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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // ルーム・メイカー

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 OPENING

 殺風景……その言葉が、ぴったり当てはまる、そんな部屋。
 本部内の自室には、必要最低限のものしかない。
 まぁ、別に、ただ寝泊りするだけなら、
 このままで、何の問題もないけれど。
 せっかく与えられた部屋だし。
 自分色に染めてナンボ、だよな。
 さぁて、どうしようか。

 午後一時、模様替え・ルームメイク開始。
 今日も今日とて、良い天気。
 何て平和な昼下がり。

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 そうだな……とりあえず、テーブルが必要だな。
 いや、別にこのままでもいいんだけど。
 ちょっと古いんだよな、デザインが。
 使いやすいといえば使いやすいんだけど。
 何となく、部屋の雰囲気が浮いてるような気がするんだ。
 バランスが悪いというか何というか。
 それから……あぁ、あと、棚も必要だな。
 やたらと本を読むようになったからなぁ。あいつの所為で。
 収納しきれない本やら書類やら。そういうものを片付ける為に必要だな。
 後は……そうだなぁ、えぇと……。
 自室を見回しつつメモを取る。
 記載するのは、必要だと思う家具や道具。
 退屈しのぎに、一つ。模様替えでもしてみようと。そう思ったんだ。
 良い天気だし、外に出ないと勿体無いような気もするしな。
 せっかく買い物に行くんだ、ついでに梨乃でも誘うか?
 そうは思ったが、すぐに思い出した。
 そうだ。あいつは今日、仕事で留守なんだ。
 マスターから直々に依頼されたらしいからな。
 戻ってくるのは夕方か……。それまでには、終わらせたいな。
 よし、とメモを懐にしまい、街へと繰り出す。
 
 * 
 
 何かと物騒な異界も、街は賑やかで活気に満ちている。
 物騒だからこそ、こういう場所が華やぐのかもしれない。
 立ち並ぶ店を何件も行き来し、お気に入りの一品を探す。
 まず立ち入ったのは、アンティークショップ。
 とはいえ、どこぞの店とは違い、妖しげな雰囲気はない。
 やたらとオープンな店で、スタイリッシュな店内だ。
 店内には若い女性が多く、女性特有の笑い声で満ちている。
(このランプ、良いな……)
 ふと目に入ったランプに心を奪われてしまった凍夜。
 いや、でもな。この間、ランプは買ったからな……。
 でも好きだ。このデザイン。悩むな……。
 むぅ、と眉を寄せている凍夜。
 真剣な彼は、気付いていない。
 先程から、女性の注目の的となっていることに。
「めっちゃ、かっこいいんだけど……!」
「ちょ、どうする? 声、かけちゃう?」
「え〜? でもさ、絶対、彼女いるって〜」
「そうかなぁ。ああいう人に限って実はいなかったりするかもよ」
「うっそだぁ〜?」
 キャッキャと話す女性達。
 店内にいる客だけでなく、店員の女性も釘付けだ。
 だが、誰も彼も攻め倦んでいる。
 あまりにも完璧すぎて、近寄りがたい。そんな雰囲気。
 まぁ、凍夜は、そんな状況だということに、まるで気付いていない。
 気に入ったランプを手に取り、あちこちを見やり触り、確認している。
 うーん。問題は、どこに置くかだよな……。
 自重するはずではなかったのか。
 凍夜は、既に、買うこと前提で、あれこれと考えている。
 結局、一目惚れの力には叶わず。
 凍夜は、ランプを購入してしまった。
 併せて、ランプにマッチするであろうテーブルも。

「これ、組み立ては自分でやるのか?」
「あぁ、いえ。こちらでやりますよ」
「そうか。じゃあ、これ。貰おうか」
「ありがとうございます」
 次に凍夜がやって来たのは、ごく普通のインテリアショップ。
 店内をグルリと一回りし、その結果、黒い棚を気に入って購入した。
 夕方までに自室に届けてもらうよう手配をすませ、フゥと一息。
 これだ、と思ったときの、彼の決断力は凄まじいものがある。
 衝動買いに近いような気もするが。意外と豪快な買い物である。
 とりあえず、家具は揃ったかな。
 後は、あれだな。ティーセットと茶葉。それと、アロマ。
 せっかく買ったんだ。新しいテーブルで、ゆったりと紅茶でも飲みたい。
 アロマは、まぁ、気休め程度かもしれないけれど、
 ごく稀に、イラッとすることがあるんだよな。
 疲れてるときに、あいつらに絡まれたりだとか。
 情緒不安定……とか、そこまで大袈裟なものではないけど。
 良い香りに包まれて、リラックスしたいもんだ。
 
 *

 買い物を済ませ、自室に戻ったら早々に作業開始。
 軽く部屋を片付けて、家具の搬入を待ち。
 家具が届いたら、あらかじめ用意していたスペースに配置。
 やり所に困っていたものを棚に収納し、テーブルにランプを置いて。
 アロマを灯せば、完成。 実に彼らしい、シンプルながらも機能美溢れる部屋となった。
 はぁ。こんなもんか。良い感じだな。うん。落ち着く。
 フゥと息を吐き、さっそく紅茶でも頂こうかと準備し始めたときだ。
 まるで、頃合を計ったかのように、扉を叩く音。
 赴いて扉を開けば、そこには笑顔の梨乃がいた。
「おかえり」
 淡く微笑んで言うと、梨乃は少し照れくさそうに笑い「ただいまです」と返した。
 何度も入った凍夜の部屋が様変わりしていることに、わぁ、と驚く梨乃。
「綺麗な部屋ですね、何ていうか」
「そうか? ほら、座れよ。紅茶でも飲んでけ」
「わぁ。ありがとうございます」
 買ったばかりのティーセットで頂くダージリン。
 ことのついでに、と買ってきたカステラも振る舞い、来客を迎える。
 部屋を見回しつつ、はむはむとカステラを食べる梨乃に、凍夜は尋ねた。
「どうだった? 仕事」
「はむ。ちょっと面倒でした」
「そうなのか?」
「依頼人さんが、クセのある人でですね……」
「へぇ?」
 模様替えを終え、以前よりも落ち着ける空間を手に入れた。
 お気に入りの空間と化した自室で、大切な人と他愛ない話。
 ホワイトムスクの香りが、ほんのりと漂う中。
 一生懸命に話す梨乃を見つつ、凍夜はクスクスと笑った。
 何ていうかな。こういうの。落ち着くっていうか、癒されるっていうか。
 何だかんだと忙しない生活だ。たまには、こんな日があってもいいよな。 

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 ■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

 7403 / 黒城・凍夜 (こくじょう・とうや) / ♂ / 23歳 / 何でも屋・契約者・暗黒魔術師
 NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント

 シナリオ参加、ありがとうございます^^
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 2008.07.24 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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