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<東京怪談・PCゲームノベル>


 HAL

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 INFORMATION / 生徒募集中
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 HAL入学・在籍生徒を募集しています。
 年齢性別不問。大切なのは、向学心!
 不定期入学試験を、本日実施しております。
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 試験会場 / HAL本校1F会議室
 試験開始 / 15時30分
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 試験進行は、以下の通り実施致します。
 15時35分〜 / 学力審査
 16時15分〜 / 面接試験
 17時30分〜 / 合格発表
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 以下の受験資格を満たした状態で御来校下さい。
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 ・特技がある(面接試験にて拝見致します)
 ・深夜0時以降の活動が可能な人
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 HAL本校までの道程は地図を御参照下さい。
 お友達と御一緒の受験も歓迎致します。
 試験開始時刻までに、HAL本校へ。
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 秋樹が受験を決意した理由=特になし。
 何となく、というのが一番しっくりくるかもしれない。
 まぁ、キッカケということであれば少しは語れるか。
 この日、秋樹は、たまたま渋谷を歩いていた。
 アクセサリーショップに新作が入ったということで見に行った、その帰り。
 秋樹は道に迷う。何度も来ているところなのに、迷った。
 彼は驚異的な方向音痴だ。何度も来てるのに、なんて彼には通用しない。
 キョロキョロと辺りを見回しながら、秋樹は笑う。
「なはは〜……。うん、迷子になったかもしんない」
 かも、じゃない。迷っているのだ。とツッこみたくなる。
 バリバリの天然属性も付加されていると。そういうことですね、わかります。
 ウロウロとさまよう内、次第に不安になってくる。
 まぁ、相変わらず笑顔なのでそうは見えないのだけれど。
 困り果てた結果、秋樹は道行く人に尋ねた。
 ここはどこですか、僕はどこへ行けば良いんですか。
 まるで記憶喪失かのように尋ねた。
 そうして尋ねた人物の中に、いたのだ。
 HALの教師、藤二がいたのだ。
 彼は道を教えることはしなかった。
 その代わり、秋樹に珍妙なものを渡す。
 それが、秋樹がいま右手に持っているフライヤーだ。
 受験者を募っているということが記されたフライヤー。
 HALという学校については知っていた。
 双子の妹が、通っている学校がそれだ。
 楽しそうに話す妹たちのおかげ(?)で興味はあった。
 とまぁ、そんなキッカケを介して今に至る。
 受験会場であるHALへと向かう秋樹の足取りは軽い。
 他大勢の受験者に流されるようにして進んでいる為、迷う心配もない。
 キラキラと輝くフライヤー。
 秋樹は、その素材に興味津々のご様子。
(何だろうこれ。魔法かな〜。魔法で生成されてるっぽいな〜)
 迷子になっていたこと? 間違いなく忘れているだろう。


