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<東京怪談・PCゲームノベル>


 進路指導

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 質問1 >>> キミの夢・目標は何?
 質問2 >>> 叶える為に努力はしてる? してるなら、どんなこと?
 質問3 >>> その道を志すことに決めたキッカケはあるのかな?

 事前に訊かれた質問を頭の中で思い返し、整理しながら待つ。
 ノーコメント返答も可能な、ちょっと変わった面談。
 今日は、進路指導の日。

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「え〜と。確か、オレンジペコだったな、お前は」
「よく覚えてますねぇ」
「先生ですから」
「……(そういうものです?)」
 和やかな雰囲気の中、応接室で実施される進路指導。
 振舞われた紅茶を口に運ぶ霊祠を見やりながら、藤二は尋ねた。
「じゃあ、順番に聞かせて貰おうかな」
「はい〜」

 えぇと。まず、夢・目標に関してですが。
 これといって、思い浮かぶことがないんですよねぇ……。
 興味がある事柄なら、数え切れないくらいあるんですけれども、
 そのどれかが夢や目標に繋がるかと言われると、首を縦には振れないんですよ。
 まぁ、強いて言うなれば……ひとつでも多くの呪術を魔術として扱えるようになることですかね。
 この学校で勉強してから、その辺りの考えが変わったといいますか。
 魔術や魔法は、いくらでも応用が利いて便利なんですよね。
 でも、呪術は、そうもいかないのですよ。
 応用しようにも、既に完成されてしまっているものですから。
 呪術の類は、すぐさま完全なカタチで発動出来てしまうのです。
 才能だとか、向いているからだとか、理由は色々考えられますけどね。
 好きなことだからこそ、応用できないのが、すごくもどかしいのですよ。
 でもですね、それを魔術として消化、転換できれば応用が可能になるのです。
 融合といいますか……。まぁ、異なるスキルを併せるわけですから、かなり難しいんですけどね。
 毎日、夜遅くまで研究したり実践してみたりしてるんですが、なかなかうまくいかないですね〜。
 いつか成功したら、それまでに纏めた理論なんかを本にしたいなぁと思ってるんです。
 あ、これって夢ですかね? そう言われてみれば、そうですね。気付きませんでした。
 う〜ん……。 夢って言葉で片付けたくないような気もします。
 なので、夢じゃなくて、目標ってことにしておいて下さい。
 えぇと。次に、夢や目標を叶える為に実行している努力についてですが。
 魔術やら呪術やら、専門知識だけでは、どうにも理論を証明できないこともあるのですよ。
 困ったことに、学べば学ぶほど、そういうのって増えていくんですよね。
 どうにも納得いかない、理解できない。そんな壁にブチ当たることも多いです。
 だから、最近は物理とか統計とか、他の学問にも手を付けているのですよ。
 まぁ、これも難しいですけどね。
 理解しようと手を付けてみれど、また理解できないことが出てきたりとかで。
 でも、一応、研究は順調ですよ。やることが尽きなくて退屈しませんし。
 底なし沼に、好き好んで足を突っ込んでるような感じですけれども。
 苦痛は一切ないですから。寧ろ、楽しくて仕方ない感じです。
 没頭しすぎて寝坊しないように気をつけてはいます。
 最近、授業中にうたたねしてしまうことが多くて、その辺りは、ちょっと問題ですかねぇ。
 えぇと。次に、その道を志すことに決めたキッカケに関してですが。
 これも、パッと思い浮かばないんですよね。
 僕の場合、生まれた時から呪術が傍にありましたから。
 物心ついた頃には、もう既に、この道を歩いていた感じですね。
 決断したという感覚はなくて、自然と歩いていたっていうか。
 楽しいものだから、夢中になってしまって。
 その結果、好奇心というものに火が点いてしまって。
 誰でも、そうだと思うんですよ。
 自分の好きな事柄には、詳しいものじゃないですか。
 好きだからこそ、あれこれ知ろうとするんですよね、きっと。
 自己満足で終わるか、もっと貪欲になるか、そこは違ってくると思いますけど。


