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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


疫病神の恋
〜 依頼人は疫病神 〜

「あの、僕、一応疫病神なんですけど」
「帰れ」
 きっぱり一言、武彦はそう言い放った。
 最近、ただでさえ実入りのいい仕事が少ないというのに、その上疫病神などに居着かれてはたまったものではない。
 そんな武彦の思いを知ってか知らずか、疫病神と名乗った青年は苦笑しながらこう続ける。
「別にここに住み着こうと思ってきたわけじゃありませんよ。
 ただ、草間さんに頼みたいことがあってきただけです」
 しかし、たとえその言葉が本当だったとしても、彼が武彦にとって歓迎できない客であることにかわりはなかった。
「それでも帰れ。疫病神の客もいらんし、怪奇現象絡みの依頼もいらん」
 そもそも、疫病神の依頼など引き受けたところで、満足な報酬はとても望めそうにない。
 今の懐具合を考えれば、そんな依頼に時間を割いている余裕などなかった。

「仕方ありませんね」
 肩を落として、小さくため息をつく青年。
 様子を見る限り、どうやらあきらめてくれたらしい。
 そう考えて、武彦はだめ押しとばかりに席を立ち、青年に背を向けた。

 だが、青年の次の言葉は、武彦の予想とは正反対のものだった。
「話を聞いてもらえるまで、ここにご厄介になります」
「待てっ! それは困る!!」
 疫病神の依頼を断って、疫病神に居着かれては本末転倒である。
「じゃ、僕の話を聞いてもらえますか?」
 ことここに至っては、武彦も黙って首を縦に振るより他なかった。





 その後、彼の語ったところによると。

 長きにわたる(らしい)見習い期間を終えた彼は、最初の住処としてある商社を選んだ。
 経営がズタボロで居心地がいいにもかかわらず、会社の規模が大きすぎるためなかなかつぶされないという、疫病神にしてみれば非常に住みよい場所だったからだ。

 そこで、彼はある女性社員と出会い、一目で恋に落ちた。
 ……といっても、あくまで彼の一方的な一目惚れであったが。

 事態が急変したのは、その翌日だった。
 許容範囲を上回る数の疫病神が居着いてしまったせいか、それとも長年にわたって疫病神が負担をかけすぎたせいか、いずれにせよ、会社は「再生機構」とやらの援助を受けることになってしまったのである。

 こうなってしまうと、もういけない。
 閉鎖されてしまった場所には疫病神は住めないし、業績が回復してきた場所は疫病神にとっては住みにくくなる。
 まさに沈む船からネズミが逃げ出すように、ほとんどの疫病神が次なる住処を求めて会社を去った。
 けれども、彼は会社を離れようとは思わなかった。
 彼女が、まだ本社に残っていたからである。

 その後も、彼はたびたび彼女の顔を見に行った。
 もちろん、彼女のためにはならないことはわかっていたし、普通の人間である彼女が彼に気づいてくれることはないということも、十二分に頭では理解していた。
 それでも、どうしても会いたい気持ちを抑えられなかったのである。

 そして、彼のせいかどうかは定かではないが、とにかく彼女は仕事でミスを連発してしまった。
 それも、普通に考えてまずありえないようなレベルのものを、立て続けに、である。
 その結果、彼女はついに会社をクビに……だけはならなかったものの、よりにもよって中東の某国にある支社への左遷を言い渡されてしまったのであった。





「聞けば、中東の方は最近いろいろと危険だって話じゃないですか。
 それで、もし彼女に万一のことがあったら……」
 元々青白い顔をさらに青くしながら、最悪の事態を想定して震え上がる青年。
 しかし、彼こそがこのような事態を招いた張本人なのだから、同情の余地は全くない。
「お前が会いに行かなきゃすむことだろうが」
 武彦がそう言うと、青年は少し怒ったように答えた。
「それができればとっくにやっています!」
「できれば、じゃなく、やれ。
 そもそも、それじゃただのストーカーだろう」
 これはさすがに言い過ぎかも知れないと思いつつも、武彦はあえてきっぱりとそう言い切った。

「わかりました。もうあなたには頼みません」
 表情を凍らせながら、青年が静かに席を立つ。
 どうやら、今度こそあきらめて帰ってくれそうだ。
 武彦はそう考えたが、その期待はまたも手ひどく裏切られる事になった。

