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<東京怪談・PCゲームノベル>


魔銃 JH-03

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 // 魔銃 JH-03(まじゅう)
 // 製作難易度:B(難 S・A・B・C・D 易)
 // 作り方と概要:
 // 特殊な接着剤を使ってパーツを組む。
 // 銃口から放たれるのは、着属で宿した魔素。
 // むやみやたらに発砲しないこと。

 何度か見せたことはあるけど。
 魔銃ってのは、これだな。
 中には、もう持ってる生徒もいるだろ。
 ただ、それは古いタイプだからな。作り直し。
 まぁ、作るのは簡単だ。すぐに出来ると思う。
 全員が完成したら中庭に移動して、試し撃ちするぞ〜。
 早く出来た生徒は、そのまま待機してること。
 間違っても、ここで引き金は引くなよ、頼むから。
 じゃ、開始。出来たら、俺のとこに持っておいで。
 ちゃんと出来てなければ、やり直しだぞ〜。

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(……ふぅん。これを使うのか)
 チューブを手に取り、マジマジと見やって頷いた慎。
 魔銃の組み立てには、特殊な接着剤を用いる。
 藤二先生のお手製……らしい。が、詳しいことは理解らない。
 見た感じは、透明なジェルだ。何の変哲もなく思えるけれど?
(…………)
 首を傾げながら、チューブを絞って接着剤をニュルッと出してみた慎。
 指先に乗せてみれば、ほんのりと温かい。どうして熱を持っているんだろう。
 不思議に思うことは、いくつもある。例えば、接着対象。
 接着剤を間に挟んで指を合わせてみても、何も起こらない。くっつかない。
 けれど、魔銃の組み立てに使うと、まるで磁石のようにピタッとくっつく。
 人体には作用しない接着剤……? う〜ん。不思議だなぁ。
 どうやって作ってるんだろ。誰にでも作れるってわけじゃなさそうだけど。
 色々と便利そうだよね、これ。やっぱり、凄いなぁ、先生って。
 感心しながら、ゆっくりとパーツを組み立てていく慎。
 スピードは遅いが、慎重に正確に組み立てている。
 不器用ってわけじゃないけれど、細かい作業は苦手。
 自宅(実家)の近所で、一時期プラモデルが流行ったけれど、
 その流行に乗り遅れた。というか、乗れなかった。
 慎が流行りに乗らないだなんて、かなり珍しいこと。
 皆と一緒に遊びたかった気持ちはあるけれど、
 どうにも……プラモデルを作るという行為に入れ込むことが出来なくて。
 元々、外で元気に遊ぶタイプだったがゆえに、インドアな作業が嫌だったというのもあるかも。
 慎の実家、自室のクローゼットには、
 今も、当時、周りに合わせて買ってはみたものの、
 組み立てず、しかも未開封の状態のプラモデルがたくさんある。
(まだあるのかなぁ、あれ)
 そんなに昔のことじゃないけれど、思い返して淡く微笑む慎。
 過去を思い返しながら、何だかホンワカした気持ちで組み立て続行。
 理解りやすい製作図のお陰で、順調に作業は進む。
 何事もそうだが、理解れば楽しいものだ。
 出来れば楽しい。出来るから楽しい。そういうものだ。
 いつしか慎は、組み立て作業に夢中になった。
 他のクラスメート達は、既に組み立てを終えて待機している。
 夢中になっているがゆえ、周りが見えていない。
 楽しそうに作業する慎の表情は、子供そのものだった。
 あまり拝むことのできない "素" の表情。
 見やりながら、藤二はクスクス笑う。

 *

 組み立てが完成したら、中庭で試し撃ち。
 出来立てほやほやの魔銃を手に、生徒達はそわそわと落ち着かない様子。
 新入生の慎は知らないけれど、魔銃は人気アイテムだ。授業も然り。
 組み立ては余興。本当に楽しいのは、組み立て後の試し撃ち。
 試し撃ちは、いつも試合形式で行われる。
 藤二が適当に二人ずつ組ませ、トーナメント形式で試合。
 勝ったからといって何か賞品がもらえるわけではないけれど、これがまた楽しいのだ。
 本来、魔銃は "ハント" の際にしか使えない。
 むやみやたらと使うことは、学校側が固く禁じている。
 真昼間に思う存分、魔銃を使うことが出来る。これが生徒をウキウキさせている理由だ。
 校内だからこそ、制御の必要もない。本当に、文字通り "思う存分" 遊べてしまう。
「よろしくね。慎くん」
「あ、うん。よろしくっ」
 慎がペアを組むことになったのは、麻深。
 ペアになった生徒達は、それぞれが作戦会議を始める。
 麻深はクスクスと微笑みながら、慎に告げた。
「楽しみましょうね」
「うん? あぁ、うん。どういう感じで動けばイイのかなぁ、俺」
「そっか。慎くんは、初めてだったわね」
「うん。これは〜……普通の銃と同じなんだよね? 使い方的には」
「そうね。でも、ちょっとコツがあって……」

