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恋愛相談
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さて。今日は、どうしようか。
深夜は、仕事しにまた登校するとして……。
それまでの予定がない。まぁ、たまには家でノンビリするのも良いかな。
最近、ハント活動に精を出しすぎて寝不足なのもあってか、眠いし。
夜まで寝ておこうかな……軽く。
でも、寝坊してしまいそうな予感。
誰かにモーニングコール御願いしておこうか。
って言っても、起こしてもらうのは夜なんだけど。
フワァと欠伸しながら、廊下をダラダラと歩く。
放課後の予定がない、珍しく退屈な日。
どうしようかなと考えながら歩いていた、そんな自分に声が掛かる。
「あの、ごめん。ちょっと、良いかな」
「はい〜?」
背後からの声に振り返って見れば、そこにはクラスメートの女の子。
あまり目立つタイプではないけれど、そこそこ可愛い子だ。
磨けば光るタイプなのではないか、と勝手に思っている。
「何でしょう?」
声を掛けてくるなんて珍しいなぁなんて思いながら首を傾げると、
クラスメートの女の子は、恥ずかしそうにモジモジ。
「えぇとね、あの……」
「…………」
わかりやすい子だなぁ。
何となく理解った。声を掛けてきた目的。
まぁ、廊下じゃ何だし。移動しましょうか。
誰かに聞かれちゃマズイっていうか恥ずかしいでしょうし、ね。
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「しかしまぁ、何で僕なんでしょう」
放課後の図書室。ほとんど人がいない、その場所に移動して早々、霊祠は呟いた。
その言葉に、クラスメートのユナは、恥ずかしそうに俯く。
ユナが声を掛けた理由。それは、恋愛相談。
どうやら好きな男の子がいるようで。
同じクラスの霊祠に相談を持ちかけてきた、ということらしい。
窓辺、窓の外、中庭を見下ろしながらムムム……と考え込んでいる霊祠。
こう言っては何だが、霊祠は恋愛遍歴ゼロだ。
女の子を好きになったこともなければ、好かれたこともない。
そもそも、女の子を異性として意識するという概念が彼にはない。
純情だとかそういうレベルじゃなくて、完全に無頓着なのだ。
そんな自分に、どうして恋愛相談なんぞするのか。
霊祠が考え込んでいるのは、そこだ。
(う〜ん。ダンマリですか。何でなんでしょう……)
間違ってると思うのですよ。相談する相手を。
それこそ、梨乃さんとか適役だと思うのですよ。
女の子ですし、同じ目線で良いアドバイスをくれそうじゃないです?
そもそも、男の子に相談するって、おかしい気がするのですよ。
こんなんでも、いちおう男の子ですからね、僕も。
それに、相談されたところでアドバイスのしようがないのです。
わからないのです。そういう……誰かに恋をするという感覚というか気持ちが。
よく言いますけどね、ドキドキするだとか、キュンとするだとか。
まったくもってピンとこないのです。未知の領域なのです。
僕のそういうところは、クラスメートは勿論のこと先生たちも知ってます。
それなのに、どうして僕に? うーん……。さっぱり理解らな―
「……あっ」
ふと、とあることに気付いた霊祠。
気付いたといっても、それが正しいかは理解らない。
あくまでも推測だけれど。霊祠は、クルリと振り返ってユナに尋ねた。
「もしかして、恋呪を教えて欲しいとか、そういう系です?」
「……えと。……その、うん……。……」
俯き、耳まで真っ赤に染めて頷いたユナ。
推測は正解だった。相談というよりは、御願いというか何というか。
(ふむふむ。なるほど。そういうことでしたか)
多いですからねぇ、恋呪っていうのは。
自分を好きになってもらう術とか、素敵な恋が出来る術とか。
全部挙げればキリがない感じです。多種多様、よりどりみどりです。
一応、こういうのも立派な呪術の一種ですから、勉強はしてます。
でも、一度も試したことはないのです。試す機会もないですし。
それにしても、あれですね。女の子って占いとか好きですよねぃ……。
占いの中には黒魔術に該当するものもあるのですよ。
実際、そういうのって危ないのです。
知識がないのに実践してしまうと酷い目に合いますからね。
まぁ、大事になってしまうことは稀だと思いますけども。
えぇ〜と……。そうですねぇ。そういうことならば……。
「三十字の魔形とか、効果ありそうですね。やってみます?」
「……えと。それって、どういう……」
「秘密なのです。言ってしまうと効果ないです」
「そ、そうなの? うん。じゃあ……お、御願いします」
少々戸惑いながらも、御願いしますと頭を下げたユナ。
その健気で真剣な姿に、霊祠はクスクス笑った。
ユナの頭にポンと手を乗せ、目を伏せて詠唱する三十字のスペル。
ふんわりと、温かい光が頭の上に乗っているような感覚。
心地良いその感覚に、ユナも目を伏せた。
(ふふふ……)
実はですね。三十字の魔形は、恋呪でも何でもないのです。
ただ単に、強い心を持てるようになる術なのです。
怖がる必要なんてないと思うのですよ、僕は。
好きな人がいるっていう、その感覚は理解りませんけれども。
理解できないからこそ、凄いなぁと思うのですよ。
この人が好きなんだって、自分で理解して認めてるわけですから。
認めることが出来たのならば、迷う必要なんてないじゃないですか。
素直に、自分の気持ちに素直になって、伝えれば良いのです。
駄目だったときのことを考えてしまって不安になったりするんでしょうけども、
逆にこのまま言わずにいて、後悔するのはどうです? そのほうが嫌じゃないです?
