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<東京怪談・PCゲームノベル>


恋愛相談

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 さて。今日は、どうしようか。
 深夜は、仕事しにまた登校するとして……。
 それまでの予定がない。まぁ、たまには家でノンビリするのも良いかな。
 最近、ハント活動に精を出しすぎて寝不足なのもあってか、眠いし。
 夜まで寝ておこうかな……軽く。
 でも、寝坊してしまいそうな予感。
 誰かにモーニングコール御願いしておこうか。
 って言っても、起こしてもらうのは夜なんだけど。
 フワァと欠伸しながら、廊下をダラダラと歩く。
 放課後の予定がない、珍しく退屈な日。
 どうしようかなと考えながら歩いていた、そんな自分に声が掛かる。
「あの、ごめん。ちょっと、良いかな」
「うん?」
 背後からの声に振り返って見れば、そこにはクラスメートの女の子。
 あまり目立つタイプではないけれど、そこそこ可愛い子だ。
 磨けば光るタイプなのではないか、と勝手に思っている。
「何?」
 声を掛けてくるなんて珍しいなぁなんて思いながら首を傾げると、
 クラスメートの女の子は、恥ずかしそうにモジモジ。
「えぇとね、あの……」
「…………」
 わかりやすい子だなぁ。
 何となく理解った。声を掛けてきた目的。
 まぁ、廊下じゃ何だし。移動しよっか。
 誰かに聞かれちゃマズイっていうか恥ずかしいだろうし、ね。

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 クラスメートの女の子、ユナ。
 ユナが雪穂に声を掛けた、その理由というか目的は、恋愛相談だった。
 雪穂に恋愛相談? うん、確かに少し妙だ。お察しのとおり。
 間違われたのだ。双子の姉と間違われた。
 恋愛相談ならば、姉のほうが向いているというか専門というか。
 今だに見間違えてしまう。ユナは、申し訳なさそうに何度も謝った。
「あの……雪穂ちゃん、ごめんね。私……」
「にゃっはは♪ そっくりだからね〜仕方ないよ〜。慣れっこだしね、気にしない!」
「う、うん……」
 ケラッと笑って言った雪穂に、少し遠慮がちではあるが微笑み返したユナ。
 人違いでしたスミマセンでした、で終わるのも何だ。というか、それこそ失礼だ。
 声を掛けて、相談を持ちかけたのだから、聞いてもらったほうが良い。
 恥ずかしそうに俯きながらも、ユナは口にした。
 想いを寄せている男の子が、同じクラスの浩太であることを。
 意識し始めたのは、一週間くらい前。
 先生に頼まれて運んでいた荷物を、ヒョイと持ってくれたのがキッカケ。
 ありがちだけれど、いつだってそんなものだ。恋なんて、いつも突然。
 とはいえ、どうすれば良いのか理解らない。
 どうやら、ユナにとって、この恋は初恋のようだ。
 好きだと気付いたところで、何をどうすれば良いのか理解らない。
 ただ、このまま、こっそりと好きでいるのは……何となく嫌。
 好きだという想いを伝えたいのは山々。
 でも、どうやって伝えれば良いのかわからない。
 伝えて嫌われたらどうしよう。なんてことも考えてしまう。
 気持ちは募るばかりで、とめどない。
 目で追ってしまう、そんな毎日。
 恥ずかしそうに頬を赤らめながら話すユナ。
 誰もいない屋上にて、ユナの話をウンウンと頷きながら雪穂は聞く。
 ん〜。何だろうな〜。こういうのってイイよね〜。
 心がほんわか、あったかくなるっていうか。
 恋する女の子ってイイよね。うんうん。
 まぁ、本人は必死なんだろうけどさ。
 そこがね〜またね〜可愛いんだよね〜。にゃっふふふ〜。
「ユナ姉、ちょっとゴメンね♪」
 クスクス笑いながら、ユナの眼鏡を外した雪穂。
 突然のことにユナは驚き、目を丸くしている。
 どこにでもいそうな、普通の……ちょっと真面目な優等生っぽい女の子。
 ユナは地味だ。本人も、それは自覚している。
 自覚しているからこそ、明るく元気な浩太に引け目を感じている。
 けれど、こうして見ると……素材は良いことが理解る。
 白い肌にしても、綺麗な黒髪にしても、大きな目にしても。
 雪穂は、にぱっと笑ってユナをギュッと抱きしめた。
「やっぱり、こっちのほうが可愛いよ〜! 思ったとおりだ♪」
「えっ……。な、何が……」
「ね、ね、髪もさ、弄ってい〜い?」
「い、いいけど……」

