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<東京怪談ノベル(シングル)>


嬲られ人形


それで、面白い話はどこからかって?
いや、ここからだ。ここからだったはずなんだけどよ。
……何か、忘れちまったなぁ。手ごたえは、全然無かったっていうか。
戦闘自体は、くそつまんなかったから覚えてねぇわ。
悪かったよ。思い出す、思い出すから……。



顔をあげた鬼鮫が、目をぎょろりと見開き、笑った。
それが合図だった。
床を蹴り、瑞穂が飛びあがる。
すばしっこく動きながら、瑞穂は鬼鮫に向かって銃を乱射する。
弾が切れると、またガーターベルトから銃を引き抜いて、撃つ。
先ほど、急所を狙ったそれとは違い、今度は一見闇雲に撃っているかのように見えた。
が、すぐに鬼鮫は気付く。下手に狙われるから、銃弾を避けようとする。
しかし、速さで勝る瑞穂の銃弾は、鬼鮫の皮膚を的確に削っていった。
思わず、鬼鮫の口から舌打ちが飛ぶ。
「あら、さっきの大見栄は何だったのかしら?」
瑞穂はにやにやと笑いながら、銃を撃つ。
そして鬼鮫の体の皮膚が剥け、血で全身がドロドロに濡れたころ、瑞穂は最後の銃を捨てた。
「降参する気になったかしら」
腕を組み、わざと甘い口調で鬼鮫に問いかける。
瑞穂が腕を組むと、胸が両腕に乗っかり、こちらに差し出しているかのように見えると、鬼鮫は笑った。
その笑いに侮辱を感じたのが、瑞穂の顔が笑顔からみるみる怒りへと変わる。
「何、馬鹿にしてるわけ」
「いいや。どっちかっつーと、お前のその格好のほうが俺を馬鹿にしてんだろうよ」
「こんなメイド服を使っている、お前の屋敷に問題があるわよ」
「ま、そいつは俺の趣味じゃあねぇんだが」
掌を重ねて、指を鳴らす。
更に手首をぶんと振ると、鬼鮫の手首はぽきっと軽快な音を鳴らした。
「そんなにその服が嫌なら、リメイクしてやるよ」
「……つまらない冗談だわ」
銃を使いきった瑞穂は、肉弾戦に入るべく腰を落とした。
臀部のラインが弓なりに強調され、スカートはもはや尻にかぶさっている布きれに過ぎない。
と、地面を強く蹴って、瑞穂が飛んだ。
ひらりとスカートが舞い上がり、黒いショーツとガーターベルトが露わになる。
「はぁぁ!」
細くしなやかな足が空を切り、鬼鮫の顔面に叩き込まれた。
「ぐっ」と鬼鮫が呻くと、既に床に着いた瑞穂がもう一度、今度は槍で突き刺すような蹴りを鬼鮫の腹部に飛ばした。
重みのある鬼鮫の体は後ろに飛ぶことなく、その場で瑞穂の蹴りを受け止めた。
ぐり、と瑞穂の足が鬼鮫の体に捩じり込む。
鬼鮫から血生臭い息が漏れた瞬間、瑞穂は後ろへ飛び退った。
鬼鮫はよろめき、右へ左へ足がふらついている。鬼鮫の動きは鈍かった。
対して、瑞穂の俊敏な動きは、まだ体勢を立て直せていない鬼鮫の動きを捕らえる。
さっと飛び上ると、爪先で鬼鮫の頭部を強く蹴りあげた。
さすがに、致命傷だったか。鬼鮫は声を上げることもなくその場に崩れ落ちた。
「呆気なかったわね。死んだのかしら」
瑞穂が鬼鮫を覗き込む。が、うつ伏せになった鬼鮫の様子は窺いしれない。
「一応、捕縛ってことになってるんだから、死んでもらっちゃ困るのよねぇ」
組織が言うほど、大した相手ではなかったな。瑞穂はひとり笑って、鬼鮫の体を軽く蹴る。
「ま、虫の息でもあれば十分よね」
そして、とどめとばかりに大きく足を振り上げた、その時、
鬼鮫の長い手が、下から瑞穂の軸足を掴んだ。
「あっ!」
急激にバランスを崩した瑞穂は、慌てて振り上げた足を戻そうとする。
が、それより速く、鬼鮫が瑞穂の足を引きずり投げる。
