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みんなで初詣
年越し蕎麦を食べて、長寿を願い。紅白を見ながら年を越す。
只流離って、人の流れを見るだけでも、年が過ぎるときには、胸にあるドキドキは止まらない。
楽しいこと、辛いこと、これからのことを色々込めて除夜の鐘が鳴る。
待ち遠しいかそのまま時が止まればいいと思う人は様々。
しかし、大きな事件はなく、年が明ける。
「明けましておめでとうございます!」
因幡恵美が、晴れ着姿であやかし荘の人々に挨拶した。
|Д゚) あけおめー
こいつも何故か袴姿である、升酒持って。
「おめでとう」
「おめでとうだよ!」
「おめでとうございます!」
「うむ、おめでとうぢゃ」
と、お騒がせ組も新年の挨拶をする。
|Д゚) かくして
「??」
恵美と三下、嬉璃が例の物体を見る。
|Д゚) たけぴー、SHIZUKU、碇あたりよんで初詣いかね?
「それは良いですね」
「でもどこに?」
|Д゚) 長谷神社は飽きたので
「飽きたの?!」
|Д゚) 鳳凰院神社
「それどこに?」
当然、聞くわけで
|Д゚)前に海水浴とか花火で一緒になってる。巫女さん拝める
「貴様は其れが目当てぢゃな!」
|Д゚) HAHAHA!
鳳凰院神社。
宮司姿にため息を吐く鳳凰院紀嗣に、元気に巫女として働いている鳳凰院美香がいた。
「正月寝正月が良い……」
「何を言ってるの。はいはい、人が並ぶから、整列の方お願い」
徹夜で疲れ切っているような、弟と、ナチュラルハイになっている姉。双子にしては正反対すぎる。
「やあ、元気にしているか? あけましたな」
「し、師匠!」
織田義明が見えたので、ハイテンションの美香は駆け寄って、お辞儀をする。
「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
「ああ、明けましておめでとう」
義明は微笑んだ。
「紀嗣君」
「……SHIZUKUか……」
「つれないなー」
SHIZUKUも来ている。
「これは、義明先輩の計画ですか?」
「いいや、かわうそ?だ」
「……」
突っ込める理由が無くなった。
草間さん達も来るそうだと義明は言う。
「今年は賑やかになりそうです。あ……」
美香は飾っている巨大絵馬の違和感に気付いた。固定している場所が少しゆるんでいる。落ちたら惨事になりそうだ。
「手伝おう」
今居る男衆で難なく修繕。
「ありがとう……」
色々あるような、初詣。あなたはどう過ごすかな?
〈鳥居の先に〉
振り袖姿の神城・柚月がゆっくりと歩いている。その後ろに大人しい正月用の着物の天薙撫子と織田義明だ。
「撫子さん、着付けおおきに!」
「いえいえ、こういう事ならお任せ下さい」
「似合っているな、柚月」
そういう、和やかな雰囲気で鳳凰院の神社にむかう3人。
少し離れた場所で、御柳・紅麗と御影・蓮也が居た。
「美香ちゃんの巫女服〜♪」
「だめだこいつ、何とかしないと」
「なにをいうか! 巫女は日本で最高の萌えだろ!」
「萌えとか大声で言うな。イタイ奴だな!」
「黒髪に巫女というのはいいだろ……。俺の世界ではそう言うのないからな」
ヲタク会話になっている。
「俗世にまみれた神って、なんかいやだな……」
片手で顔を覆う蓮也に、「馬鹿者、美しいというモノを愛でるのは悪ではない」と力説する紅麗であった。
もう少し離れたところでは、宮小路・皇騎と可愛い振り袖姿の長谷茜が歩いていた。
「茜さん、足もと気を付けてくださいね。朝方雨だったか濡れています」
「はい、皇騎さん」
しっかりエスコートをする皇騎は、茜の手を取って、歩いていた。
