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【人形の館】のクリスマス・イブ
【オープニング】
十二月半ばのある日のこと。
妹尾静流はいつものように、時空図書館の庭園にある四阿(あずまや)にて、ゆったりと読書の最中だった。四阿にいるのは彼一人で、丸テーブルの上には中身が半分ほどになった紅茶のカップが置かれている。
そこへ、ここの主である三月うさぎが姿を現した。
「静流、来ていたのですね」
微笑みながら声をかけ、向かいの椅子に腰を降ろす。
しばしの雑談の後、彼はふと思い出したように尋ねた。
「ところで、二十四日のあなたの予定はどうなっていますか?」
「二十四日……ですか?」
静流は少しだけとまどった顔で、問い返す。
十二月二十四日といえば、誰でもすぐに気づくとおり、クリスマス・イブだった。
二十五日のクリスマスは、ここで三月うさぎと過ごす予定にしていたが、二十四日については何も決めていない。友人たちからパーティーの誘いでもあれば受けようかと、ぼんやり考えていた程度だ。
彼がそう話すと、三月うさぎは言った。
「なら、ちょうどいいですね。私と一緒に、友人の主催するパーティーに参加しませんか? クォーツという人形師なのですけれど、彼の住む館で今年はクリスマス・イブをやるというんです。人数は多い方がいいそうなので、なんなら他にも人を誘ってもかまいませんよ」
「人形師……ですか」
静流は少し考え、うなずいた。
「わかりました。私も行きます。……それに、他にも参加したい人がいないか、少し声をかけてみます」
「お願いします」
礼を言って、三月うさぎは微笑む。
それを見やって静流は、さて、誰に声をかけてみようかと、頭の中で友人・知人の顔を思い浮かべてみるのだった。
【1】
軽いめまいのような感覚から覚めて、シュライン・エマは小さな吐息と共にあたりを見回した。
彼女が妹尾静流から、十二月二十四日のクリスマス・イブに三月うさぎの友人の元で行われるパーティに出ないかと誘われたのは、十二月半ばのことだった。
二十五日は一応予定があるが、イブをそうやって過ごすのも悪くはないと、彼女は誘いを受けた。
(三月うさぎさんのお友達かあ……。一筋縄ではいかない、楽しい御仁なんだろうな。舌も肥えてらっしゃいそう……)
静流から話を聞いて、なんとなくそんなふうに思う。
初めて行く場所に手作りのお菓子もどうだろうかと幾分悩み、それでも結局、手土産がわりにキャベツ入りクラッカーと金柑ジャム、チーズディップと栗の渋皮煮ペーストを作って持って行くことに決めた。これならば、和洋中どの料理にでも合いそうだから、というのがこのラインナップにした理由だ。
(みなさんのお口に合うといいな)
そんなふうに胸に呟きながら、それぞれを詰めた瓶を紙バッグに入れて、準備完了とばかりに彼女は自宅を出た。
そして今、彼女は「人形の館ギミック」の建物の前にいた。
一人ではない。誘ってくれた静流と、同じくその誘いを受けたセレスティ・カーニンガムの二人と一緒だ。
ちなみにギミックは、聖獣界ソーンと呼ばれる異世界の国エルザードの一画に存在し、通常は特殊な能力がなければ東京からここへ来るのは不可能なのだそうだ。だが今回は、時空図書館経由でここへの道が開いているのだという。
それでシュラインたちは、静流のマンションから時空図書館→ギミック、というルートをたどったのだが、少なくとも彼女には、気づいた時にはこの二階建ての洋館の前に他の二人と共に立っていた、という感覚しかなかった。
人形の館ギミックで、最初に彼女たちを出迎えたのは、ファ・スヨンと名乗る黒髪の少女だった。両耳が花になった紺色のワンピースとフリル付きの白いエプロン姿の彼女は、シュラインたちが今夜のパーティーに招待されたのだと告げると、笑顔で会場へと案内してくれた。
会場は二階で、普段は人形の展示室として利用されている部屋だという。
本性が人魚で、長時間の歩行が困難なセレスティは、この日も車椅子だったので、二階に上がる際には手すりを杖がわりにして昇り、シュラインが静流と二人でその後から車椅子を運び上げるという次第になった。
