たシュライン。
「何、見てるの? そんな真剣に」
 クスクス笑って声をかけたシュライン。
 ふと目に飛び込んできた、ルナシネマオープンの文字。
「あっ! 完成したんだ〜!」
 シュラインも、以前から映画館の完成を心待ちにしていた一人だ。
 オープンしたら、絶対に行くんだ。探偵さんと一緒に。
 そう決めていたシュライン。新聞を覗き込む目は、キラキラと輝いている。
 そんなシュラインを見て、蓮はピンと閃いた。
「シュラインさん。デートしません?」
「へっ?」
「Wデート」
「ダブル……って」
「俺と梨乃ちゃん。シュラインさんと探偵さんで」
「え〜……?」
「たまには良いじゃないですか」
「う〜ん」
「見せつけて下さいよ。そちらのラブラブっぷり」
「あははははっ」
 Wデートを提案した蓮。まぁ、どちらにせよ行くつもりではいた。
 断るのも、どうかと思う。思うんだけど、うーん。どうかなぁ。
 何か、こういうのって恥ずかしくない?
 っていうかね、私、したことないのよ。Wデートって。
 どうすれば良いのか、わからないわよと笑うシュライン。
 蓮はクスクス笑い、いつもどおりで良いですよと返す。

 *

 異界唯一の繁華街、その中心にオープンした巨大映画館、ルナシネマ。
 噂以上にデカい。そして立派だ。
 映画館を見上げる四人は、ポカーンと口が半開き。
「ほぉ。こりゃまた立派だなぁ。金、かかってんだろうな」
 煙草を携帯灰皿に押しやって笑うディテクター。
 ん、もう。 どうして、すぐそうやって、お金の話にいっちゃうかな。
 まぁ、仕方ないといえば仕方ないんだけど。 私も気になってたりするしね。
 本当、凄い立派な映画館……。どのくらい、かかってるのかしら。建築費用。
 って、駄目よ。 つられてどうするの。 駄目駄目。
 今日は、デートなんだから。記念すべき、Wデートなんだから。
 野暮なこと考えてないで、楽しまなくっちゃ。
 フルフルと頭を振り、チケット売り場へと歩いていくシュライン。
「? 何か、シュラインさん変じゃないですか?」
「ふふ。 そう?」
 キョトンとしている梨乃に、蓮は笑って言った。
 さて、では早速入館……と行きたいところだけれど。
 何を観るべきか。上映されている映画のリストを見上げて、首を傾げるシュライン。
 二人っきりじゃないからなぁ。どうしよう。
 こういう時って、どんなチョイスするの?
 わ、わかんないよ。どうしよう。 
 助けて〜と困り笑顔を浮かべながら、ディテクターを見やる。
 するとディテクターは、とあるリストを指で示した。
「二本立てとか、良いんじゃないか」
 示した先に表示されている二本立て上映。
 オープン記念ということで、人気作を纏めて上映しているようだ。
 しかも、お値段は据え置き。半額チケットで、二本観れてしまうという御得なシステム。
 対象の作品は『S−MILE2』と『ソウル』
 S−MILEは言うまでもなく、超人気のラブロマンス。
 前作『S−MILE』の続編にあたる作品。
 蓮が予想していたとおり、この続編はファンに要望に応じて製作されたものだ。
 恋人の命が残り僅かだと知った主人公の青年が、最期まで笑っていられるようにと尽くす。
 結果的にラストは、死んだ恋人に、とびっきりの笑顔を青年が送る……というのが前作。
 その続編である今作では、青年の、その後が描かれているらしい。
 前作を観たものならば、かなり気になる内容といえる。
 で、ソウル。こちらも超人気作品。ジャンル分けが難しいとろだが、一応アクションに分類される。
 主人公は、自称ハードボイルドの駆け出しギャング。
 ちょっとドジで、間抜けな主人公が、成長し愛しい人を守る様を描いた作品だ。
「あ。良いですね。私、これが観たいです」
 S−MILEとソウル、どちらのファンでもある梨乃はニコリと微笑んだ。
 うん、いいんじゃない? まぁ、俺の目的はS−MILE2だし。
 この……ソウルって映画は、よくわかんないけど。
 人気なんでしょ? チケットの売れ行きも好調っぽいから、はずれってことはないよね。
「じゃ、これにしましょうか。 あ、俺チケット買って来ますよ」
 微笑み、テキパキとチケットを購入する蓮。
 微塵も動揺している様子のない蓮に、シュラインは溜息を落とした。
 何だか、私、かっこ悪いなぁ。 一人でアタフタしちゃって。
 はふ……と息を落とすシュラインの肩に手を乗せ、ディテクターは笑う。
「ちょっと、落ち着け。な?」

