|
【SMN】FINAL Mission「Justice」 〜Side-B〜
依頼者:Peacemaker
依頼内容:友好組織援護
タイプ:オープン
依頼詳細:
我々に協力してくれている民間の能力者の組織の拠点に対し、「Leaders」が襲撃を企てているらしい。
今回はそちらへの援護を要請したい。
最悪拠点は放棄しても構わないが、組織のメンバーについては可能な限り守りきってくれ。
確かに、一部の能力者や妖怪などの能力は、一般の人間にとっては脅威になり得る。
しかし、だからといって、それを理由に彼らを管理し、自由に生きる権利を阻害してもいいことにはならないはずだ。
甘いかもしれないが、我々は大多数の人間や能力者、ないしはそれに類する知性を持った存在は「共に歩むに足る存在」であり、また「共に歩むことを望んでくれている」ものと信じている。
だからこそ、我々と、そんな彼らの自由を守ること、それこそが我々の正義だ。
どうか力を貸してほしい。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「よう、嬢ちゃん。久しぶりだな?」
エリィ・ルーを出迎えたのは、以前の作戦の時にも指揮を執っていた「バイト」というコードネームの男だった。
「お久しぶりです、『バイト』さん」
「お、覚えててくれたのか。嬉しいね。
今回も言ってみれば『負け戦』ってことで、俺が駆り出されてきたワケさ」
以前に会ってからだいぶ経っているが、この軽口と飄々とした様子は相変わらずのようだ。
そんなことを考えていると、不意にバイトが真剣な顔をした。
「……で、いきなりで悪いんだが、一つ悪いニュースがある」
「何ですか?」
「今回の相手もこの前と同じくドレイクのダンナだ。
さすがに今回はスパイが入り込む隙はないはずだが、それをさっ引いてもやりにくい相手だな」
ドレイク。
「Leaders」でも屈指の策士と呼ばれる男で、その影響力も大きい。
以前にエリィが「Peacemaker」に協力した際の戦いでも、「Peacemaker」は彼に見事にしてやられていた。
「それなら、なおさら細かいところに気をつけて戦わないといけませんね」
「そうだな。当たり前と言や当たり前だが、普段以上に隙を見せないようにしないとな」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「……とまあ、こんなところか」
「Leaders」も「Peacemaker」も、もともとは同じIO2という組織に由来している。
それだけに、双方の所有している装備にも似通ったものが多い。
「場所を考えれば、まずシルバールーク系の投入はない。
人里のど真ん中じゃないが、さすがにここじゃ隠蔽工作に手間がかかりすぎる」
IO2最強の兵器と言ってもいいシルバールークの出陣がないのは、エリィたちにとってはありがたい話である。
もちろんそれは裏を返せば「Peacemaker」側もシルバールークは使えないと云うことなのだが、組織の規模を考えれば、動かせる機体の数で圧倒的に不利になることは目に見えている。
「となると、主力はジーンキャリアやNINJA、あとは出てきてブラスナイト級か。
ジーンキャリアは千差万別なんで対策が立てづらいが、とりあえずブラスナイトによるごり押しと、NINJAの攪乱戦法には要注意、だな」
シルバールークは無理でも、体高2.5m程度のサイズに収まっているブラスナイトならば、少数ならギリギリ運用できる範囲内だろう。
そのパワーと火力、装甲は、シルバールークほどではないとはいえ十二分に驚異になり得る。
また、火力という点ではさほどではないとはいえ、目視はもちろんレーダー類を用いても捕捉が困難なNINJAの奇襲攻撃も怖い。
……となれば、主に警戒しなければならないのはその二つだろうか。
「ブラスナイトなら、わりと発見は容易そうだよね。
いつ、どっちからブラスナイトが出てきても対応できるようにしておくのがよさそうかな?」
「だろうな。逆にNINJAは発見こそ困難だが、戦闘能力はそこまで高くない。
不意打ちでいきなりやられないように、チームを組んで動くことは徹底させるか」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
敵部隊出現の第一報が届いたのは、エリィたちが配置についてまもなくのことだった。
『まずいな。敵さん、こっちを囲んでから叩くつもりらしい』
「敵部隊の構成は? それと、退路の確保は?」
『包囲部隊はバスターズメインで、平たく言えば人海戦術だな。
それから、拠点放棄の可能性も検討してあるし、万一の際の退路は確保してある。
そっちの警備にも十分戦力を使ってるつもりだが、敵が本気で囲みに来るならいろいろ難しい決断が必要になる可能性はあるな』
敵が包囲網を張ってくることまでは予想の範疇内だし、バスターズ級がメインなら攪乱して隙を作れば一気に突っ切ることも不可能ではないはずだが、それは最後の手段だ。