気持ちを伝えることが出来ないまま、相手に恋人が出来ちゃったりしたら、
きっと、ものすごく後悔すると思うのですよ。
あの時、ちゃんと気持ちを伝えていれば良かった、って。
伝えたからといって成就するわけじゃないとは思いますけども。
何もせずに後悔するよりも、足掻いてスッキリしたほうが良いと思うのです。
大丈夫ですよ。きっと、良い方向に進みます。
あなたは、こんなにも素直で可愛らしい人なんですから。
*
*
翌日の朝。
授業が始まるまで自分の席でノンビリと魔術書を読んでいた霊祠。
昨晩も徹夜で術究していたが為、欠伸ばかりが出てしまう。
今日もまた授業中に居眠りして怒られてしまうのではないかと思いつつも欠伸は止まらない。
ゴシゴシと目を擦りながら、ふと教室の入り口を見やった霊祠。
瞬間、硬直してしまった。そして、もう一度、目をゴシゴシ。
二度目は眠くて目を擦ったわけではない。確認というか何というか。
霊祠の目に、いつもと違うユナの姿が映ったのだ。
普段は目立たない感じ、もっといえば冴えない感じなのに。
今日のユナは、やたらと華やかだ。服装にしても髪形にしても。
しかも、それが似合っているから余計にビックリ。
クラスメート達も驚きを隠せぬようで、どよめいている。
少々大袈裟ともいえる、その反応に恥ずかしそうにしつつも、
ユナは俯くことなく、前を向いた。視線は、意中の男の子へ。
フゥと息を吐き落とし、精神統一?
ユナは、ツカツカと歩み寄って声を掛けた。
「お、おはよう」
その言葉に反応したのは……海斗。
机の上に座って漫画を読んでいた海斗は、振り返って二度見した。
「おー。おはよー。……って、あれっ!?」
「…………」
「ビックリした! どした。いつもと違うなー」
「う、うん……」
「いいなー。そーいうのも似合うよ、お前」
「……あ、ありがとう」
嬉しそうに、顔を真っ赤に染めて微笑み返したユナ。
その反応を見れば、誰でも理解る。ユナが、海斗に想いを寄せているであろうことは。
だが、当人……海斗は気付いていないようだ。いつもどおり、ケラケラと笑っている。
気付いていないからこそ出来る、無神経な行為。
海斗は笑いながら、ユナの髪に触れたり、服の裾を引っ張ってみたり。
その度にユナは過剰反応し、みるみる顔が赤くなっていく。茹でダコ状態である。
誰の目から見ても明らかな理解りやすい反応なのに……と、
海斗の鈍感さに苦笑するクラスメート達。
ユナの恋が成就する日は……来るのか?
(ほむ。海斗くんだったのですか。ちょっとビックリです)
クスクス笑いながら、再び魔術書に視線を戻した霊祠。
前向きになれたみたいで何よりです。効果てきめんだったみたいですねぃ。
でもまぁ、ああいう呪術は、気休めでしかないですからね〜。
重要なのは気持ちなのですよ。僕がしたことといえば、背中を押したくらいで。
中には無理矢理、意中の人の心を奪ってしまう術とかもあるわけですが。
怖いですからね。そういう術になると、かなりの危険を伴ってしまいますからね。
まぁ、そういう呪術を考え出した人がいるってこと自体が怖いことなんですけども。
どんな手段を用いても手に入れたい! って思ったわけですから。要するに。
いや〜。奥が深いかもわかりませんねぇ、恋呪っていうのも。
そう考えると、面白いかもしれないって気になってきました。
僕が試すことはないと思いますけれども。あはははは。
それにしても……海斗くんですか〜。
どうでしょうねぇ。成就は〜……難しい気がしますですよ。
まぁ、良いです。学校に来る楽しみがひとつ増えた感じです。
どうなるんでしょうねぇ。他人事ですけども、ワクワクします。
ん? 他人事だからこそワクワクするんでしょうかね? ふふ……。
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7086 / 千石・霊祠 /13歳 / 中学生
NPC / 海斗 / 19歳 / HAL:生徒
NPC / ユナ / 15歳 / HAL:生徒
シナリオ参加、ありがとうございます。
不束者ですが、是非また宜しくお願い致します。
参加、ありがとうございました^^
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櫻井かのと (Kanoto Sakurai)
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