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<東京怪談・PCゲームノベル>


 スリーピィ・ハニー

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 いつも思うのだが。
 こういう品物は、どうやって入手しているのだろう。
 以前、ちらっと尋ねたことがあるけれど、はぐらかされた。
 企業秘密だから言えないんだよ、って。
 まぁ、それはいいとして。
 今日のイチオシが、これまた珍妙な代物。
 とても可愛い小瓶に入った、桃色の蜜。
 これを食すと、催眠状態に陥ってしまうらしい。
 催眠ねぇ。う〜ん。どうかな。
 自分が食べても楽しそうだけど、
 あの子に食べさせるのも……楽しそうかな。
 本当に効果があるのかどうか、それはわからないけどね。
 
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 さぁて。んじゃ、準備でもしますか。
 いそいそと、森の中で、準備している藤二。
 彼が行っているのは、お茶会の準備。
 白いテーブルの上、オシャレなカップをセッティング。
 知り合いの女の子から貰った、高級なお菓子も添えて。
 何の変哲もない、ごく普通のお茶会の支度。
 ただ一つ、テーブルの中心にある、桃色の小瓶を除いて……。
 藤二からお誘いを受け、続々と集まってくる面々。
 海斗、梨乃、千華、藤二、浩太……お馴染みのメンバーだ。
 美味しい紅茶が頂けると聞き、誘いにすぐさま応じた紗枝。
 着席し、彼女はワクワクとテーブルの上に用意された紅茶を見やった。
 へぇ、これですか。見たことない紅茶ですね。
 香りも……うん、素敵。うっとりしちゃう……。
 カップを手に、ふふふ〜と幸せそうな笑みを浮かべる紗枝。
 とそこで、ふと。見慣れぬものが目に入る。
 テーブルの中心に置かれた、桃色の小瓶。
 おもむろに手に取り蓋を開けてみると、そこには蜂蜜のような液体。
 何ともいえぬ、良い香りがフワリと辺りに漂った。
「わぁ。何ですか、これ。エッセンス?」
 紗枝が尋ねると、藤二は紅茶を飲みつつクスリと笑って言った。
「入れてごらん? 美味しいよ」
 この美味しい紅茶が、更に美味しくなると?
 そんなことを聞いては、入れないわけにはいかないだろう。
 紗枝をはじめ、梨乃や千華、浩太も、こぞって紅茶に、蜂蜜(?)を入れた。
 元々良い香りだったのに加えて、この蜜の甘い香りが加わり。
 それはもう、見事としかいいようのない、完成された香り。
 一行は、その香りを十分に満喫した後、コクリと紅茶を喉に落とした。
 悪い意味ではなく、喉に纏わり付き離れないような、この感覚。
 飲食にあるまじき、ここまでの快感……。
 その快感に酔いしれる一行。
 だが、その幸せな時間は、長くは続かなかった。
 ガタンッ―
 突如テーブルに突っ伏してしまった浩太。
 失神したかのように思えたが、そうではなくて。
 浩太は、すやすやと心地よさそうに眠っているだけ。
「あっははは! そっこー寝たな、浩太はっ」
 ケラケラ笑いながら、熟睡している浩太を突く海斗。
 その隣で、不敵な笑みを浮かべている藤二。
 蜜を入れていない、口にしていない藤二と海斗だけ、平常で。
 ほかの面子は、どこか異変を覚えていた。
 二人にハメられた。そう気付いたときには、もう遅くて。

