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<東京怪談ノベル(シングル)>


Monastery of the blood.X

 鬼鮫は地面で悶絶を繰り返す瑞穂をじっと見下ろした。
 その時ふと、思い出す事があった。それは、目の前で頻繁に身体をくねらせて身悶える瑞穂の正体を、鬼鮫は知らない。
 イキナリ目の前に現れ捕まえるなどと騒ぎたて、挑発するように攻撃を仕掛けて来た瑞穂。怒りに任せてここまで来たがどうにも気になる。
 そう言えばこいつは何者なんだ? こっちの素性を知っていたと言う事は素人の遊び半分で仕掛けて来た訳じゃあなさそうだ。
 鬼鮫は瑞穂の前にしゃがみこむとぶっきらぼうに声をかけた。
「おい」
「…ふ…っく…」
「お前が完全に落ちる前に聞いておきたいんだが…」
 鬼鮫の話かけに、瑞穂は視線を投げかけるだけで返事を返そうとしない。いや、できない、と言った方が正しいだろう。
 答えが返らない事に、鬼鮫は気を悪くし腕を引っ掴んで上体だけを起こさせると瑞穂の鳩尾にパンチを加える。
 身体を突き抜けるほどの衝撃に、瑞穂の身体は地面に転がっていても身体がくの字に曲がるほどだった。
 ボグッ! と低い打撃音と同時に瑞穂は血反吐を吐き出し、悲鳴を上げた。
「ひぃやああぁあぁっ!」
「女。お前はどこのどいつで、なぜ俺を狙ってやがる」
「う、うぐ…」
「答えろ」
 しかし瑞穂は口を割らない。鬼鮫は更に赤青く膨れ上がった瑞穂の顔面に何度目かのビンタを喰らわせる。
 バシン! バシン! と2度、3度攻撃を浴びせられ瑞穂の首はまるで人形のように左右に激しく振られた。
「ひぃぃいいぃいぃッ!」
「答えろ、女!」
 攻撃の手を休め、言葉尻を強めながらそう問いかける鬼鮫。
 瑞穂は痛みに震え、荒く息を吐きながらも俯いていた頭をゆっくりと持ち上げ鬼鮫を睨み付ける。
 焦点の合っていないような朦朧としているように見える瞳だったが、こんなところでくたばって堪るものかと訴えかける、ギラギラとした光を瞳の奥にちらつかせていた。
 鬼鮫はピクリと疼くこめかみに顔を歪め、瑞穂のその光を目の当たりにする。
 まだその瞳にかろうじて闘志が残っているところをみれば、そう簡単に口を割らないだろう。と、言う事はどこかの軍人か? 
 そもそもこの目を見る限り、教えるつもりもなさそうだ。
 鬼鮫は掴んでいた瑞穂の腕に力を込める。ギリギリ…と食い込む鬼鮫の太い指。更に力を入れられれば容易に折れることがあるかもしれない。
 瑞穂は痛む腕に顔をしかめる。次第に捕まれている場所から手のひらにかけて青く変色し始めた。
「い…い、いひゃいぃ!」
「答えろと言ってるんだ! 聞こえないのか?!」
 鬼鮫は腕を掴んでいた手を離した瞬間、間髪をいれず瑞穂の腹部に攻撃を喰らわせた。
 ズドン! と砂袋を力の限り叩いたかのような音が響き、瑞穂の身体は大きく跳ねくの字に折れ曲がって宙に浮いた。
「ぎゃあぁあぁぁぁぁあぁぁーッ!!」
 瞬間宙に舞い上がった瑞穂の背中を目掛け鬼鮫は手を組むと勢い良く振り落した。
 瑞穂はガガン! と鈍い音を立て顔面から叩き落され、瑞穂は額と鼻を強打して鼻血を垂れ流した。
「うぶっ!」
 鬼鮫はうつ伏せに倒れこんだ瑞穂の臀部を続け様に踏みつける。
 そして脇腹にズドンッ! と音を立て瑞穂の身体が飛び跳ね身体が天を向いてひっくり返る。
 続けて鬼鮫は足を振りもう一度瑞穂の脇腹に蹴りを入れようとした瞬間、瑞穂は重い口を開く。
「ま、まっ…れ…。い、いひゃ…ぁ…」
 呂律が回らない瑞穂が、口を割り始めた。
