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<ハロウィンカーニバル・PCゲームノベル>


+ Halloween partyにいらっしゃい! +



■かそうぱーてぃさんかしゃぼしゅう

 かそう:ぜったい!にあえばなんでもよし
 にんずう:おおければおおいほど
 にちじ:はろうぃんのよる
 ばしょ:いくうかんないようかん(きれい!)

 さんかしゃは『はろうぃんとうじつ』に『かそうしたじょうたい』でこの『しょうたいじょう』をにぎりしめてまて。
 もしかそうしていないばあいはいたずらしたうえで『きょうせいさんか』させちゃいます。

 よだん:ぱーてぃない『かそうこんてすと』あり。


  ――――――――――――


 それはハロウィン一週間前の出来事。
 参加者達の目の前に突如現れた一枚の紙切れ。
 ある者の元には住んでいる家の玄関に貼り付けられ、ある者など戦闘中突如空から降ってきた。各々紙を見れば子供の筆跡で上記のような文章が綴られていたのだ。中には子供の悪戯だろうと紙をゴミ箱に捨てるものもいたが、不思議なことにその紙は戻ってきてしまう。


 送り主は誰か。
 「かそうぱーてぃ」とは何か。
 そこで行われるコンテストとは何か。


 ―― それはパーティ当日、明らかになるだろう。



■■■■



⇒パート1:桐嶋 悠(きりしま はるか)の場合


 やや長めの黒髪を持つ少年が自室にてあるハロウィンパーティの招待状を受け取った。
 彼の名は桐嶋 悠(きりしま はるか)。神聖都学園に通う男子高校生だ。彼は招待状を指先で持ち、ひっくり返してみる。だがそこには何の文字もない。彼は首をかしげながらもう一度文章を読んだ。


「『かそう』……火葬…? あ! い、今のナシ! たぶん、普通に考えると仮装だと思うんだけど……」


 ひらがなで綴られた文章に自分が考えた変換文字をあてていく。
 『かそう』を『火葬』と。
 だがそんなわけないと自分で言いながら通常考えられる範囲内で物事を考え始めた。


「ハロウィンにパーティだったら、仮装だよね、きっと。それにしても、これ、どうして机の上にあったんだろう。僕、たしかに部屋に鍵をかけていたはずなのに」


 自分の勉強机の上を見ると他に荒らされた形跡などない。念のため引き出しや置いていた金銭類なども確かめてみるが泥棒にあった様子はない。その点から考えられるに本当に「招待状を置きに来ただけ」らしい。
 彼は自分のベッドに寝転がりながら招待状を天井に向けてみる。蛍光灯の光の下で文字をすかしてみても特に何か変わった様子はなかった。


「悪戯、にしては少し稚拙だし…そもそも僕相手にやっても意味ないだろうし。怪異の類、かなぁ? 『きょうせいてきにさんか』は強制的に参加だろうから、すでに巻き込まれてるってことなんだろうな」


 冷静に考えながら彼は小さく口元を持ち上げる。
 なんだか子供向けの謎々を解いている気分になってきたのだ。やがて彼は身体を起こすと何か変装に使えそうなものはないか探し出す。
 強制的に参加させられるよりも自主的に参加すると思っていた方が心構えが出来ていいと考えてのことだ。


「仮装は……黒のロングコートととんがり帽子で魔法使いってのは、無理があるかな、流石に。でも他にそれっぽいのはないし、これでいこう」


 部屋の奥から黒のロングコートととんがり帽子を持ち出し、身体に取り付けてみる。
 鏡で大体の姿を確認し別段おかしいところもないと分かると一度頷き、服を脱ぐ。当日、彼は「魔法使い」になると決意したようだ。帽子を脱いだ際に乱れた髪の毛を手で簡単に直す。もう鏡の中にはいつもの悠の姿が映し出されているのみだ。


「『こんてすと』っていうのは、何やるんだろう。変なことやらされるんじゃなかったら、参加してみてもいい、かな?」


 衣装を手に彼はそう小さく呟く。
 指定されたハロウィンパーティの日まであと僅か。
 悠はその日が来るのを楽しみに感じながら他に何か持っていけそうなものはないか探すことにした。



■■■■



⇒パート2 レンヌ・トーブとリン・ラセルの場合


「きゃぁあ、やっぱりレンヌさんカッコイイですぅ〜☆」
「へへ、そうかな?」
「レンヌさんの男装吸血鬼、想像よりもはるかに凛としていてもううっとりします〜☆」
「そんな。きっとリンが作ってくれた衣装のおかげよ」


 二人はハロウィンパーティ用に製作した衣装を身に纏い各々感想を漏らす。
 とても美しく輝く長い黒髪を持つ女性――レンヌ・トーブはその自慢の髪を少しかきあげ後方に流す。メイクも女性的なものではなく、眉をきりっと上げ、目尻もいつもよりややすっきりとラインを引いた男装用のもの。彼女は友人であるリン・ラセルが作ってくれたコスチュームをまじまじと眺めその完成度に感嘆の息を吐いた。
 自分のサイズぴったりかつ男性的な魅力が出るよう直線的なフォルムで作られたタキシードは紳士的な吸血鬼そのものだ。取り付けられたマントも多くの布が使われているのに着ている本人に負担が掛からないほど軽く、よく空気を含んで広がった。