そうやってたどり着いてみると、会場はシックな装いの広間で、周囲を廊下が囲む形になっており、人形たちの一部はその廊下に出されて展示されていた。
床には渋い赤のじゅうたんが敷き詰められ、中央には巨大なクリスマスツリーが飾られて、室内の照明にまばゆい光を放っている。残された人形たちは、部屋の隅に置かれたソファやテーブル、椅子、アンティーク調の飾り棚などに置かれて、まるで彼女たちもパーティーの客ででもあるかのようだ。
会場にはすでに、シュラインたち以外にも大勢の人がいて、飲み物や軽い菓子などをつまみながら楽しげに談笑していたが、人形たちの存在感は、それ以上である。
「すごいですね。……なんだか、この人形たちが皆生きているかのように感じます」
セレスティが、思わずというように呟いた。
「そうね。……三月うさぎさんのお友達が作ったものなら、案外本当に生きているのかも」
シュラインも吐息と共に言った。そしてふと思い出して、あたりを見回す。
「それにしても、知らない人ばかりね。……三月うさぎさんは、どこにいるのかしら」
「……あそこに」
同じくあたりを見回していた静流が言って、広間の一画を示す。
そこには、薄紅色の髪と目に、途中から翼と化した耳を持つ三月うさぎの見慣れた姿があった。
隣には、長身の黒髪の男がいる。二人は何事か笑いながら話していたが、スヨンが駆け寄って声をかけると、話をやめてシュラインたちの方を見やった。三月うさぎがこちらに微笑みかけ、男を促すようにして彼らの方へと歩み寄って来る。
「ようこそ。今宵のパーティーへ。……といっても、今夜は私も客ですけれどもね」
笑って言うと、彼は男をシュラインたちに紹介した。
「こちらが私の友人で、この館の主でもある人形師のクォーツです」
「わざわざ、すまないな」
言ってクォーツは、三月うさぎに紹介されるままに、シュラインたちと握手を交わす。
お互いに挨拶が済んだところで、セレスティが思い出したように手にしていた包みを差し出した。
「こちらは差し入れです。お気に召していただけるといいのですが」
「あ……。私も」
それを聞いてシュラインも、慌てて手にした紙バッグをそちらへ差し出す。
「誰しも、考えることは同じなんですね。私も、差し入れを持って来ました」
それを見やって、静流も笑いながら手にした紙バッグを示す。
「かえって、気を遣わせたようだな」
クォーツはそれへ礼を言うと、傍に控えるスヨンを呼んだ。
「食事の時に、出してくれ」
「はい」
言われてスヨンは、明るい声でうなずくと、三人が差し出したものを持って広間から立ち去って行く。
シュラインはそれを見送りながら、セレスティや静流は何を持って来たのだろうかと考えたりしていた。
【2】
クォーツに挨拶した後シュラインは、クリスマスシャンパンティーをもらった。
それは、食べやすい大きさに切ったイチゴ、キウイ、パイナップルと砕いた氷をシャンパングラスに入れて、それへニルギリで作ったアイスティーと冷やしたシャンパンを注いだもので、軽いデザートがわりにもなる飲み物だった。
それを口にしながら、彼女はクォーツに尋ねる。
「クォーツさんも、時空図書館でよく過ごされるんですか?」
「ああ。……時々な」
「なら、あちらで作られたお人形とかも?」
うなずくクォーツに、シュラインはふと好奇心が湧いて来て更に訊いた。
二人がいるのは、広間の中央のツリーが飾られているあたりだった。一緒に来たセレスティと静流、三月うさぎはそれぞれ展示されている人形を見たり、広間内を散策したりしていて、ここにはいない。
「たしか、一体だけ作ったことがある。だが、あそこは仕事をするには向かないな。花だのお茶だの書物だの、誘惑が多すぎる。それに、あそこに行くのは、基本的に三月うさぎの顔を見るためだからな」
苦笑して答えるクォーツに、それはそうかとシュラインもうなずく。だがそうなると、どうしてその場所で一体だけとはいえ、人形を作ったのかが気になった。
彼女がそれについて尋ねると、クォーツは小さく肩をすくめた。
「作らなければ、ここに戻って来られなかったからだ」
