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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


〆切やばいのに、三下行方不明
 俺は現在ミグと呼ばれているシベリアンハスキー……
ではない。ハイイロオオカミの外見をした動物型霊鬼兵である。
 今、ミリーシャと一緒なのだが、彼女はサーカスの団長と何やら話をしている。
どこか深刻そうな表情で話をしてるので、後で聞きだしてみようと思う。

「ちょっとね……サーカスお休み……するかもしれない」
ちょっと待て。何故そんなことになったのか、事情を聞いてみた。

 なんでも編集長やってる年増のオバサンが浦賀島というところに未確認生物について
1人で取材させ、帰ってこないらしい。その年増女いわく、
「あそこは住民もいるし、大丈夫だろうと思って取材させたんだけど」
という言い訳だ。もし住民が日本文化とかけ離れて、人喰い村だったらどうするんだ?
未確認物体が凶暴でピラニアのように肉を引きちぎられてたらどうするんだ?
そういう危険な取材を平気でさせる編集長の人格を疑う。

 時間的にすぐ出向かなければいけないようなので、
ミリーシャと一緒に編集部へと出向いた。歩きだして30分。思いのほか近所だな。
ドアを開けたのは、どこかツンとした行き遅れの年増女の雰囲気……おそらく編集長だ。

「すみません……サーカスから来た……
 ミリーシャ……ゾルレグスキー……と……申します……」
「グルルルル(訳:ミグだ。来てやったぞ)」
ミリーシャは頭を深々と下げ、麗香も口角を少し上げて頭を下げた。
俺はというと頭は下げなかった。動物は常に上向きでキリリとしてるのが
カッコイイからな。

ここで麗香は浦賀島への探索についての企画書をミリーシャに読んでもらった。
「浦賀島では現在、未確認生物が大量に発生し、村人を襲っている。その未確認物体を
 写真で写す、もしくは捕獲して適切な研究施設に差し出して解剖などをしてもらう。
 そして村人の聞き込み。以上の資料を元に記事を2〜4ページ程書いてもらう」

 最もこの〆切前の状態では1ページも書けないのかもしれないが。

俺とミリーシャは浦賀島に唯一通じている漁船の船に乗せてもらった。遠くなる港。
やがて現れてくる小島。ゆらゆら揺れている船から、堅い砂浜に足を置き、
初めてミリーシャと俺が浦賀島に着いたと実感した。

「ミグ……私は……聞き込みするから……ミグも……お願い」

 村人はミリーシャと俺がめずらしいのか、ひそひそと話をしている。
じゃあ俺も頑張るか。

 まず行方不明の男……そんなヘタレ男の名前はいちいち覚えてないが、
奴が帰って来れないということは森で遭難したか独房にでも入れられてるか。
山の中でそっとこちらを見ている鹿がいたので話しかけてみた。
「(お願い。食べないで)」
「グルルル……(訳:俺は霊鬼兵だから草食動物は食べない)」
「(ほんと?)」
「グルル(訳:本当だ。だから質問に答えてくれないか?)」
「(うん。いいよ)」
「グルルル、グルル(訳:この辺で山に入った者、遭難してた者はいなかったか?)」
「(特にいなかったと思うよ)」

ということはバカ記者は幽閉されている可能性が非常に高いということか。

 そこでひゅっと何かが通り過ぎた。
「グルルルル……(訳;あれは何だ? 未確認生物か?)」
「(そうみたいですね)」
「グルル(訳:あいつはいつも何してるんだ?)」
「(いつも昼にはこうして見かけるんですが、夜になると見かけなくなるんです)」
「グル(訳:ありがとう)」

俺はとりあえず見晴らしのいい砂浜に出た。ここなら未確認生物も捕獲しやすいだろう。
しかし目の前にいるのは未確認生物ではなく、太平洋戦争の時に命を亡くした自縛霊だ。
「グルルル(訳:しばらく力を貸してもらうぞ)」

やがて近くで未確認物体が通りすぎていった。俺は自縛霊を使ってバリアの中に
未確認生物を閉じ込め、発信機を取り付けた。これで悪代官の場所がわかるだろう。
あとはミリーシャと合流するだけだ。

そこで首から下げている携帯電話が、さざ波の声をかき消すように音楽を奏で出した。

ミグ:ミリーシャ、どうした?
ミリーシャ:ここ……村の守り神が……いるそうよ。
ミグ:未確認生物のことか?
ミリーシャ:うん……。深い森の……奥で……いるそうよ。
ミグ:グル:守り神か?
ミリーシャ:えぇ……でも最近はいなくなった……みたいで。
ミグ:なんでかわからないのか?
ミリーシャ:取材によると……リゾート開発計画が……上ってから……
      みんなを襲うように……なったそうよ。
ミグ:うーむ……。
ミグ:それについては発信機を付けておいた。奴がどういう行動をとるのか見物だな。

そこで2人ははっと気づいた。

ミリーシャ:私たち……携帯でメール……できているわよね?
ミグ:そうだな。
ミリーシャ:ということは……三下さんは電源が本当に消えてるか……地下に。

 俺はミリーシャと村の古びた宿に宿泊することにした。
「すみません。動物の宿泊は……」
埃っぽい宿のくせに偉そうに言うな。それに俺は霊鬼兵だ。
するとミリーシャがチップをいくらか渡したようで。
結果、1人(と1匹)が宿泊できたのだった。
「ミグ、発信機……どうなってる?」
「グルル(訳:研究所に近づいていってる)」
「あの……研究所、怪しいわね……」

