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<東京怪談ノベル(シングル)>


Red moon in the night.V

 地面で苦しげに息を吐き、痛みに悶える瑞穂に対して鬼鮫は執拗に攻撃を加えた。
 転がる瑞穂の腕を掴み引上げると、折れていると分かっているはずの腹部への攻撃を繰り返す。
「ひぎゃあぁあぁっ!」
 ドスン! ガスン! と重みのあるパンチを腹部に食らう度に、瑞穂の身体はまるで人形のように浮きくの字に折れ曲がる。だが、ただ攻撃を受け続けるだけの瑞穂ではない。何度目かのパンチを掴まれていない方の腕で防御すると、鬼鮫は面白くないと言った顔を浮かべ瑞穂を後方へ突き飛ばした。
 ザリザリッ! と地面を踏み締め体勢を立て直そうとするも、身体に思うように力が入らない。
 瑞穂は地面に膝を着き、疎ましそうに鬼鮫を睨み付ける。
 鬼鮫は口の端を引上げたまま、指を何度もポキポキと鳴らしながら瑞穂の方へ近づいてきた。いつの間にか、腹部の刺し傷は癒えている。
「なんだ、もう終わりなのか?」
「ふ、ふざけんじゃないわ…。誰が終わりって…言った…?」
 ギリッと歯を噛み鳴らし、瑞穂は鋭い剣幕で鬼鮫を睨み上げる。そんな瑞穂の表情を楽しむかのように、鬼鮫はニタリと笑った。
「なら、楽しませてくれよなっ!」
 膝を着いた状態の瑞穂の腹を目掛けて、ブンっ! と空を唸らせながら、鬼鮫の蹴りが瑞穂の腹に食い込んだ。
「があぁぁぁあぁぁッ!!!」
 ゴリゴリッと言う鈍い音が響く。一度折れた腹部の痛みに輪をかけて、他の骨も砕けたような音。
 瑞穂は腹部を押さえ、ヒクヒクと肩を震わせながら血反吐を幾度となく吐き出し、苦しそうにうごめいた。
「おらおら、どうしたどうした!」
 背後から右腕を引き上げ、瑞穂の背中に鬼鮫の足が掛けられる。そして力任せにその腕を引っ張り上げた。
「ぐ、が、あぁぁあぁあぁっ!!」
 腕がもぎれてしまうのではないかと言うほどに痛烈な痛みが肩に走る。本来とは違う方向へ捻り上げられれば、当然の痛みだった。肩の関節が外れ、脱臼を起こしそうになる。
 意識が朦朧としてしまうほどの痛み。腹部と肩、そして顔面にや頭部に喰らったダメージは相当にでかい。
(こ、このまま…こんなところでやられるなんて…!)
 瑞穂の表情は悲痛に歪んでいた。しかし瑞穂は何とか目を開け、自分の持つ能力で扱えそうな物を探す。
 ミシミシと音を立て始めた関節。早くしなくては、意識が落ちてしまいそうだ。
(…あった!)
 悟られないよう首を左右に振りながら必死に目線だけで探すと、瑞穂の左足下あたりに動かせそうな大きさの石が落ちているのが視界の端に見えた。
 石は、まるで命を吹き込まれたかのように小さくカタカタと揺れ始め、フワリと宙に舞い上がる。そして目にも留まらぬほどの速さで鬼鮫の背中に激突した。
「うぐっ!?」
 突然背後に当たる強い衝撃に、鬼鮫は瑞穂の腕を手放した。
 地面に叩きつけられるように倒れこむ瑞穂は、外れかけそうになり強烈に痛む肩を押さえ、全身を打ち震わせながら4つんばになりながら何とかその場を立ちあがる。
「は…はぁ…はぁ…」
 鬼鮫を見れば、鬼鮫は自分の背後に当たって来た物を見て驚いたような表情をしていた。
 視線の先には、先ほど瑞穂の超能力で動かした中くらいの大きさの石が転がり、強くぶつかった衝撃でついた血が付着しているのが見える。
 鬼鮫はその石を見ている視線を、ゆっくりと瑞穂に向けた。心底驚いたようなその奥には言いようのないドロドロとした怒りと殺意の炎が見える。
「お前…超能力を使えるのか…?」
「だから…どうしたと言うの?」