 一方その衣装を製作したリン・ラセルは魔法使いの格好だ。
 可愛らしいとんがり帽子に黒装束。そしてマントを身に纏った彼女は今自分の姿よりもレンヌの吸血鬼姿に興奮していた。レンヌに負けないほど長い銀色の髪が彼女が移動するたびに細やかに飛び跳ねる。
 そんな彼女の手にはなぜかデジタルカメラと小型のビデオカメラが握られていた。
 当然撮影対象はレンヌである。
 うっとりと幸せそうに笑みを零しながら彼女はレンヌを沢山撮影する。レンヌもまた彼女に向かって普段の微笑みとは違いきりっとした視線、そして中性的な雰囲気をかもし出しながら答えた。


「はぁぁぁ……っ! もう今日のパーティが本当に楽しみですぅ〜☆」
「ふふ、今日は仕事も忘れて他の参加者さんと楽しみましょ」


 撮影に満足したのか、リンはカメラを手からおろし今度は櫛を握る。
 それを使ってレンヌの黒髪を丁寧に梳きながら本日行われるハロウィンパーティへと想いを募らせた。一体何者が自分たちに招待状を送ってきたのかはわからない。けれどきっと楽しいものになるだろう、そう信じて。


 その時だった。
 彼女達のちょうど真横の床が光り始め、そこから次第に「何か」が姿を現し始めたのだ。突然現れた光に二人は目を瞬いて驚くも、すぐにそれが何であるか察する。
 橙色の丸くて少しごつっとした歪な球体は――。


「「カボチャ!?」」


     ≪ Treat Treat Treat!! ≫


 何処からか声が聞こえる。
 その瞬間、光の量が増し彼女達は問答無用で『連れ去られ』てしまった。



■■■■



⇒ パート3 はろうぃんぱーてぃ



「ようこそ、ようこそ! 本日はハロウィンパーティにようこそ!」
「お菓子もあるよ! ご馳走もあるよ! さあ、皆で楽しもう!」
「夜は長く、けれど楽しい時間はあっという間だ!」
「さあ、この日を心待ちにしていた皆さん、騒ぎましょう!」
「……でもね、時々悪戯もあるから気をつけて」


     ≪ Trick or Treat!! ≫


 色取り取りの装飾品が並ぶホールに「彼ら」は居た。
 彼らとはもちろん参加者達のことである。皆最初は何が起こったのか、何が目の前に存在しているのかさっぱり分からずに目を丸めているだけだったが、やがてこの場所が招待状に記載されていた「いくうかんないようかん(きれい!)」であることに気付くと参加者達は自分の興味のある方向へと散っていった。
 ある者は中央で行われている大道芸を見に、ある者は料理人たちが次々と作り出す高級料理を食べに走り、ある者は恋人とムードを作りに夜の庭へと足を向け……。


「う、っわぁー……凄いなぁ。本当に色んな人がいる」


 悠はボーイが配っていたジュースを飲みながら感動の言葉を漏らす。
 集まった参加者達の年齢層や種族もばらばらで圧倒されるばかり。それは本当に「仮装」なのか「種族」なのか分からなくなる。けれど今夜は「かそうパーティ」だ。本物であっても偽者であっても皆気にせず騒げる日なのだ。
 もっとよく見ようと移動する。するときょろきょろしていたせいか、誰かにぶつかってしまった。


「あ、ごめんなさい」
「いえ、大丈夫です。そちらこそ大丈夫?」
「はい、だいじょ……」


 悠は手に何か触れたことに気付き、反射的にそれを掴む。
 彼はとても不思議な感触が掌に伝わり首を傾げていると、ぶつかった吸血鬼レンヌがくすぐったそうに笑った。


「それ、私の触角なの」
「しょ!?」
「とてもくすぐったいわ、離して貰えるかしら?」
「え、あ、はい」
「レンヌさん、ジュース持って来ましたぁ〜☆ あら、その子は誰なんですか?」


 リンが両手にジュースが入ったグラスをレンヌに差し出す。
 レンヌは有難うとお礼を言いながらそのジュースを受け取った。


「あ、僕は桐嶋 悠と言います。今日は魔法使いをやってて……え、っとそちらは?」
「私はレンヌ・トーブ。今日は彼女が作ってくれた衣装で吸血鬼の仮装をやってるの」
「こんにちは、私はリン。リン・ラセルと言います。今日は貴方と同じ魔法使いなの。よろしくしてね」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」


 三人は自己紹介を交わし、笑顔を浮かべる。
 普段気弱な態度を取ってしまう悠も少しだけ口を持ち上げ小さな笑みを作った。無意識のうちに左手首に嵌められたお守りの腕輪を撫でていたが、ジュースを飲みながら雑談を交わしていくうちにそれも治まった。