勢いよく床に投げ出され、瑞穂の体が床を擦った。
「ん、うぅ」
起き上がろうとする瑞穂の上に、黒い影が乗る。
はっと瑞穂が顔を上げた瞬間、鬼鮫の太い足が瑞穂の腹を踏みつけた。
「うぐぇっ!」
瑞穂の口から、声ですらない生理的な嗚咽が漏れる。
強烈なその一撃は、瑞穂の身体から自由を縛りあげる。
ぴくぴくと震え、何とか呼吸をしようとする瑞穂の口からは、喘ぎにも似た艶めかしい音が零れている。
「おいおい、お前がやったのと同じことをしたまでだぜぇ?」
そう言うと、鬼鮫は足の爪先で瑞穂のぐりぐりと胸部を弄ぶ。
恥辱に瑞穂の顔が歪む。しかし、未だ腹に受けた衝撃は、正常な呼吸を奪っていた。
「は、ぁ、あっ、あっ」
「おらよっ!」
「あうっ」
ようやく、呼吸が落ち着いてきたというころを見計らい、鬼鮫は上から脇からと執拗に腹部を蹴りあげた。
ぼす、ぼす、と嬲られる度に、瑞穂の体はびくん、と跳ね上がる。
「うぅっ、うぐ、ぐう」
やがて、悲鳴がくぐもりだした頃合い、鬼鮫はじっと瑞穂の顔を見た。
「……んだよ、まだそんな顔すんのかよ。とっとと諦めやがれ!」
何が気に障ったのか、鬼鮫はいきなり瑞穂の顔面を激しく蹴りあげた。
声を上げることもできず、ただ痛みに瑞穂はのた打ち回る。
比較的、ダメージの少ない両腕で顔をつつみこむと、中でもわっと血の匂いが広がった。すると、瑞穂の腹にまた衝撃が走った。
鬼鮫がまた蹴ったのだ。反射的にえびのように丸まった瑞穂の身体、太腿を鬼鮫は軽々と抱えあげた。
「あ、や、やぁ」
天地無用の状況に戸惑い、情けない悲鳴を瑞穂が零した瞬間。
恐怖に歪んだ瑞穂の顔を、サッカーボールを蹴るかの如く、強く蹴りあげた。
それと同時に鬼鮫が手を離すと、瑞穂の体は重力に無抵抗なまま、後頭部から床に叩きつけられた。
「あがぁ……っ!」
もはや、大声で叫ぶことすらできない。虫の息なのは瑞穂の方だった。
それでも、生きようとする体は、うつ伏せの状態でびくびくと痙攣を繰り返す。
「退屈だ」
鬼鮫は、ようやく呟いた。
「もっと楽しませてくれるんだと思ったぜぇ、血沸き肉踊る戦闘がしたかったのによぉ、とんだ期待外れだぜ」
なぁ、と笑いながら、鬼鮫は瑞穂の背中を踏みつける。
豊かな胸は瑞穂の上体に潰されながらも、弾力でもってその存在感を保っていた。
鬼鮫が背中をぐりぐりと弄ぶと、瑞穂の両乳房はぐりぐりと地面にこすられた。
「んうう、うぅ、んむぅ」
大きく口をあけることもできなくなった瑞穂から漏れるのは、悩ましげな吐息に似た鳴き声だった。
もはや、瑞穂にはじめの威勢はなかった。屈辱的な扱いもはねつけることができない。
「ま、お前の顔を見た時から、予想のついたことだけどな。お前みたいな奴は嬲られてるのがお似合いなんだよ。嬲られて、ヒィヒィ泣いてればいいんだよ」
鬼鮫はにやりと笑うと、うつ伏せの瑞穂の背中に乗った。
その重さに、「ぐぇ」と瑞穂がまた鳴く。鬼鮫は、足の爪先の方を向いて座った。
目の前には、擦れ過ぎて生地が破け、半ば剥き出し状態の瑞穂の尻があった。
それを叩くと、瑞穂が又呻く。
何度も尻を叩くと、やがて瑞穂から声が出るようになった。呼吸が落ち着いた、ということだろうか。
しかし、鬼鮫が上にいる限り、瑞穂は動くことができない。
「あぐ、ひ、ひぃぃ」
鬼鮫が、瑞穂の両太腿の付け根に手をかけた。
動物的勘で危険を察知したのか、瑞穂がいやいやと子供のように泣いている。
「傑作だな、お前のリアクションはよ!!!」
そう笑うと、鬼鮫は瑞穂の両太腿を掴み上げ、無理矢理に持ち上げて反らせた。
「うぐあああっ、あぁああっ、あぎああああああっ!!」
身体の限界を、遥かに超えた角度まで折ったとき、鬼鮫は高らかに笑った。