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<東京怪談・PCゲームノベル>


蒼天恋歌 3 穏やかなる幕間

 レノアがあなたの家に匿われてからしばらくたった。これといって大きな事件もなく平和に過ぎ去る日々。
 彼女は徐々に明るくなる。元からの性格がそうだったのだろうか。
 美しい顔立ちが、明るくなった性格に相まってきて、どきりとする時がある。
 其れだけに美しい女性である。
 ある日のことだ。彼女は歌を歌っていた。ハミングを口ずさむ。
 名前以外知らなかったはずなのだが、調べていくと、歌が好きだと言うことを思い出したという。気持ちよい歌。しかし、其れだけでは手がかりにならない。
 また、ある日のこと。
「いつも、いつも、あなたにお世話になりっぱなしです。出来れば恩返しをさせてください」
 と、申し出るレノア。
 あなたは、申し出を断るかどうか?
「たまには外に出かけてみようか?」
 と、あなたは言う。
 うち解けてきた彼女は、にこりと笑って付いていく。まるで子犬のように。

 色々探さなければならないことはある。しかし早急にするべきではなく、非日常から日常へ少し戻ることも……必要なのであった。

 様々な彼女とのふれあいで、心惹かれ合い、そしてその日々を楽しいと感じることになるだろう。


〈ばれた〉
 私、柴樹・紗枝。サーカス団の猛獣使い。
 小さい頃から猛獣使いとして鍛練を積んで、今は其れで食べています。今のサーカス団の知覚に仲間を散歩に連れて行ける場所(特別な異界なのか分からないですけどね)があり、白虎・轟牙を連れて散歩していたのです。
 その時に、女の子を拾ってしまいました。
 彼女は記憶喪失というので、暫くかくまおうとした訳ですが、謎の得体の知れない闇に襲われて……、今に至ります。今、レノアは私の部屋で匿っていましたが……。
「あなた誰!?」
 と、あっさり団員に見つかってしまい、私は事情を説明することに。
「……」
 あ、皆考えている。
「あの……」
「良いだろう」
「へ?」
「一応分かった。暫くいいだろう。しかし、生活費諸々はあんたのギャラから引くから」
 と、いう条件でレノアは警察にも届けることなく住まわせることが出来ました。
「はあ、良かった……」
 あれ? 何で私良かったって思ったんだろう? ギャラが減るんだよ? 色々好きなことが出来なくなるじゃない? ……。ああ、深く考えるのはよそう。
「がるる(どうだった?)」
「大丈夫。でも生活費大丈夫かなぁ……私必死に頑張らないと、ヤバイかも」
 轟牙に問われてから、項垂れるのでした。扶養が出来ると、負担は大きいのですよ?
 それから数日後のこと。
 レノアもサーカス団の仲間と仲良くなって、有る程度仕事も手伝ってくれています。ドジが凄いけど。色々間違って大変なことになるんだけど。でも、必死なので、構ってしまいたくなる。
 あと、私と同じように、帯電するようだ(一寸私の場合は違うのだけど)静電気の放電が、凄い。一回、暗いところで彼女を見たら仄かに光ってたのです。幻想的でした。本人は分からないと言ってますけどね。
 でも、肝心なことを私は思い出し、どうしようかと思いました。
 レノアの生活用品と服です。
 流石に私の物ばかりじゃ……一寸問題があるし、ブーツや靴は貸せないのです。其れは何故って? さ、サイズが合わないからですよ! け、決して水虫とかじゃないですから!
「がるる……(死ぬほど……いや、何でもない)」
 なので、幸い今はオフなので、買い物に出かけようと思います。
 ですが……。
「がるる!(其れは俺!)」
「ぎゃーす(ちがう!)」
「ぎゃおお!(おれのだ!)」
 私たちの仲間(猛獣)が、騒がしくなりました。
「ど、どうしたの? みんな!?」
「「ぎゃおわおあにゃー!」」
「いっぺんにわめくなぁ!!」
 どうも、かいつまんで聞けば、餌の取り合いみたい。大きさの違う肉で言い争ってる。お互い食いしん坊なんだから。仲介に入った轟牙も加わってしまっているので問題。鞭出して、抑えようかしら……と思ったら……。
「〜〜♪」
 私の部屋から歌が聞こえる。
 猛獣たちはそこで黙って、ずっと聞いている。
 何を歌っているか聞いたことのない言葉なので、分からないけど其れは、紛れもなく歌だったのです。
 獣たちは、お互い謝ってから、自分の寝床に戻っていったので、私は鍵をかけ、自分の部屋に戻りました。
 そこで、声の主をみて、自分の時間が止まってしまったのです。