「今回の件では、同情してくれている仲間も大勢いるんです。
 あなたに冷たく追い払われたことは、三倍くらいに尾ひれをつけて言いふらさせていただきます」
 そんなことをされて、疫病神に大勢で抗議集会でもやられたらたまったものではない。
「待て待て待て待てっ! 俺を殺す気か!!」
「彼女にもしものことがあったら、僕も生きてはいられません。
 この際ですから、いっそ三人で地獄に行こうじゃありませんか!」
 そう叫んだ青年の目には、誰の目にも明らかなほどに狂気の炎が燃えさかっている。

「わかった! 何か手は考えてやるから、ヤケを起こすなっ!!」
 たまらず武彦がそう口にすると、青年はようやく我に返り、再び腰を下ろしてぽつりとこう呟いた。
「僕だって、好きこのんで人間に恋したわけじゃないですよ。
 好きになった相手が、たまたま人間だっただけ……それだけのことなんです」

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〜 カオスは踊る? 〜

「……で、なんでこんな時に限ってこのメンツなんだ」
 集まった面々を見回して、武彦は頭を抱えた。
 武彦とシュライン・エマ、そして不動修羅(ふどう・しゅら)まではいいとして、問題は残りの二人である。

 かたや、名の知れた腕利きの殺し屋という裏の顔を持ちながら、普段は超がつくほどの天然ボケを遺憾なく発揮する五降臨時雨(ごこうりん・しぐれ)。
「疫病神じゃ……お金に、ならないよね……?
 ……ボク、あんまり、関わりたくない……かな……」
 すっかり意気消沈しているせいか、身長二メートル以上の長身すら今は心なしか小さく見える。

 そしてもう一人は、これまた別の意味で全くつかみ所のない鳥塚(とりづか)。
 ずっと微かな笑みを浮かべたまま依頼主の話を聞いていた……ように見えるのだが、その目からも、表情からも、一体何を考えているのかをうかがい知ることはできそうにない。

「何にしても、今いる顔ぶれで何とかするしかないんじゃない?
 こんなところで疫病神の抗議集会なんかやられたら、ここに住んでる貧乏神さんも迷惑でしょうし」
 半分冗談、半分本気でシュラインがそう言ってみると、武彦が反応するより早く、なぜか依頼主の疫病神が乗ってきた。
「え、貧乏神さんいたんですか? だったら先に挨拶しておけばよかったですね」
 さらに、今度はそこに武彦が食いつく。
「……って、本当にいるのか!? いるならお前からも出ていくように言ってくれ!」
「そう言われても……難しいんじゃないでしょうか。ここ、かなり住みやすそうですし」
「住みやすそうなのか!? 疫病神や貧乏神に!?」
「ええ、きっとこの近辺では一、二を争う好物件ですよ」
「冗談じゃない! これ以上お前らの好きにされてたまるか!!」
 こうなってしまっては、話を先に進めるどころではない。

「ヤブヘビだったみたいだな」
 修羅の言葉に、シュラインは一つため息をついた。
「……そのようね」





 と。
 話を元の方向に戻したのは、意外にも時雨だった。
「要するに……中東派遣を……やめさせれば……いいんだよ……ね……?」
 その場の空気を読まない超天然の彼だからこそ、いきなり本題に切り込むこともできる。
 こういった場面では、彼のその性格がプラスに働くこともある、といえよう。

 しかし。
「何かいい手があるんですか?」
 全員の注目が集まる中、時雨が出した提案は。
「ボクが……中東で暴れて……煽動して……入国不可能に……すれば……」
『却・下』
 シュライン、修羅、そして武彦の声が綺麗にハモる。
「それじゃ……中東支社を……潰すだけなら……」
 なおも間違った方向に過激な提案を続けようとした時雨だったが、ことここに至ってようやく非常にダイレクトな冷たい視線の集中砲火に気づいたらしく、しゅんとして口を閉ざしてしまった。
「えと……冗談……」

