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<PCシチュエーションノベル(ツイン)>


彼との邂逅、そして終焉へ近づく者達

 彼との出会いが物語の全てを変えていく。
 今こそ彼女たちは知る事だろう。
 最愛の娘が呼び出された事実を――‥‥。
 全てを知って、彼女たちは向かう。
 全てを終わらせる場所へと‥‥。

「僕は‥‥何という事をしてしまったのだろう‥‥」
 邪竜クロウ・クルーハの居城の地下深く――罪人を捕らえておくための冷たい牢屋の中で一人の青年はベッドと呼ぶには粗末なソレの上に座り、頭を抱えながら呟く。
 彼の名は浅葱・考太郎と言い【白銀の姫】の製作者であり、プログラマーでもある。
「まだ終わらないのか」
 浅葱の見張り番の魔物が格子の向こうから話しかけてくる。
「‥‥いくら僕でもこれ以上の速さでは出来ないよ、それにもう少し待遇を良くしてくれたらありがたいんですけどね」
 浅葱が嫌味混じりに魔物に言葉を返すと「それは出来ない」とあっさりと言葉を返される。予想出来ていた言葉だけど、こうもあっさり言葉を返されると笑いが出てきてしまう。
「お前は自分が思っている以上に我らにとって驚異的な存在だと知らされている。それに‥‥お前は頭がキレるらしいからな、四六時中見張りがつける場所ではないと心配だとクロウ・クルーハ様は仰られている」
「‥‥褒め言葉として受け取っておくよ」
 ため息混じりに浅葱は言葉を返し、邪竜クロウ・クルーハに付き従う側近である暗黒騎士、そして城内に存在する魔物たちのデータを書き換える作業に戻る。
(「‥‥彼女は、まだ到着していないのでしょうか‥‥この状況を打破出来るのは彼女しかいないというのに‥‥」)
 データ書き換えの作業を行いながら浅葱は心の中で呟く。彼は少し前に異世界の少女をアスガルドに召喚していた。
 だけど、地下牢の中で一日を過ごす彼はまだ知らない――その彼女が既に城内にいるという事、そして邪竜クロウ・クルーハと対峙しているという事を。


「あぁ、もう! ややこしいわっ」
 赤羽根・円が炎の薙刀を振るいながら自分たちに向かってくる敵に攻撃を仕掛ける。
「本当に‥‥雑魚がうじゃうじゃと、無駄だって事が分からないのかねっ!」
 伊葉・勇輔はぷにぷに肉球で攻撃しながら叫ぶ。見ている分にはとても和やかに見えるのだが、肉球で倒される敵側としては少しだけ惨めな気分になるのはきっと気のせいだろう。
「勇輔、気がついているか?」
 円が薙刀を振るい、敵を倒しながら勇輔に問いかける。
「あぁ、こんな姿だからって馬鹿にするなよ――敵の強さがあがってるって言いたいんだろう」
 勇輔も猫パンチを繰り出し、敵を壁へと叩きつけながら言葉を返す。邪竜クロウ・クルーハの城に乗り込んだ円と勇輔だったが――明らかに敵の強さがあがって来ているのだ。
「同じ外見でも最初に現れた奴とさっき倒した奴‥‥強さが桁違いだ」
 円は少しだけ息を切らせながら呟く。
「まるで‥‥誰かが故意に強さを設定してる――そんな感じがするな」
 勇輔も少し息を乱しながらポツリと呟く、ちなみに全く関係ないのだけど猫タヌキな格好で真剣な表情をしてもシリアス度が80%ダウンしてしまうのは何故だろうか。
「‥‥お願いだから、その姿でシリアスになるんは止めて‥‥」
 むぎゅ、と勇輔の顔を摘みながら円が心底哀れみを送るような視線で話しかける。
「や、止めろ‥‥っ、そんな目で俺を見るなぁっ」
 傍から見れば漫才でもしているかのような二人のやり取りに「俺たちを無視するんじゃねぇっ!」と敵が攻撃を仕掛ける。
「無視はしてねぇ――だろっ、眼中にねぇだけだっ!」
 勇輔は猫キックで敵を蹴りつけながら言葉を返す。ちなみに【眼中にない=無視】という事に気づいていないのはきっと勇輔だけなのだろう。
「あんた! 背中を貸せ!」
 円が叫ぶと「おぉ、わりぃわりぃ――さぁ、どうぞ」と勇輔は円を背中に乗せて走り出す。
「て、おいっ! 俺は何だ!? 乗り物かぁっ!?」
 勇輔はツッコミを入れているが、円はそれを見事に無視して暗黒騎士のコピーとも呼べる戦士型魔物に本気で戦いを始める。
(「気ぃ抜いてたら死ぬんはこっちやわ」)
 円は炎の薙刀を振るい、勇輔が円を乗せて敵に向かって走り出す。流石に暗黒騎士のコピーと言えど、本気を出した二人に適う筈もない。
「おい、さっさと行こう。さっきみたいに段々強くなって来られたら――俺たちの不利だからな」
 そう言ってやや疲れの色を見せる円の手を取って立ち上がらせる。
「分かってる‥‥それよりあの子を探さないと‥‥」
 円が呟きながら柱に手を置いて立ち上がる。