 *

 謎の学校『HAL』
 その1階にある会議室にて、第一の試験が執り行われた。
 筆記試験なのだが、まぁ……内容は、ごく普通の学力テスト。
 特に難しいわけでもなく、だからといって簡単すぎることもなく。
 飽きのこない、適度なレベルの問題ばかりが出題された。
 一番後ろの席に着席して解答用紙を埋めていく秋樹。
(懐かしいな〜。こういうの〜)
 特に躓くこともなく、スラスラと問題を解いていく。
 まぁ、中にはムムッ? とさせられる問題もあったのだけれど。
 そんなときは直感で。多分、こんな感じだと思う。
 直感に任せて解答欄を埋めていった。
 驚くべきことに、それらは全て正解である。
 ヤマをかけるだとか、そういうレベルじゃない。
 それだけ、色々な情報が記憶されているということ。
 記憶力とカンの良さ。秋樹のソレは、神がかり的なものだ。
 筆記試験の後は面接。
 会議室を出て、秋樹は案内に従い面接会場である2階の図書室へとやって来た。
 扉の前は、受験者でごった返している。秋樹は、少し離れた場所で壁に凭れて座る。
 妹達から、ある程度のことは聞いていたけれど、
 まさかこんなにたくさん受験者がいるとは思わなかった。
 あまりの数に、秋樹はポケーッと呆けている。
 生徒募集がある度に、大量の受験者が集まるHAL。
 合格するのは、とても困難かのように思える。
 倍率とやらを算出すれば、凄まじくシビアなものになるだろう。
 実は、筆記試験の点数よりも面接でのポイントのほうが高い。
 誰でも解ける問題ばかりだったのは、一応の体裁をとっているから。
 つまり、試験のメインは、この面接だということ。
 この面接で受験者の大半に不合格が確定する。
 まぁ、受験者たちは、そんなこと知る由もない。
 知っていれば、あれこれと作戦を立てられたかもしれないけれど。
 ……まぁ、秋樹の場合、知っていても何もしなさそうだが。
 そうこうするうち、秋樹の名前がコールされた。
 ゆっくりと立ち上がり、秋樹は笑みを浮かべて図書室へ入る。
 やたらと緊張した面持ちの他の受験者と、明らかに異なる点だ。
「こんにちは。じゃあ、そこに座って」
「はいはい〜」
 面接官は男だった。秋樹は指示通り着席。
 黒い帽子を頭に乗せ、小奇麗な顔をした面接官の男。
 面接官は、手元の書類を確認しながら言った。
「あれっ。もしかして、キミ……」
「うぃ?」
「あぁ、いや、何でもない。大したことじゃないね」
「ん〜。わかんないですけど、僕もそんな気がします」
「あはははっ。よし、じゃあ特技を見せてくれるかな」
「特技ですか。ふ〜む……」
「何でも良いよ」
 テーブルに頬杖をつき、ニコリと微笑んだ面接官。
 要するに、能力を知りたいのだ。学校側は。
 どうしてなのか。そこまでは理解らない。
 けれど、披露しろと言われたら応じるのがスジ。
 秋樹は、しばらく考えた後、持っていたスケッチブックを開く。
 そして、サラサラとリスを描いた。額に赤い宝石のある可愛いリスだ。
 特技は絵なのかと思いきや。そうではない。それじゃあ地味すぎる。
「じゃ、いきますね〜」
 秋樹は笑って、蝶の模様がある万年筆で、リスの隣に自分のサインを書いた。
 すると、あら不思議。描かれたリスが実体化したではないか。
「はい、できました。名前は〜……ルビィで」
 掌にリスを乗せてニコニコと笑いながら言った秋樹。
 面接官はパチパチと拍手を贈り、書類に何かを書き留めた。
「可愛いな〜。うちの子になるか〜?」
 実体化させたリスが気に入ったのか、元に戻さず話しかける秋樹。
 その和やかな姿に笑いながら、面接官は言った。
「うん。よし、じゃあ……希望クラスを聞いておこうかな」
「ん? クラス?」
「A〜C。三つのうち、どこかひとつ選んで」
「アタリハズレはあるんですか〜?」
「ふふ。ないよ」
「じゃあ〜……。うん、Bにします〜」
「了解。じゃあ、結果発表まで教室で待機してて。はい、これ地図ね」
「あ、わざわざどうもです〜」

