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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


真説 自分が殺人を犯したのか 調査篇

●オープニング
 草間興信所の前に、血に塗れた制服を着た少女が立っていた。
「貴様、生者ではないな? 死者がここに何用だ」
 少女に声をかけたのは、死者の願いを叶えることができる謎の人物、夢現。
『お願い……クラスメートの無実を証明して……』
「無実? どういうことか説明願おう」
 少女の話では、クラスメートが真夜中に女性ばかりが狙われる奇妙な殺人事件の犯人ではないかと信じて疑わず怯えていること、被害者である女性達は、肉食獣に襲われたような無残に殺害されたことを包み隠さず話した。
「それは獣の仕業であろう。それなのに何故、貴様の同級生が関わる?」
『わかりません。ですが、彼が関わっているのは確かなことです。今、この興信所で調査を行っているそうですが、調査が行き詰っているようなんです』
 夢現は、ならば時を調査以前に戻してやろうか? という話を少女に持ちかけた。
『そのようなことができるんですか?』
「できる。我は死者の願いを叶えし者。貴様の願いは、草間興信所に同級生が訪れる前に戻すこと……だな」
『はい。自己紹介がまだでしたね。私は、柏木静といいます。苦しんでいるクラスメートを……甫坂君をどうか救ってください……』

 その願い、叶えたり……。

 静の願いが叶えられたことにより、静のクラスメート、甫坂昴が草間興信所に訪れた日に戻った。
 これにより、調査は振り出しに。静は、昴の無実を信じて夢現に願いを叶えてもらったのだろう。

 時が逆行した草間興信所では、甫坂昴が青褪めて表情で草間武彦に調査内容を話した。
「こんな話をしても信じてもらえないかもしれませんが…聞いてください…」
 昴は怯えながらも、事の経緯を話した。
 一ヶ月前から、真夜中に女性ばかりが狙われる奇妙な殺人事件が起こっている。
 顔を潰された者、胸を鋭利な刃物のようなもので引き裂かれた者、腕を引きちぎられた者。
 殺され方はそれぞれだが、共通していたのは、トラやライオンのような肉食獣に襲われたような痕跡があることだった。
「その殺人事件と君がどういう関係があるというんだ?」
「そ、それは…」
 体を震わせ、昴はこう言った。

「その獣が…俺ではないかということです…」

 昴はその事件が起こる数日前から、奇妙な夢を見ていた。
 何も無い闇に、突然猛獣が入れられているような大きな檻と、その中に閉じ込められている『自分』がいた。
 それは…首に太い鎖がついている首輪をつけ、鎖で両手と両足を縛られていた。
 一糸纏わぬ獰猛な肉食獣を思わせるような獣のような姿、闇夜に浮かぶ蛍のような双眸。
 その姿はまさに…獣だった。
「奴はこうも言ったんです。『本能と欲望の赴くままに生きろ! 殺したい奴を殺せ!』…と。でも、俺、殺された人達とは何の関係もないんです! ですが、あいつが俺の身体を乗っ取ったかでもして、殺人を犯した可能性もあるんです…」
 自分の中にいる獣が自分の身体を使って、あるいは、自分の中から抜け出して殺人を犯した可能性があることに懸念し、怪奇探偵と名高い草間に事の真相を探って欲しいと昴は草間興信所を藁をも掴む思いで訪れたのだ。
「殺人事件の真犯人を探って欲しい…か。わかった、できるだけの調査をしよう。それでいいか?」
「はい! お願いします!」