「なるほどねぇ。何つうか、ほんと、しっかりしてるな。お前は」
「そうですか〜?」
「一回り以上年下だとは思えないわ。学者みたいだもん、雰囲気が」
「あはははっ。そう言われると、何だか嬉しいですねぇ」
 コクコクと紅茶を飲み干し、ぷはぁと息を吐いた霊祠。
 藤二は、書類に何かを書き留め、クルクルと手元でペンを回しながら言った。
「あぁ、そうだ。霊祠」
「あい?」
「お前、千華に何かした?」
「はい? 千華先生ですか? いえ、特に……」
「お前の話をすると、挙動不審になるんだよ。あいつ」
「ほぇ〜。何ででしょうね。心当たりはないですけど……。あっ」
「ん。何だ。やっぱり、何かしたのか?」
「いえ。ちょっと、お友達を紹介したんです」
「お友達?」
「ちょっと待って下さいね」
 パチンと指を鳴らした霊祠。
 もはや、隠す意味も理由もない。
 呼び出されて出現したワイトは、もそもそと霊祠の背後で動く。
「あぁ〜。なるほど。そういうことか」
「ふふ。千華先生、可愛いとこありますよねぇ」
「まぁなぁ。そういうとこだけは、ちゃんと女なんだよな」
「でも、怖がる理由が理解らないんですよね。こんなにキュートなのに」
「……。キュートねぇ。それは、どうだろうなぁ」
 紅茶を飲みながら目を伏せて苦笑した藤二。
 すると、ワイトは、ゆっくりと移動して、藤二の傍へ。
 目を開いた瞬間、至近距離にワイトさん。
 さすがに藤二も、ちょっと驚いたのか、紅茶を吹き出しそうになった。
 あぁ、なるほど。これは確かに。苦手な人にはキツい風貌だ。
 肩を揺らしてクスクス笑う藤二。
 そんな藤二へ、ワイトはヌッと手を差し出した。
 どうやら、握手を望んでいるようだ。
 霊祠が、お世話になっていることを知っているからこそ、その御礼も兼ねて。
 差し出された手を見やり、藤二は少々躊躇ったようだが、断る理由はない。
 こちらこそ、よろしく。そう言いながら握手に応じた。
「お。……へぇ。こういう感触なのか。ちょっと意外だ」
「ベチャッとするような感じだと思ってました〜?」
「そうだな。ネットリっつうか。良いイメージではなかったなぁ」
「ふふ。ひんやり冷たくて気持ち良くないです〜?」
「ん〜。夏場は良さげだな」
 途中から、ワイトも交えて三者面談のような形になってしまったけれど。
 霊祠に関しては、心配することはなさそうだ。
 彼は既に、進むべき道を自分で見つけて歩いている。
 才能と努力・追及の見事なコンビネーション。
 少々、熱中しすぎるところが不安なところではあるが、
 その辺りは、要所要所で声を掛けてあげれば良い。
 友達と遊ぶことで、思い詰めることもなくなるだろうし。
「よし。じゃあ、ここまで」
「ありがとうございました〜。では〜」
「こら、待て待て。それ、連れて校内歩くな。戻してから出なさい」
「あ、そうですね〜」
「それと、出版の件だけど」
「出版? あぁ、理論を纏めて〜って御話ですね」
「知り合いに話しておくよ。……ちょっと厄介な奴だけど」
「ほんとですか〜。ありがとうございます〜。頑張りますね〜」
「おぅ。頑張れ。頑張り過ぎない程度にな」
「は〜い。では、失礼しますです〜」
「お疲れさん」

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 ■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

 7086 / 千石・霊祠 /13歳 / 中学生
 NPC / 藤二 / 28歳 / HAL在籍:教員

 シナリオ参加、ありがとうございます。
 不束者ですが、是非また宜しくお願い致します。
 参加、ありがとうございました^^
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 櫻井かのと (Kanoto Sakurai)
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