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<東京怪談・PCゲームノベル>


 セシリノを捕獲せよ

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  捕獲依頼
  
  対象モブ:セシリノ(サンプルS:蛇)
  討伐報酬:¥1000000
  追加報酬:なし

  研究施設から魔物が脱走してしまった。
  サンプル故に、人を殺めることはない。
  と思うが、実際のところ理解らない…。
  一刻も早く捕獲し、研究所に持ち帰ってくれ。

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「お待たせしました」
 ペコリとお辞儀をして挨拶した紗枝。
 突然、武彦から連絡が入り、何事かと思いきや。
 異界にある研究所から、実験段階である魔物が逃亡したとのことで。
 一匹だけでなく、捕獲対象の魔物が無数に存在する為、
 紗枝に協力の要請が届いた、とそういうことだ。
 現場である研究所へ赴くと、そこにはズラリとオールスター。
 武彦を始め、藤二や海斗など、ラビッツギルドの面々も集結していた。
 とはいえ、紗枝は、藤二以外のラビッツギルドメンバーと面識がない。
 故に、はじめましてよろしくの挨拶と握手を交わすこととなるわけで。
 まぁ、堅苦しい雰囲気は皆無。
 一向はすぐに打ち解け、まるで以前から知り合いだったかのように言葉を交わすようになる。
 さて。捕獲……か。
 聞いた説明によると、逃げ出した実験段階の魔物は、
 蛇をベースに作られた存在ってことだから……。
 逃げ出すってことは、あれかしら。
 やっぱり、不満に思うところがあったとか。
 まぁ、それも仕方のないことよね。
 元々は、普通に生きていた動物なんだもの。
 そこを捕まえられて、魔物にされちゃうんだものね……。
 それにしても、この研究所……怪しいこと極まりないわね。
 魔物の捕獲よりも先に、ここを叩くべきなんじゃないかしら。
 まぁ、今回の依頼主なわけで、きっちりと報酬も用意してるらしいから、
 今日のところはね。ビジネスとして、成立……してると思うしかないわよね。
 逃亡した魔物らを探し、密林へとやってきた一行。
 藤二が発した『帰省本能』に同調した一行は、誰一人反することなく、ここへと揃って向かった。
 嫌気が差しただとか、あるいは怖くなっただとか。
 そういう普通の感情を持ち合わせていたのなら。
 まだ、そういう感情を持ち合わせていたのなら。
 おそらく、ここへ。自分たちの家へと戻ってくるはずだ。
 密林を警戒しながら進む最中、ギャーギャーと騒がしい奴が二人ほど。
 海斗と浩太だ。そこらで拾った木の枝でチャンバラごっこのような真似をしている。
 楽しそうなのは何よりなのだが……。
 仕事中だっていうのに、緊張感ないなぁ。大丈夫かな……。
 不安そうに苦笑を浮かべた紗枝。
 そんな紗枝に、ごめんなさいと申し訳なさそうに謝る少女、梨乃。
 梨乃をフォローするかのように、スレンダーな美女、千華も加えて謝罪を述べた。
 二人の言葉と表情を見て、紗枝はすぐさま把握する。
 おそらく、この二人は、いつもこういう役割を背負っているんだろう。
 好き勝手に暴れる仲間の尻拭いをするポジションにいるのだろう、と。
 何ていうか、組織だとか……そういうグループって、うまいこと回ってるのね、どこも。
 うちのサーカス団も、うまいこと回っているもの。
 フォローしたりする役目の人って、大事よねぇ。
 妙に実感し、うんうんと一人頷く紗枝。
 とても仕事中とは思えぬ、緊張感のない状態で捜索を続け。
 一時間ほどが経過したときだ。
「いた」
 藤二が木の陰に隠れつつ、前方を見やって小さな声で言った。
 藤二が見やる方向を見やれば、確かに。そこには魔物の群れ。
 数は三十……ほどだろうか。
 ここまで蛇が密集していると、非常に気持ち悪い。
「多いな。つか、気持ち悪いなぁ……」
 苦笑を浮かべつつ、煙草を踏み消した武彦。
 さて、どうしたものか。
 依頼では、生け捕りを望まれている。
 まぁ、大事な実験サンプルなわけだから当然とも言えるけれど。
 ただ、相手は実験段階とはいえ魔物なわけで。
 それも、逃げ出してきたわけで。
 とても、すんなりと捕らえさせてくれるとは思えない。
 痛めつけず、それでいて迅速に捕獲せねばならない。
 幸い、こちらの面子も一人二人というわけではないし。
 何とかなるかな……?
 む〜と首を傾げつつ、鞭を取り出して構える紗枝。
 他の面子も、それぞれの武器を取り出して身構える。
 武彦の合図と共に、一斉に魔物へと飛び掛り、捕獲開始。

