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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


〆切やばいのに、三下行方不明
「つながらない!? どういうことよ!」
受話器を荒っぽく置いたところでズレが生じてしまい、
まだアナウンスが断絶の音波となって、小さく響いている。

 電話をした編集長の碇・麗香(いかり・れいか)は、落ち着きを取り戻し、
ゆっくりと受話器を直した。

「まだ帰らないんですか?」
アトラス編集部でバイトをしている桂(けい)が口を開いた。

 麗香は手元にあるタバコを口にし、火をつけるまでに今回の事象について話した。
「今回、裏賀島の調査のため、三下(みのした)を裏賀島に行かせたのよ。
 あそこは住民もいるし、大丈夫だろうと思って1人で取材させたんだけど、
 〆切前になっても帰って来やしない!」
噴き出された煙に、桂は少し噎せた。

「ボクが行きましょうか?」
「でもあなたには編集の手伝いをして欲しいし、あーもう! 誰かひっ捕まえてきてよ!



 麗香は電話帳を取り出してめくり始めた。
そこでふと、変った団体のアドレスが載っていた。サーカスの電話番号だ。
「ここのサーカスにでも行ったことあるのかしら……。
 でもサーカスの人って運動神経が良さそうだし、電話してみましょう」

 電話した30分後、ドアをノックされた。桂が一瞬動きかけたが、麗香は素早く立ち上が

り、
扉のところまで歩いていった。そこにいたのは薄紫のポニーテールで、おとなしそうな少

女と、
隣には犬か狼みたいなお供を連れている。
少女はゆったりとした口調で声をかけた。
「すみません……サーカスから来た……
 ミリーシャ……ゾルレグスキー……と……申します……」
「グルルルル(訳:ミグだ。来てやったぞ)」
ミリーシャは頭を深々と下げ、麗香も口角を少し上げて頭を下げた。

 ここで麗香は浦賀島への探索についての企画書をミリーシャに読んでもらった。
「浦賀島では現在、未確認生物が大量に発生し、村人を襲っている。その未確認物体を
 写真で写す、もしくは捕獲して適切な研究施設に差し出して解剖などをしてもらう。
 そして村人の聞き込み。以上の資料を元に記事を2〜4ページ程書いてもらう」

 最もこの〆切前の状態では1ページも書けないのかもしれないが。

 ミリーシャたちは浦賀島に唯一通じている漁船の船に乗せてもらった。遠くなる港。
やがて現れてくる小島。ゆらゆら揺れている船から、堅い砂浜に足を置き、
初めてミリーシャとミグが浦賀島に着いたと実感した。

「ミグ……私は……聞き込みするから……ミグも……お願い」
そしてミリーシャが村人に思い切って声をかけた。

「月刊……アトラス編集部の……者ですが……」
と、名刺を村人のおばさんに差し出す。

「この辺で……何か変わったこと……ありますか?」
するといかにも「あるある」といった顔をしてミリーシャに話しかけた。
「実はねぇ。浦賀島には、リゾート開発して業者に買い取られることで大きく動いてるの

よ」
「と……申しますと?」
「反対派と賛成で喧嘩の嵐。それにねぇ」
「何か……あったのでしょうか……?」
「時々ねぇ、村の守り神がリゾート開発賛成者が襲うそうなんです」
「守り神が?」
「えぇ。森の奥深くにある泉に住んでいると言われています。
 でもその子供みたいな……小さなウツボ状の生き物が賛成派を襲うようになったので」
その話を遮って老婆が出てきた。
「この村を潰そうとするから村の守り神のお怒りを買ったんじゃ」
突然出てきた村長と思われる老婆がそう口にした。
「今では守り神の姿さえ見えやしない」
とぶつぶつ言いながら、老婆は去っていった。

「そうだわ」
おばさんは思い出したような顔をした。
「そういう生物に詳しい科学者がいるのよ!」
「本当……?」
「あの人は開発否定者ですから、いいお話が聞けるかもよ」

 そこで単身科学者のところへ挨拶しに行った。
「これはこれはどうも。さぁ、お上がり下さい」
 そこでミリーシャは聞いてみた。
「未確認生物……あれは何か……わかりますか?」
「あれかい? あれはねー、リゾート開発問題の賛成派に対して怒っている
 島の守り神だよ。怒っているんだよ。この場所を汚されることを」
「そう……ですか。島の守り神のデータ……とかないんでしょうか?」
「あれは守り神のお怒りを買うからね……ないんだよ」
「ありがとう……ございます……」

そこで一旦、ミグとメールをすることにした。

ミグ:ミリーシャ、どうした?
ミリーシャ:ここ……村の守り神が……いるそうよ。
ミグ:未確認生物のことか?
ミリーシャ:うん……。深い森の……奥で……いるそうよ。
ミグ:グル:守り神か?
ミリーシャ:えぇ……でも最近はいなくなった……みたいで。
ミグ:なんでかわからないのか?
ミリーシャ:取材によると……リゾート開発計画が……上ってから……
      みんなを襲うように……なったそうよ。
ミグ:うーむ
ミグ:それについては発信機を付けておいた。奴がどういう行動をとるのか見物だな。

そこで2人ははっと気づいた。

ミリーシャ:私たち……携帯でメール……できているわよね?
ミグ:そうだな。
ミリーシャ:ということは……三下さんは電源が本当に消えてるか……地下に。

 村の古びた宿にミリーシャとミグは宿泊することにした。
「すみません。動物の宿泊は……」
「グルルルル……(この埃っぽさを棚を上げて言えるんか!?)」
するとミリーシャがチップをいくらか渡した。
結果、1人(と1匹)が宿泊できたのだった。
「ミグ、発信機……どうなってる?」
「グルル(訳:研究所に近づいていってる)」
「あの……研究所、怪しいわね……」

