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<東京怪談・PCゲームノベル>


想いをカタチに -コーダ斉唱-

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 キミも、もう知ってると思うけれど。
 コーダという存在は、想いがカタチになったもの。
 その時、一番強く想っていることが核になって、コーダは生成される。
 本来はね、コーダ斉唱っていうのは禁忌なんだ。
 要は部外者を生んでしまうわけだから。
 でもね、俺達は……この世界に生きる限り、誘惑に勝てない。
 俺達にしか出来ないことだから、尚更ね。
 だから、黙認しているところもあるんだ。
 ただし、それには条件があって。
 何が起きても、生んだ本人が責任を持つこと。
 その条件を飲めるのならば、斉唱は黙認される。
 まぁ、だからといって、そう容易く斉唱は成功しない。
 だからこそ黙認されているっていうのもあると思う。
 それにね、こんな話もあるんだ。
 コーダ斉唱の成功は、成長の証ってね。
 深く考えなくて良いよ。チカラ試しの要領でさ。
 やってみて。ここで、見ていてあげるから。
 大丈夫だよ、怖くない。
 深呼吸して、やってごらん。
 大丈夫、キミになら出来るよ。
 だからこそ、こうして提案するんだ。

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 正直な気持ちを、言っても良い?
 あのね、僕、戸惑ってる。怖いっていう感覚とは少し違うかな……。
 だってね、考えたこともなかったから。
 僕がコーダを唱うだなんて、そんなこと、考えたこともなかったから。
 だって、僕がね……僕自身がコーダそのものだし。
 難しいことだっていうのも理解ってるから、余計に。
 僕の成長を喜んでくれることは嬉しいよ。
 キミになら出来るって、そう言われて嬉しくないはずがないよ。
 でもね、積極的にやってみようとは……思わないんだ。思えないんだ。
 だって、どうすれば良いか理解らないから。
 もしも成功して、生み出せたとして。
 その後は?
 それから、どうすればいいの?
 コーダって存在は、人間じゃないけれど、呼吸するし感情もある。
 意思を持って、その上で成長もする。僕だって、そうだ。
 この世界に生を受ける。確かな存在なんだよ。
 軽い気持ちでは出来ないよ。凄いことだと思うんだ。
 あなたに認められたいだとか、腕試しだとか。
 そういう気持ちでは、やりたくないし出来ない。
 存在を生むってことが、どんなに凄いことか。
 僕は知ってる。あなたが生んでくれたからこそ。
 とか……。そんな風に考えちゃうんだけど。
 難しく考えすぎなのかな、僕……。
 でも、責任っていうか……そういうのが必要になってくることだし。
 あなたが見守っていてくれるなら、挑戦はしてみるけれど……。
 そうだなぁ……。気持ち的に、落ち着かせる意味で……。
 あなたとの間に子供が出来た。
 そう考えてみるのは、どうだろう。
 まったく無縁の存在を生み出すわけじゃなく。
 あなたとも繋がるような。そんな存在を生み出すのは、どうだろう。
 チラリとJを見やりながら言ったクレタ。
 Jはクスクス笑いながら、クレタの頭を撫でた。
「欲しいの?」
「い、いや……。仮にだよ。そう想えば……良いような気がしたんだ……」
「うん。いいよ? キミが、良いと思えたなら。やってごらん」
 微笑みながら頷いたJ。
 何もかもを理解っているかのような、いつもの表情。
 結局、これも、あなたの掌の上で転がされているようなものなのだろうか。
 こんなにもあれこれ、難しく考えて……。あなたの思うがままなのだろうか。
 もしも、そうなら。逆に困らせてやれやしないかと……僕は思う。
 その余裕の表情を、その微笑みを、驚きに変えられやしないかと思う。
 思い通りになってしまうことに不満を抱いているわけじゃない。
 ただ、たまには……。あなたの、びっくりした顔が見てみたい。
 スッと目を伏せ、意識を集中させるクレタ。


 僕よりも……。そうだな、ちょっとだけ年下。
 女の子が良いな……。小柄で、守ってあげたくなるような女の子。
 そこにいるだけで光が満ちるような、太陽みたいな女の子。
 闇夜の世界を、この空間を灯す……光のように。
 生まれてくることの幸せを、生きることの喜びを。
 こんなにも満ち足りている。今の僕の気持ちを、そのまま伝えるよ。
 怖くないよ。怖くなんてないよ。
 生まれるって、素敵なことなんだ。
 教えてあげる。笑顔も、涙も。
 聞かせてあげる。何度も何度も、きみが理解できるまで。
 ずっと傍にいるよ。離れたりしない。ずっと一緒。
 だって、きみは僕の幸せな気持ちから生まれる。
 僕の幸せな気持ち、そのものなんだから。
 暖かい光、ずっと包まれていたいと思えるくらいの。
 その中に、腕を、手を伸ばすから。
 掴んでくれるかな。掴んで、顔を上げて。
 微笑んでくれるかな……?


 耳の奥、ざわめきが消えて頭の中が真っ白になる。
 クレタは、ゆっくりと目を開けた。
「…………」
 目の前には、お人形さんのように可愛らしい女の子の姿。
 クレタの手をキュッと握って、不安そうな面持ちで見上げている。
 その表情を捉えた瞬間、クレタは女の子を抱きしめた。
 いてもたってもいられなくなった、その感覚に近い。
 柔らかな髪の感触、甘いお菓子のような香り。
 女の子は、確かに存在している。ここにいる。
 自分の腕の中、世界に不安を抱きながら。
 女の子をギュッと抱きしめながら、クレタは思い出していた。
 自分もこうして、抱きしめられた。
 苦しいくらいに、強く強く。
 何が何なのか理解らなかった。
 この人は、どうして僕を抱きしめているんだろうって。
 でも……。今、はっきりと理解ったよ。
 Jも、こんな気持ちだったんだ。
 幸せだなんて、そんな言葉じゃ足りないくらい満ち足りる気持ち。
 ありがとうって言葉は、この時のために存在していたんじゃないだろうか。
 生まれてくれて、ありがとう。って……。
 声を震わせながら、女の子に何度も何度も告げるクレタ。
 クレタにそっくりな可愛い女の子。
 あどけない、その表情を目にして、Jは苦笑した。
 参った。降参だ。可愛いにも程がある。
 Jを驚かせ、降参までさせたわけだけれど、そんなことはどうでもいい。
 微笑むクレタの胸を占めるのは、何ともいえぬ幸福感だけ。
 幸せでありますように。この子も、僕と同じく幸せでありますように。
 いつまでも、いつまでも笑顔でいられますように。
 その為の努力は惜しまない。この手は、絶対に離さない。
 教えてあげなくちゃ。幸せって、どんな気持ちなのか。
 僕にしか出来ないことだから。僕の役目だから。

 あぁ、そうだ。名前をつけてあげなくちゃ。
 愛しいこの子に、名前をつけてあげなくちゃ。

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 ■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

 7707 / 宵待・クレタ / 16歳 / 無職
 NPC / J / ??歳 / 時狩

 シナリオ参加、ありがとうございます。
 不束者ですが、是非また宜しくお願い致します。
 参加、ありがとうございました^^
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 櫻井かのと (Kanoto Sakurai)
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