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三人の幽霊撮影
「さんしたくん、面白い情報をキャッチしたわ」
編集長の碇麗香は、三下忠雄を自分のデスクに呼びつけるなり、そんな事を言った。
三下は嫌な予感を胸に抱きながら、曖昧な笑みを浮かべる。
「そ、それは、どんな・・?」
その問いを聞くと、碇編集長は怪しく目を光らせた。
「あら、興味津々なのね、さんしたくん。良いわ、じゃあこの件はあなたに任せてあげる」
「えぇぇっ! ちょっと編集長、何ですかそれぇっ!」
唐突に仕事を振られた三下は、顔を真っ青にして抗議する。
しかし碇編集長はそれとは対照的に薄く微笑むと、スラスラとネタについて話始めた。
「そうそう。まだ何も説明してなかったわね。取材に行ってきて欲しいのは世田谷区にある一軒の家。今は空き家で放置されてるんだけど、そこがかなり出るって噂なのよ」
「や、やっぱり出るんですかぁ!? うぅっ・・・・でもまぁ、昼に行けば大丈夫かなぁ・・」
三下はハメられた事を受け入れ、抵抗するのを諦めた。妥協して昼に行く方向で検討し始める。
しかし、碇編集長は冷として首を横に振った。
「何言ってるの、深夜に行くに決まってるでしょう。幽霊の写真を撮ってもらうんだから」
「う、嘘でしょう編集長ぉ〜!? 深夜に行ってしかも幽霊の写真を撮るなんて、呪われたらどうするんですかぁっ!」
今にも泣き出しそうな三下に碇編集長は全くとりあわず、ふと何かを思い出したような表情をする。
「あ、それとその家には幽霊が三人出るらしいから、全部撮って来てね」
「さ、三人も? 僕はもう限界です・・。編集長、長い間お世話になりました・・・・」
三下はそう言うなり編集部を出て行こうとした。が、碇編集長がその襟首を掴んで引き止める。
「ふぅん、まぁ辞めるにしても残った仕事は絶対にやり遂げてもらうわ。でないと今月分の給料は払いません」
「そ、そんなぁっ! 後生です、編集長!」
「うるさいわね、もう諦めてさっさと準備しなさい! それに幽霊って言っても、その家の幽霊は怖く無いわ」
「そ、それ、何か根拠があるんですかぁ・・?」
「えぇ。情報によると、寝室の幽霊はいつも高笑いしているだけらしいし、トイレの幽霊は寂しがりだから入って来た人が出れないようにドアを閉めるだけらしいし、台所の幽霊は・・まぁ、ちょっと怒りっぽいらしいけど、写真を撮るぐらい交渉次第でなんとかなるわよ」
「や、やっぱり嫌ですぅっ! 全部怖いじゃないですかあっ!」
「何言ってるの、全然大丈夫じゃない。まぁそんなに怖いなら、誰か知り合いにでも同行してもらいなさい」
碇編集長はすがり付いてくる三下を軽くあしらって、もう我関せずとばかりにデスク上の書類に目を通し始めた。
ひっそりと静まり返った深夜。
そのすっかり朽ちた家の前で、四つの影が立ち尽くしていた。
二人と二匹。
碇編集長に命じられて幽霊屋敷にやって来た三下と、それをお守りする形で同行した猿忍群頭領の猿渡出雲。さらにその子分で、自称『クールで古風な忍び猿』のチンパンジーの才蔵と、自称『極道忍び猿』のニホンザルの佐介である。
「うわぁー、いかにも幽霊屋敷って感じだね!」
鬱蒼とした雰囲気の家を見ながら、その言葉にふさわしく無い明るさで言う出雲。
「・・・・あわわわわ。で、でも、ちょっと雰囲気出すぎてませんかぁ・・・・?」
情け無い声で言うそんな三下の様子を、佐介はキャッキャと手を叩きながら、才蔵は冷ややかに見つめていた。
「ウキキ!(なんやあんさん、足震えとるやないかい!)ウキ?(こんなんで大丈夫か?)」
「ウキ・・・・(全く、修行が足らんでごザルな・・・・)」
佐介と才蔵にバカにされてるとも知らず、三下は脅えた表情で問題の家を見上げ続ける。
しかし、出雲はそんな様子には気付かないで振り向くと、
「よし、じゃあ早速中に入ってみようよ」
と、何でも無い調子で言った。
「えぇぇっ! 本当に行く気なんですかぁ!?」
「え? だって撮影に来たんだし」
「うぅ、それはそうですけど・・・・。こ、怖いですよぉ」