 双子の姉ほど的確なアドバイスは出来ないけれど、雪穂も一生懸命。
 相談されたからには、精一杯チカラになってあげようと頑張る。
 解いた髪を結いながら、雪穂はニコニコ笑ってアドバイス。
「ユナ姉はね、可愛いんだよ」
「か、可愛くないよ……」
「駄目〜。そういうの駄目だよ〜」
「う、う〜ん。そう言われても……」
「悪い方向に考えちゃ駄目なんだよ。良い方向に考えないと」
「うん、そうよね。うん……わかるんだけどね、それは……」
「ポジチブにいかないとね。幸せ、逃げちゃうんだから〜♪」
「雪穂ちゃん、ポジチブじゃなくて、ポジティブ……」
「はにゃ? あぁ、そっか。にゃっははは♪」
 自信がなくなってしまうのも、恋しているからこそなのかもしれない。
 そう考えてみれば、恋する女の子って、みんなどこか消極的。
 相談してきたりしない子は、自信いっぱいにアプローチをかけるけれど、
 そうじゃない子って、みんな消極的でビクビクしてる。
 好きな人に想われたいっていうのは、誰でも一緒。
 でも、振り向いてもらうには、それなりの努力をしなきゃならない。
 モジモジしてても始まらない。顔を上げて、見てもらわないことにはどうにもならない。
 小さな声で好きだと言っても、聞こえなかったら意味がない。
 え? 何て言ったの? って聞き返されたら、また振り出しに戻ってしまう。
 大切なのは、顔を上げること。俯いてちゃ、伝わらない。
 口にしないと伝わらない。こんな言い方はアレだけれど、結局、他人なんだから。
 自分のことですら全部なんて理解らないんだ。
 他人のことなんて、わかるはずがない。
 だから、口にする。喋って伝える。
 自分が、どういう人間なのか、どんな想いを抱いているのか伝える。
 その為にあるんだ。言葉は、声は、その為にあるんだから。
 優しく微笑みながらアドバイスを続けた雪穂。
 いつもは低い位置で謙虚に束ねている髪が、
 雪穂の手によって、高い位置で花のように鮮やかに変えられていく。
 前向きな雪穂の性格そのものが、ユナの背中を確実に押した。

 *
 *

 いつもと違うユナの姿に、クラスメート達もビックリ。
 ざわめく教室、背筋を正して、ユナは真っ直ぐに向かった。浩太の傍へ。
 漫画を読んでいた浩太は、顔を上げてキョトンとする。
「ん? どうしたの? あれ、何かいつもと雰囲気違うね?」
「……あ、あのね」
「うん?」
「一緒に、お昼……食べませんか?」
「…………」
 御話する機会は、自分で作る。待っていても出来ない。
 雪穂のアドバイスに、納得はした。納得できたからこそ口に出来た。
 でも、どんな顔をしていいか理解らない。返事が返ってこない、この沈黙。
 やたらと長く感じられる沈黙の中、俯いてしまいそうになるのを必死に堪えるユナ。
 耳が熱い。……今、自分はどんな顔をしているんだろう。恥ずかしい。
 全身から湯気が出そうなほどに高揚する気持ち。
 顔を真っ赤に染めるユナを見ながら、浩太は言った。
 読んでいた漫画を鞄の中にグッと押し込んで。
「いいよ。行こ」
 ニコリと笑って、お返事した浩太。
 いつも目で追っていた笑顔が、こんなにも近く。自分に向けられて。
 先を歩いて行く浩太の後を追いながら、ユナはチラリと雪穂を見やった。
 窓辺の雪穂は、満面の笑みを浮かべてヒラヒラと手を振った。
 いってらっしゃい♪ そう伝えるかのように。

 おとなしいユナの、積極的な行動。
 クラスメート達も驚きを隠せぬようで、
 二人が教室を出て行った後も、ざわめきは続いた。
 御話するキッカケは出来た。この先、どうなるかはユナ次第。
 大丈夫だよ。ユナ姉は可愛い。自信持ってゴーゴーだよ。
 浩太はね〜。確かに、攻略が難しいかもしんないけど。天然入ってるから。
 でも、二人とも動物好きだし、本も好きだし、御話は合うんじゃないかなぁ?
 あ、そうだ。二人とも成績良いし、一緒に勉強とかでも良いかも。
 いっぱいあるんだよね。チャンスっていうか、きっかけの要素になることって。
 でも、そういうのも見落としちゃうんだ。恋をしてると、見落としちゃう。
 好きだなぁ、好きだなぁって、それを繰り返しても意味ないんだよ。
 そんなの、もうわかりきってるんだから。次に進まなきゃ。
 どんどん話しかけて、相手に自分のことを知ってもらわなきゃね!
 もちろん、自分のことばっかり話すのは駄目だよ。
 相手の御話も、ちゃんと聞いてあげなきゃ。
 そうやって御話していけば、お互いのことがわかってくるよ。
 結果的にうまくいくかどうかは、誰にもわかんないけど。
 努力は無駄にならないんだから。どんどん頑張っていかないとね〜。
 窓の外、空を見やりながら一人で頷く雪穂。
 何やら満足気な表情を浮かべているけれど、
 実際のところ、雪穂も天然要素が入っている。
 人の恋愛感情には敏感なのに、自分の恋愛感情には鈍感。
 まぁ、大好きな人が出来れば、雪穂も変わるかも―
(あ、おなか鳴った。にゃっはは。僕も、お昼行こうっと♪)
 ……変わりそうにないかな。まだ、しばらくは。

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 ■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

 7192 / 白樺・雪穂 / 12歳 / 学生・専門魔術師
 NPC / ユナ / 15歳 / HAL:生徒
 NPC / 浩太 / 19歳 / HAL:生徒

 シナリオ参加、ありがとうございます。
 不束者ですが、是非また宜しくお願い致します。
 参加、ありがとうございました^^
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 櫻井かのと (Kanoto Sakurai)
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