 これ以上攻撃をされ続ければ、命が危ない。ここで口を割れば助かるかもしれない…。そう考えたのだろう。
 涙にまみれ殆ど開かない瞼を懸命に持ち上げて鬼鮫を見上げる。
 涙に揺れる瞳を見る限り、先ほどまであった闘志は見て取れない。とうとう観念したか。
 鬼鮫はその場にしゃがみこみ、瑞穂の頭を掴み上げた。
「言え。お前は何者だ」
「わ、わひゃぃ…ろ、ろくへ、つ…」
 全く何を言っているのか理解が出来ない。鬼鮫は眉間に深く皺を寄せ苛立った口調で問いかけ直す。
「…何言ってんだ?」
 肌が泡立つほどに苛立った。これまでこんなに苛立った事は数えられるほどしかない。
 掴んでいた手を乱暴に離し、鬼鮫は立ち上がる。
 突然手を離され、瑞穂の後頭部はガン! と音を立て強打した。じっとりとした感覚があることから、後頭部が少々切れたらしい。
「なめてんじゃねぇぞ!」
 鬼鮫は瑞穂の脇腹を目掛けズドン! と重い攻撃を受け体が浮き上がりゴロンと転がると地面にうつ伏せになって倒れ、更に腹部に蹴りを食らわされる。
 腹を蹴られるたびに、瑞穂は血反吐を吐き涙を流した。
 続けて鬼鮫は瑞穂の臀部を蹴り上げた。バチン! と大きな音を立て瑞穂の尻が大きく跳ね上がり、まるで猫が伸びをするかのような体勢に自然となった。
 大きく突き上げられた瑞穂の尻は小刻みに震え、瑞穂は自分の腹部を覆うように腕を回し苦痛に顔を歪ませた。臀部に感じる痛みに、瑞穂の尻は時折無造作に揺れる。
「ふ…うぅ…」
 更に攻撃を加えようと瑞穂の頭を掴み上げ、大きく身体を仰け反らせた。
 胸元にある洋服の裂け目は、仰け反らされ揺れ動きながら突き出された胸の大きさに、幅が広がっている。その胸にはチャラチャラと音を立ててぶら下がるレプリカの十字架が光っていた。
「こんなもんつけて、神頼みでもするつもりなのか?」
 くっくっと笑いながら、その十字架に手をかける。しばらく弄ぶかのように手の中でチャラチャラと音を鳴らしていたが、グッと掴むと勢い良く引きちぎった。
 瑞穂の首が引き千切られた衝撃でガクン、と揺れた。
 十字架を繋いでいたチェーンがパラパラと音を立てて引き千切られ、ケープに隠れた瑞穂のうなじに赤い線が付けられる。
 そして拳を唸らせ、瑞穂の顔面にパンチを一発食らわせるとバキッ! と音が鳴り、瑞穂は口の中を切って血を噴出した。
「い、いひゃあぁっ! や、やへれ! やへれえぇ!」
 瑞穂は腕を顔の前に持ってくると悲痛に叫びながら許しを乞う。
 鬼鮫は大きく舌打ちをすると、頭を掴んでいた手を離す。グシャリ、と力なく瑞穂はその場に崩れ落ちた。
 突き上がっていた尻はそのままにダランと垂れ下がる手と、横向きに顔面を地に直接付けた瑞穂の姿は無様としか言いようが無い。
 ヒクヒクと身体を打ち震わせ、流れ出る涙も鼻血もそのままに醜い顔を晒していた。肩幅ほどに開かれた状態の瑞穂の足はスリットから大きく剥き出し、所々丸い穴の空いたストッキングが無様さを強調している。
 時折、ビクンッ! と大きく身体が跳ね上がる反応もあった。
 瑞穂の姿は当初からは想像も出来ないほどにボロボロになり、頭の先から足の先までいたるところが埃にまみれて汚れている。
 腕と脇腹に出来た衣服の千切れた箇所も、大きくその身体を曝け出すように裂けている。そこから覗く細くしなやかだった瑞穂の脇腹は散々打ちのめされ青く腫れ上がり、元の姿など見る影もなかった。
 今の瑞穂に、戦うだけの体力も精神もないように見えた。
「こ、ごへん…なひゃ…ぃ」
 小さく、うわ言のように弱弱しく許しを乞う瑞穂。睨み下ろされる鬼鮫の視線に、ただ涙で乞うしかなかった。