三下はガクガクと足を震わせて訴えた。
しかし、出雲は全然気にしない様子で満面の笑みを浮かべる。
「大丈夫! 何かあってもあたしが付いてるから!」
「ウキ(うむ、拙者もでごザル)」
「ウキ(もちろんワイもやで)」
出雲に続いて、佐介と才蔵も胸を張って答えた。
その三人の心強いメッセージを受け取ったのか、三下の表情が少しだけ引き締まる。
「そ、そうですか・・・・。そ、そうですよね、じゃあ頑張ってみます」
出雲は胸を張って大きく一つ頷くと、三下を先導して歩き始めた。
「幽霊は三人居るって話だけど・・・・、どこから行く?」
「そそそそうですね、いいい一番近いのは、台所ですけどどど」
恐怖で歯の根がかみ合わないらしく、三下の言葉はかなり聞き取り辛い。
そのまま玄関までの石畳を歩き、出雲が入り口のドアに手を掛けた時。
突然二階の方から、――女の高笑いが聞こえてきた。
「・・・・ッ!」
反射的に二階を見上げる出雲達。
しかし、それと同時に笑い声はパタリと止む。
「・・・・聞こえなくなった? でも凄い声だったねー・・ってあれ?」
出雲が言いながら振り返ると、そこに三下の姿が無かった。
キョトンとする出雲。
しかし、ふとその視界の端に違和感があって、出雲は視線を下げる。
「ウキ(このあんちゃん、笑い声を聞いたら急に倒れおったで)」
見ると、泡を吹いて倒れている三下。
それを佐介がツンツンと突付いている。
「ウキキ・・・・(どうやら気絶してしまったようでごザルな・・・・)」
才蔵は呆れたように言って、どうするでごザルか? という目を出雲に向けた。
出雲は少しだけ悩むような表情をしたが、すぐに何でも無いように顔を上げる。
「うん、まぁ良いや。あたし達で幽霊を撮影しちゃおう!」
元気良く言って、出雲は倒れている三下からカメラを取り上げた。
出雲達は、まず笑い声の幽霊を撮影すべく寝室を目指した。家の中は真っ暗な闇が広がっていたが、忍者としての修行を積んだ一人と二匹には全く問題が無い。スイスイッと二階へ見つける階段を見つけ、上っていく。
その途中、突然電気スタンドが点いたり、どこからともなく野球ボールが目の前に転がってきたり、トットット・・・・と足音が聞こえてきたりしたが、
「なんか騒がしい家だね」
「ウキ(おう、今度は視線を感じるわい!)」
「ウッキキ(しかし別に、危害を加える気は無さそうでごザルな)」
と、様々に起こる怪奇現象に一応の警戒はしながらも、それを怖がる様子は無かった。むしろ佐介などは、楽しんでいるようにさえ見える。
「・・あ、この部屋ベッドがあるよ」
何室か二階の部屋を巡って、出雲達は大きなベッドが置かれてある部屋に辿り着いた。
ここが話に聞いていた寝室だろうか、と一人と二匹は神経を研ぎ澄ませて中へと入っていく。
「ウキキ(せやけど、誰もおらんなぁ)」
「ウキッキ?(そもそも幽霊というのは、拙者達に見えるのでごザルか?)」
何も居ない部屋で、佐介と才蔵がそんな事を話し合う。
その時、ふと出雲は気配を感じて入り口を振り返った。――と、部屋のドアが閉まっている。
(「あれ? あたしドア閉めて無いよね・・・・」)
そう出雲が思った瞬間、――突然部屋の中に女の哄笑が響き渡った。
「ウキ!(出おった!)」
佐介の声で出雲が振り返る。すると、部屋の中央に白い靄で形作られた、半透明の人間が立っていた。
「オーホッホッホッホ! ああら、お客様なんて珍しいわ! 何のご用なの?」
気取ったポーズでそんな事を尋ねてくる幽霊。
それが案外普通の言葉だったので、出雲達は少し拍子抜けした。
「あ、えーっと、あたし達あなたを撮影しに来たの。写真を撮らせてもらえないかな?」
そう言って出雲は胸に下げたカメラを幽霊に見せる。
「撮影・・・・?」
ピクリと幽霊が興味深そうに反応した。心無しか、その表情が機嫌の良い物に変わる。
「そう、撮影に来たの。ふーん、でもそれはまぁギャラ次第よね」
「え、ギャ、ギャラ? 何かあったかな?」
突然の要求を受けた出雲が懐を探る。
そこからは、クナイ、巻物、果物、ジャグリングボール、猿のストラップ、目覚まし時計、果ては野球バットやカセットコンロといった、懐に仕舞えそうにない物まで無尽蔵に出て来る。