 ――ガコン。

 何かがはめ込まれるような音が聞こえ、柱がズズズズと音をたてながら回り始め、その奥には――地下へ通じる階段が姿を見せた。
「なんやの、これ‥‥」
 円が驚いたような表情で呟くと「さぁな」と勇輔が短く返し「だが」と言葉を付け足す。
「こんな仕掛けまでするって事はよっぽど見られたくないモンを入れてるんだろうぜ」
 勇輔が呟き、階段を降り始める。
「とりあえず、降りてみよう。もしかしたら俺たちに有利なモンがあるかも」
 勇輔の言葉に「そうだな」と円も言葉を返し、カツン、カツン、と階段を降りていく。地下からの冷ややかな風とかび臭い匂いに二人は表情を歪めつつ、降りていく。
 そして長い階段を降りた後に視界に入ってきたのは――‥‥。
「誰?」
 牢屋に入れられている一人の男性・浅葱の姿だった。
「もしかして貴女が彼女――‥‥いや、違う。彼女の気配と似ているけれど‥‥違う」
 浅葱はがっかりしたような表情で俯き「何をしに来たんですか?」と確りと勇輔と円を見据えて問いかける。
「私らはこの城にいるはずの娘を探しに来ただけだ。そういう貴方こそこの場所にあまり似つかわしくないようだけど?」
 円が問いかけると「いえ‥‥此処ほど僕にぴったりな場所はないですよ」よ自嘲気味に浅葱が言葉を返してきた。
「邪竜にとらわれ、暗黒騎士や魔物たちのデータを書き換え――邪竜クロウ・クルーハの復活に手を貸してしまっているのだから‥‥」
 はぁ、と浅葱はため息を吐き「それを阻止してくれる彼女もまだ現れない、もう間に合わないかもしれないです」と言葉を漏らした。
「‥‥彼女?」
 勇輔が眉間に皺を寄せながら問い返す。
「邪竜クロウ・クルーハの復活を阻止出来る少女――この世界に呼び寄せたのだけど‥‥いまだ此処に現れてくれないんです‥‥早くしないと間に合わなくなってしまう」
 浅葱の言葉に「その少女の名前は‥‥?」と円が問いかけ、浅葱はその少女の名前を告げる。
「あんたが‥‥私らの娘をこんな事に巻き込んだのか!」
 格子越しに円が叫ぶと「娘? 貴方達の?」と浅葱が目を丸くしながら言葉を返してきた。
「俺らの娘は此処にいる、それは間違いない」
 勇輔の言葉に「‥‥まさか」と浅葱はパソコンに向かってキーを叩き始める。
「‥‥やっぱり‥‥」
 浅葱はくしゃりと髪をかきあげながら呟く。
「この牢の周囲だけ気配が書き換えられている、だから僕はあの子の存在に気づかなかった‥‥あの子がいる場所、それは――邪竜の間‥‥」
 さぁ、と浅葱の顔色が青くなっていく。
「お願いです、僕に力を貸してください。この世界を、現実世界を救うためにもあの子の力が必要なんです!」
「つまり‥‥お前が娘を呼び出し、そのせいで俺たちも此処に来なくてはならなくなった――お前か、俺をこんな姿にしたのは! せめて選ばせろ!」
 くわっと勇輔は見当違いの事で怒っているが「煩い」と円がスパーンと引っ叩く。
「アンタという人は‥‥何処までも自分の事しか考えられない人だな! 少しは娘の為に頑張ろうとか思わないのか。あんたは!」
 円が勇輔に向かって叫ぶが「じょ、冗談じゃないか、冗談」と苦しそうに勇輔は呻くように言葉を返した。
「ちなみにそれを選んだのは僕じゃないですよ、それを選んだのは貴方自身――貴方の中の潜在意識がそれを選んだのです」
 浅葱の言葉に「ほら、あんたのせいじゃないか!」と円はギッと勇輔を睨みつけながら叫ぶ。
(「これを選んだのは俺? お、俺なのか?」)
 ある意味、浅葱の言葉は勇輔にとってクリティカルヒットを与えていた。
「な、何だ! お前たちは!」
 階段を降りてやってきたのは浅葱の見張り番、だが円と勇輔の二人によってそれはいとも簡単に倒されてしまう。
「これから邪竜の間へのルートを教えます、言う通りに行けば敵に会わずに行けるはずです」
 浅葱はカタカタとパソコンで城内を調べ始め「この道を行って下さい」と紙に書いた地図を渡した。
「どうかお願いです、世界の為にあの子を――」
 浅葱の言葉を遮り「当たり前だ」と勇輔と円は言葉を返す。
「だけど、それは世界の為じゃない――‥‥」
「私達の娘だから助ける、それ以上でもそれ以下でもない」
 きっと浅葱をきつく見つめた後、勇輔と円は邪竜の間へと向かい始めた。
 彼女たちが邪竜の間を開くまで、もう少し。


TO BE‥‥?


――出演者――

7013/赤羽根・円/36歳/女性/赤羽根一族当主

6589/伊葉・勇輔/36歳/男性/東京都知事・IO2最高戦力通称≪白トラ≫

―――――――

赤羽根・円様
伊葉・勇輔様>

こんにちは、水貴透子です。
いつも本当にお世話になっております。
もうそろそろ終盤という事で、私もドキドキしながら書かせていただいています。
これからどうなるのだろう、そんな気持ちでいっぱいだったりします。
いつも楽しく書かせて頂き、ありがとうございます。

それでは、またご機械がありましたらご用命くださいませっ。
一生懸命執筆させていただきます〜♪

2009/5/14