 鬼鮫は拳をきつく握り締めると、有無を言わさず瑞穂に殴りかかってくる。
 振り上げた拳は、庇いきれなかった瑞穂の頬にめり込みバキっと言う大きな音を辺りに響き渡らせた。そのパンチで、瑞穂の頬骨は完全に砕け尋常では考えられないような痛みが走り抜ける。
「ひ、ぎゃああぁぁあぁっ!!」
 とても女性から発せられたとは思えない、地から湧き出たかのようなえげつない悲鳴を上げる。鬼鮫はそれでも容赦なく攻撃を繰り出してきた。
 痛烈な痛みに耐えながらも、瑞穂も負けじと応戦をした。
 抉り込むようなパンチを、精細さは欠けるものの何とかかわす。そして瑞穂も足を振り上げ鬼鮫の顔面目掛けて蹴りを繰り出し、まるでバネのようにしなる細い足は鬼鮫の顔面にミシリ…と食い込んだが、すぐさま鬼鮫は腕を振り上げ、瑞穂の大きな胸目掛けて拳を振り下ろした。
 大きな胸の谷間の中央目掛けて振り下ろされドドンッ! と脳が揺れるほどの衝撃が胸元から頭にかけて走り抜ける。強い衝撃に瑞穂の胸も大きく揺れ動いた。
 瑞穂は一瞬意識が遠のきそうになった。正常に動く心臓の真上辺りを攻撃をされ、瞬間的に心肺が停止したのだ。しかし意識が遠のく事も許されず、鬼鮫は瑞穂の顎に攻撃を浴びせてきた。
 ガツンッと言う音が響き渡る。
「あ、あががぁぁあぁっ!!」
 ギリギリ顎が外れるまではいかなかったものの、ヒビが入ったような痛みと感覚がある。
 鬼鮫はよろめく瑞穂の首を掴み目線の高さまで持ち上げる。瑞穂の身体は容易に持ち上がり地面に足が付かず、虚しく宙をかいた。
 鬼鮫の腹を殴る手に力が入り幾度となく瑞穂の腹を打ち付ける。その度に身体が何度も揺れ動いた。
「俺はお前のような超能力者が大嫌いなんだよ! のうのうと俺の前にのさばってんじゃねぇっ!!」
 ドフッ! と強烈な一撃を食らわせると、瑞穂の身体は後方に吹っ飛び、派手な音を立て瓦礫の山に掻き分けるようにめり込んでいく。
「ゴホッ!」
「どうしたよ? あぁ?」
 瑞穂の乱れた髪を掴み、持ち上げるときつく目を閉じていた瑞穂の瞳がカッと見開いた。そして勢い良く足を振り上げると鬼鮫の腹部に膝蹴りをお見舞いする。顔を歪め瞬間よろめくが、すぐに体勢を立て直した鬼鮫は唸りを上げて瑞穂の顔面に拳をめり込ませた。
「ぶぐっ!」
 鈍く、ゴリュッっと言う何かが潰れたような音が瑞穂の耳の奥にこだまする。
「…なめたマネしてくれんじゃねぇか」
 ズルリ…とその場に崩れ落ちるように瑞穂は膝を着き、ひしゃげた鼻を晒してその場に倒れこむ。うつ伏せに倒れこんだ瑞穂に腹部を蹴り上げると、大きく身体が跳ね上がりその反動で修道服の裾がめくれ上がった。
 仄白く形の良い尻があられもない姿で晒され、その尻を高く突き上げられた無様な姿を曝け出す事になった。
「ぐ…うぅぅぅ…」
 もはやその姿勢を気にする余裕もないほど、瑞穂は痛みに言葉を失いただ悶絶するしかなかった。
「はっはっはっは! 無様だなぁおい」
 鬼鮫はニヤニヤと笑いながら、瑞穂を蔑むような言葉を投げかけるとギロリと睨みを利かせ、突き上げられた瑞穂の臀部に渾身の力を込めて蹴り上げた。
「うがぁぅっ!!」
 獣のように呻き、瑞穂の身体は大きな砂袋のようなドズンッと言う低い音を鳴らして大きく跳ね上がった。打たれた臀部は赤黒く染まる。
 瑞穂は地面にそのまま崩れ落ち、身体をピクピクと震わせ、声を出す事もままならない痛みに何度も身を捩る。
 そんな瑞穂の上に跨った鬼鮫は、瑞穂の胸倉を掴み上げると執拗なまでに両頬を叩き上げた。殴られる度に首が左右に振られ、頬に掛かる重圧なビンタで泣きたくもないのに自然と涙が流れ出てくる。
 攻撃の手が治まると瑞穂は顔に手を当て、低く唸りながら激しく地を転がり悶絶を繰り返した。