 夢現の力、静の願いにより、昴の真相調査はいちからやり直すことになった。
●再開
 甫坂昴の調査に協力すべく草間興信所を訪れたのは、来生・一義 (きすぎ・かずよし)と空木崎・辰一(うつぎざき・しんいち)の2人だった。
 辰一は、式神であり大切なパートナーである猫の甚五郎、定吉の2匹に連れられて来た。何事かと思い、2匹に導かれるように草間興信所に訪れると、草間武彦と一義、昴が話し合っている最中だった。
「すみません……調査依頼の打ち合わせ中でしたか」
 お邪魔しましたと帰ろうとしたが、草間に「おまえも手伝え」と言われたので、止む無く協力することに。
「はじめまして、来生一義です。宜しくお願いします」
「僕は空木崎辰一です。肩に乗っている仔猫は定吉、足元にいるの猫は甚五郎という名前です。宜しくお願いします」
 どのような依頼なのですか? と辰一が尋ねると、依頼人である昴が事のあらましを最初から話し始めた。
「その事件でしたら、新聞で読んでいますから被害者や事件が起きた日時は覚えています。私がお役に立てるかどうかわかりませんが、困っている人を見過ごすことはできません」
 やつれた昴の様子を見て、一義はいち早く依頼を解決しようと決心した。
「それより、甫坂さんの夢が気になりますね。甫坂さんに邪悪な何かが憑いているのであれば、私の力で感知できるかもしれません」
「それでしたら、僕も協力できます。霊感は強いほうですから。必要とあらば、祓うことも可能ですが……何物かわからない以上、それは無理ですね」
 一義と辰一がどのように事件を解決しようと考えているその時、興信所のドアが勢い良く開いた。入ってきたのは、大学生か社会人と思われる青年だった。
「こんちはー! ここが怪奇探偵がいる興信所かぁ。キミ達、どんな人か知ってる?」
 突然の訪問者に、真剣な表情だった2人が唖然となった。
「客か? ドアは静かに開けてくれ」
 何事かと思い、銜え煙草の草間が登場。
「この人があなたが会いたいという探偵の方ですが……あなたは?」
 一義に自分が誰かと尋ねられた青年は「俺は永瀬・佑(ながせ・たすく)だ、宜しく!」と元気良く自己紹介した後、草間を見て「え? この人が!?」と驚いた。
「あ……依頼の最中だったんだ。ごめん。そこのキミが依頼人?」
「は、はい。そうですけど……」
 突然の来客に驚きながらも、自分が依頼人だと答える昴。
「邪魔してごめん。良ければ、 俺にも依頼を聞かせてくれないか? 協力できると思うからさ」
 昴は、途中から話に加わった辰一と佑にも、草間と一義に話した依頼内容を話した。

●集結
「獣のようなもう一人の自分の姿を見る夢を見始めたと同時に、今、世間で騒がれている連続殺人事件が起きたのですね? 失礼とは思いますが、僕が見た限りでは甫坂さんは普通の人に見えるのですが……」
「俺も同感。キミ、無意識のうちに夜になると獣に変化するのかい?」
 それに関しては、何も答えない昴。
「大学時代、心理学を専攻していた幼馴染みの受け売りですが『シンクロニシティ』という現象ではないでしょうか?」
「シンクロ……ニシティ? それは、どういうことですか?」
 不安になった昴が辰一に尋ねると「誰かの夢と同調している……ということらしいです。誰かと同調しているのでしたら、昴さんも同じ体験をしているような感覚になるのはおかしくありません。どうしてでも不安なようでしたら、事件が起きるという時間帯、僕があなたの家の前を見張りますから」
 佑は腕組みしながら、自分なりの解釈を述べた。
「もう一人の自分が無意識のうちに殺人事件を起こしている………か」
 その合間、彼が持つ『他人の心の闇を見る』能力を発動させてが、何も感じられなかった。
「キミ、その夢を良く見るほうじゃないかい?」
「は、はい……。最初の事件が起きてから、ずっと……」
 ただの悪夢じゃなさそうだな、と判断した佑は、助っ人を呼必要アリと判断し、携帯を取り出すとある人物に連絡した。
 佑が連絡した先は、精神科医の従姉である冠野・涼子(かんの・りょうこ)だった。
 久々の休日なので、昨夜遅くまでDVD鑑賞をしていてこれから眠ろうというところを佑に邪魔されたのだった。
「はい、冠野……何だ…佑? 何か用? え? 今すぐ精神科医のあたしが必要だからすぐに来いって!? どういうことか説明してくれない!?」
「携帯でのんびり説明するヒマなんかねーって! すぐに草間興信所ってトコに来てくれ!」
「その草間興信所ってところに来れば、詳しく話せるのね。わかったわ、すぐ行くから」
 人の休日を邪魔した罪は重いわよ……と従弟を恨みつつ、涼子は身支度を始めた。
 1時間後、眠たそうな目をした涼子が到着したことで本格的な話し合いが行われた。