 *

 無論、お約束な展開を経て物語は進行する。
 地図を貰ったのにも関わらず、迷子になった秋樹。
 学校特有の "どうにも似通った景色" の所為で余計に苦戦。
 目的地であるBクラスに到着した頃には、秋樹はすっかりヘトヘト。
 おなかが空いていることもあり、すぐさま座って机に突っ伏した。
 そんな秋樹を心配して声をかける生徒。
 中には、お菓子を分けてくれる生徒もいた。
 元々、誰とでもすぐに仲良くなれる性格の彼だ。
 すぐさまクラスに馴染み、他の生徒と笑顔で雑談を交わす。
 そうこうしていると、ガラッと扉が開いた。
 教室に入ってきたのは、筆記試験の時の試験官。綺麗な女性だ。
 女性は、ファイルを教卓に置き、微笑んで言った。
「はい、みんな席について」
 女性の言うとおり、自分の席へと着席していく生徒達。
 シンと静まり返る教室。女性は『千華』と名乗った。
 千華はニコリと微笑み、次いで、生徒達へ挨拶と諸事情を説明する。
 そうね。先ずは、新入生に、合格おめでとうと伝えておくわ。
 どういうことなのか理解らなくて戸惑ってる子もいるみたいだけど。
 面接試験の最中でね、既に合格者は決まっているの。
 希望クラスを聞かれたら、その時点で合格が確定しているのよ。
 そんなこと知るわけもないだろうから、驚くのも無理はないわね。
 まぁ、何というか。皆、よろしく。勉強は勿論のこと、ハントも頑張っていきましょうね。
 あ、そうだ。ハントについての説明がまだだったわね。
 えぇと、この学校『HAL』は、表向きは普通の学校。
 でもね、受ける授業は一般的なものじゃないの。
 数学だとか、物理だとか、古典だとか、英語だとか、そういう授業は一切ないのよ。
 あなたたちが学ぶのは、主に魔法に関与する事柄。
 精神学的なものとか、技術が問われるような授業も中にはあるわ。
 まぁ、面接の時に特技がどうこう言われた時点で、普通の学校じゃなんだろうなとは思ったでしょうけど。
 そんな感じでね、昼間は、魔法に関する お勉強に専念して貰うの。
 で、夜。こっちが重要というか、メインね。
 深夜0時を過ぎた瞬間、この学校の本質が変わるわ。
 あなたたちの肩書きも、学生からハンターというものに変わるの。
 0時を過ぎたら、あなたたちの仕事は勉強ではなくハントになるってことね。
 ハントについては……明日にしましょうか。
 いっぺんに言われてもわからなくなっちゃうだろうから。
 とにかく、重要なのは、昼と夜。その二面性。
 あなたたちは、一日に二度登校せねばならないってこと。
 強制ではないわ。特別な用事があれば、そっちを優先して大丈夫よ。
 そのあたりは、人によって色々あるでしょうから。
 ただ、先生としては、なるべく毎日来て欲しいかな? ふふ。
 うん。じゃあ、次。魔石で着属を済ませておきましょうか。
 新入学生は手を上げて。はい、はい、えーと。4人ね。
 じゃあ、新入生。今、手元にいった石をギュッと握って。
 余計なことを考えちゃ駄目よ。握った? 握ったら、そのまま目を閉じて。
 はい、そのまま。10秒待機。
 一体何なのか。自分達は何をやらされているのか。
 秋樹は目を閉じつつも首を傾げた。
 そして10秒後。
 パチンッ―
「!!」
 手の中で石が弾けた。微妙に痛い……。
 驚いている様子の新入生に笑いつつ、千華は言った。
 じゃあ、手を開いて。石を確認。どうなってるかな? じゃあ、キミ。答えて?
 指名された秋樹は手の中にある石を確認して、ありのままを伝えた。
「真っ黒になってます。ほらほら〜。 あっ、イカスミパスタが食べたい〜」
「うん。成功ね」
 イカスミパスタは、おうちに帰ってから思う存分食べてね。
 え〜と。今、あなたたちには魔法の力が備わったわ。
 どんな魔法が使えるようになったかは、明日以降に嫌でも理解るでしょう。
 ちなみに、今、宿った魔法の力には能力規制があるの。深夜0時から朝8時まで。
 この時間外は、能力は封印されてしまってね。どう足掻いても外には出せないのよ。
 ……中には、お構いなしに発動できる優等生も少なからずいるだろうけど、ね。
 うん、こんなところね。じゃ、お昼の部は、ここまで。
 また、深夜0時に会いましょう。以上。解散。
 ガタガタと席を立ち、教室を出て行く生徒達。
 秋樹は、真っ黒になった魔石というものをジッと見つめた。
 あれこれ考えることはない。秋樹は夢中なのだ。
 いったい、これは何なのか。どうして黒くなったのか。
 何が作用して黒くなったのか、黒以外に変色することはないのか。
 またもや手にした不思議なモノに興味津々な秋樹。
 特に返却する必要もないようだし、お持ち帰り。
 帰って、ゆっくりと調べてみよう。隅々まで。
 嬉しそうに微笑む秋樹の目は、キラキラと輝いていた。

 不機嫌な半月に喜びを。
 高慢な満月に粛清を。
 戸惑いの三日月に救いの手を。
 ようこそ、いらっしゃいませ。HALへ。
 全ては、クレセントの仰せのままに。
 全ては、クレセントの導きのままに。

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 ■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

 7365 / 白樺・秋樹 / 18歳 / マジックアクセサリーデザイナー・歌手
 NPC / 千華 / 27歳 / HAL:教師
 NPC / ヒヨリ / 26歳 / HAL:教師

 シナリオ『 HAL 』への御参加、ありがとうございます。
 アイテム:学生証を贈呈しました。アイテム欄を御確認下さい。
 不束者ですが、是非また宜しくお願い致します。
 参加、ありがとうございました^^
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 櫻井かのと (Kanoto Sakurai)
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