「だー! 待て、このやろー!」
「そっち! 違っ、逆っ!」
「あームカつく。もう、一思いに……」
「待て待て待て待て! 殺すなよ! 殺しちゃ駄目だからな!」
 案の定というか何というか……捕獲は難航。
 魔物としての本能よりも、蛇としての本能が働いている部分が強いのは幸いか。
 危害を加えてくることは、ごく稀で。
 魔物たちは必死に逃げまどうばかり。
 ただ、魔物として強化されているところの所為で、
 動きの素早さは、普通の蛇とは比べ物にならない。
 うぅん……苦戦してるなぁ。
 ワーワーと騒がしいなか、鞭で魔物を捕らえ、
 一匹ずつだが確実に、弱い電流を送り込んで失神させて捕獲している紗枝。
 捕獲が完了したのは、まだ五匹ほど。
 全部捕らえるのに、どれだけ時間がかかるだろう……。
 そんなことを考え、ゲンナリとしたときだった。
「ひゃっ!?」
 ヒヤリと背中に走る冷たくもヌルッとした感覚。
 ピシッと背筋を正した紗枝の背中で、モゾモゾと魔物がうごめいている。
「だ、誰かー。これ、取ってっ。取ってぇっ」
 ジタバタと暴れ回り、何とか魔物を追い出そうと試みる紗枝。
 けれど足掻けば足掻くほど、魔物は奥深くへと入り込んでいく。
 くすぐったさに立っていられなくなり、その場にペタリと座り込んで身を捩らせる。
 その紗枝の姿に、藤二は堪えきれずにケラケラと笑った。
「何か、イヤらしいなぁ。ははははっ」
「笑い事じゃないでしょ、馬鹿っ!」
 千華に頭を叩かれ、笑いを堪えて苦笑に留める藤二。
 さて、どうしたものか。
 駆け寄って、捕まえて取り出すべきなのは確かだ。
 けれど、何かの拍子で、魔物が紗枝に噛み付いたら?
 研究所の連中は、猛毒をもつ蛇の魔物の製造を試みていると言っていた。
 実験段階だからといって、命の危険がないわけでもない。
 そう思うと、迂闊に手を出せないのが現状だ。
 どうしたものかと思案する一行。
 身を捩じらせ、あらゆる感触に耐えながら、紗枝は目に涙を浮かべた。
 早く、この状態から解放されたい。
 けれど、皆が手出しできずにいる理由も理解る。
 困ったな。どうしよう。
 足掻きながら、あれこれと解決策を探り、その最中。
 紗枝はハッと思い出す。
 懐に手を突っ込み、取り出すのは……香水。
 先日、三下(実際は藤二)から貰った、いわくつきの代物だ。
 もう少し我慢することになるけど……これしかないっ。
 意を決して、自身の身体に香水をふきつけた紗枝。
 ロビンエッグ。甘い香りが紗枝の身体を包み込む。
 紗枝が香水を吹き付ける、その少し前。
 彼女が、どんな行動に出るかと察した藤二は、一行を離れた場所へと避難させた。
 香水の効果を知っているからこそ、とれた配慮である。
 甘い香りに誘われ魅了され。
 身を潜めていた魔物たちも次々と姿を現し、紗枝に群がる。
 体中に巻きつき、あるいは這いずり回る魔物たち。
 ゾクゾクと肌に灯る粒と寒気に耐えつつ、紗枝は仕掛けていた網で一斉捕獲。
 紗枝自身も網に捕らわれてしまっている、この状態。
 遠くから様子を窺っていた男性陣たちが、妙な興奮を覚えたのは……無理もない。

 *

 魔物を捕獲し、研究所へと受け渡そうとした一行。
 けれど、困ったことに、それさえも難航してしまう。
 捕らえた魔物のうち、一匹だけが、紗枝から離れようとしないのだ。
 服の中に潜り、微動だにせずジッとしている。
 戻りたくない、その意思表示なのだろうけれど……。
 幸い、研究所の者は、一匹足りないということを見落としている様子。
 連れて帰っても良いか? と尋ねても、即答で拒まれるのは明らかだし……。
 仕方ない、と紗枝は溜息を落とし、懐いた一匹を、こっそり連れて帰ることにした。
 すっかり慣れたのもあり、もうくすぐったさは感じない。
「さすが、猛獣使いってところかな」
 クスクスと笑う藤二。
 紗枝は苦笑を返した。

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 ■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

 6788 / 柴樹・紗枝 (しばき・さえ) / ♀ / 17歳 / 猛獣使い&奇術師(?)
 NPC / 草間・武彦 (くさま・たけひこ) / ♂ / 30歳 / 草間興信所の所長
 NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / ラビッツギルド・メンバー
 NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / ラビッツギルド・メンバー
 NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / ラビッツギルド・メンバー
 NPC / 青沢・千華 (あおさわ・ちか) / ♀ / 29歳 / ラビッツギルド・メンバー
 NPC / 黄田・浩太 (おうだ・こうた) / ♂ / 17歳 / ラビッツギルド・メンバー

 シナリオ参加、ありがとうございます。
 遅くなってしまい、大変申し訳ございません。
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 2008.09.12 / 櫻井くろ (Kuro Sakurai)
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