●調査
「はじめまして、冠野・涼子です。あなたが草間さんですね? 従弟が急に押しかけて申し訳ないわ。ところで佑、あたしを呼び出した用件ってのは何よ?」
「実はな……」
 佑から昴の夢について聞いた涼子は、腕組みをして考え込んだ。
「甫坂くん、キミは、自分の夢に出てくる化け物が本物かどうかを、自分なのかを確かめたいのね?」
 コクンと頷く昴。
「あたしには化け物を追っ払う能力なんてないけど、メンタルケアならできるわ。この中で怪奇現象に詳しそうなのは、猫を連れた袴姿の方のようね」
「殺人事件の犯人と思われる化け物の退治はお任せください。いざとなれば、この子達も協力してくれますから」
「この子達?」
 涼子がきょとんとした目をすると、仔猫の定吉が足元に刷りついてきた。
「キミも退治ができるの?」
 定吉を抱き上げた涼子がそう言うと「みゅ〜」という鳴き声が「できるよ」と言っている様に聞こえた。
「甫坂さんに邪悪な何かが憑いているのであれば、私の力で感知できるかも知れません。草間さん、これを預けます」
 一義は草間に『形而下の指輪』を預けると、本来の姿である幽霊に戻り、昴から何か感じ取れないか調査したが、何も感じ取ることができなかった。
「夜にならないと、怪物は現れないようですね……。改めて、甫坂さんと何か関わりがあるのかをまず見てみましょう」
 感じ取れれば一義の目に映像として映るはずだが、今は何も移らない。
 怪物が現れるのは、殺人事件が起こる夜というのでその時に再調査するしかないだろう。
「話の腰を折るようで申し訳ないのですが、甫坂さんが獣のようなもう一人の自分の姿を見る夢を見始めたと同時に、騒がれている連続殺人事件が起きたのですね? 大学時代、心理学を専攻していた友人の受け売りになりますが、それは『シンクロニシティ』というものではないでしょうか? 要するに、甫坂さんは誰かと同調しているのではないかと」
「それは十分有り得るかもしれないわね」
 専門家である涼子がそういうのであれば、その可能性は高いだろう。
「どうしてでも不安でしたら、事件が起きる時間帯に僕があなたの家の前を見張りますが、私がどこまで見えるかは相手の力の強さ次第ですね。何も見えなければ、また何か起こらないよう、一時的に甫坂さんに憑いて見張るしかありませんが・・・それでも宜しいですか?」
「はい、お願いします!」
 藁にもすがる思いで、一義に頭を下げて頼む昴。
「わかりました。もし怪物が現れた時は、私の炎で攻撃なり浄化を試みてみます。浄化は不可能でも、一時的にでも力を抑えて被害拡大を防げるかもしれません」
「一義さん、僕もご協力します」
 任せとけ! と言っている様に鳴く甚五郎と定吉の2匹。
「どうしてでも気になるようなら、俺がキミの傍にいて様子を見るよ。迷惑じゃなければ…の話だけどね。今晩、キミの家に泊まってもいいかな?」
「は、はい。両親は旅行でいませんから、今は俺1人です」
 それは好都合、と喜ぶ佑。
「佑1人じゃ心配だから、あたしも泊めてもらうわ。あたしと佑が見張っているから、今夜は安心して眠ってちょうだい」
 何で涼子姉も一緒なんだよ! と愚痴る佑に「保護者代わりよ」としれっと言う涼子。
 