「・・・・あなた何者なの?」
さすがの幽霊も唖然とした様子で聞いた。
「くの一だよー」と答えながら出雲はさらに懐から物を出していく。
「・・! あ、待って、それで良いわ!」
ふと、幽霊が声を上げて出雲が取り出した物の一つを指差す。
それは、
『ディスイズ・ザ☆ラーメン』
と書かれた、袋入りの即席ラーメンだった。
「ウキ?(幽霊がラーメンを食えるのでごザルか?)」
才蔵が思わず呟いた言葉に、出雲と佐介も首をひねる。
しかし、幽霊はワナワナと震えながら出雲を促した。
「さ、早く準備してちょうだい。ああ、懐かしい・・・・」
「・・あ、うん、分かった。じゃあ作ってあげるね」
幽霊があまりにも欲しそうな顔をするので、出雲は快諾する。懐からやかんと水を取り出し、カセットコンロでお湯を沸かす。
「あぁ、これよこれ・・・・」
出来上がったラーメンを、幽霊はホクホク顔で受け取った。
「私は生前、女優のタマゴだったのよ。お金が無くて、自殺する日までいつもこのラーメンばっかり食べてたわぁ・・・・。ああ、美味しい」
そんな暗い出来事を嬉々とした表情で語って、ズルズルとラーメンを啜る幽霊。
どんぶりから消えていくラーメンを、出雲達は唖然として見守る。
「あ、それじゃ、写真撮っちゃっても良い?」
ふと我に返って聞いた出雲に、幽霊は笑って頷く。
「もちろんよ」
その返事に安心しながら、出雲はカメラを構えてファインダーを覗いた。
「はい、チーズ!」
幽霊を撮るとは思えない掛け声の後、部屋にフラッシュが光った。
「ウキ(どうもこっから聞こえてきたみたいやのぅ)」
出雲達は女優の幽霊からトイレの場所を聞いて部屋を出たが、その後どこからとも無く老人のうめき声のような物を聞いた。
様々な怪奇現象が起こる中で、そういう事にはすっかり慣れきってしまった出雲達だったが、どうやらうめき声は次の目的地であるトイレから聞こえてきたらしかったのだ。
その問題のトイレの前に立って、出雲達は耳をすます。
「今は聞こえてこないね」
「ウキキ(油断大敵でごザルよ)」
才蔵に注意を促され、出雲は恐る恐るドアを開けた。
しかし、そこにあったのはごく普通の一般的なトイレだった。
「みんなで入るにはちょっと狭いけど・・・・、まぁ入ってみよっか」
トイレの幽霊が現われる事を期待して、出雲は中へと入る。
すると。
最後の佐介が入った時点でドアがひとりでに閉まり、トイレットペーパーが出雲達に巻きついてくる――!
――が、所詮トイレットペーパーなので、出雲達は片っ端から破り捨てた。
「うぅ、誰じゃあ・・・・。お前さん達は一体?」
突然、便座の上に人型の白いもやが現われて、出雲達に話し掛けた。トイレの幽霊が姿を見せたらしい。
「うん、あたし達はあなたを撮影しに来たんだよ。撮っても良いかな?」
「ほう・・・・、撮影? ふむ、撮影のぅ」
幽霊は分かったような分かって無いような返事をする。
「ウキキ(今度は老人の幽霊でごザルな)」
才蔵はそれを見て取ると、何処からともなく急須と湯のみを取り出した。さっきのお湯の残りを水筒から取り出して、そのまま手馴れた手つきで煎茶を淹れる。
「ウキキ(どうぞ、淹れたて極上の煎茶でごザル)」
才蔵が湯のみを差し出すと、老人は興味を示したようじゃった。
「ほほう、こやつなかなか気が効く」
老人の幽霊は嬉しそうに湯のみを受け取ると、ポツポツと独り言のように喋り始めた。
「猿とはいえ、お前さんがワシを介護してくれた方がずっと長生きできたじゃろうのう、全くアイツときたら・・・・」
老人を尊ぶ才蔵は興味深そうに聞いていたが、ふいに会話用のスケッチブックを取り出すと、そこにスラスラとひらかなで文を書き始めた。
「ウキキ?(ご老人、どうして死んだのでごザルか?)」
そのスケッチブックを読むと、老人はよくぞ聞いてくれた、と言わんばかりに長々と語り始めた。
「実は介護の奴がヒドイ男でのぅ・・・・。ワシはトイレに閉じ込められて、餓死してもうたんじゃ。しかもその男・・・・」
と、老人の幽霊は延々と話し続けていく。