まずは何とかしてこちらの「庭」に引き込みたいところだが、少なくとも地の利がどちらにあるのかについては、敵もやはりわかっているのだろう。
「……敵の動きは?」
『退路確保組との間で小競り合いがあったようだが、敵がすぐに退いた。
本気で退路を塞ぐ気まではないらしいな……「欲擒姑縦」ってやつかね』
「欲擒姑縦」、つまり「擒えんと欲すれば姑く縦て」。
三十六計のうちの一つで、要するに「窮鼠に猫が噛まれる」のを防ぐための策である。
そう考えれば、一応根拠がないわけではないのだが。
「見せしめのために組織を殲滅する、って言う割には、おかしな策だよね」
『だろうな。あのダンナの策にしちゃ弱気すぎる。
こりゃ何か裏がある……と思わせること自体が策だったりするから困ったモンだけどな』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
拠点入り口、及びその周辺は濃い煙に包まれていた。
エリィの提案で、事前に周囲のあちらこちらにセンサーを仕掛けた上で、敵襲に合わせて煙幕を張ったのである。
こうしておけば、敵からこちらの位置も見えづらくなるし、敵の攻め手を鈍らせる効果も期待できる。
そして実際、この戦法はそれなりに成果を上げていた。
煙の濃くなるエリアの手前で、足を止める敵が増えてくる。
そこを見計らって、こちらの遠距離攻撃できる能力者が仕掛ける。
敵がその攻撃に慌てている間に、再びこちらは煙の中へ姿を隠す。
この繰り返しで、少しずつではあるが確実に相手にダメージを与えることはできていた。
心配されたNINJAによる逆奇襲も、少なくとも今のところはまだ起こっていない。
いかなNINJAとはいえ、固まって動けばさすがに発見される率は上がるし、かといって単独ではチームを組んでいるこちらに対して有利には戦えない。
特に、こちらは基本的に遠距離戦の得意なものと近距離戦の得意なものをバランスよく組ませているからなおさらである。
さすがにその状態で無理に仕掛けてくるNINJAはそうはいないようで、今のところ、戦況は大きくではないまでも、こちらに有利に進んでいた。
そしてエリィも、その一端として確実に戦果を上げていた。
味方の遠距離攻撃で浮き足立った敵や、逆に無謀にも煙の中へ突っ込んでこようとする敵に対して、気配を殺して近づいてはその不意をつく。
もとより視界の悪い煙幕地帯のこと、一撃離脱戦法をとるエリィを捕捉できる敵はそうはおらず。
このままいけば、拠点を放棄するまでもなく、敵を撤退させられるかもしれない。
そのような気配さえ、一時は漂い始めていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
しかし。
時間が経つに連れ、旗色は確実に悪くなっていった。
『こちらチーム1、手傷を負った。後退する!』
『こちらチーム3、敵の動きが変わった! こっちが見えてるんじゃないのか!?』
実のところ、エリィにも少し前からそれに似た違和感はあった。
気配は完全に消せているはずなのに、一撃離脱を仕掛ける隙が見あたらない。
それどころか、明らかにこちらを警戒されてしまっていることすらある。
「バイトさん、なんだかこちらの位置が敵に気づかれてる気がするんだけど」
もともとの配置場所からあまり動いていないチームならともかく、エリィのような遊撃部隊の所在までバレているとなると、やはり「見えている」ことを疑わざるを得ない。
『らしいな。ブラスナイト級のレーダーならあるいはそれも可能なのかもしれないが……ブラスナイト級がいる気配はないよな』
敵の編成は、バスターズとジーンキャリアもしくはエージェント級が中心である。
催涙弾対策も兼ねてか、ゴーグルのようなものを身につけたものが多くなってきているが、それ以外にさして変わった様子はない。
「理由はともあれ、純粋な戦力差だと明らかに不利だよね。
こちらが見えてるとなると……」
『これ以上戦いを続けるのは厳しいな。
敵を牽制しつつ後退し、後方の友軍と合流して撤退、ってことにするか』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
異変が起こったのは、撤退準備もいよいよ整った、という時だった。
突然、一条の光が走る。
それは、完全に不意をつく形で味方のブラスナイトの一機を貫いた。
「……敵!?」
「ブラスナイト級!? そんなはずは!!」
浮き足だったところに、別の方向から、さらにもう一度。
二度の攻撃をいずれも急所に受け、ブラスナイトは完全にその機能を停止した。
「どういうこと!?」
『わからん! あんなデカブツがいりゃ嫌でも目立……』
そこで、不意にバイトが言葉を切る。
「……どうしたの?」
エリィが尋ねると、舌打ちの後にこんな返事が返ってきた。
『黒騎士計画か!
まさかあんなものを完成させてやがるとは……』
「黒騎士?」
『IO2分裂以前に検討されてた計画の一つで、要するにNINJAの技術を応用した奇襲用のブラスナイトだ!