「良い風」
「ですね。皆さんが待っています。行きましょう」
「ここかぁ。結構立派やなぁ」
天王寺・綾が感心している。晴れ着ではなく、女性毛皮コートにハイヒールでブランドモノだ。
「わわ! 神々しい気がするよ」
化けタヌキの柚葉が、霊気を感じ取って、感心していた。
「ふむ、未だこのような場所があったとはのう」
嬉璃も大人の格好になって歩いている。
「大丈夫? イシュテナさんにアリスさん」
因幡・恵美が2人を心配する。
「はい、着付け……ありがとうございます」
真っ赤になりながら、イシュテナが歩く。
「あの、似合ってますか? 私、こう言うの初めてなので……」
「?」
恵美と石神アリスに訊ねると2人は微笑んで、
「似合ってるよ」
「似合っていますわ」
答えたのであった。
三下はというと、碇に「特ダネが出来たから取材に行ってこい」と言われ、泣く泣く走っていったのだ。勿論碇も仕事で行けないと言う。アトラスは年がら年中仕事のようである。
こうして、全員が揃う。
『明けましておめでとうございます!』とそれぞれのイントネーションで言うわけだが、1人余分なことを言うのが居た。
「あっけまっしておめでとーっ! 美香ちゃんかわいいぜ!」
紅麗である。
「紅麗、ナンパしに来たなら帰れ」
「ひど!」
美香に一蹴される紅麗に、
「色ボケ、ハイテンション過ぎ」
「色ボケいうなー!」
蓮也が突っ込む。新年早々弄られている。
「しかし、神社に神々、そして神が初詣……シュールだな」
うーんと唸る蓮也に、
「何を言うか、御影の末裔が初詣の由来を知らないのか? これは庶民向けの簡略化だ」
「そう言う意味じゃなくてだな……こう、神が居るなら、そいつから聞けばいいじゃないかと」
義明に突っ込まれる蓮也は「うっ」となる。
「まあ、私や撫子は神であって神にあらず。大体信者が少ない。静香みたいな崇高な存在でないとな……」
「うーん」
「それに、神が神を敬ってなにがわるいかと?」
「そうか、尊敬か」
一寸、真剣に考える蓮也であった。
「ただ、あそこの死神は、汚れきっているので、私は手の施し様はないな……」
「な、おれのことかー!」
美香の巫女姿に、鼻の下を伸ばしている紅麗に目をやる義明に、紅麗は叫んだ。
「煩いです……」
「神社は神聖な場所ですよ?」
「馬鹿ぢゃ」
「子供は元気があって良いわぇ。紅麗君よいこーやねー。お姉さんが飴チャンをあげよう♪」
イシュテナ、アリス、嬉璃に睨まれ、柚月に撫でられる。
「うわーん、みんな、俺を苛めるー!!」
明後日の方向に走り去る紅麗君であった。
〈歓談〉
手を洗い、参拝が終わると、どんな願いを言ったのと言う歓談がはじまる。双子の方も時間が出来たので、輪に入っていた。
「お雑煮美味しいです」
アリスがお餅と悪戦苦闘しながらお雑煮を食べていたり、紅麗が酒を飲もうとするところを、柚月に止められたり。SHIZUKUが歌おうとするのを全員で止めると、無礼講というのではなく、混沌となっていく。
「のませてー!」
「やけ酒するな、バーカ」
慣れている着物姿で撫子は、甲斐甲斐しく皆の世話をしている。
イシュテナが紀嗣に近づいて、ジュースでお酌をした。
「紀嗣さん元気がないです」
「……ああ、あまりこう言うの……すきじゃないからさ」
「そうなのですか?」
「うーん、俺色々迷惑かけているし、そのなんていうかさ」
と、ションボリしている。
「おいおい、紀嗣、神社の息子が元気出してなかったら、運が逃げるぞ!」
できあがっている蓮也が、紀嗣の背中を叩いた。
「今大事なお話中ですが……。はぁ、いいでしょう……行っていることは少なくとも……当たっているわけです」
