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<東京怪談ノベル(シングル)>


ユーナの小さな物語


 精霊たちが住まうとされる大地……そこにふたりの少女が降り立った。ひとりはつぶらな瞳のウンディーネ・ユーナ。もうひとりは元気いっぱいのシルフ・ミナ。あらゆる世界の構築を担う立派な精霊になるべく、ふたりはある難題に立ち向かうのであった。

 ふたりの住む村は老いたサラマンダーが長を務めている。若い頃は近くに寄るだけでやけどするくらいの性格と精霊力を誇っていたが、今ではすっかり衰えて好々爺になっていた。しかも若干ボケているらしく、やたらと食事をせがむらしい。そんな事情を知らない新入りのふたりは、村長から食事となる『烈火の草』を取りに行くよう依頼された。ミナはユーナの姿を見て、ある不安に駆られる。

 「ユーナって、その草を持っても大丈夫なのかなぁ……水の精霊さんでしょ?」
 「本当は熱くなくても、なんとなく熱く感じちゃうかもしれない……どうしよっか。」

 氷の精霊であるフラウではないからいいものの、それでも火と相反する存在として描かれることの多い水の精霊・ウンディーネ。このまま取りに行くのは難しいと判断し、村の中を探索することにした。村の中にはさまざまな精霊が住んでおり、みんなが不便に感じないようにちゃんとした生活用品があるらしい。その話の流れなら、間違いなくユーナの役に立つ道具もあるはず。さっそく村の道具屋を訪ね、目的のものがないか聞いてみる。
 店内は所狭しと商品が並べられている。土の精霊・ノームも絶賛の木造ハンマーや闇の精霊・シェード御用達の魔法のブラックランプなどなど。ふたりが目を皿にして探していると、やっぱりその中に『火鼠の手袋』と『石綿の大袋』があった。ところが、ユーナはあいにく持ち合わせがない。ミナはなんとか貸してもらえないかと交渉するが、店の親父は首を縦に振らない。ミナが「このわからず屋!」と諦めようとした時に、ユーナが村長からの依頼があったことを丁寧に説明した。すると親父も『烈火の草』をほしがっているらしく、多めに取って半分くれればアイテムはあげようと言ってくれる。それでもミナは「ケチだなぁ」と文句を言うが、背に腹は代えられない。予想外の展開にはなったが、無事にユーナがやけどしないグッズを手に入れたのだった。


 目的の草が生えているところはそう遠くなく、ふたりを阻む障害といえば大きめの川ぐらいだった。しかしウンディーネのユーナは自由自在に泳げるし、シルフのミナは飛べるし、まったく苦になることはない。あっけなく烈火の草の群生地までたどり着いた。この花はチューリップの花びらが開いたようなビジュアルで、常に赤と黄が揺らめいている珍しいもの。しばしふたりは物珍しそうに見ていたが、仕事を思い出すと手袋をつけて花を摘み、それを袋の中に入れていく。ユーナは『あんまり取りすぎると村長さんが過食になるといけない』と採集を遠慮するが、ミナは『多めに取っていけば、店主がもっといいものくれるかも!』と欲を出していいだけ袋に投げ込む。結果的に適量を採ることとなり、ふたりは意気揚々と帰ろうとした。

 すると、そこに小鬼の化け物・ゴブリンが現れた。ユーナと同じような手袋と大袋を担いでいるところを見ると、どうやら同じ目的でここまでやってきたようだ。しかし、そうは問屋が卸さない。相手はモンスターと呼ばれる存在。すぐに「ぎぎー、その袋はオレたちには手に入らないから置いていけー!」と威嚇すると、ぼろぼろの剣を持ってふたりに迫る!

 「ど、どうしよう……村長さんも店主さんも待ってるのに!」
 「ユーナ、大丈夫! 私たちには能力があるのよ! えいっ、問答無用のウインドクロー!」

 ミナが大きく腕を振りかぶると、疾風の爪が発生してゴブリンの持っていた袋を切り裂いてしまう! ユーナも緩やかな動作で両手を前に出すと、すさまじい勢いで水流がほとばしって、ゴブリンを太い木と水流でサンドイッチにした!

 『ごげーーー! 降参っ! 手袋やるから許してーーー! うえーーーーーん!』

 あっけなく敵を退けたふたりは、ありがたくそれを頂戴して村へと戻る。帰り道はずっとお互いの活躍を誉めあっていた。


 烈火の花を持ち帰ったはいいものの、やはり村長に数を渡すのはよくないとユーナが判断。先に村長が満足する分を渡し、次に余った分を店主に引き取ってもらうことにした。親父はたいそう喜び、出発前の約束を果たすとともに、ふたりに少しばかりのお駄賃をくれた。アイテムも手に入り、村での知り合いもでき、充実した冒険を楽しんだふたりであった。


 「美菜さん、この前のゲームは小説にすると、こんな風になるのね。」
 「リプレイっていうのになる時もあるんだけど、ゆ〜なが初めてだったから小説にしてくれたみたい。また冒険に行きたいね!」

 そう、これは『テーブルトークロールプレイングゲーム』を遊んだ時の記録なのだ。優名は美菜の言葉に頷き、嬉しそうにしていた。次の冒険はいつのことだろう。