ミリーシャと俺は村人に気づかれないように、窓から音をたてずに地面へ降り立った。
「発信機は……?」
「グルル……(訳:今研究所に向かってる)」
「もしかしたら……あいつが黒幕……?」
研究所の前に来たものの正面には鍵がかかっており、
ドアを潰して入ればすぐ相手に気づかれるだろう。

「グル(訳:こっち)」
俺はなんとマンホールをみつけた。これをを開けてみると、うっとくる下水道の臭いが
して、おもわずミリーシャが鼻を押さえた。
「でも……ここから行くのが……安全ね」

 下水道に下りて、両側にある道を俺とミリーシャは歩いていた。
下水から未確認生物が故郷に帰るシャケのように上って行っている。

「助けてくださ〜い」

あぁ、おそらく間抜け三下の声だな。

「もう遭難用の食べ物もないんですよ〜」
思ったより用意は良かったんだな。
「ミグ……この人がアトラスの……?」
「そうで〜す。三下で〜す。助けて下さい。ほんと助けて下さい」
しかたねーな。自縛霊の怨念を使って、鍵を爆発させるか。
「ありがとうございます〜〜恩にきます〜〜」
「帰って……(あなた足手まといだから)……砂浜の港で……会いましょう」
「はいぃ。仰せの通り!」

 更に先に進むと、下水が湧き出てる場所があり、そこに未確認生物が集結していた。

「グルル(訳:どうする?)」
ふと近くを見てると上りハシゴと下りハシゴが用意されていた。
「グルルルル(訳:俺は下を見に行く)」

 そして俺は途中まではしごを下りると、科学者らしき人をみつけた。未確認生物は大水


から下水道へ水を注ぎつつ、最終的にはここに集まってきているようだな。

「みんなお利口だね。リゾート開発賛成者を潰して今までのように生物研究できないと
困りますからねぇ」

よく見ると、未確認物体以外にも変った生物がホルマリン漬けになっている。
情報がわかったところで帰ろうとしたら、上から大量の水が降り注ぎ、俺は
うっかり下の方へ落ちていった。

「何者だ! ……なんだ、シベリアンハスキーか」
それは断じてない! そんなこともわからん奴はシベリアへ逝け!
「でもこの水は下水道のものにしてはおかしい…もしや水槽を?」
これはいけないな。ミリーシャが危険な目に合う。早く逃げ出そう。

 俺は急いで上の階へ行った。
どうもミリーシャは水槽を壊して、もうそこには水がほとんどなかった。
そこにいるミリーシャに、

「グルル!(訳:ここはヤバイ!逃げよう)」
「え……?」
「グルルルル!(訳:この水害で科学者にも気づかれた!)」

 とりあえず元の下水道に戻ることにしたが、うっとおしい。未確認生物が襲ってくる。
「グルル(訳:相手してやるか)」
 俺は機関銃のようなものを怨霊の力を借りて実体化させ、片っ端から撃っていった。
ミリーシャは機敏な動きで舞い散る花のごとく未確認生物を切りきざんでいた。

「待ちたまえ君たち」

ちっ。科学者に追い付かれたか。

「僕の積み上げていった研究をことごとくめちゃくちゃにしてくれて
ただではすまさんぞ! いけ! 守り神よ。この不届きものを始末しろ!」
と科学者は島の守り神を手にしていた。そこで気がついたのだが、未確認生物は
元々「島の守り神」がモデルだったのか。

 守り神はしっぽでミリーシャと俺を叩き転ばせて、守り神はそのまま下水を通って
どこかに消えた。
「馬鹿な。僕は確かに脳内コントロールのボタンを押したのに」
「あの配線……? それなら……切っておいたわ」
「何だとぉぉぉ!」

 最初のマンホールの場所に辿り着き、上に上っていった。外はすっかり朝焼けだ。
小さな港にはなんとか三下が待っていて、朝方の便で漁船に乗せてもらうことになった。

「しまったわ……」
「グルル?(訳:何が?)」
「未確認生物を……持って帰るのを……忘れたわ……」
「それなら大丈夫ですよ」
と三下が言うと、袋の中にちゃっかりと未確認生物を入れていた。
「これをIO2に提出して解剖されれば、来月のネタにもなりますしね」
なかなかやるじゃないか。三下。


これで一見落着かな? グルル。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【7274 / ー・ミグ (ー・みぐ) / 男性 / 5歳 / 元動物型霊鬼兵】
【6814 / ミリーシャ・ゾルレグスキー / 女性 / 17歳 / サーカスの団員/

元特殊工作員】

【NPC / 碇・麗香 / 女性 / 28歳 / 白王社・月刊アトラス編集部編集長】
【NPC / 三下・忠雄 / 男性 / 23歳 / 白王社・月刊アトラス編集部編集部

員】

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■         ライター通信          ■
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初めまして。真咲翼です。ご依頼ありがとうございます<(_ _)>
まず納期がギリギリになってしまってすみません。
今後、このようなことのないよう、迅速に対応したいと思います。

ところで2つの小説を同じメンバーで書くのであれば、
私はいつも3人称+動物1人称、1人称+1人称であることを心がけてます。
せっかく2倍のお金を払って自分のキャラを2人出すだけで全く同じ内容なら
つまらないですからね。もちろん別行動の時は内容も変わりますし。

気に入っていただけたら幸いです。