「ウキ・・・・(長いでんな・・・・)」
「そうだね・・・・」
と、出雲と佐介は既に呆れ顔だったが、才蔵だけは熱心に耳を傾け、老人が湯のみの中を飲みほすと煎茶を淹れ、時折スケッチブックで返事を書いていた。
それからたっぷり二十分ほど後。
「ふぅ、全部話してスッキリしたわぃ。ありがとうのぅ、お猿さん」
「ウキキ(いえ、ご老人の不憫な境遇、同情の極みでごザル)」
才蔵と老人の幽霊の間に、穏やかな絆のような物が生まれていた。
「・・・・それじゃあ撮影して良い?」
疲れた顔で出雲が聞くと、老人はニッコリと微笑んだ。
「どうせなら、お猿さんと一緒に写りたいのぅ」
「ウキ(承知でござる)」
「よし、じゃあ才蔵も入って入って。はい、それじゃ二人とも撮るよー? チーズ!」
掛け声と共に、狭いトイレにフラッシュが光った。
無事二人の幽霊の撮影を果たして、出雲達は最後の目的地へと向かう。
「ウキキ(なんや、料理する音が聞こえんか?)」
佐介に言われて出雲と才蔵も注意して聞いてみると、確かにまな板を叩くような音が聞こえた。
最後の幽霊の存在を確信して、三人は台所へと足を向かわせる。その扉の前まで辿り着くと、確かに包丁の音とそれにボソボソと何か喋り声のような物まで聞こえた。
「あれ? 二人居る?」
出雲は戸惑うように呟いたが、気を取り直してドアノブに手を掛ける。とりあえず中に入らない事には始まらない。そう考えて、思いっきり扉を開けた。
「誰だッ!」
叫びと同時に、暗闇の中を滑るように飛んでくる物体。それが包丁である事を瞬間で察知し、出雲はクナイでそれを弾いた。
「何の断りも無しに入ってきやがって! 俺が料理中の時は声掛けろバーロー!」
そう叫ぶのは白いもやの人型。
どうやら元気溢れるこの声の主が、台所の幽霊らしい。
「ご、ごめん・・・・。って、あれ?」
そしてもう一人。台所のテーブルに座っている人物。
「ウキキ?(あ、気絶した三下殿でごザルよ? 何故ここに?)」
三下も三人の登場に気付いて、顔面蒼白の泣きそうな顔を三雲達に向ける。
「みみみみなさん、ききき来てくれたんですかか?」
今にも気絶しそうな三下は、引き攣った笑みを振りまく。
「何だ、兄ちゃんの友達か? だが、スープは兄ちゃんの分しかねぇぞ」
そう言って、台所の幽霊は調理台の前に立って、包丁を振るっている。
「んー。これどういう状況?」
三雲はつい頭を抱えて、三下に視線を向けた。
三下はガチガチと全身を震わせながら説明を始める。
「あああの、たた倒れている所をそこの幽霊さんががが・・・・」
「そうよ、兄ちゃんがウチの庭で気絶してたからな。空腹で行き倒れている人間を、料理人の俺が放っておくわけにもいくめぇ」
三下が倒れていたのは空腹のせいなどでは無かったが、その幽霊にとってはそういう事になっているらしい。
それから幽霊はギロッと三雲達を睨む。
「しかし、お前さん達。人の家に土足で上がり込むたぁ感心しねぇな。いってぇ何の用だ」
「えと、あたし達は幽霊を撮影しに来たんだよ」
「撮影だぁ? こちとら見せもんじゃねぇぞ!」
幽霊が叫ぶと、佐介がススッと近寄っていく。
「ウキキ(まぁまぁあんさん。落ち着かんかい)」
そう言いながら、スッと日本酒の一升瓶を幽霊に差し出す。
すると、幽霊の激しい言動がピタリと止んだ。
「おぅ、こりゃあ・・・・。猿! 良いもん持ってるじゃねぇか!」
「ウキッキ(せやろうが。極上の大吟醸酒やでぇ)」
急に機嫌が良くなった料理人へ佐介が答える。
しかし、猿語が通じるはずも無いので、気を効かした才蔵がスケッチブックに翻訳して見せた。
「かぁー、こりゃ美味い! 最高だな!」
「ウキキ(せやろ。ほれ、このキノコも今料理してるもんに入れてええでぇ)」
佐介は懐からキノコを取り出す。
酒に夢中な幽霊は、「そうかそうか」と言いながらポイポイと鍋の中に放り込む。
その内、幽霊は良い感じに酒が回ってきたらしく、一升瓶を持ちながら身の上話を始める。
「ったくよぉ、世の中何があるか分かんねぇよなぁ。事故で死んだりしなけりゃ、俺の店はきっと有名になってたんだぜ」