 レノアが本当に天使の様に、歌を歌っていたから……。

 我に返るのは、レノアが、歌を止めてからだったのです。


〈おでかけ〉
 柴樹さんが、部屋の入り口でぼうっと立っていました。
 私は首をかしげましたが、彼女は我に返り、
「歌うまいですね」
 と、笑います。
「何となく、歌いたくなったんです」
 私は答えました。
 記憶のない私を匿ってくれた柴樹さん。そして、白虎。サーカス団の人なのですが、私はここに良いのか分かりません。ただ、私自身何も分からないから、誰かに頼るしかないのは事実です。不安で不安で仕方有りませんでした。しかしこの数日その気持ちは薄らいでいます。
 柴樹さんが守ってくれたから、私はこうして此処にいられるのです。
「そうそう、レノアさん。買い物に来ませんか?」
「買い物ですか?」
「日用品もあなたの着替えも必要だから」
「すみません」
「謝る必要はないの。困ったときはお互いさま。こう言うときは『ありがとう』ですよ」
「あ、ありがとうございます」
「よし! 私も準備するから待っててね」
 と言うことで、お出かけすることになりました。

 場所は、何故か秋葉原。どうしてでしょう? 記憶がないといっても、有る程度の地理・知識は分かるのですが。何故、オタクの名所? 首をかしげるばかりです。
「でも、予定より、遅くなっちゃった……」
 隣で、柴樹さんが汗だくになっています。
 はい、私が道に迷って反対の上野に行っちゃったからです……。大変な事をしてしまいました。
「ある意味才能よね……あなたの方向音痴」
「ご、ごめんなさい」
「いいわ……勉強になったから」
 苦笑しています。
 手を繋いで彼女はどこかに引っ張っていきます。

 場所は、何かのパーティグッツ店です。
「あのそのそれは……」
 私は困りました。
「うーんだめかぁ」
 看護士服やメイドとかかれた内容に私はどう対応すれば分かりません。
 えっと、そう言いかけたときに。
「まともな服は後で買うからね」
 秋葉原にあるか謎です。
 キョロキョロする私。記憶と知識は違います。なので、実際この場所の珍しさから、とまどってばかりです。
「あの金髪の子、萌え〜」
 この店に着く前に街を歩くとそういう人が居ました。
 柴樹さんはその人を睨みすると、その人は怖くなったのか逃げていきました。
「ふう、偶に問題があるけど楽しいからいいのだけど」
 と、彼女は独り言を言っていました。

「不安?」
「あ、はい」
 彼女は私の前に、手を出し人ひねるするとお花を出しました。
「!?」
「手品得意なんです」
 其れで食べていますからと付け加える。
 手品商品コーナーの試遊スペースで、彼女はコインと、ガラスカップやプラスティックコップをもって、様々な手品を見てくれました。
「すごいです」
「序の口ですよ。色々あるから」
 彼女は、得意げに様々な手品を見てくれました。
 いつの間にか人だかりで、驚くばかりです。

「あの人うまいなぁ」
「どっかで見た人かも?」
「わかんね」

 賑わうお店。

 この後はと言うと……。
 お店の人に感謝されたのか、此処で売られている商品を何割引にしてくれたそうです。柴樹さんは一寸どころかラッキーと大喜びでした。


〈公園にて〉
 夕暮れ。
 2人でジュースを買って、ベンチに座る。
 物を買ってから、動物園に少し時間を潰し、今此処にいる。
 この子は、何か思い出したのだろうか? 未だ分からないけど……。楽しんでくれたかなと不安で仕方ない。
「疲れた?」
「あ、はい」
「うん。今日一日楽しめたなら良いけど……」
「凄かったです」
「ありがとう」
 夕日が綺麗だった。
「あの、私はこのまま此処にいて良いのですか?」
 レノアが訊ねる。一番不安なことだ。
「いいのですよ。不安がらなくても」
 私はそう答える。
 ただ、私もどうすればいいか分からない。また、あの闇が襲ってくること。それにどう対応するか応戦するか未だ見えてこない。
 調べる必要があるはず。しかし手がかりは名前だけ……。
 深く考えるのはよそう。今は。今日はレノアに楽しい思いをさせたなら、OKです。
「帰りましょうか」
「……はい」
 こうして、私とレノアは家に帰るのだった。

4話に続く


■登場人物
【6788 柴樹・紗枝 17 女 猛獣使い&奇術師【?】】
【6811 白虎・轟牙 7 男 猛獣使いのパートナー】

■ライター通信
 滝照直樹です。
 このたび、『蒼天恋歌 3 穏やかなる幕間』 に参加して頂きありがとうございます。
 4話は急展開に事が発展します。レノアについて色々調べていくため、草間や鬼鮫など様々な人と関わることが必須になるでしょう。具体的に行動を書くことで主語りは面白みを増すでしょう。
 なお、戦闘は後半にしかない回なので、調査の段階などでは白虎さんの外出は難しいです。これは3話でもうあげたことと同じになります。公道を虎が闊歩するのはどう見ても不自然だからです。
  ただ、非常事態(敵との戦い)に入れば、その辺の都合は関係なくなります。

では、また次回に。
滝照直樹
20081103