 結果的に、武彦の危惧が当たっていたことだけが証明され、ますますその場の空気が重くなる。
 すると、今度はこの騒ぎの中でもほとんど表情一つ変えずにいた鳥塚が口を開いた。
「いっそのこと、彼女に死んで頂けば良いのではないですか?
 そうすれば彼女は霊になり、あなたとも結ばれる……」
 これまたあまりといえばあまりな提案なのだが、あいかわらずの微笑みを浮かべたまま、非常に淡々と言うので、周囲にはこれが本気なのか冗談なのか全く判別がつかない。
 どう反応していいかわからず、皆が固まっていると、やがて鳥塚もこの提案が受け入れられないということに気づいてか、それまでと全く同じ調子でこう続けた。
「ああ、失礼。申し訳ございません、怒らないで下さい」
 こう言われては、もう怒るどころか、ただただ脱力するより他ない。

「……だから、なんでよりにもよってこんな時に、このメンツなんだ……?」
 そう呟いた武彦にかけてやれる言葉を、シュラインは何も思いつかなかった。

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〜 くらすちぇんじ大作戦 〜

 次に鳥塚が出した案は、前の案よりはかなり建設的なものだった。
「手紙でやり取りをしてみるのはいかがでしょう。それならば文通という形で絆ができます」
「なるほど、それはいけそうですが……それだけでは彼女を救うのは難しいですよね」
 ちょっと乗り気になった疫病神だが、そこに鳥塚が自ら水を差す。
「もっとも、手紙に疫病神の力が宿ってしまうとなると、無理ですが……」
「そういうことも考えられますよね……やめておいたほうが無難でしょうか」
 浮かせて落とす。
 これを少なくとも見る限り何の悪意もなくやってのけるのだからある意味恐ろしい。
 それに周囲が引いている間にも、二人のやりとりはなおも続いていく。
「では、疫病神として生きるのならば、彼女に害を成すものを不幸にしてみては?」
「なるほど……でも、今の彼女に害をなすものって何でしょう」
 疫病神のすっとぼけた一言に、何人が「お前だよ!」のツッコミを入れたくなったことか。

 ともあれ、これ以上彼女に任せておいても、事態は何ら好転しないのではないだろうか……と、一同がそう思い始めたまさにその時。
「もしくは、何かに生まれ変わる……のは、難しいでしょうか」
 鳥塚のその一言に、今までずっと沈黙を守っていた修羅が吼えた。
「それだ!」
 突然の大声に、鳥塚を除く全員が驚いて修羅の方を見る。
「貴様が疫病神なのが全ての元凶なんだから、クラスチェンジして福の神になれば、会いに行くたびに彼女が幸せになって一件落着じゃねえか」
 なるほど、言われてみればその通り、ではあるのだが。

「く、クラスチェンジって……そう簡単にできるものなんですか?」

 そう、問題はまさにそこである。
 少なくとも、そこらの疫病神が突然福の神にクラスチェンジした、などという話は聞いたことがない。

 けれども、修羅は自信たっぷりにこう宣言したのである。
「そこは心配ない! これから俺が貴様を鍛えなおしてやる!」
「鍛え直すって……ありがたいですけど、どうやってです?」
 当然といえば当然の疑問を返す疫病神を、修羅はなぜかいきなり一喝する。
「返事は『サー! イエッサー!』だ!!」
「さ……サー! イエッサー!!」
 その様子に気圧されてついつい合わせてしまう疫病神。
 一同が呆気にとられていると、修羅が一度咳払いをしてからこう続けた。
「これから俺が本物の福の神を降霊する。そして貴様も俺の中に降霊する。
 つまり、俺の中で貴様と福の神が一時的に融合合体するのだ。その間に福の神としてのコツを掴み取るのだ!」
 確かに、かなりの霊能力を持ち、その上神霊を肉体に降ろせる霊媒体質である修羅であれば、福の神を自らのうちに降ろしてくることも不可能ではない。
 そして、そこにこの疫病神を一緒に放り込んで、一時的に融合させれば、あるいは福の神の特性的なものが、一部でも疫病神の側に残るのではないだろうか?
 つき合わされる福の神にしてみれば迷惑千万だろうが、問題解決のためにはなかなか効果のありそうな手法である。

「それじゃ、一つやってみてくれるか」
「おう、任せとけ」
 武彦にそう答えると、修羅はあちこちをキョロキョロ見回し、ぽつりとこう呟いた。
「……けど、この辺にはあんまりいないな。福の神」
 その一言で武彦が再び凹んだことは言うまでもない。