言って彼は、時空図書館の庭園に、魂だけの存在として迷い込んだ少女の肉体がわりに人形を作らされた時のことを語った。正確にはその人形は、機械仕掛けで動く自動人形(オート・マタ)で、彼の能力でそれへ少女の魂を定着させたのだそうだ。
「じゃあ、その時に作ったお人形は、ここにはないんですか?」
思わず尋ねるシュラインに、彼はうなずく。
「ああ。今、それがどこにいるのかも、私は知らないぐらいだ」
それを聞いてシュラインは、少しだけ残念に思う。なんとなく、時空図書館で作られた人形は特別な気がしたからだ。
そんな彼女に、クォーツは小さく苦笑して声をかけた。
「何やら、残念そうだな」
「あ……。はい。もしここにあるなら、見たかったなとは思います」
正直に告げる彼女に、クォーツはまた笑う。
「あの図書館にいる女たちを、私が作ったとでも思ったか?」
「え? それは……」
言われてシュラインは小さく目をしばたたいた。たしかに人形と聞いて、時空図書館で見かける翡翠色の髪の女たちを連想したのはたしかだが、そこまではっきりと考えていたわけではない。
それへクォーツは続けた。
「あれは、自動人形のようなものではない。あの空間の原理だけで動いている、不思議な生き物だ。この世界の妖精や精霊に近い。……おまえたちの世界でいえば、機械に近いか」
言われてシュラインは、わずかに眉間にしわを寄せて考え込む。
彼の言わんとしていることは、わかる気もするが完全には理解できない。妖精や精霊についてはよくわからないが、機械は自動人形の進化したものと考えられなくもないではないか。
だが、すぐに彼女はそれについて考えることを放棄する。クリスマス・イブを楽しむために来たのに、難しいことを考えるのはなしだ。
彼女は、グラスの底に残ったパイナップルのかけらを口に放り込み、シャンパンティーを飲み干すと空のグラスをちょうどやって来たスヨンの手にした盆の上に乗せた。
「私も少し、お人形を見せていただいていいですか?」
クォーツに尋ねる。
「ああ」
彼がうなずいたので、シュラインはそこを離れて、広間と廊下に展示されている人形たちを見て回ることにした。
【3】
展示されている人形には、さまざまなものがあった。一番多いのは人型のビスクドールだったが、それ以外にも自動人形や、猫や狼、狐などの動物の形をしたものもあった。また、人魚や腰から下が馬になっている人間や、顔のある花など、幾分グロテスクだが幻想的なものもある。
人形そのものだけではなく、服や小物も小さいのに凝っていて丁寧に作られており、シュラインにとっては見ていて飽きないものばかりだった。作り手が、どれだけ心を込めてこれらを作っているのかが伝わって来て、なんとなくうれしくなって来るのだ。それに、ものが小さいだけに、その技術の素晴らしさには自然と溜息がこぼれる。
だが、そうやってあれこれ人形を見て回っているうちに、あっという間に時間は過ぎた。
「お客様方、お食事の用意が整いましたので、どうぞ広間にお集まり下さいませ」
スヨンが、パーティーの客たちに声をかけて回っている。それを聞き咎めて、廊下の奥まで来ていたシュラインは、広間へと戻った。気のせいか、客の数が最初より増えているように感じられる。そんな中、彼女は同行者たちの姿を目で探す。と、セレスティと静流、三月うさぎが三人でいるのを見つけた。
「ここにいたのね。……なんだか、最初より人が増えて来た気がしない?」
そちらへ歩み寄って、思わず言う。
「かもしれませんね。この世界の人たちは、意外とお祭好きですから」
三月うさぎがうなずいて、薄く笑った。
その時、あたりの照明が消され、かわりに室内のあちこちにキャンドルが灯された。それと共に、料理の乗ったワゴンが、会場にあるいくつかの扉から入って来た。ワゴンを押しているのは、翡翠色の髪とドレスの女たちだ。時空図書館で常日ごろ目にする、あの女たちである。
「どうして、あの人たちがここにいるの?」
シュラインは、思わず目をしばたたいて尋ねる。
「人手が足りないと言うので、貸したんですよ」
三月うさぎが、笑って答える。そして、彼女たちを促した。
「さて。私たちもあちらへ行って、料理をいただきましょう。きっと、あなたたちが持参したものも、並べられていますよ」
その言葉に従って、一同はそちらへと向かう。