イシュテナがため息を吐いた。しかし、何か言い始める。
「当たっている?」
「私が言うのも何ですが……、笑った方が良いと……おもいます」
と。
アリスは美香と義明(影斬として)、大事な話をしたいと言う。
「大事な話とは?」
「でも、その前にアリス」
「はい?」
「ほっぺに、お餅が付いてる」
「……っ!」
真っ赤になって沈黙してしまった。
ハンカチで綺麗に拭う前に、お餅なので手で取る。そして拭った。
「えっと、改めて……。業火の王についてですが……」
始めるまえに、影斬と美香が止める。
「今日はめでたい日です。その話は、無しにしましょうね」
「……はい」
美香が優しく話を止めるのであった。
「でも、心配してくれてありがとう。守ってくれると、信じているから」
「ありがとう」
柚月は、あやかし荘の面々と話をしていた。特に関西弁の綾とは漫才風味の会話になり、恵美や嬉璃を笑わせる。
「これがこういう風になったわけなんよ」
「そんわけあるかいな!」
「何々、新年から漫才?」
「ちゃうわー!」
「ほほう、即興漫才コンビですね」
「皇騎さんみよみよ」
「「あんたら、うちらは見せもんちゃうでー!」」
デフォルメにしてじたばたするなら可愛い、柚月と綾であった。
〈おみくじ〉
「なあ、蓮也」
紅麗が蓮也の背中を小突く。
「どんなおみくじがあるか見てくれ」
「はぁ?」
『かわうそ?』みたいな顔になる蓮也。
「馬鹿か、おまえ。籤で運命繰りなんか出来るか!」
「イジラレー返上したいんだよ!」
「ばかばかしい……。おみくじは神の言葉だぜ? 選んでどうするか」
「うう」
馬鹿丸出しの状態の傘色ボケコンビ。
|Д゚) アホだ
「「お前に言われたくない」」
義明と撫子、柚月に皇騎が引いてみた。
「……むう、私は末吉なのか……」
義明が微妙な顔になる。
「末吉です」
撫子。
「吉やね」
柚月はにっこり
「大凶……」
一番酷かったのは皇騎だったらしい。項垂れてしまった
「『仕事で暇が出来ず……』か。茜さんを大事にせなならんでー」
からから笑う柚月だった。
「……よし、同時だ」
「OK」
馬鹿二名、気合いを入れて引く。
「……大凶だと!!!」
紅麗が声を荒あげた!
「あ、俺は吉だ」
蓮也は安堵する。
「チートしようとするからだ」
「ですよね。下心で美香さんを見るからです」
「……最低」
「だめだねー。忠雄くん波にだめなんじゃない。運勢的な意味で」
「お前らよってたかって酷いこと言うなぁ!」
「見える、見えるぞ、お前の次の運勢が」
「そんなときだけ、運命繰りの力使うなー傘!」
|Д゚) いつものこと也
「御神籤?」
「うん、これはね、神様のお告げを簡単に聞けるモノなんだ。とはいっても、今年全体の運勢の指針、運試しだよ」
「なるほど……」
紀嗣に教わってからイシュテナはやってみますと、籤を引く。
「小吉ですか?」
「まあまあってところかな?」
「ふみゅ……」
御神籤の内容を見て、イシュテナは色々考えていた。
「待ち人とは?」
「確か恋人とか大事な人の事かと思うね」
雰囲気が良い2人であった。
〈たけなわ〉
初詣が終わり、各々が帰宅していく。
「大凶だったけど……美香ちゃんが可愛かったから、いいとする……のわっ!」
石段で躓く紅麗。
「恐るべし、大凶パワー」
「弄られの年最高峰だな」
蓮也と草間に言われる。
「俺は負けない……絶対に負けない」
ブツブツ言い出す紅麗である。
「イシュテナちゃんは?」
SHIZUKUがキョロキョロすると、イシュテナは、紀嗣と何かはしているらしいところを見つける。
「……そっとしておくか。織田せんぱーい、撫子ちゃんまってー」
彼女は、義明と撫子の方に向かった。