 こうして、夜に昴かもしれないという怪物調査を行うことに。

●護衛
 時刻は午後11時を過ぎている。
 一義と辰一は二手に分かれ甫坂家を見張り、佑と涼子は昴の部屋で見張りをすることに。
 調査員がいることで安心したのか、昴はぐっすり眠っている。
「よほど緊張きていたのか、怖い思いをしていたのね……。今夜はぐっすり寝かせてあげましょう……」
 言い終えた後、欠伸をする涼子。
「欠伸するなよ、涼子姉。俺も眠たくなるじゃないか……」
 欠伸する佑に「あんたがあたしの睡眠の邪魔したんでしょう!」と小声で怒る涼子だった。そんな彼女の手には、異変が起きた時、証拠写真がいるかもしれないと持ってきたデジカメが。
「ふああ……眠いけど我慢だ……。昴の中で何かがいれば、自然と出てくるはず。そいつを一義って幽霊さんと辰一って神主さんに退治してもらえば、もうあの事件は起きないだろう。何も起きないとは限らないから、ちゃんと見張るか」

 午前0時。女性の悲鳴が甫坂家付近から聞こえた。
「一義さん!」
「出たのかもしれませんね、急ぎましょう!」
 悲鳴が聞こえた方向に駆けつけた一義と辰一が見たものは……肩に爪でひっかかれた傷を追ったOLと思われる女性だった。
「大丈夫ですか!」
 女性に駆け寄る辰一は、懐からハンカチを取り出すと女性の肩に当てて血を止めようとした。
 二人が見たものは……獣、というよりは、獣に近い人間だった。
「危ない!」
 女性と辰一に襲い掛かろうとした獣に、一義は炎で両足を縛り付けるかのように攻撃した。
 グギャアアアアーーーー!!
 獣は絶叫すると、逃げるように素早く立ち去った。
 その頃、昴の部屋では……。
「ん……」
 突然、昴の顔が苦痛に歪んだ。
「どうしたんだ! しっかりしろ!」
 ベッドのシーツを乱暴に捲り上げた佑は、昴の両足首に火傷のような跡があるのを見つけた。
「涼子姉!」
「わかってるわ、証拠写真ね!」
 デジカメを構え、昴の両足を撮影し終えた涼子は、昴の足首に触れようとしたが、熱くてそれができなかった。
「冷やしたほうが良いわね」
 そう言うと、涼子は台所に行き冷水と氷を取りに向かった。
 佑はその間、辰一に携帯で「昴の足首に火傷ができた」と報告した。
「一義さん、甫坂さんが両足首に火傷を負ったそうです。それって……」
「先ほど、私が化け物に炎で攻撃した箇所です」
「永瀬くんの話だと、甫坂さんはぐっすり眠っていたようです。それなのに、何故……?」
 誰かと『同調』しているのかもしれませんね? と推測を述べる一義。

 同時刻。別の場所、別の人物が両足首に火傷の手当てをしていた。
 その人物には、返り血がついていた。
 これは推測なのだが、この人物が化け物ではないのだろうか。

 真相が明らかになるのは、当分先の話になるだろう。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

3179 / 来生・一義 / 男性 / 23歳 / 弟の守護霊(?)兼幽霊社員
2029 / 空木崎・辰一 / 男性 / 28歳 / 溜息坂神社宮司
7735 / 永瀬・佑 / 男性 / 21歳 / 大学生
7744 / 冠野・涼子 / 女性 / 29歳 / 精神科医

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■         ライター通信          ■
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氷邑 凍矢です。
この度は『自分が殺人を犯したのか 調査篇』にご参加くださり、ありがとうございました。
昨年5月にこのシリーズを受注開始して作成を始めたのですが、怪我により作成不可能となりましたので
返金処理させていただきました。
その当時に参加された皆様、申し訳ございませんでした。
シリーズものなので中途半端に終わらせたくない! という思いから、最初からやり直すことにしました。
そのため、タイトルに『真説』をつけ、NPC、夢現の能力で時間を一からの調査時間に戻しました。

今回も体調不良により、お届けが遅くなったことをお詫び申し上げます。

>空木崎・辰一様
昨年に引き続いての調査依頼参加、ありがとうございました。
猫達も元気そうなのでなによりです。
今回、空木崎様の出番があまりなくて申し訳ございませんでした。
その分、連絡係として活躍してもらいました。
次回も参加されるようでしたら、宜しくお願い致します。

氷邑 凍矢 拝