食事は立食形式で、自分で好みのものを小皿に取って食べられるようになっていた。
ワゴンの上には、それぞれさまざまな料理が並んでいる。一番目を引くのは、銀の盆に盛り付けられた巨大なローストチキンと、クリスマスプディングだった。プディングはセレスティが持参したものだという。
他にも、大きな皿に盛られたコールスローサラダや野菜スティック、スパゲティグラタン、シュトーレンなどが並ぶ。シュラインが持参したものも、ワゴンの上に並べられていた。
ちなみに静流は、胡桃とアーモンドのキャラメルタルトを持参していた。紅茶とも、よく合いそうだ。
「どれも皆、手が込んだ料理ばかりですね。とても美味しそうです」
セレスティが、小さく吐息をついて呟く。
「そうね。食べてしまうのがちょっともったいないわね」
シュラインも言って、小さく苦笑する。
とはいえ、さすがに二人とも空腹を感じ始めていたので、それぞれ小皿をもらって、好きなものを取り分けてもらった。シュラインは、まずクリスマスプディングを一切れにカスタードクリームを添えてもらい、スパゲティグラタンと、野菜スティックをいくつかもらう。それらはどれも、美味しかった。
(やっぱり、思ったとおり、クォーツさんって舌も肥えていそうよね。でも……この料理っていったい誰が作ったのかしら)
ふと疑問に感じて、彼女は首をかしげる。時空図書館では、あの翡翠色の髪の女たちが調理もしているようなので、もしかしたら彼女たちなのだろうかとも思うが、違う気もした。
そこへスヨンが通りかかったので、シュラインは彼女を呼び止めて、それについて尋ねた。
「料理のいくつかは、お客様たちが差し入れとしてお持ち下さったものですが、ローストチキンとシュトーレン、あと飲み物は全て私が作らせていただきました」
対してスヨンから返って来たのは、そんな答えだった。
「あ……。じゃあ、これってほとんどは差し入れなの?」
ちょっと驚いて、シュラインは問い返す。
「はい。今夜のお客様は、ご主人様のお友達やそのまたお友達の方たちで、殊にご主人様のお友達の方々は、普段美味しい紅茶を飲ませてもらっているからと、今夜はいろいろ差し入れをお持ち下さいました」
スヨンはうなずいて、うれしそうに答えた。
「美味しい紅茶?」
なんだか、どこかで聞いたような話だと思いながら、シュラインはまた尋ねる。
「はい。この館には、一階と二階に喫茶室がございまして、そちらでお茶とお菓子をお出しするようになっております。もちろん、そのお茶やお菓子も、私がやらせていただいております」
スヨンの答えを聞いて、シュラインはなんとなく三月うさぎとクォーツの共通点が見えたような気がした。
(……ああ。二人は茶のみ友達だったわけね)
胸にうなずきつつも彼女は、少しだけ口元がほころぶのを禁じえない。三月うさぎはともかく、あの長身のぶっきらぼうな男が、と思うとほほえましいような、可愛いような気持ちになってしまうのだ。
(人は見かけによらない……ということね)
一人口元をゆるめながら、彼女は胸に呟くのだった。
【エンディング】
楽しい時間はあっという間に過ぎて、夜もかなり更け、シュラインたちはそろそろ帰ることになった。
他の客たちと共に一階のエントランスホールに下りて、彼女たちはそれぞれクォーツと挨拶を交わす。
「今夜は楽しかったわ。本当にありがとうございました」
軽く握手した後に告げるシュラインに、クォーツは笑った。
「いや。こちらこそ、来てくれてうれしかった。ありがとう。それに、差し入れも、なかなか美味かったしな」
そして、傍にいるスヨンをふり返る。
「スヨン、何か訊きたいことがあるんじゃないのか?」
「あ……。はい。シュライン様、よろしければ、今日お持ちいただいたものの、レシピを教えていただけませんでしょうか。他のお客様にもご主人様にも好評でしたので、今度ここの喫茶室でもお出ししてみようかと思っているのです」
促されてスヨンは、少しだけためらいがちに言った。
「もちろん、いいわよ」
シュラインは、今夜の客たちやクォーツの口に自分の作ったものが合ったようだと、幾分気を良くしながらうなずいた。そして、スヨンがメモとペンを手にしたのを見やって、材料と作り方の要点を簡単に口にする。