 と、まあそんなこともあったものの。
 少し離れたところにいた福の神を強引に降ろし、さらにそのまま疫病神自身も降ろす、という形で修羅の「特訓」は予定通り開始された。
 ちなみにこの術、修羅はさらっと言ってはいたが、本来はそれなりどころではなく負担のかかる術である。

 そして、その結果。
「どうだ、何か変わったか?」
 福の神に元の場所へ帰ってもらった後で、修羅は疫病神にこう問いかけてみた。
「サー! イエッサー!」
「そうか、では何がどう変わった?」
「サー! イエッサー!」
 どうもこの疫病神、変なところで生真面目な性格なのか、それともさっきいきなり一喝されて本気でビビッたのか、いずれにしてもそれしか返事をしなくなってしまっているらしい。
「それはもういい、というよりそれじゃわからんだろうが。普通に答えろ」
 あまりにも間の抜けたやりとりに、「なんか期待薄だなー」という空気が辺りを包む。
 そして実際、返ってきた返事も何ともあやふやなものだった。
「いえ、何がどう、とはいえないんですけど、ちょっとポジティブな気持ちになれたかな、というか」
 これでその場の空気が「期待薄」から「こりゃあかんわ」に変わり……そこに、時雨と鳥塚がとどめを刺した。
「でも……あんまり、変わってないよ……ね?」
「残念ながら、私もそう思います」

「あー……まあ俺も成功するかは五分五分くらいかと思ってたんだけどな」
 やれやれと頭をかく修羅に、なぜか武彦ががっかりした様子を見せた。
「成功したら、依頼料代わりに少しここに引き止めておこうかと思ってたんだが……」

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〜 彼女の真意 〜

 やがて、再び修羅がこんなことを言いだした。
「かくなる上は、俺がもう一回福の神を降霊させて、彼女のところに会いに行くか。
 そうすれば彼女の運気も上昇して、左遷の話もなかったことになるはずだ」
 ようやく出てきた効果のありそうな解決策に、場の雰囲気が少し明るくなる。
「それはよさそうですね! それじゃ、さっそく僕が彼女のところに案内しますよ」
「って、貴様が来たら何にもならんだろ!」

 何やら多少の問題はあるものの、おそらくはこの方法で今回の事件は完全解決……とはいかないまでも、いい方には向かうだろう。
 だが、シュラインにはどうしても引っかかっていることがあった。

「ちょっといいかしら?」
 シュラインの声に、一同が騒ぐのをやめて彼女の方を見る。
 それを確認して、シュラインはその「引っかかっていたこと」について話してみた。
「今回の事件、あなたの側の気持ちはよくわかったけど、どうも問題の彼女の意志が全く見えてこないのよね」
「……と言いますと?」
「例えば今回の左遷の話にしても、実際に彼女自身はどう受け止めているのかしら。
 最初からそっちに行きたいと思って狙ってミスをしていた……というのはさすがに大げさとしても、これはこれで一つの転機として受け入れようとしているかもしれないでしょ?」
 シュラインの言葉に、他の面々も納得したように頷く。
「……言われてみれば……それも、そうだよ、ね……」
「だから、まずはそれを調べてみるのが一番いいんじゃないかしら。
 さっきの特訓で多少は掴んだこともあるみたいだし、しばらくピッタリ一緒にいてもこれまでほどの問題は生じないんじゃない?」
「それは……そうだといいですが」
 渋る疫病神の背中を、今度は修羅が押す。
「それに、さっき言ったような方法で一旦俺が運気を回復させておくということもできるしな。
 もし彼女が本当に行く方を望んでいるなら、運気が上昇したことでそれが立ち消えになったりはしないだろう」
「それなら、しばらくは大丈夫かもしれませんね」
「ひとまず数日そうしてみて、その先どうするか決めるのはそれからでも遅くはないはずよ。
 彼女が行きたがっているなら一緒に行って、さっき鳥塚さんが言っていたように『彼女に害をなすものに取り憑く』のでもいいし。
 逆にやっぱり行きたがっていないようなら、姿が見えないことを利用してフォローすることもできるんじゃない?
 さりげなくミスのある場所に附箋貼っておいたり、必要そうな資料を置いておいたりとか」
 シュラインが具体的な解決策まで提示すると、すっかり疫病神も乗り気になったようだった。
「そうですね。なんだかそれが一番いいような気がしてきました」