 藤二が「入れてごらん?」とすすめた、この蜜。
 これは、某アンティークショップで彼が入手したもので、
 口にすると、猛烈な睡魔に襲われるか、トリップ状態に陥るか、
 そのどちらかの症状に見舞われてしまう、悪戯な代物。
 浩太は前者で、すぐさま眠りへと誘われ、ヨダレを垂らして熟睡。
 で、残りの紗枝・梨乃・千華の三人は、というと……。
「いきまぁすっ」
 突然、衣服を緩めて右手を高く上げた紗枝。
 紗枝に続くようにして、梨乃と千華も同じ行動をとる。
 緩めた服、何ともセクシーな格好で、三人は並び、
 クネクネと身体を捩じらせて、魅惑のダンスを踊りだした。
 中でも一番すさまじいのが紗枝だ。
 彼女の腰つきは、セクシーというよりはもう、イヤらしい。
 紗枝の動きを真似するように、梨乃と千華も身体を捩らせる。
 いかがわしい店のようになってしまった、お茶会。
「うーわー。すっげーな。何つーか、これ。写真撮っとこ」
 少し照れ臭いのか、笑いながら携帯で写真を撮る海斗。
 藤二は偉そうにテーブルに頬杖を付き、ウンウンと頷いて三人のダンスを眺めている。
「紗枝ちゃーん。アレやって、アレ」
 笑いながら要望を口にした藤二。
 アレと言われても理解らない。
 そう、普通なら理解らない。
 けれど、トリップ状態にある紗枝は、すぐさま藤二の要望を把握した。
 ガバッと両脚を開き、見事なM字開脚。
 目に飛び込む光景が、さすがに海斗には刺激が強すぎたようで。
「藤二、おま、何やらせてんだよ」
 気恥ずかしそうに、紗枝から目を逸らして笑う。
「社会勉強の一環だよ。はい、紗枝ちゃん。ステージは、ここね」
 ヒョイッと紗枝を抱き上げ、テーブルの上に乗せた藤二。
 錯覚に見舞われたのだろうか。
 紗枝は、いつものように全力でショーを披露していく。
 パチパチと拍手を送りつつ、藤二はご満悦。
 恥ずかしそうに顔を背けて笑っている海斗の頭を掴んで、
 正面を向かせては、その反応を楽しんでみたり。
 ……一番楽しそうなのは、明らかに藤二だ。
 ステージ(テーブルなんですけど)の上、最高の笑顔でショーを続行する紗枝。
 シメに、再び見事なM字開脚で、手を猫のように丸めて。
 にゃーんと鳴き声を真似すれば、
 それに続き、梨乃と千華もM字開脚で、にゃーんと鳴く。
 我を忘れているというか、まさにトリップ状態なのだろう。
 紗枝や梨乃や千華が、自らこんな行動を取るなんてこと、まず、ありえない。
 でも、そんなアリエナイ状況だからこそ、楽しかったり興奮したりもするわけで。
「お触りとか、ありだよね? よーし、触っちゃうぞ〜」
「ちょ、藤二っ! おま、落ち着けって! ちょっと落ち着けって!」
「何言ってんの、お前。ほら、お前も触りなさい」
「ばっ!! お、俺は、そーいうのは……!」
「触りたいくせに」
「ばっ……!」
「顔、赤いぞ〜。海斗。お前って隠し事できねぇよなぁ、ほんと」
「ちょ、違っ。だから、おま……」
「いいからいいから。ほら、ゴーゴー」
「ゴーって何だよ! どこ行くんだよっ」
「わかってるくせに……」
「わかるかぁっ!!」
 ……何だろう、これは。いったい、何なんだ、これは。
 ここは、どんなお店ですか……。

 *

 藤二と海斗の悪戯に、まんまと引っかかってしまった。それは事実。
 後日、海斗の携帯から取り出した写真を見て、女性陣は怒りを覚えた。
 梨乃に至っては、恥ずかしくてたまらず、自室に篭ってしまっているほどだ。
 浩太はすぐさま眠りに落ちた為、何も覚えていないのだが、
 自分もセクシーショーに参加することになっていなくて良かった……と心から安堵した。
 女の子を玩具のように扱い、あんな恥ずかしいことをさせるなんて。
 エロオヤジ・エロガキなのにも程があります。 ※ 紗枝さん、海斗はエロガキじゃないですよ。そこは濡れ衣です。
 こめかみにプッツンマークを浮かばせ、それを抑えながら。
 紗枝は、手作りのレモンパイを藤二と海斗にプレゼントした。
 サッカーをして遊んでいた二人は、甘いものに食いつき、
 疑うことなく、ただ純粋に、ありがとうと御礼を述べてパイを口にする。
 当然、このレモンパイには、例の蜜が入っているわけで。
 パイの異常な甘さと良い香りに、藤二と海斗は、ハッと気付いた。
 けれど気付いたときには既に、パイは喉に落ちていて。
 二人がゴクリとパイを飲み込むと同時に、
 紗枝はニッコリと可愛らしく微笑み、自慢の愛鞭をピンと張ったのでした……。

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 ■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

 6788 / 柴樹・紗枝 (しばき・さえ) / ♀ / 17歳 / 猛獣使い&奇術師(?)
 NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / ラビッツギルド・メンバー
 NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / ラビッツギルド・メンバー
 NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / ラビッツギルド・メンバー
 NPC / 青沢・千華 (あおさわ・ちか) / ♀ / 29歳 / ラビッツギルド・メンバー
 NPC / 黄田・浩太 (おうだ・こうた) / ♂ / 17歳 / ラビッツギルド・メンバー

 シナリオ参加、ありがとうございます。
 遅くなってしまい、大変申し訳ございません。
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 2008.09.12 / 櫻井くろ (Kuro Sakurai)
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