それらを全て素早く書き留めると、スヨンは頭を下げた。
「ありがとうございます」
「いいえ、どういたしまして」
笑って返すとシュラインは、クォーツにももう一度別れの挨拶をして、先に挨拶を済ませた静流の待っている方へと急ぐ。
ややあって、彼女の後から挨拶を済ませたセレスティもやって来た。彼は手に大きな布包みを持っている。
「それ、どうしたの?」
シュラインが尋ねると、彼は小さく微笑んで言った。
「自動人形です。とても気に入ってしまって……売ってくれないかと訊いてみたら、思いがけなくいただけることになったので、持って帰ることにしました」
「ふうん。……戻ったら、見せてもらってもいいかしら」
いったいどんな自動人形が彼の心を捕らえたのか、少しだけ好奇心が湧いて、シュラインは再度問う。
「かまいませんよ」
うなずいてから、セレスティは思いついたように問い返して来た。
「そういえば、明日が本当のクリスマスですが、シュラインと静流さんはどうするんですか?」
「私は、武彦さんや零ちゃんと過ごすつもりよ。明日の昼間は、零ちゃんとケーキを作る予定にしてるし」
シュラインは別に隠すようなことでもないと、さらりと答える。
草間や零と共にクリスマスを過ごすのは、彼女にとっては毎年のことだ。本当は、草間と二人きりのクリスマスにも未練はある。だが、零のことも妹のように感じていて、結局は二人と共に家族のように過ごすのも悪くないと思ってしまう自分がいるのも事実だった。
(……だから、先に進めないっていうのも、あるかもしれないけれどもね)
ふと彼女は、胸の奥で呟いて苦笑する。
「静流さんは?」
そんな彼女の隣で、セレスティが静流に水を向けた。彼は少しだけ困ったような顔をして、返す。
「管理人と過ごす予定です」
「それは……良かったですね」
セレスティが小さく目をしばたたいた後、口元をほころばせて言った。
シュラインも、軽く目を見張る。セレスティの言葉に、困ったように笑う静流を見やって、彼女も思わずほほえましい気分になった。同時に、少しだけ羨ましいという気持ちが湧く。
(ばかね。……零ちゃんも一緒の方がいいって決めたのは、私自身でしょ)
彼女は、そんな自分を心の中で軽くたしなめた。
そこへ、三月うさぎが姿を現した。
「さて。では、そろそろみなさんを、元の世界へお送りしましょうか。来た時と同じく、時空図書館経由で静流の部屋に戻ります。……もっとも、あなたたちには一瞬のことで、あちらに着いた時にはもう、私はいなくなっているとしか思えないでしょうけれどもね」
「じゃあ、三月うさぎさんとも、ここでお別れということね。……素敵なパーティーに誘ってくれて、ありがとう。今夜は楽しかったわ」
三月うさぎの言葉に、シュラインは言う。
「私もです。本当に、お誘いありがとうございました」
セレスティもうなずいて告げた。
「いえ。……では、私の後に真っ直ぐ続いて外に出て下さい。それでは、行きましょうか」
小さく微笑んで言う三月うさぎに続いて、シュラインとセレスティ、そして静流は扉をくぐる。その瞬間に、来た時と同じ軽いめまいが襲って来て、シュラインは小さく目を閉じた――。
━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【1883/セレスティ・カーニンガム/男性/725歳/財閥総帥・占い師・水霊占い】
【0086/シュライン・エマ/女性/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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●シュライン・エマ様
ライターの織人文です。
いつも参加いただき、ありがとうございます。
さて、今回はこんな感じにしてみましたが、いかがだったでしょうか。
少しでも楽しんでいただければ、幸いです。
それでは、またの機会がありましたら、よろしくお願いいたします。
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