「じゃあ、悠は人間なのね」
「二人は人間じゃないんですね……貴方達の種族は初めて見ました」
「そうね、貴方の話を聞いているとちょっと珍しいかもしれないわね。人間はちょこちょこ見かけるけど世界観がまた違うみたいだし」
「でもなんだか共通していることもあるんですよね」
「そうね。きっと何か通じるものがあるんだわ」
「二人ともこっちを向いて下さい〜! 写真撮ります!」


 リンが懐にあらかじめ忍ばせておいたカメラを取り出す。
 レンズを二人に向ければ悠は慣れない様子でピースを向ける。大してレンヌは顎に指をかけ、軽く腕を組んでポーズを決めた。リンはきゃっきゃとはしゃぐように二人の写真を幾通りかパターンを変えて撮る。
 時々他の参加者も声を掛けてきてくれたのでその方々も交えて記念撮影をすることもあった。


 ふと足元に何かが転がってくる。
 ころころころ。
 それは彼らの元に一直線に向かってくる。
 こつん、とリンの足にそれはぶつかり、そして彼女はそれを何気なく拾ってしまった。
 ―― ジャック オ ランタンを。


     ≪ Treat Treat Treat!! ≫


「えっ」
「眩しッ……!!」
「きゃあっ」


 まるでこのパーティ会場に来た時と同じような光がカボチャから溢れ出る。
 そして次の瞬間、その場に居た彼らは今まで大道芸を行っていた中央ステージの上に出現することとなった。目の前には大勢の参加者達の姿があり、その中で時々光が走る。するとステージでは悲鳴があがり他の参加者達が現れるのだ。どうやら適当に選ばれた参加者達がステージに運ばれているらしい。
 司会者らしき男がマイクを手にもう一方の手を振り上げた。


≪ Treat Treat Treat!! 今夜の主催である聖なるカボチャに選ばれた皆様、コンテストにようこそ! ≫


 その瞬間、おおー! と声があがった。
 どうやら招待状に書かれていた例のコンテストとやらが今から行われるらしい。リンは抱き上げたカボチャがいつの間にか消えていることに気付く。また会場の端では誰かの悲鳴があがった。


≪ 悪戯大好きな聖なるカボチャが皆様と触れ合いたくて催した今回のパーティは楽しんで頂けてますか? 沢山の方が強制的にこの場に召喚されたことだと思われます。種族も年齢も何も関係ないこのハロウィンパーティは不思議がいっぱい、謎がいっぱい。さあ、今夜の目玉であるコンテストを始めましょう!! ≫


 その瞬間、司会が持っていたマイクを高く投げ飛ばす。
 そしてそのマイクが上空で弾け、飴やチョコといったお菓子へと変わった。それはコンテストに強制参加させられている三人にも降ってきたので彼らは両手でお菓子を受け止めた。
 悠にはチョコが。
 レンヌにはペロペロキャンディーが。
 リンにはマシュマロが。
 そして同時に彼らの菓子には番号札がついていた。


「僕は3です」
「私は1だわ」
「私は2です」


≪ コンテスト参加者の皆様に参加賞のお菓子は行き届いたかな? ならばそこについている番号順に自己アピールをお願いしましょう。もちろんもう不参加は認めない。さあ、エントリーナンバー1の参加者様は前へ!! ≫


 司会は新しいマイクを二本差し出すと片方を自分に向け、もう一方をステージへと向けた。
 1の札を持っているのはレンヌだ。
 吸血鬼の扮装をした彼女は一度肩を竦め、そしてステージ中央へと足を動かした。司会の手からマイクを受け取ると長く美しい黒髪をかきあげ、ふっと笑みを浮かべた。


「ああ、もうっ。レンヌさん、カッコイイ〜!!」
「え、僕、三番め!? ……割と早い番号に当たっちゃった……」


 自己アピールを何にしようか必死に考えながら悠は眉を寄せる。
 その間にリンはレンヌにカメラのレンズを向け、撮影を始めていた。


≪ エントリーナンバー1。レンヌ・トーブ。今宵の姿は――吸血鬼。女性達はどうか私の姿には気をつけて。その細い首筋に噛み付いてしまうかもしれないから…… ≫


 今夜はハロウィンパーティ。
 皆が楽しみ騒ぐ夜。
 美しい魔物、醜い魔物、何が本当で何が悪戯か分からなくなる舞台の上で彼らは楽しむ。


 転がってきたカボチャには気をつけて。
 さあ、皆で一緒に楽しみましょう。


≪ Treat Treat Treat!! ≫


 レンヌの撮影に必死なリンといまだ自己アピール文を考え続けている悠の足元ではジャック オ ランタンが可笑しそうに笑顔を浮かべていた。






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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【7719 / 桐嶋・悠 (きりしま・はるか) / 男 / 16歳 / 高校生】
【3502 / レンヌ・トーブ / 女性 / 15歳 / 異界職】
【1499 / リン・ラセル / 女性 / 17歳 / 学生兼トーブ家ファクトリーのアルバイター】

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■         ライター通信          ■
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 こんにちは、パーティへの参加の方有難う御座いました!
 今回は魔法使いの仮装および漢字へのあて文字ということでこのような形になりましたがいかがでしょうか?
 強制参加という形では御座いますが、何か楽しめる部分があったことを祈ります(笑)