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<東京怪談・PCゲームノベル>


子供になった翁3 彼方から

 人にとって見ることは出来ない物。それは、次元の狭間。あると信じている幻。
 そして……未来。

 大鎌の翁は、縁側で足をばたつかせながら、空を見ていた。子供のままではや数ヶ月。何も変調もなく、目立ったこともない。
「いつになったら戻れるのやら」
 ため息ばかり吐く。
「翁様?」
「静香か?」
 翁はまだ5歳児。静香は丁度母ぐらいの齢の姿だ。
 世界樹の一部から作られた魔遺物の翁と、樹という形で世界を見る精霊の静香の一日は平穏そのものだ。此処の主になる長谷茜は、大学や仕事と忙しいが、充実した日々を送っている。平八郎はそろそろご隠居となるだろう。
「手がかりが何もなくてのう」
「占術にもなにもですから」
「ふむ」

 静香は現在、長谷家しか姿を見せない。力が強大すぎるためのほかに、彼女が極度の恥ずかしがり屋であるからだ。存在が近い者(そう、樹という存在)しか見えないのだ。静香と翁の心はかなり近づいていると、他から見て判っている。其れは珍しいことであるが、茜は良く思っていない。
 全く何もつかめていない。焦りを感じたり、不自由なので困ったりと翁は悩んでいた。怪奇事件に触れてもこの状態だとなにもできない。知識はあっても、力がないのだ。
 このままでは心も枯れてしまいそうである。人の形をと立った為だとも言うだろう。人間の思考にどんどん近づくのだ。

 ある日、長谷茜が唸りながら書類を見て自室に籠もっていた。
「茜何を唸っている?」
 襖を介して、翁が呼びかけた。
「エロじじぃ。なによ。今忙しいの!」
「……茜! あなたはなぜ」
 非実体の静香は怒って、襖をすり抜ける、胴体が切断されている形になっているためなかなかシュールだ。
「実際名前が長いし、そっちの方に定着したの! 真名いうよりいいでしょ!」
「定着するんじゃないわい!」
 流石にツッコミを入れたくなる。
 高次元的存在をエロじじぃと言える茜だが、第一印象が最悪なので仕方ない。ああ、仕方ない。
 ツッコミをスルーして、茜はこういった。
「……あ、ここん所、行方不明者が多いから探してくれって草間さんに頼まれてね」
 事件のようだ。
「警察にたのめ……草間か」
「うん」
 草間が絡むと警察沙汰では済まないという、宿命というか運命がある。彼は世界樹を壊した1人だから責任はあるだろう。
「いなくなって1週間。他の術者も原因不明だって」
「で、時空間魔術に詳しいおぬしに?」
「うん」
「……なら、わしも連れて行ってくれんか?」
「え? えええ?」
 イヤそうな顔をする茜を見て、翁は苦笑してしまう。
「そんあんいいやか」
「そうじゃないけどー。偶におしり触るしー」
「誰が青臭い娘にときめくか! そもそも人間に興味ないわ!」
「うそだー」
 毎日こういう口げんか。
「2人とも脱線していますよ」
「あ、そうだった。わかった、付いてきて」
「……うむ」
 3人が向かうことになった。

「閉鎖陣でもないし……」
 その怪しい区画を回る茜たち。
 静香は他の人からは見えないが、巫女服姿の茜と、宮司風の翁の姿はかなり目立つ。途中で写真撮影を求められてしまう茜。そう、場所は秋葉原だった。こんな所で巫女服だと、そうなってしまうだろう。
「大丈夫か?」
「なに、常時反射術帯びてるから。頼まれたら断るだけだし」
「ふむ」
 等と話をしながら、現地に向かった。
「この辺なんだ」
 つい最近倒産した店の角。
 地図を見ても、霊視でも、何もない角。
「至って普通じゃな」
「でしょ?」
「何もありませんね」
 周りを調べていくと翁だけが、はたと止まる。
「どうしたの?」
「まて……」
 彼が止まった場所は、変哲もないビルとビルの隙間。50cmあるかないかの。日は当たらず、薄暗闇の隙間に、何かがあった。

 亀裂。

 宙に浮かぶ亀裂。
 その先に何かが見える。しかし、其れは見ては行けない。
「これじゃ」
 翁が指差す。
「何も……あ!」
 茜が静香と『視た』。
「これが原因だったの?」
「ようじゃな。今考える。一度こじ開けて直ぐに封印すれば、何とかなる」
「う、うん」
 翁が術式を茜に教える間に、静香が、周りに森の閉鎖空間を作り、他の人が紛れ込まないようにする。周りは木々生い茂る森に変わっていく。しかし、外世界からは只の通り道になって素通りできる。
「良し覚えた。いくよ、静香」
「はい、茜」
 術式は翁から教わるが、其れを直ぐに長谷流にアレンジする。茜が印を結び、術を唱え更に木々のさざめきが呼応する。周りの木々もざわめきはじめ突風が巻き起こる。空間外の現実世界でも、その影響は風と木々の揺れで怒っているが皆はただの強い風だと勘違いしていた。

「開門!」
 亀裂が大きく、ガラスが割れるような音と共に開く。其処から人が転がるように出てきた。
「ここはどこ?」
「俺何で此処に?」
「……え? え?」
 被害者が状況をつかめていない。
「封印じゃ」
 翁が叫ぶ。
「了解! 空の傷、あるべき姿に戻り世界のほころびを追放せん! 封門!」
 両開きの扉を閉めるような仕草をする茜。
 空間の傷は、全く見えなくなった。
 同時に閉鎖空間を解除し、茜は直ぐに亀裂から出てきた人の介抱に回る。
「大丈夫ですか?」
「……私たちは一体……」
 茜の段取りで、救急車や長谷家のサポート術師が駆けつけていた。メイドやアニメコスプレの姿をしているが、其れはこの周りにとけ込む形で隠れていただけである。


 その亀裂が無くなる直前。

 ――ミツケタ

 おぞましく不気味な声。だが誰にも聞こえなかった。

終わり

■登場人物■
【6877 大鎌の・翁 999 男 世界樹の意識】

【NPC 長谷・茜】
【NPC 静香】
【影斬やら(名前だけでてきた)】

■ライター通信■
こんばんは、滝照直樹です。
 一寸危険な伏線ですねぇ。
|Д゚) なんか、かわうそでてない!
|Д゚) シリアス、だから

 なんか、編なのが叫んでいるけど、気にしないで下さい。では、またどこかで。

滝照直樹
20081202