 ミリーシャとミグは村人に気づかれないように、窓から音をたてずに地面へ降り立った


「発信機は……?」
「グルル……(訳:今研究所に向かってる)」
「もしかしたら……あいつが黒幕……?」
研究所の前に来たものの正面には鍵がかかっており、
ドアを潰して入ればすぐ相手に気づかれるだろう。

「グル(訳:こっち)」
ミグに呼ばれたところに行くと、コンクリートでできたマンホールがある。
マンホールを開けてみると、うっとくる下水道の臭いがして、おもわずミリーシャが
鼻を押さえた。
「でも……ここから行くのが……安全ね」

 下水道に下りて、両側にある道をミリーシャとミグは歩いていた。
下水から未確認生物が故郷に帰るシャケのように上って行っている。

「助けてくださ〜い」

非力な男性の声が聞こえてきた。

「もう遭難用の食べ物もないんですよ〜」
メガネをかけたスーツ姿の男が牢屋の中で叫んでる。
「ミグ……この人がアトラスの……?」
「そうで〜す。三下で〜す。助けて下さい。ほんと助けて下さい」
ミグが自縛霊の怨念を使って、鍵を爆破させた。
「ありがとうございます〜〜恩にきます〜〜」
「帰って……(あなた足手まといだから)……砂浜の港で……会いましょう」
「はいぃ。仰せの通り!」

 更に先に進むと、下水が湧き出てる場所があり、そこに未確認生物が集結していた。

「グルル(訳:どうする?)」
ふと近くを見てると上りハシゴと下りハシゴが用意されていた。
「グルルルル(訳:俺は下を見に行く)」

 そして、ミリーシャは上のハシゴを上っていった。
その先にあったのは、周りを囲むように作られた、水槽で泳いでる様々な生物の他に
島の守り神のような生き物が発見された。
 守り神には脳波を捜査されているのか、頭に配線しているのをみつけた。
そこで隠し持っていた比較的大きな銃器を取り出し、水槽に向かって撃ってみた。
消防車のように水は暴れ出して、マンホールの中に注ぎ込まれていった。
その中にいた島の守り神が、ミリーシャのところへ飛んできて、思わずキャッチ。

「この配線……切った方がいいわね」
そうして手持ちのナイフで配線を切っておいた。

さすがにその音が大きすぎてミグが駆けつけてきた。

「グルル!(訳:ここはヤバイ!逃げよう)」
「え……?」
「グルルルル!(訳:この水害で科学者にも気づかれた!)」

 とりあえず元の下水道に戻ることにした。
そこで待っていたのは大量の未確認生物である。

「グルル(訳:相手してやるか)」
 ミグは機関銃のようなものを怨霊の力を借りて実体化させ、片っ端から撃っていった。
ミリーシャは機敏な動きで舞い散る花のごとく未確認生物を切りきざんでいた。

「待ちたまえ君たち」

そこにいたのは科学者であった。

「僕の積み上げていった研究をことごとくめちゃくちゃにしてくれて
ただではすまさんぞ! いけ! 守り神よ。この不届きものを始末しろ!」
と科学者は島の守り神を放り投げたが、しっぽでミリーシャとミグを
叩き転ばせて、守り神はそのまま下水を通ってどこかに消えた。
「馬鹿な。僕は確かに脳内コントロールのボタンを押したのに」
「あの配線……? それなら……切っておいたわ」
「何だとぉぉぉ!」

 最初のマンホールの場所に辿り着き、上に上っていった。外はすっかり朝焼けだ。
小さな港にはなんとか三下が待っていて、朝方の便で漁船に乗せてもらうことになった。

「しまったわ……」
「グルル?(訳:何が?)」
「未確認生物を……持って帰るのを……忘れたわ……」
「それなら大丈夫ですよ」
と三下が言うと、袋の中にちゃっかりと未確認生物を入れていた。
「これをIO2に提出して解剖されれば、来月のネタにもなりますしね」

島が遠く離れてゆく。浦賀島の物語は終わったかと思った。

 ミリーシャは新聞に目を通してみると、

【浦賀島に直下型地震。マグニチュード7】

彼女は更に深く読み進んでいった。
【震源は浦賀島のすぐ近く。大きな津波が押し寄せ、生存者はほぼいないと思われる。】

「研究所は……どうなったのかしら?……島の守り神はどこへ……?」
小さな窓から外を見て、ミリーシャは観賞に耽っていた。



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【6814 / ミリーシャ・ゾルレグスキー / 女性 / 17歳 / サーカスの団員/

元特殊工作員】
【7274 / ー・ミグ (ー・みぐ) / 男性 / 5歳 / 元動物型霊鬼兵】

【NPC / 碇・麗香 / 女性 / 28歳 / 白王社・月刊アトラス編集部編集長】
【NPC / 三下・忠雄 / 男性 / 23歳 / 白王社・月刊アトラス編集部編集部

員】
【NPC / 桂 / 不明 / 18歳 / アトラス編集部アルバイト】


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■         ライター通信          ■
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初めまして。真咲翼です。ご依頼ありがとうございます<(_ _)>
まず納期がギリギリになってしまってすみません。
今後、このようなことのないよう、迅速に対応したいと思います。

こちらは2つ目ということで、3人称で外から見る小説にしてみました。
それでもミリーシャしか体験していない、つまりミグバージョンと若干違う内容に
なったかと思います。

気に入っていただけたら幸いです。