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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // 海底神殿 -アクア・ドロップ-

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 OPENING

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 DEAR = INNOCENCE
 CHARGE = \20000000
 OPTION = ※
 ORDER = NAOKI.SASAGAWA
 DEGREE = class "SS"
 REQUEST =
 <海底神殿に眠る宝石の採取>
 依頼人は、宝石コレクターの男性。
 突如、異界海に出現した海底神殿。
 そこに眠るといわれている宝石を採取してきて欲しいとのこと。

 DEGREE CLASS=
 CRAZY // SS-S-A-B-C-D // EASY

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 ふむ……難易度、最高ランクか。気を引き締めていかねばな。
 それにしても……大丈夫なのか。この面子で。
 じっとりと、同行メンバーを見やって不安そうに溜息を落としたミグ。
 報酬二千万円の大きな仕事。海底神殿へと潜り、そこに眠る宝石を採取する。
 神殿は魔物の巣窟となっているらしく、かなり危険な場所らしい。
 難易度は、最高ランクのダブルエス。
 ミグも、ダブルエス任務は初めて遂行する。
 用心して、気を引き締めてかからねばと決意したのは良いのだが、
 いささか……同行メンバーに不安を覚える。
 何故ならば、海斗と二人っきりで遂行することになったからだ。
 他にも誘って、面子を揃えるべきではなかろうか、ミグは言った。
 けれど、海斗は即答で「必要ない」と、そう返してきた。
 海斗の目的は、報酬の山分けにある。
 二人で半分、一人当たり一千万。これはデカい。
 確かに、二人だけで遂行するのは大変かもしれない。
 けれど、他に面子を募れば、その分、報酬の分け前が減ってしまう。
 そんな理由で、海斗はミグの提案を拒んだ。
 まぁ、この二人ならば、大して心配することもないように思えるが……どうかな。
「よっしゃ! いくぞ、相棒っ!」
「…………」
 意気揚々と、ミグの頭をパフパフと叩いて歩き出した海斗。
 まったく……お前は、本当に困った奴だな。
 後先考えないというか何というか。無鉄砲にも程がある。
 それに、相棒だ? 俺は、お前の相棒になったつもりはないぞ。
 お前のような奴と組んだら、毎日てんてこまいだ。勘弁してくれ。
 
 *

 異界海、その深くに眠る海底神殿。
 巨大なそれは、肉眼でも確認できる。
 水面をしばし眺め、突如、準備運動を始めた海斗。
 ミグは、やれやれ……と肩を竦めて苦笑した。
 海斗とミグの意思疎通は、言葉とメールで取り交わされる。
「お前はさ。犬だから、泳ぎは得意なんだろ?」
 ピピッ―
『犬じゃない。狼だ』
「似たよーなもんだろ。よっしゃ、んじゃ、行くぞー!」
 スゥゥゥゥと大きく息を吸い込み、ぷぅと頬を膨らませて。レッツ・ダイブ。
 勢い良く飛び込んだ海斗が巻き上げた飛沫を浴び、ミグも続いて海の中へ。
 不思議なことに、異界海は水の抵抗を感じない海だ。
 空を飛んでいるかのように、スイスイと進んで行くことができる。
 とはいえ水の中だということに変わりはない。
 神殿に辿り着くまで、息が持つか不安なところ。
 なるべく急いで進む中、海斗は思わずブハッと吹き出した。
 ミグの見事な犬掻きが、とても滑稽に映ったからだ。
 ゴボゴボと漏れる息に、ヤバイヤバイと慌てる海斗。
 必死に泳ぐ、その姿に、ミグはニヤリと笑った。
 更に不思議なことに、海底神殿の中は呼吸が可能だ。
 どういうことなのか。それは理解らない。
 神秘的な雰囲気の中、そこを追求するのは野暮ってものだ。
 踏み入って早々、二人の表情がギラリと神妙なものへと変わる。
 あちこちから飛んできては突き刺さる、嫌な視線。
 ミグと海斗が身構えた瞬間。四方八方から、海の魔物が襲い掛かってくる。
 タコやイカ、クラゲ、魚群。次々と襲い掛かってくる魔物。
 それらを、炎でコンガリと焼きつつ、海斗はケラケラと笑った。
「腹へってきた!」
 ピピッ―
『土産に持って帰って、刺身にでもするか?』
「あっはは! いーね! それ!」
 魔物の強さは、大したことない。どれもザコばかりだ。
 だが、数が多い。倒しても倒しても、次から次へと湧いてくる。
 このままでは、埒が明かない。そう判断したミグは、能力を発動。
 爆発事故で沈没した、ロシア海軍の原子力潜水艦『K−141クルスク』
 それを丸ごとと、その潜水艦に乗り合わせていた乗組員の霊を一斉に呼び寄せる。
 一気に形勢逆転。海の魔物は、次々と打ちのめされていく。
 捌きに加えて、潜水艦のタックルもあり。
 海底神殿は、その美しさと裏腹に、大騒ぎとなった。
 ミグの大胆な指示行動は、海斗の無鉄砲さを上回るのではなかろうか。
 グラグラと揺れる神殿を駆け回りつつ、海斗はケラケラと楽しそうに笑った。
 大騒ぎ、賑やかなのが大好きな彼だ。やりすぎな位が丁度良いのかもしれない。