効果的に運用できる範囲が狭すぎる上、ムダにコストがかかるってんで結局少し検討されただけですぐ潰れたはずだったんだが、どういうわけか完成品がこの近くにいやがるらしい!』
パワー、火力、装甲。
全てに優れるブラスナイトのただ一つの弱点が、その発見の容易さである。
それ故に、こちらが不意をつくことはできても敵に不意をつかれることは考えにくく、また難敵ではあるがいくらでも対処のための時間は確保できる、はずだった。
ところが、NINJA並とまでは行かずとも、それに近い水準で、その穴を埋めた機体が存在するとすれば。
この対策は、根底からひっくり返されることになる。
「じゃあ、ひょっとしてこっちの動きが見えてたのも?」
『そこまでは確証が持てないが、あり得ない話じゃない!』
煙幕によって敵の視界を封じたとしても、さすがにブラスナイト級の擁する各種レーダー類を欺ききるのは至難を極める。
NINJAのようなステルス性を持たないこちらの陣容であれば、なおのことそうだろう。
だとすれば。
敵がわざと開けたままにしている退路は、十中八九罠。
そうなると、残された手段は一つしかない。
『できるかどうかはわからねぇが、こいつらはどうにか食い止めてみる!
嬢ちゃんたちはメンバーと一緒に別の脱出路を見つけてくれ!』
「わかった!」
脱出路を見つけると言っても、見つけられるようなルートは恐らくもうないだろう。
だとすれば――あとは、切り開くのみ。
そして、そのためには――包囲網が狭まりきる前に、一気に一点突破をかけるより他にない!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
キャプチャービームの閃光が、いくつも夜の闇を裂いて走る。
囮として先行するのは、代わりのきく低級の召喚獣や式神、人魂、そしてビームを遮断できるような結界を展開できる者たち。
彼らがうまく敵の目と銃口を惹きつけている間に、主に遠距離戦闘能力を保持している面々が攻撃を仕掛ける。
狙うのは、主に背中に背負った大型のジェネレーターパック。
キャプチャービームさえ無力化してしまえば、バスターズなど恐れるような相手ではない。
エリィも今は武器を銃に持ち替え、敵の無力化に当たっていた。
(あたし達が生き残らないと、志は……正義は伝わらない!)
相手の位置や姿勢に応じて、ある時はジェネレーターパックを狙い、またある時は相手の腕や頭を狙い。
どうにかこうにか、脱出路を作っていく。
肝心なのは、立ち止まらないこと。
後方からの敵はどうにか本隊が食い止めてくれているようだが、敵は左右から続々と集まってきている。
足を止めずに駆け抜けなければ、集中攻撃の的となることは間違いないだろう。
そして。
『そろそろ最後の大花火と行くか。一気に走れよ!』
その通信のすぐ後に、辺り一帯を揺らすような大爆音が響いた。
「こんなこともあろうかと」。
拠点放棄の際に仕掛けておいた爆薬を、バイトが起爆させたのだ。
もちろん、これだけの爆発を起こして、騒ぎにならないはずがない。
そして、そうなれば「Leaders」としても、早急に事態を終結させる方向に向かわなければならなくなるだろう。
例え、本来の目的を放棄してでも。
その読み通り、それ以上敵が追撃してくることはなかった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ーーーーー
From: 「バイト」
Subject: 助かった
この間は助かったぜ。
痛み分け、というにはこっちの方が少し痛かった感じだが、
まあ、肝心の組織のメンバーは守り抜けたんで上出来と言やぁ上出来か。
今回の件で、反「Leaders」組織の取り纏めがかえって進みそうな気配だ。
「Peacemaker」を中心に連帯が進めば、いずれは「Leaders」にも対抗できるくらいの戦力になるかもしれない。
ま、何にしても本当に感謝してる。本当にありがとな。
ーーーーー
結果:メンバーのほとんどを無事に逃がすことに成功
(目標達成)
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
5588 / エリィ・ルー / 女性 / 17 / 情報屋
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■ ライター通信 ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
西東慶三です。
この度は私のゲームノベルにご参加下さいましてありがとうございました。
また、ノベルの方、大変遅くなってしまって申し訳ございませんでした。
・このノベルの構成について
このノベルは全部で九つのパートで構成されております。
今回は事件の性質及び参加者数の都合上、完全個別となりました。
・個別通信(エリィ・ルー様)
いつもご参加ありがとうございました。
エリィさんは戦闘そのものよりも作戦立案などの方がメインということで、このような感じにさせていただきましたが、いかがでしたでしょうか?
当シリーズはこれにてひとまず幕となりますが、もし何かございましたら、ご遠慮なくお知らせいただけると幸いです。
|
|
|