「それじゃ、結局貴様も彼女の所へ戻ることになったようだし、せっかくだから案内してもらおうか?」
「はい」
 そうして、疫病神は修羅とともに興信所を去っていき、ひとまずこうしてこの一件は解決を迎えたのであった。

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〜 そして 〜

 それから数日後。

「で、結局あいつは中東までついていくことになったのか」
 武彦から経過を聞いて、修羅は少し意外そうな顔をした。
「ああ。どうもその彼女が多少ながらアラビア語なんかも習ってたことがあるらしくてな。
 本社で中途半端な仕事をするより、あっちの方が自分の能力を活かせるかも、と思ったらしい」
「なるほど……しかし、さすがはシュラインさんだな」
「まあ、大人の女の人生の転機だしね。
 本人の意思抜きで、勝手に他者の価値観で決定するのは失礼なことだと思っただけよ」
「その考え方が、まさに大人の女性って感じだよ」

 そんな三人の様子から事態が円満解決したことを察してか、時雨が人なつこい笑みを浮かべて話に入ってくる。
「それじゃ……これで、解決……だね?
 草間……今回は、報酬は……我慢するから……後でラーメンおごって♪」
「まあ、疫病神に住み着かれることを考えれば、それくらいなら、な」
「うん……あと、今後の……仕事の斡旋も……。
 因みに……ボクの刀は……神様も斬れる……よ……♪」
「……わかった、もしそういう物騒な仕事があったらよろしく頼む」
 さすがに物騒すぎるセリフに武彦も引き気味ではあるのだが、そのことにはもちろん全然全くさっぱりちっとも気づかないのが時雨という人物である。

 と、その時。
 少し離れた場所にいた鳥塚が、一言こう言った。
「私としては……今までの経験からして、この物語がよい結末を迎えられるとは思っておりませんが」
 けれども、少なくとも他の面々は、それについてはあまり心配していないようだった。
「うん……でも、彼女が……納得する結末なら……疫病神も……納得するよ……ね……多分」
「それに、しばらく時間をおけば冷静な目で見ることもできるようになるでしょうし、側に居る以外の想いの形も見えてくるんじゃないかしら」
「なるほど、そういう狙いもあったのか。本当に深いな」





 そんな一同の様子を見ながら、鳥塚はぽつりと呟いた。
「しかし、羨ましいですね……恋愛が出来る感情を持っているということが」

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
1564 /  五降臨・時雨  / 男性 / 25 / 殺し屋(?)/もはやフリーター
2592 /  不動・修羅   / 男性 / 17 / 神聖都学園高等部2年生 降霊師
0086 / シュライン・エマ / 女性 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
7566 /  鳥塚・きらら  / 女性 / 28 / 鴉天狗・吟遊詩人

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■         ライター通信          ■
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 西東慶三です。
 この度は私の依頼にご参加下さいまして誠にありがとうございました。

 ここだけの話、復帰第一作からまたややこしそうなネタを選んでしまったと最初は自分で公開したりもしていたのですが、終わってみると自分でも納得のいくレベルには仕上がったかな、と自負しております。
 これもひとえに皆様の四者四様のプレイングのおかげです。

・このノベルの構成について
 このノベルは全部で五つのパートで構成されておりますが、シチュエーションの関係上分岐はございません。

・個別通信(鳥塚きらら様)
 初めまして、西東慶三です。
 まずは何とも独創的なプレイングをありがとうございました。
「動」のボケに対して「静」のボケというか、全体的にシュールな感じの描写になった感がありますが、お楽しみいただければ幸いです。
 ちなみに他の方の表記をご覧になっていただければわかる通り、普段は最初に名前を出す時のみ「フルネーム+読み仮名」で、以後は姓or名のどちらか、という形をとらせていただいているのですが、鳥塚さんに関してのみあのような形とさせていただきましたが、よろしかったでしょうか?
 もし何かございましたら、ご遠慮なくお知らせいただけると幸いです。