 麻深から "コツ" を教えてもらい、いよいよ試合開始。
 授業の一環とはいえ、試合展開は、かなり白熱している。
 遠慮なしに発砲するがゆえ、怪我人も続出。
 でも、痛んでもみんなケラケラと楽しそうに笑っている。
 藤二が怒ったり抑制しようとしたりする様子もない。
 好き勝手に暴れてくれて構わない。
 そう告げるかのように、淡く微笑んでいるだけ。
 慎と麻深も、白熱展開の最中、ノリノリに。
 順調にトーナメントを勝ち進みながら、慎は真剣に観察を続けた。
 他の生徒、クラスメート達の動きをチェックし、
 どのように使うのが正しいのか、どんな応用が効果的なのか。
 初めて手にするアイテムだからこそ、観察が大事。
 魔銃製作授業の一環である、この試合形式の試し撃ちの本質は、
 慎のような新入生の "観察力" を養うことにある。
 皆がどう使っているか、それを把握した上で応用を利かせる。
 元々、慎は観察力が長けている。
 何気なく生活していても、周りの変化や状況は把握できている。
 だからこそ、彼はすぐさま慣れた。魔銃の扱いに。
(なるほど。確かに、麻深ちゃんが言ったとおりコツがいるね)
 でも、難しくはないかな。要するに、調整が大切ってことでしょ。
 込める魔力、その大きさや性質を上手く調整しながら、
 その時、一番効果的であろうものを放つ。と、そんな感じ?
 まぁ、そういうことなら……そうだなぁ、この状況なら……。
 淡く微笑み、木の陰に隠れた慎。
 麻深が全力で発砲を続ける最中、慎は魔銃に "とある存在" を宿してみた。
 宿したのは、契約した存在、月の子。
 眩く輝く銃口を見れば、成功したことは容易に理解る。
 慎は不敵な笑みを浮かべながら、スッと姿を見せて引き金を引いた。
 慎が、その身に宿している魔素は闇。
 逆に、月の子は光に属する精霊だ。
 異なる二つの属性は、銃口で混ざり合って放たれる。
 眩い光に目が眩み、咄嗟に目を閉じてしまえば、
 次の瞬間には、闇に飲み込まれて失神。
 パタリパタリと、倒れてしまった対戦相手2名。
 麻深は、刹那の出来事にキョトンとして目をパチクリさせている。
「わ〜い。やったぁ。優勝だっ」
 ピョンピョンと飛び跳ねながら喜ぶ慎。
 何ともあっけない決勝戦と結末。
 観戦していたクラスメート達は、ポカーンと呆けている。
 それまでの騒々しさはどこへやら。
 中庭は、シンと静まり返ってしまった。
 嬉しそうに飛び跳ねる慎を見やりながら、藤二は目を伏せて肩を竦める。
 そりゃあ、そうだ。無理もない。
 新入生が優勝をかっさらったから? そうじゃない。
 一人で、融合スキルを成功させたことが凄いのだ。
 融合スキルの発動、それがどんなに凄いことか、大層なことか。
 理解っていない様子の慎、その笑顔を目の当たりにしてしまっては、
 脱力してしまうのも無理なきこと。末恐ろしいとは、このことだ。

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 ■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

 6408 / 月代・慎 / 11歳 / 退魔師・タレント
 NPC / 木ノ下・麻深 / 16歳 / HAL:生徒
 NPC / 藤二 / 28歳 / HAL:教師

 シナリオ参加、ありがとうございます。
 アイテム 【魔銃 JH-03】が追加されています。
 不束者ですが、是非また宜しくお願い致します。
 参加、ありがとうございました^^
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 櫻井かのと (Kanoto Sakurai)
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