「ウキキキ(せやけど、死んだんやからしゃあないでぇ)」
佐介も幽霊から酒を注いで貰いながら、良い感じになって気軽に話している。
「ウキッキ(それよりあんさん。頼むから写真撮らせてくれや)」
「んー写真? 分かった分かった。この大吟醸に免じて撮られてやらぁ!」
「お、さすが佐介。交渉成立だね。じゃあ撮るよ、良い?」
「おう、どんと来い!」
「はーい、チーズ!」
カシャッという音と共に、フラッシュが部屋の中に光る。
「よーし終わったー! はい、三下さん! 三人の幽霊、全員撮ったよ!」
「ほほほ本当ですか!? ああありがとう、ございますすす!!」
三下はこの幽霊屋敷からやっと帰れる事に安堵して、ため息を吐いた。
「おう、そうそう。兄ちゃんにスープ出さなきゃな。これ食って精力付けろよ!」
幽霊が思い出したように言って、謎のスープを器に移し始める。
「えぇぇぇぇ! いいいいや、僕はお腹一杯なので・・・・」
「あぁ? 何だ兄ちゃん?」
「いいいいや、頂きますぅぅっ!!」
幽霊の気迫に押されて、三下は凄い勢いでスープを食べ始めた。
「ふぅ、これで依頼は解決だね」
「ウキ(そうでごザルな)」
「ウキッキ(おーう、でもさっきのキノコやけど・・・・)」
そう中途半端に言った所で、泥酔していた佐介は眠りこけてしまった。
翌日。
「ちょっとさんしたくん! 何なのよこの写真!」
碇編集長の手にある三枚の写真。
一枚目は女幽霊が気取ったポーズで写っている写真、二枚目は老人の幽霊がなぜか猿と写っている写真、三枚目は一升瓶を片手に持つ男の幽霊だった。
「一体どういう流れでこんな写真が撮れるの!? これじゃ怖さもヘッタクレも無いじゃない! ってあなた、何でヘラヘラ笑ってるの!」
「ふぇぇぇすいません〜、エヘヘヘ」
謝りながら三下はニヤニヤと笑みを浮かべている。
それを見て碇編集長がさらに激怒した。
「さ・ん・し・た・く・ん、笑うのを止めなさいッッ!!!」
「アハハハ。ち、違うんですよ編集長ぉ〜。昨日スープを食べてから、笑いが止まらなくてぇっ! エヘヘ。どうも、あのキノコが変な味がすると思ったんですけど・・・・ははははは、ぶふふふ」
そのふざけているような笑いを聞いて、碇編集長のコメカミからプッツーンという音が聞こえた。
「・・・・没ッ!!」
ビリビリッと写真を破り捨てられる。
「うひゃああああ、へ、編集長ぉぉぉ〜〜! あははははは!」
「あーもう、うるさい! さんしたくん、外行って新しいネタを引っ張って来なさい! じゃないと給料出せませんから! 誰かー! 引っ張り出してー!」
「編集長ぉぉぉ〜〜!! 後生ですぅぅうふふふふははは!」
今日の編集部には、三下の悲鳴とも笑い声ともつかない叫びが響くのであった。
依頼完了
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【7185/猿渡・出雲/女性/17歳/軽業師&くの一・猿忍群頭領】
【7186/佐介/男性/10歳/自称『極道忍び猿』】
【7187/才蔵/男性/11歳/自称『クールで古風な忍び猿』】
【NPC/碇麗香/白王社・月刊アトラス編集部編集長】
【NPC/三下忠雄/白王社・月刊アトラス編集部編集員】
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■ ライター通信 ■
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どうも初めまして、ライターの倉葉倉です。
実はこれがOMCデビュー作となるのですが、いかがだったでしょうか?
ちょっと詰め込みすぎて長文になってしまいました(汗)申し訳ありません。
ライターとしては、個性的なPC様達のおかげで楽しく書く事が出来ました。出雲の可愛さもさる事ながら、佐介と才蔵の可愛さも異常です(笑)
もし気に入って頂けましたら、またのご参加お待ちしております。
今回は発注ありがとうございました。
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