アリスは、美香の手伝いをしたいと言って巫女服になった。
「まだ、続くので、わたくしもお手伝いしたいです」
「つかれたら言って。休憩入れるから。ますはね……」
「はい」
美香が、巫女としての動きなどを教える。
「さて、同志」
紅麗が、義明と蓮也に言う。
「黒髪美人の巫女が2人。これはすんごい萌えではないかね?」
真剣な目で言うので、
「……あほだ」
「ああ、だめだな」
「ヲタクだねー。完璧に」
いつもの反応。SHIZUKUが割り込んだ。
「……お前らの血は何色だー!?」
「赤。緑のスライムじゃない」
「おまえら……」
先に帰っているのは茜の皇騎。皇騎は項垂れて、とぼとぼ歩いているのだが、茜が励ましていた。
「皇騎さん、大丈夫だって、指針を示しているだけと思えば」
「そ、そうですが。あの、茜さんと一緒にいる時間が無くなるのが……辛いです」
「……皇騎さんっ」
「いつも寂しい思いさせているから……」
目と目が合う。
そして、茜は背伸びして、軽く彼の唇と自分の唇を重ね合わせた。
「安心して、私は待ってるからね」
「はい」
もう一度キスをし、2人仲良く、手を繋いで長谷神社に帰っていった。
「あらためて、明けましておめでとうございます」
「はい、あけましておめでとう♪」
柚月は義明と撫子と帰るとか。
「着物着替えないとだめやん」
ごもっともな意見ですが……。
「おいおい、神城、神城」
「え? なんやの? 御影さん」
「ここは空気読もうぜ」
「……ああっ! ほな、お二人さんごゆっくりー!」
猛スピードで柚月と蓮也は去っていく。義明と撫子が何か言う前に、だ。
「あいつらー」
「やっと2人きりになれました」
「撫子?」
抱きついてくる、撫子に、ドキリとする義明。
「近頃、二人っきりの時間が無くて……寂しかったのですよ?」
「……それは、すまない」
義明は撫子の頭を撫でた。
「今日は2人きりで、お食事をしましょう」
「……ああ」
少し酔ってないか? と義明は思うのだが、事実撫子と二人っきりという時間がなかった気がする。
「手を繋ごうか」
「……はい」
微笑みあって、帰路につく2人であった。
「熱々だねぇ」
「くそう、俺も……」
「彼女ほったらかしだな、紅麗」
「えーそれはひどいー」
「SHIZUKUちゃんに蓮也うるせい」
「……でも、いいなぁ。うちもほしいわ彼氏。此処にいるのもういるしなぁ。タイプとちゃうけど」
「うわーひでぇいわれようだー」
「別の意味で馬鹿だから」
「だからばかばか言うな――!」
|Д゚) だめだ、こいつら
「おまえにいわれたくない!」
さて、今年はどうなる事やら……。
END
■登場人物紹介■
【0328 天薙・撫子 18 女 大学生・巫女・天位覚醒者】
【0461 宮小路・皇騎 20 男 大学生・財閥御曹司】
【1703 御柳・紅麗 16 男 死神】
【2276 御影・蓮也 18 男 大学生 概念操者「文字」】
【7253 イシュテナ・リュネイル 16 女 オートマタ・ウォーリア】
【7305 神城・柚月 18 時空管理維持局本局課長/超常物理魔導師】
【7348 石神・アリス 15 女 学生(裏社会の商人)】
■ライター通信
明けましておめでとうございます。実際は寒中見舞い申し上げます、な時期でありますが。
今回の『みんなで初詣』は如何でしたでしょうか?
今年こそは、いい年になって欲しいモノですね。
|Д゚) うははははは
かわうそ?は結構元気です。
ではまたまた別のお話で……。
20090125
滝照直樹
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