 魔力を使いすぎてしまったのだろう。ぐったりとしているミグ。
 それでも先頭を歩き、並外れた嗅覚を頼りに目的の宝石を捜す。
 無理するなよ、という海斗の発言に、ミグは苦笑した。
 お前に任せて、見つけられるとは思わないんだ。生憎。
 ひととおりの魔物は始末したけれど、また湧いてくるかもしれない。
 そうなったら、ちょっとマズイかもしれん。魔力が底を尽きかけているからな。
 だから、そうなる前に、見つけ出さねば。
 そして、とっとと地上に戻ろう。今夜は刺身だ。タコの刺身。
 神殿内を歩き回り、その最下に辿り着いたとき。
 二人の目に、何とも美しい青い宝石が飛び込んできた。
 祭壇のようなものに奉られているそれは、とても神々しい。のだが。
「よっしゃー! げっとぉぉぉ!」
 いとも容易く、何の躊躇いもなく、祭壇から宝石を取った海斗。
 ……もう少し、警戒すべきだと思うんだがな。
 それを取った瞬間、魔物が一斉に湧いてくるとか。
 そういう可能性は、ゼロじゃないだろう?
 まぁ、何事もないようだし。結果オーライだが……ん?
 ピクリと動くミグの耳。捉えたのは、不可解な音。
 何かが割れるような、いや、爆発するような……。
 いや、違う。これは、崩壊の音だ。
 ピピッ―
『脱出するぞ』
「おぅ!」
 パラパラと、天井が崩れ落ちてくる中、全力疾走で入口へと戻る二人。
 だが、神殿の崩壊スピードは凄まじく早い。
 どうやら、宝石を祭壇から取ったことが、スイッチになったようだ。
 ガラガラと崩れ、跡形もなく。ただの瓦礫へと化していく海底神殿。
 神殿が崩れるにつれ、呼吸が困難になってくる。
 閉じ込められてしまえば、お終いだ。
 ミグは残り僅かな魔力を振り絞り、マグロの霊の力を借りた。
 猛スピードで浮上していくミグ。
 ミグにしがみついている海斗は、既に呼吸困難なのだろう。白目を剥きかけている。
 
 *

「げほっ。がふっ……うぶぶぶ……」
 地上に戻り、膝をついて咳き込んでいる海斗。
 ミグは、ブルブルと身体を振って飛沫を飛ばす。
 鼻水やら涙やら、顔から出るものが全て出ている海斗は、とても汚い。
 タオルでゴシゴシと彼の顔を拭いてやりつつ、ミグは溜息。
 直に二十歳になる男だとは、とても思えんな。
 あいつよりも子供っぽいのではなかろうか。やれやれ……。
 地上へ戻った二人の傍には、巨大なタコ。
 今夜のおかずは、タコの刺身。
 魔物だけど、食べれるのか? ……まぁ、その辺はスルーで。
 意外と美味しかったりするかもしれないし。
 食べられるか否かは、調理する者が判断してくれるだろうし。
 巨大タコを魔袋に入れ、それを咥えて、ズルズルと引き摺るミグ。
 依頼人に宝石を渡し、報酬を受け取って。
 本部へと戻り、報告を済ませて。それで、任務は完了だ。
 どうなることかと思ったが、実際、すんなりと遂行できたものだ。
 迅速な遂行に、依頼人は勿論のこと、マスターも驚くことだろう。
 タコの土産もあることだし、評価は上々だな。おそらく。
 満足気に笑うミグの横顔を見つつ、鼻をすすりながら海斗が尋ねた。
「なぁ、ミグはさ。この報酬、何に使うんだ?」
「…………」
 しばし考えた後、ミグはクックッと笑い、メールを飛ばす。
 ピピッ―
『エステだな』
「エステぇ? お前がぁ?」
 ピピッ―
『美しい毛並みを保つ為には欠かせないんだ。それに、心地良いしな』
「ふ〜〜〜ん。何つーか。セレブチックだな〜」
 ピピッ―
『でも、それだけじゃないさ。他にも使い道はある』
「え。何何? どんなん?」
 ピピッ―
『相方の武器購入や戦闘車両レンタル。後は、食費だな』
「あ〜〜〜〜〜〜。なるほどね〜〜〜〜〜」

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 ■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

 7274 / ー・ミグ (ー・みぐ) / ♂ / 5歳 / 元・動物型霊鬼兵
 NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント

 シナリオ参加、ありがとうございます。
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 2008.07.17 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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