 薄暗い館内で、並んで座る四人。
 右から順に、ディテクター・シュライン・梨乃・蓮。
 入館と同時に購入した、定番のポップコーンを食べつつ上映時間を待つ。
「はい、梨乃ちゃん。 あーん」
「ふぁっ?」
「はい、あーん。して?」
「…………」
 照れくさそうに笑いつつも、小さく口を開けた梨乃。
 そこへポップコーンを放り、クスクス笑う蓮。
 (うわぁぁぁああああ……)
 隣から放たれている甘いオーラに、思わず俯いてしまうシュライン。
 何ていうか、さすがよね。蓮くん。まったくもって普段どおり。
 隣に誰がいようと、お構いなしにイチャついちゃうのね。
 うん、まぁ、いつもそうよね。そういうシーン、何度も本部で見かけてるけど。
 でも、さすがに、これは正直、戸惑っちゃうなぁ……。
 見てみぬフリするのも、おかしいわよね。
 いや、でも、茶化したりするのも、どうなのかしら。
 あぁぁぁ、どうすればいいの。こういうときって……。
 俯いたまま、やたらと考え込んでしまうシュライン。
 それを見かねたディテクターは、ポップコーンを一つ手に取り言った。
「はい。シュライン。 あーん、して」
「ふぉっ!?」
 奇怪な声を放ったシュラインに、クックッと笑うディテクター。
 隣の蓮と梨乃も、クスクスと笑っている。
 すっかり、皆に遊ばれてるような。うぅ……。

 *

 スンスンと泣きながら映画館を後にする一行。
 とはいえ、泣いているのはシュラインと梨乃。
 二人揃って、映画のラストに心を打たれてしまった。
 こともあろうに、どちらの映画も悲しいラスト。
 S−MILE2に至っては、微妙に安心して観ていた。
 前作が前作なだけに、今回はハッピーエンドで終わるんだろうと思っていた。
 けれど、予想外。いや、予想を遥かに上回る悲しいラストだった。
 恋人の死を受け入れることが出来ぬまま、命を絶ってしまった青年。
 真っ白な映像が続く中、前作の台詞が次々と流れた。
 プレイバックされる前作。それに重ね合わせる、今作。青年の想い。
 それらに涙するなだなんて、無理な話だ。
 で、ソウル。これもまた、ものすごい勢いで裏切られた。
 序盤は、痛快なアクションだった。すごく楽しかった。
 ちょっとしたコメディ要素なんかもあって、飽きさせなかった。
 それなのに、中盤から急展開。
 あれよあれよという間に、主人公が身を挺して恋人を守り。
 最期は、二人一緒に射殺されて……終演。
 ラストに鳴り響いた銃声が、今も頭の中で鳴り響いている。
「うぅぅぅ……」
「酷いわっ。あんなラスト、あんまりよぅっ」
 揃って泣きじゃくる女性陣を見やり、苦笑しあう蓮とディテクター。
 うーん。まぁ、確かに切ないラストだったけどさ。
 ある意味、すごい完成度だと思うんだよね、俺は。
 現に、こうして女の子の心を打って泣かしちゃってるわけだし。
 架空世界の人物に、ここまで幸せになって欲しいって願うとか、そうそう出来ないよ。
 両監督、かなりの腕前だね。 次回作とかチェックしとかないと。ね? 探偵さん?
 泣きじゃくる女性陣を落ち着かせようと、
 それぞれ、愛しい人の肩を抱いて歩く二人。
「メシでも食って帰るか。おい、シュライン。何食いたい?」
「ふふ。泣き虫 梨乃ちゃんは、何が食べたいのかな?」
 蓮とディテクターの言葉に、鼻をすすりつつ、揃って返すシュラインと梨乃。
「ずずっ……パスタっ。パスタが食べたいっ……はぅ……」
「私もっ。私も、パスタが食べたいですっ……ふぇぇ……」

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 ■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

 7433 / 白月・蓮 (しらつき・れん) / ♂ / 21歳 / 退魔師
 0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
 NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
 NPC / ディテクター(草間・武彦) / ♂ / 30歳 / IO2:エージェント(草間興信所の所長)

 シナリオ参加、ありがとうございます。
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 2008.06.26 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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